KSK2という新しいシステムによって、税務調査が厳しくなるのではと不安に感じていませんか。
KSK2は国税庁の基幹システム更改であり、AIは既に一部活用されているものの、最終判断は調査官が行います。
本記事では、稼働時期や様式変更、AIの活用範囲を公式資料に基づき整理し、企業が今から備えたいポイントを解説します。
KSK2(国税総合管理システム/国税システムの更改)とは|現行KSKとの違いと呼び方の整理
「KSK2」という言葉を見聞きしても、正体をつかみにくいという方は多いはずです。
まずは現行システムとの関係と、複数ある呼び方をここで整理していきましょう。
現行の国税総合管理(KSK)システムとは
国税総合管理(KSK)システムは、国税局・税務署をネットワークで結び、申告・納税の事績を一元管理する基幹システムです。
国税庁レポート2003(現在は国税庁サイトから削除)によれば、1995年1月に試行を開始し2001年11月に全国導入が完了しました。
一元管理を前提に資金の流れを整理するなら、役員借入金とは?わかりやすく解説|メリット・デメリット・解消方法と税務リスクもあわせて確認しましょう。
「次世代国税総合管理システム」は公式の呼び方ではありません
「次世代国税総合管理システム」という名称は、国税庁レポートや税務大学校の講本、e-Taxの案内といった公表資料では使われていません。
検索や解説記事で見かけても、公式な呼び方ではない点に注意しましょう。
KSK2の公式な呼び方は4つ
公式に使われているのは、①次世代システム(KSK2)(国税庁レポート2025)、②国税総合管理システム(KSK2)(個人情報保護委員会の全項目評価書)、③e-Tax仕様書上の「KSK2対応版」、④施策全体を指す「国税システムの更改」です。
呼び方が複数あるだけで、同じシステムを指しています。

出典:国税庁 税務大学校『税法入門』令和8年度版 出典:国税庁レポート2003「第2 税務執行のあらまし」(Wayback Machineアーカイブ) 出典:国税庁レポート2025 出典:個人情報保護委員会 第359回(令和8年6月10日)資料1-1「国税庁長官(国税関係事務)の全項目評価書」 出典:e-Tax「国税システムの更改に伴うe-Taxの仕様公開と送信試験」
KSK2はいつから稼働する?稼働スケジュールとメンテナンス期間
KSK2の稼働時期は検索されることが多いテーマです。
ここでは公式資料の記載を整理し、e-Taxが使えなくなる期間もあわせて確認しましょう。
新しい様式の受付開始も原則として同じ日で、一部の帳票は令和8年10月1日や11月1日から始まる予定です。
稼働予定日は令和8年(2026年)9月24日
国税庁「国税システムの更改について」によると、国税庁では令和8年9月24日に国税システムの更改を予定しています。
e-Taxのお知らせに記載されている日付も、同じ令和8年9月24日(木)です。
この情報は2026年8月時点の国税庁公表によるもので、公式サイトの表記はすべて「予定」という扱いです。
最新の日程は国税庁サイトで確認しましょう。
e-Taxが使えなくなる時間(メンテナンス期間)
更改により、e-Taxが一時的に利用できなくなります。
e-Taxのお知らせによれば、令和8年9月19日0:00から9月24日8:30まで、および9月26日0:00から24:00までがメンテナンス時間(利用不可時間)です。
この期間は申告・届出のオンライン提出ができないため、早めの準備が欠かせません。

出典:国税庁「国税システムの更改について」 出典:e-Tax「国税システムの更改に伴うメンテナンス時間について」 出典:e-Tax「令和8年9月のe-Taxソフト更新対象帳票一覧(予定)について」
KSK2で何が変わるのか|開発コンセプト3つ
KSK2では、単なるシステムの入れ替えではなく、事務処理の考え方そのものを変える3つの開発コンセプトが土台です。
①紙からデータへ(AI-OCRによるデジタル化)
国税庁レポート2025は、開発コンセプトの一つを「データ中心の事務処理を実現するシステム(紙からデータ)」としています。
書面で提出された申告書等をAI-OCR(AIを使って書面の文字を読み取る技術)で読み取り、データ化・イメージ化する仕組みで、令和4年度からはクラウド環境上のAI-OCRがすでに併用されています。
KSK2はこの流れの本格化です。
②税目別の縦割りシステムの解消(データベース統合)
国税庁レポート2025は、もう一つのコンセプトを「税目別となっているデータベース・アプリケーションの統合(縦割りシステムの解消)」としています。
これまで税目ごとに分かれていた情報が横断的に扱われるようになります。
グループ法人税制とは?完全支配関係から注意点まで解説で触れた法人間取引についても、申告内容の整合性をあらためて点検しておきましょう。
③メインフレームからオープンシステムへ(クラウド活用)
国税庁レポート2025が挙げる3つ目のコンセプトは「メインフレームからの脱却」で、独自OSの大型コンピュータから市販の汎用OSへ切り替えることです。
個人情報保護委員会の全項目評価書によると、KSK2はオンプレミス環境(自組織の設備内でシステムを運用する形態)とクラウド環境のハイブリッド構成をとり、デジタル庁が政府共通の標準的な業務実施環境を整備するGSSもあわせて利用されます。

出典:国税庁レポート2025 出典:個人情報保護委員会 第359回(令和8年6月10日)資料1-1「国税庁長官(国税関係事務)の全項目評価書」 出典:e-Tax「国税システムの更改に伴うe-Tax仕様書等の情報提供について」
中小企業・経理担当者への実務影響|申告書等の様式変更と対応ポイント
KSK2の稼働にあわせて、申告書や届出書などの様式にもいくつかの変更が加わります。
中小企業の実務に関わる点を確認しましょう。
様式が変わる書類の対象
AI-OCRの導入に伴い、国税庁は申告書等の様式を読み取りに適した形へ改定する予定だと案内しています。
対象になるのは一部の書面申告書、申請・届出書、法定調書(支払調書など、税務署への提出が義務づけられた書類)で、様式の受付開始後は最新の様式での提出をお願いします。
過去に入手した様式は内容が変わっている場合があるため、e-Taxの帳票一覧で最新版かどうかを確かめてから提出しましょう。
様式変更の件数と相続・贈与税への影響
国税庁が公表する「様式変更される申告書等の公表時期・受付開始時期」(令和8年7月31日時点)には、1,881件の様式が掲載されています。
税目別に見ると相続・贈与税関係が370件と最も多く、法人税関係286件、申告所得税関係215件が続きます。
相続・贈与税に関わる様式が多いため、資産管理会社とは?設立のメリットとデメリットを財務専門家が解説のような資産承継対策との関連も押さえておきたいところです。
受付開始時期は書類によって異なる
新しい様式の受付開始は、原則として令和8年9月24日です。
ただしe-Taxの帳票一覧によると、一部の帳票は令和8年10月1日や11月1日から受付が始まる予定で、国税庁公表のExcelには令和8年分の申告から適用される様式も含まれます。
提出する書類ごとに受付開始日を事前に確認しておくと、直前になって慌てずに済みます。
「お問い合わせ番号」(13桁)・納付書様式の変更
税務署から送付される通知等には、その通知等を特定するための13桁の「お問い合わせ番号」が印字される予定です。
この番号を税務署の担当者に伝えると、問い合わせがスムーズに進みます。
あわせて、納付書や所得税徴収高計算書の「整理番号」欄(8桁)は「お問い合わせ番号」欄(13桁)へと切り替わる点も押さえておきましょう。
電子交付の同意方法変更(個別同意→一括同意)
処分通知等の電子交付は対象が広がり、同意の方法も変わります。
従来の「個別同意」から、事前の「一括同意」に変わるため、既存の利用者も令和8年9月24日以降にe-Tax上であらためて一括同意の手続きを行ってください。
申告書の控用廃止と会計ソフトの対応確認
あわせて申告書の控用はなくなり、配色は原則白黒になる予定です。
会計ソフトのチェックのやり方|入力後の確認手順とソフト選定7項目を徹底解説と合わせて、出力帳票が最新様式に対応しているか点検しておきましょう。

出典:国税庁「国税システムの更改について」 出典:e-Tax「令和8年9月のe-Taxソフト更新対象帳票一覧(予定)について」 出典:国税庁「様式変更される申告書等の公表時期・受付開始時期」 出典:e-Tax「国税システムの更改に伴うe-Tax仕様書等の情報提供について」
KSK2とAIの関係|「自動で不正が暴かれる」への誤解と国税庁公式の実態
KSK2が稼働すればAIが自動的に不正を見つけ出す——そうした言説を目にすることがありますが、ここで整理するのは国税庁の公表資料に基づく実態です。
クラウド化などの技術基盤の刷新と、税務調査の厳しさは別軸の話です。
KSK2稼働前から実務運用されている予測AI
国税庁レポート2026は、予測AIについて「課税・徴収事務の効率化・高度化に向けて必要な開発や活用を進めており、申告漏れの可能性が高い納税者の判定や、滞納者への催告の電話がつながりやすい曜日や時間帯の予測等に活用しています」としています。
つまりAIはKSK2の稼働を待たずに、すでに実務で使われています。
KSK2の稼働によって、AIが突然導入されたわけではないのです。
AIが担うのは「判定支援」まで、最終判断は調査官
国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」によれば、AIを活用した予測モデルで調査必要度の高い法人を抽出し、判定された不正パターンや資料情報を踏まえたうえで、最終的に調査官が調査実施の要否を判断しています。
同資料は「調査官の知見にAIの分析結果を組み合わせることにより、効率的で精度の高い調査を実施しています」とも述べており、AIと人の役割分担は明確です。
令和6事務年度の税務調査実績(KSK2稼働前のデータ)
国税庁が公表した「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」によると、実地調査5万4千件のうち非違があったのは4万2千件、不正発見割合(不正計算があった件数の割合)は23.5%、追徴税額(法人税・消費税)は3,407億円で直近10年で最高となりました。
これはKSK2の稼働前に、AIを活用しながら選定された調査の実績であり、KSK2の導入で数値が増えたわけではありません。

出典:国税庁レポート2026「税務行政のDX」 出典:国税庁「令和6事務年度 法人税等の調査事績の概要」
KSK2の稼働までに企業が備えておきたいこと
煽られがちなAI対策より先に、実務面で確認しておきたい3つのポイントを整理します。
会計・記帳データの正確性を高めておく
KSK2の開発コンセプトの一つは「データ中心の事務処理」であり、書面よりもデータそのものの正確性が重視される流れです。
国税庁は書面提出について、記載欄の枠内に楷書で丁寧に記載することや、印刷のかすれ・傾きを避けるためプリンタから直接印刷することを求めています。
日頃の記帳を正確に保ち、会計ソフトの入力ルールを社内で統一しておけば、確認の手間も減らせます。
e-Taxの接続方法・電子交付の設定を見直す
e-TaxのIPアドレスは、固定IPアドレスから動的IPアドレスに変更される予定です。
IPアドレスを指定してe-Taxに接続している場合は、令和8年9月24日以降にURLでの接続へ切り替える必要があります。
電子交付を利用している方は、一括同意の再設定も忘れずに行いましょう。
顧問税理士とスケジュールを共有しておく
様式変更や電子交付の同意方法変更など、実務で対応すべき点は多岐にわたります。
顧問税理士がいる場合は、更改のスケジュールと自社への影響を早めに共有し、どちらが何をいつまでに行うかを担当表に落とし込んでおきましょう。
失敗しない税理士の選び方|面談質問・費用相場・属性別ポイントも参考に、連携の窓口を明確にしておきましょう。

出典:国税庁「国税システムの更改について」 出典:国税庁「書面提出に当たって」
KSK2時代の財務・税務体制はEncoachにご相談ください

KSK2は稼働時期や様式が段階的に確定していく制度であり、変更点を都度追いかけるだけでも負担がかかります。
Encoachは、財務・会計・税務の専門知見をもとに、中小企業の資金繰りや資産管理、税理士との連携体制づくりを支援する専門家集団です。
制度変更に振り回されず本業に集中できるよう、経営状況に合わせた実務対応を一緒に整理します。
様式変更への対応や記帳体制の見直しなど、KSK2に関する不安点も含めてご相談いただけます。
財務・会計・税務でお困りの際は、LINEからお気軽にご相談ください。
KSK2についてよくある質問
Q1. KSK2とは何ですか?現行のKSKと何が違いますか?
KSK2は、現行の国税総合管理(KSK)システムを刷新する国税庁の基幹システムです。
国税庁レポートやe-Taxなどの公表資料では「次世代システム(KSK2)」「国税総合管理システム(KSK2)」と呼ばれ、「次世代国税総合管理システム」という呼び方は使われていません。
基本的な仕組みは同じで、新たに加わるのはデータ中心の処理やクラウド活用です。
Q2. KSK2はいつから稼働しますか?
国税庁「国税システムの更改について」によると、令和8年9月24日に国税システムの更改を予定しています。
公式サイトの表記はすべて「予定」となっているため、直前の日程変更に備えて最新情報は国税庁サイトで確認するのがおすすめです(2026年8月時点の情報です)。
Q3. KSK2の導入で税務調査は厳しくなりますか?
国税庁の公表資料には、KSK2の導入で税務調査が厳しくなるとは明記されていません。
予測AIはすでに申告漏れの判定などに活用されていますが、調査を実施するかどうかを決めるのは調査官です。
過度に不安がる必要はなく、正確な記帳と申告を続けることが基本的な備えになります。
Q4. KSK2導入後も申告書は紙で提出できますか?
紙での提出は、KSK2の導入後も引き続き認められています。
「ベンダーソフトから最新の様式が出力されない場合などには、その様式でも提出はできます」というのが国税庁の案内です。
ただしe-Tax申告には多くのメリットがあるため、国税庁も電子申告の利用を案内しています。
Q5. KSK2の稼働までに企業が準備しておくべきことは何ですか?
大きく3つの準備が考えられます。
①記帳や会計データの正確性を高めること、②e-Taxの接続方法(IP指定からURL接続)や電子交付の一括同意を見直すこと、③顧問税理士とスケジュールを共有し対応を分担しておくことです。
いずれも記帳ルールの統一や接続設定の切り替えなど、日常の経理業務の延長で着手できる項目です。
まとめ:KSK2の変更点を正しく理解して実務対応を万全に備えよう
KSK2は令和8年9月24日に稼働予定の国税庁の基幹システム更改であり、AIによる自動摘発へ急に切り替わる制度ではありません。
様式変更や電子交付の同意方法変更など実務面の対応が中心で、AIは既に一部活用されているものの、調査を実施するかどうかは調査官が最終判断します。
令和6事務年度に追徴税額が直近10年で最高となったのも、KSK2の稼働前の実績です。
まずは様式変更のスケジュールを確認し、記帳データの正確性を高めながら、顧問税理士と準備状況を共有しておきましょう。
まずはお気軽にご相談ください。