役員報酬の決め方やいくらに設定すべきかで悩む経営者は少なくないのが実情です。
役員報酬は、株主総会での決定手続きと、税務・社会保険料を踏まえた金額の判断を満たす必要があります。
本記事で解説するのは、決定手続きの流れや損金算入できる給与の種類、変更できるタイミング、金額を決める際の判断基準です。
読み終えるころには、自社に合った役員報酬の決め方が見えてきます。
役員報酬とは|従業員給与との違い

役員報酬とは、取締役や監査役など会社の「役員」に対して支給される報酬を指します。
従業員給与とは決定の仕組みも税務上の扱いも異なるため、まず役員報酬の対象範囲と基本的な違いを押さえておきましょう。
役員報酬の対象になる「役員」の範囲
法人税法上の役員には、登記された取締役や監査役のほか、登記されていなくても法人の経営に従事している人(いわゆるみなし役員)も含まれます。
同族会社(3人以下の株主グループが発行済株式の50%超を持つ会社)では、一定の持株要件を満たしたうえで経営に従事する使用人も役員として扱われる場合があります。
「取締役」の肩書がなくても役員報酬のルールが適用される場合がある点は押さえておきましょう。
役員報酬と従業員給与の違い(決定手続き・損金算入要件の違い)
役員報酬は雇用契約ではなく、株主総会の決議など会社法上の手続きによって金額が決まります。
従業員給与は雇用契約に基づき支給されるのが原則で、そのまま損金に算入される仕組みです。
これに対し役員給与は、定期同額給与など決められた種類に該当しなければ損金に算入されない制約があります。
決定手続きと損金算入要件の違いが、役員報酬と従業員給与を分ける大きなポイントです。
出典:会社法第361条(取締役の報酬等)|e-Gov法令検索 出典:法人税法施行令第7条(役員の範囲)|e-Gov法令検索 出典:法人税法第2条第10号(同族会社の意義)|e-Gov法令検索
役員報酬の決め方|手続き3ステップ

役員報酬は感覚で金額を決めて支給すればよいものではなく、会社法に沿った決定手続きを踏まなければなりません。
ここで整理するのは、株主総会での決定から届出までの流れを3つに分けたステップです。
ステップ①株主総会(または定款)で総額・算定方法を決定する
取締役の報酬は、定款に定めがなければ株主総会の決議によって決定します。
株主総会で定めるのは、報酬額が確定している場合はその額、確定していない場合は具体的な算定方法です。
株主総会では報酬等の総額の最高限度だけを定め、その枠内での各取締役への配分を取締役会に委任する方法も認められています。
監査役を置く会社では、監査役の報酬も同様に定款または株主総会の決議で定めます。
ステップ②取締役会で個別の支給額を配分する
株主総会で総額の上限が決まったら、各取締役への個別の支給額は取締役会の決議で配分するのが一般的な流れです。
取締役会を設置していない会社では、定款の定めに従い、取締役の互選や株主総会の決議によって個別の金額を決めることになります。
配分方法自体も後から確認できるよう記録に残しておきましょう。
ステップ③議事録を作成し備え置く
株主総会の議事については議事録を作成する義務があり、株式会社は株主総会の日から10年間、議事録を本店に備え置かなければなりません。
支店がある場合は、議事録の写しについても株主総会の日から5年間の備え置きが原則です。
役員報酬の決定経緯を証明する重要な書類であり、確実な保管が欠かせません。
決定後に必要な届出(事前確定届出給与を使う場合)
役員賞与を損金算入するために事前確定届出給与を使う場合は、決議のあとに届出書を税務署へ期限内に提出します。
届出期限は原則、株主総会等の決議日から1か月を経過する日と、会計期間開始の日から4か月を経過する日のいずれか早い日です。
新設法人がその役員の設立時の職務について定めをした場合は、設立の日以後2か月を経過する日が期限になります。
期限を過ぎると損金算入できなくなるため注意しましょう。
出典:会社法第361条(取締役の報酬等)|e-Gov法令検索 出典:会社法第318条(議事録)|e-Gov法令検索 出典:会社法第387条(監査役の報酬等)|e-Gov法令検索 出典:役員に適切なインセンティブを付与するための規律の整備に関する論点の検討(会社法制(企業統治等関係)部会 部会資料4)|法務省 出典:No.5211 役員に対する給与(国税庁タックスアンサー/令和7年4月1日現在法令等・2026年8月8日確認)
損金算入できる役員給与の3類型と、認められないケース

役員に支給する給与は、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれかに該当しなければ損金に算入できません。
それぞれの定義と、認められないケースを順に見ていきましょう。
定期同額給与とは(毎月同額で支給する給与)
定期同額給与とは、支給時期が1か月以下の一定期間ごとで、その事業年度の各支給時期の支給額が同額である給与のことです。
毎月の役員報酬はこの定期同額給与に該当するのが一般的です。
支給額そのものが同額でなくても、源泉所得税や住民税、社会保険料を控除した後の手取り額が同額であれば「同額」とみなされます。
額面ではなく手取りベースでそろえる方法も認められています。
事前確定届出給与とは(役員賞与を損金算入する仕組み)
事前確定届出給与とは、役員の職務について、あらかじめ定めた時期に確定額を支給する旨を税務署へ届け出ることで損金算入できる給与です。
定期同額給与とは別のタイミングで役員賞与を支給したい場合に使われる仕組みで、届出期限は前章のとおりです。
期限までに届出がなくても、やむを得ない事情があると認められれば期限内の届出があったものとして扱われます。
役員賞与を活用した節税や社会保険料の考え方は「【2026年最新】役員賞与とは?損金算入・社会保険料削減から経営戦略への活かし方まで完全解説」でも詳しく解説しています。
業績連動給与とは(中小の同族会社は原則使えない)
業績連動給与は、利益や株価などの指標に連動して支給額が決まる給与です。
損金算入できるのは、同族会社の場合、同族会社以外の法人に完全支配されている法人に限られ、有価証券報告書への記載などの開示要件も満たさなければなりません。
この要件のため、非上場の中小同族会社では実質的に利用できない仕組みです。
不相当に高額な役員報酬・隠蔽仮装経理は損金不算入
3類型に該当する給与でも、不相当に高額な部分の金額は損金に算入されません。
判定に使われるのは、役員の職務内容や会社の収益、同業種・同規模法人の役員給与の水準などに照らす実質基準と、定款や株主総会で定めた限度額を超えていないかを見る形式基準の2つです。
また、事実を隠蔽・仮装して経理することで支給した給与は、金額にかかわらず全額が損金不算入となります。
事前確定届出給与が全額損金不算入になるケースと、その及ぶ範囲
事前確定届出給与は、届け出た額と実際の支給額が異なると、原則として支給額の全額が損金不算入になります。
判定の単位となるのは職務執行期間であり、複数回の支給のうち1回でも金額が違えば、その期間分すべてが対象です。
ただし、この不一致は他の役員には影響しません。
当該事業年度は定めどおりに支給し、翌事業年度だけ異なった場合は、翌事業年度分のみが損金不算入の扱いで差し支えないとされています。
出典:No.5211 役員に対する給与(国税庁タックスアンサー/令和7年4月1日現在法令等・2026年8月8日確認) 出典:法人税法施行令第70条(過大な役員給与の額)|e-Gov法令検索 出典:定めどおりに支給されたかどうかの判定(事前確定届出給与)|国税庁 質疑応答事例 出典:「事前確定届出給与に関する届出書」を提出している法人が特定の役員に当該届出書の記載額と異なる支給をした場合の取扱い|国税庁 質疑応答事例 出典:法人税法第34条(役員給与の損金不算入)|e-Gov法令検索 出典:法人税法施行令第69条(定期同額給与の範囲等)|e-Gov法令検索
役員報酬を変更できるタイミング|原則と例外

「役員報酬は一度決めたら1年間変更できない」と思われがちですが、これは正確ではありません。
原則の改定時期に加え、一定の例外事由に該当すれば期中でも改定が認められます。
ここで整理するのは、原則と例外の2パターンです。
原則:事業年度開始から3か月以内の通常改定
定期同額給与の通常改定は、事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までに行います。
この期限は決算月によって変わり、たとえば3月決算の会社であれば6月末までが目安です。
この期限内であれば増額・減額のどちらの改定も認められます。
継続して毎年同じ時期に改定しており特別な事情があると認められる場合は、3か月経過後の改定も可能です。
例外①:臨時改定事由(役職・職務内容の重大な変更)
臨時改定事由とは、役員の職制上の地位の変更や職務内容の重大な変更など、やむを得ない事情による改定を指します。
たとえば、定時株主総会後に社長が退任し、臨時株主総会の決議で副社長が社長に就任するケースや、合併に伴って職務内容が大幅に変わるケースが該当します。
役員が病気で入院し職務の一部を執行できなくなった場合の減額や、復帰後に元の額へ戻す改定も、臨時改定事由に該当する典型例です。
例外②:業績悪化改定事由の定義と、「業績が悪いから下げる」は原則対象外という誤解の解消
業績悪化改定事由とは、経営状況が著しく悪化したことなど、やむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情による改定を指します。
注意したいのは、法人の一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標に達しなかったことだけでは該当しない点です。
利益調整のみを目的とした減額改定も対象外とされます。
具体的にどのような事情なら該当し、どう説明できる状態にしておくべきかは、後の章で解説します。
出典:No.5211 役員に対する給与(国税庁タックスアンサー/令和7年4月1日現在法令等・2026年8月8日確認) 出典:法人税基本通達 第3款 定期同額給与|国税庁 出典:役員給与に関するQ&A(国税庁・平成20年12月/平成24年4月改訂)
役員報酬の金額を決める際の判断軸

役員報酬の金額は、まず会社の利益とキャッシュフローから逆算し、そのうえで所得税・住民税、社会保険料、法人税、銀行融資への影響という4つの判断軸で検討します。
それぞれの考え方を順に見ていきましょう。
なお本記事の税率・控除額・保険料率は2026年8月時点の法令等に基づく内容です。
制度は改正されるため、最新の情報は国税庁・日本年金機構などの公式サイトで確認するか、顧問税理士・社会保険労務士にご確認ください。
会社の利益とキャッシュフローから逆算する
役員報酬の金額を検討する出発点は、会社に残る利益とキャッシュフローの見通しです。
役員報酬は毎月固定で支払う人件費であるため、一度決めると原則として期中に減額しにくいという性質があります。
無理のない金額を設定するうえで欠かせないのは、今期・来期の利益見込みと資金繰りの整理です。
所得税・住民税の負担を試算する(令和8年分の控除額)
役員個人の所得税は、給与所得控除を引いた金額から基礎控除などを差し引いて計算します。
令和8年度税制改正により、令和8年分の給与所得控除は最低保障額が65万円から74万円に引き上げられました。
基礎控除も引き上げられ、合計所得金額489万円以下では104万円です。
所得税率は5%から45%の7段階、住民税の所得割は標準税率で10%です。
具体的な税額は状況で異なるため、試算は税理士に確認しましょう。
保険料の基準になる標準報酬月額の決まり方
社会保険料は、役員報酬をそのまま使うのではなく、標準報酬月額(保険料の計算に使う報酬の区分額)に当てはめて計算します。
標準報酬月額の見直しは定時決定と呼ばれ、4月から6月の報酬月額を基に毎年9月に行われる仕組みです。
定時決定で決まった標準報酬月額は、9月から翌年8月までの各月に適用されます。
社会保険料の負担を試算する(令和8年度の料率)
法人は事業主のみの場合でも、厚生年金保険の強制適用事業所となります。
標準報酬月額にかける厚生年金保険料率18.3%は、会社と本人の折半です。
健康保険料率は協会けんぽの令和8年度平均が9.9%で、都道府県ごとに異なります。
令和8年4月分からは年齢を問わず子ども・子育て支援金率0.23%が加わり、40歳から64歳まで(介護保険第2号被保険者)はさらに介護保険料率1.62%が上乗せされます。
社会保険料の負担を抑える方法として法人を分ける選択肢を検討する場合は、「マイクロ法人設立で社会保険料を劇的に削減!メリット・デメリットと失敗しないための全知識」もあわせてご覧ください。
法人税の軽減税率と「800万円」の壁を踏まえる
会社に利益を残す場合、法人税の軽減税率も判断材料の一つです。
資本金1億円以下の中小法人は、所得のうち年800万円以下の部分に15%の軽減税率が適用されます。
ただし、所得が年10億円を超える事業年度は17%、適用除外事業者は19%となる点に注意しましょう。
この軽減税率の特例自体、令和9年3月31日までに開始する事業年度が期限です。
銀行融資・与信への影響も考慮する
役員報酬を高く設定しすぎると、会社に残る利益や自己資本が薄くなり、決算書の見え方が変わります。
銀行融資の審査では、決算書の利益水準や自己資本比率が重視される傾向にあります。
節税だけを優先して役員報酬を高くすると、将来の資金調達に影響する可能性があるため、資金調達の予定も踏まえて総合的に判断しましょう。
融資審査で見られるポイントは「銀行融資の審査を通すには?審査基準・面談対策・落ちた場合の対処法」、自己資本の考え方は「自己資本比率の目安とは?業種別の適正値と改善方法をわかりやすく解説」でそれぞれ詳しく解説しています。
出典:令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について|国税庁(2026年8月8日確認) 出典:令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし|国税庁(令和8年4月1日現在法令等・2026年8月8日確認) 出典:No.2260 所得税の税率(国税庁タックスアンサー/令和7年4月1日現在法令等・2026年8月8日確認) 出典:個人住民税|総務省 出典:厚生年金保険の保険料|日本年金機構 出典:令和8年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます|全国健康保険協会 出典:No.5759 法人税の税率(国税庁タックスアンサー/令和7年4月1日現在法令等・2026年8月8日確認) 出典:法人課税に関する基本的な資料|財務省
設立初年度・法人化直後の役員報酬の決め方

個人事業主から法人化したばかりの経営者にとって、役員報酬の決め方は特に悩ましいテーマです。
設立初年度は業績の見通しが立てにくいうえ、一度決めた額は期中に下げにくいという制約があります。
設立時でも株主総会決議で役員報酬を決められる
会社を設立したばかりでも、役員報酬は定款に定めがなければ株主総会の決議で決定します。
各発起人は設立時発行株式を1株以上引き受けるため、設立時はそのまま株主になるのが通常の姿です。
役員報酬は定款に定めるか、設立後に開く株主総会の決議で決めることになります。
決定した内容は、他の役員報酬と同じく議事録に残しておきましょう。
利益の見込みが立ちにくい設立初年度の考え方
設立初年度は売上や利益の見込みが立てにくく、いくらに設定すべきか迷いがちです。
役員報酬は原則として期中に減額しにくいため、事業計画上の利益見込みや当面の生活費を踏まえ、無理のない金額から始めるのが基本的な考え方です。
所得税・住民税や社会保険料の負担、法人に残す利益とのバランスも判断軸として活用できます。
迷う場合は、税理士など専門家に相談しながら決めることをおすすめします。
新設法人が事前確定届出給与を使う場合の届出期限
設立初年度に役員賞与を事前確定届出給与として損金算入したい場合は、届出期限に注意しましょう。
新設法人がその役員の設立時に開始する職務について定めをした場合、届出期限は設立の日以後2か月を経過する日までとなります。
通常の期限(決議日から1か月または会計期間開始日から4か月のいずれか早い日)とは異なるため、設立準備の段階からスケジュールに組み込んでおきましょう。
出典:会社法第361条(取締役の報酬等)|e-Gov法令検索 出典:会社法第25条(株式会社の設立・発起人の株式引受け)|e-Gov法令検索 出典:No.5211 役員に対する給与(国税庁タックスアンサー/令和7年4月1日現在法令等・2026年8月8日確認)
合同会社の役員報酬の決め方は株式会社と違う?

合同会社では役員ではなく「社員」が経営を担うため、報酬の決め方も株式会社とは異なる仕組みになっています。
会社法には、株式会社の第361条のような報酬決定を直接定めた専用の条文がありません。
合同会社には会社法361条のような専用規定がない
持分会社である合同会社は、定款に別段の定めがない限り、業務は社員の過半数の決定で進めるのが原則です。
業務執行社員と会社の関係には委任の規定が準用されるため、報酬を受け取るには特約が欠かせません。
特約の具体的な置き方(定款に定めるか、社員の決定によるか)は条文で一律に定められていません。
「社員全員の同意」は定款に報酬を定めた場合の変更手続き
「合同会社は社員全員の同意で報酬を決める」と説明されることがありますが、これは不正確な理解です。
総社員の同意が必要になるのは、報酬額を定款に定めている場合に、その額を変更するときに限られます。
定款に報酬額の定めがなければ、社員の過半数による決定という原則的な方法で報酬を決めることになります。
定款の記載内容を確認しておきましょう。
損金算入のルールは株式会社と同じように適用される
合同会社の業務執行社員も、法人の経営に従事している以上、法人税法上は役員として扱われます。
そのため、定期同額給与や事前確定届出給与など損金算入のルールは株式会社の役員と同じように適用されます。
なお、社員が受け取る「利益の配当」は役員報酬とは別枠の制度であり、混同しないよう注意しましょう。
出典:会社法第590条・第591条(業務の執行)|e-Gov法令検索 出典:会社法第637条(定款の変更)|e-Gov法令検索 出典:民法第648条(受任者の報酬)|e-Gov法令検索 出典:会社法第593条(業務を執行する社員と持分会社との関係)|e-Gov法令検索 出典:法人税法施行令第7条(役員の範囲)|e-Gov法令検索
親族役員・使用人兼務役員の役員報酬で注意すべきこと

中小企業では、配偶者や子どもなど親族を役員にしたり、役員と従業員の立場を兼ねる使用人兼務役員を置いたりするケースも少なくありません。
それぞれに税務上の注意点があります。
親族を役員にする場合に押さえておきたいポイント
親族を役員にする場合も、役員報酬の決定手続きや損金算入のルールは他の役員と同じです。
実質基準は、役員の職務内容や会社の収益、使用人への給与の支給状況、同種・同規模の法人の役員給与の支給状況などに照らして判断されます。
職務内容が判断要素に含まれる以上、実際に担っている職務と報酬額の対応を説明できるようにしておきましょう。
親族役員ならではの注意点は「親族役員とは?メリット・デメリットと2026年税制改正の最新ポイント」でさらに詳しく解説しています。
使用人兼務役員は給与と賞与の扱いが一部異なる
使用人兼務役員とは、社長や理事長などを除く役員のうち、部長や課長といった使用人としての職制上の地位を持ち、常時使用人の職務にも従事している役員のことです。
使用人兼務役員には、役員としての報酬部分と、使用人としての給与・賞与部分がそれぞれ存在します。
使用人分の賞与は、他の使用人と異なる時期に支給すると損金に算入されません。
出典:法人税法施行令第70条(過大な役員給与の額)|e-Gov法令検索 出典:法人税法第34条(役員給与の損金不算入)|e-Gov法令検索
業績が悪化したときの役員報酬の見直し方

前章で触れたとおり、業績が悪いというだけでは業績悪化改定事由には該当しません。
実際に減額改定が認められるケースでは、どのような対応をしておけばよいのでしょうか。
減額改定が認められる典型例を、どう説明できる状態にしておくか
国税庁は、業績悪化改定事由に該当する減額改定の例として3つの類型を示しています。
株主に対する経営責任として減額する場合、取引銀行との返済リスケジュール協議で減額せざるを得ない場合、経営改善計画に減額が盛り込まれた場合です。
実務では、株主総会議事録に減額理由を記載する、銀行との協議経緯を記録に残す、経営改善計画に減額を明記するなど、後から説明できる状態にしておくことが欠かせません。
同族会社が用意しておくべき説明資料の考え方
同族会社のように株主が少数で、役員の一部が株主であったり、株主と役員が親族関係にあったりする会社では、慎重な対応がいっそう欠かせない場面です。
国税庁は、減額せざるを得ない客観的かつ特別の事情を具体的に説明できるようにしておく必要があると示しています。
取締役会や株主総会での議論の経緯、業績悪化を示す試算表など、第三者にも説明できる資料を日頃から整理しておきましょう。
資金繰りの見直しと合わせて検討する
役員報酬の減額は、資金繰り改善の一つの手段にすぎません。
役員報酬だけを見直すのではなく、資金繰り全体を見直したうえで、必要な範囲にとどめて検討しましょう。
資金繰り表を作成して収支の見通しを可視化したり、役員借入金の活用状況を整理したりすることも、あわせて検討したい対応です。
作り方は「資金繰り表とは?作り方・読み方・注意点を解説」、役員借入金の活用は「役員借入金とは?わかりやすく解説|メリット・デメリット・解消方法と税務リスク」で解説しています。
出典:役員給与に関するQ&A(国税庁・平成20年12月/平成24年4月改訂)
Encoachのサービス紹介

役員報酬の決め方は、会社法・法人税法・社会保険関連の複数の制度が絡み合い、自社の状況によって最適な金額や手続きが変わります。
Encoachでは、財務・会計・税務の専門知見をもとに、役員報酬の決め方や金額の判断について個別にサポートしています。
財務・会計・税務でお困りの際は、LINEからお気軽にご相談ください。
役員報酬の決め方についてよくある質問
会社設立時(設立1年目)の役員報酬はどう決めればいいですか?
設立時でも、定款に定めがなければ株主総会の決議で役員報酬を決定します。
設立初年度は利益の見込みが立てにくく、無理のない金額から始めて事業年度開始から3か月以内の期間で調整するのが基本的な流れです。
役員賞与を事前確定届出給与として損金算入したい場合は、設立の日以後2か月を経過する日までに税務署へ届出します。
1人社長・一人会社の場合の役員報酬の決め方は?
社長が1人だけの会社であっても、役員報酬を決める手続きは他の会社と変わらず、株主総会の決議を行います。
議決権をすべて1人で保有していても、決議の事実を議事録として残しておくことが前提です。
また、事業主のみの法人の事業所も厚生年金保険の強制適用事業所となるため、社会保険への加入義務がある点にも注意しましょう。
役員報酬はいつから、いつまでに変更できますか?(期中の増額・減額は可能ですか)
原則の改定時期は、事業年度開始の日から3か月を経過する日までです。
それ以外の時期でも、役員の職務内容が大きく変わった場合の臨時改定事由や、経営状況が著しく悪化した場合の業績悪化改定事由に該当すれば、期中の改定が認められます。
ただし、単に業績目標に届かなかったことや資金繰りの都合だけでは、業績悪化改定事由には該当しません。
役員報酬と従業員給与は何が違いますか?両方受け取れますか?
役員報酬は株主総会の決議など会社法の手続きで決まるものであり、決められた種類に該当しなければ損金算入できない点が特徴です。
部長や課長など使用人としての職制上の地位を持ち、常時使用人の職務にも従事している「使用人兼務役員」であれば、役員としての報酬と使用人としての給与を、それぞれ区別して受け取れます。
合同会社の役員報酬の決め方は株式会社と違いますか?
合同会社には株式会社のような報酬決定の専用規定がなく、原則として社員の過半数の決定で報酬を決めます。
「社員全員の同意が必要」といわれるのは、報酬額を定款に定めている場合にその額を変更するときに限られる話です。
定款に定めがなければ、社員の過半数による決定が原則的な方法です。
まとめ:役員報酬は手続きと金額の両面から検討し、納得のいく決定をしよう
役員報酬は、株主総会などでの決定手続きと、税務・社会保険料を踏まえた金額の判断を両方満たして初めて適切に決められます。
損金算入できる給与の種類には定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与の3類型があり、変更できるタイミングには原則(3か月以内)と臨時改定・業績悪化改定という例外があります。
金額は税金や社会保険料だけでなく、銀行融資への影響まで含めて総合的に判断しましょう。
まずは自社の利益見込みや資金繰りの状況を整理し、必要に応じて専門家に相談しながら進めましょう。
まずはお気軽にご相談ください。