役員退職金の金額をどう計算すればよいか分からず、高すぎて否認されないか不安な経営者は少なくありません。
法人が支給する退職金は功績倍率法などの方法で算定するのが基本で、適正な範囲を超えた部分は損金不算入。
本記事では、代表的な計算方法や適正額の判断基準、損金算入できる時期を解説します。
自社の退職金額を検討する土台として役立ててください。
役員退職金の適正額はどう決まる?功績倍率法の位置づけ
役員退職金は、毎月支給する役員報酬や【2026年最新】役員賞与とは?損金算入・社会保険料削減から経営戦略への活かし方まで完全解説と同じく、支給額によっては損金にできないことがあります。
適正額の算定で広く使われる功績倍率法ですが、その根拠は法令ではなく課税実務と裁判例です。
過大な役員退職金は損金不算入になる(法人税法34条2項・施行令70条2号)
法人税法34条2項は、役員に支給する給与のうち「不相当に高額な部分の金額」を損金不算入とすると定めています。
退職給与についても例外ではなく、法人税法施行令70条2号により、業務に従事した期間・退職の事情・同種同規模の法人の支給状況に照らして相当と認められる金額を超える部分は、損金の額に算入できません。
この3つの要素が、適正額を判断する土台です。
功績倍率法は法令ではなく課税実務・裁判例で確立した算定方法
功績倍率法という算定方法自体は、法人税法にも施行令にも明文の規定がありません。
税務大学校論叢によれば、功績倍率法は課税実務が採用し、裁判所もその手法の適法性を認めてきた算定方法です。
法人税基本通達9-2-27の3には「功績倍率法」という語が登場しますが、これは業績連動給与に該当しないことを定めた通達であり、適正額の算定方法を義務づけるものではありません。

出典:e-Gov法令検索 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第34条(役員給与の損金不算入)/e-Gov法令検索 法人税法施行令(昭和四十年政令第九十七号)第70条(過大な役員給与の額)/税務大学校論叢 第111号「過大役員給与の損金不算入額算定に関する一考察―役員退職給与を中心に―」(国税庁 税務大学校)/法人税基本通達 第9章第2節 第7款 退職給与(国税庁)9-2-27の3(業績連動給与に該当しない退職給与)
役員退職金の計算方法|功績倍率法など3つの算定方式
役員退職金の適正額を算定する方法には、平均功績倍率法・最高功績倍率法・1年当たり平均額法の3つがあります。
東京地裁の判決が示した定義に基づくと、算式はそれぞれ次のとおりです。
原則として使われるのは平均功績倍率法で、最高功績倍率法と1年当たり平均額法は特段の事情がある場合などに限って採用されます。
| 算定方法 | 算式 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 平均功績倍率法 | 同業類似法人の平均功績倍率 × 退職役員の最終月額報酬 × 勤続年数 | 同業類似法人の抽出が合理的に行われる限り、法令の趣旨に最も合致する合理的な方法 |
| 最高功績倍率法 | 同業類似法人の功績倍率の最高値 × 退職役員の最終月額報酬 × 勤続年数 | 平均功績倍率法によるのが不相当である特段の事情がある場合に限って適用 |
| 1年当たり平均額法 | (同業類似法人の役員退職給与の額 ÷ その退職役員の勤続年数)の平均額 × 退職役員の勤続年数 | 最終報酬月額が貢献を反映していないなどの場合により合理的とされた例がある |
※ 3方法とも法令に規定された算式ではなく、課税実務と裁判例で用いられてきた方法です。
平均功績倍率法の計算式と、実際に是認された計算例
平均功績倍率法は、退職役員の最終月額報酬に勤続年数と平均功績倍率を掛けて算定する方法です。
東京地裁は、最終月額報酬32万円・勤続13年の役員について、同業類似法人3社の平均功績倍率1.18倍を用いて適正額を490万8,800円と認定しました。
最終月額報酬は、退職の直前に大幅に引き下げられたなどの特段の事情がある場合を除き、在職期間中の功績の程度を最もよく反映するとされています。
最高功績倍率法・1年当たり平均額法が使われるケース
最高功績倍率法は、平均功績倍率法によるのが不相当な特段の事情がある場合に限って採用すべきとされています。
東京高裁が適用場面として挙げたのは、同業類似法人の抽出基準が不十分な場合や、抽出件数が少なく最高功績倍率の法人と極めて類似する場合などです。
一方、最終報酬月額が在職期間中の貢献を反映しておらず低額なときは、最終報酬月額を使わない1年当たり平均額法のほうが合理的だと判断した裁決もあります。

出典:税務訴訟資料 第263号-51(順号12175)東京地方裁判所 平成25年3月22日判決(法人税更正処分取消等請求事件)/国税庁/税務訴訟資料 第263号-137(順号12261)東京高等裁判所 平成25年7月18日判決(法人税更正処分取消等請求控訴事件)/国税庁/国税不服審判所 公表裁決事例要旨 法人税法関係「役員退職給与」(裁決事例集 No.32-231頁/昭和61年9月1日裁決)
「功績倍率は◯倍が目安」に注意|是認された倍率は1.18倍から3倍まで事案ごとに大きく異なる
「功績倍率は社長3.0倍が目安」という情報を見かけますが、実際に是認された功績倍率は事案によってさまざまです。
過去の裁決や判決を確認すると、3倍で計算した申告が認められた事例もあれば、平均1.9倍や1.18倍で適正額とされた事例もあります。
いずれも個別の事案についての判断です。
一律の目安に当てはめると、自社の実態から外れた金額になりやすくなります。
専門的な判断が必要な場面では、失敗しない税理士の選び方|面談質問・費用相場・属性別ポイントも参考にしながら検討することをおすすめします。
国税不服審判所が「3.3〜3.6倍が定着」という主張を退けた事例(平均1.9倍)
ある裁決で納税者は「功績倍率が3.3〜3.6倍というのは定着している」と主張しました。
しかし国税不服審判所は、比較法人3社の平均功績倍率である1.9倍を適正な水準として採用しています。
具体的な事情を考慮せず、他の事例と異なるというだけでは、低い倍率が不相当とはいえないと判断されました。
東京地裁・東京高裁で平均功績倍率1.18倍が是認された事例
不動産賃貸業を営む法人の事案では、同業類似法人3社の平均功績倍率は1.18倍という低い水準でした。
東京地裁はこの倍率をもとに、最終月額報酬32万円・勤続13年の役員について適正額を490万8,800円と認め、東京高裁も控訴を棄却して原判決の判断を維持しました。
3倍と1.18倍の両方が是認されている以上、業種や規模、退職事情によって適正な倍率は変わると考えるべきです。

出典:国税不服審判所 公表裁決事例要旨 法人税法関係「役員退職給与」(裁決事例集 No.28-225頁/昭和59年12月25日裁決)/国税不服審判所 公表裁決事例要旨 法人税法関係「役員退職給与」(裁決事例集 No.74-146頁/平成19年11月15日裁決)/税務訴訟資料 第263号-51(順号12175)東京地方裁判所 平成25年3月22日判決(法人税更正処分取消等請求事件)/国税庁/税務訴訟資料 第263号-137(順号12261)東京高等裁判所 平成25年7月18日判決(法人税更正処分取消等請求控訴事件)/国税庁
役員退職金が「不相当に高額」と判定される基準
役員退職金が「不相当に高額」と判定されると、損金に算入できるのは相当と認められる金額までです。
相当性を判断する視点は、役員貸付金の利息を徹底解説|適正利率・税務リスク・解消方法までで扱った適正利率の考え方と共通しています。
判断の土台になるのは、法令が定める次の3つの判定要素です。
| # | 判定要素(条文の文言) |
|---|---|
| ① | 当該役員のその内国法人の業務に従事した期間 |
| ② | その退職の事情 |
| ③ | その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等 |
国税庁のタックスアンサーでも、業務に従事した期間や退職の事情、同業種同規模の法人の支給状況からみて相当と認められる金額は、原則としてその額が確定した事業年度に損金算入できると案内されています。
功績倍率法はこの3要素を実務上まとめて数値化する方法にすぎず、条文が要求しているのは、あくまで①〜③の個別事情に照らした相当性です。
判定の3要素|業務従事期間・退職の事情・同業類似法人の支給状況
法人税法施行令70条2号は、退職給与が相当かどうかを①業務に従事した期間、②退職の事情、③同種同規模の法人の支給状況の3つに照らして判断すると定めています。
勤続年数は①に相当し、功績倍率には②を含む最終月額報酬・勤続年数以外の事情が総合的に織り込まれ、同業類似法人のデータが③に対応します。
同業類似法人のデータは納税者側からは入手できない
同業類似法人の役員退職給与の支給状況は、各国税局長を通じた照会によって税務署が集めるデータです。
この照会で集められた個別法人の支給状況を、納税者が同じ形で入手することはできません。
裁判例では、抽出対象地域や売上規模の倍半基準、業種分類、退職理由の一致など、実際に合理的と判断された抽出基準が示されているため、自社の状況を整理する際の参考になります。
出典:e-Gov法令検索 法人税法施行令(昭和四十年政令第九十七号)第70条(過大な役員給与の額)/国税庁タックスアンサー No.5203 使用人が役員へ昇格したとき又は役員が分掌変更したときの退職金/税務大学校論叢 第111号「過大役員給与の損金不算入額算定に関する一考察―役員退職給与を中心に―」(国税庁 税務大学校)/税務訴訟資料 第263号-51(順号12175)東京地方裁判所 平成25年3月22日判決(法人税更正処分取消等請求事件)/国税庁
役員退職金の損金算入はいつ認められる?時期と条件
役員退職金は、適正額であっても損金算入できる時期を誤ると税務調査で否認されるおそれがあります。
決算対策として早めに費用計上したいと考える経営者は多いものの、法人税法上の損金算入時期は会社が自由に選べるわけではありません。
未払金の計上時期については、役員借入金とは?わかりやすく解説|メリット・デメリット・解消方法と税務リスクで触れた会計処理と同様の注意が要ります。
株主総会の決議日と、未払金を計上した事業年度が一致しているかが確認ポイントです。
原則は株主総会決議等で額が確定した日の事業年度
法人税基本通達9-2-28は、退職した役員に対する退職給与の損金算入時期を、株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度と定めています。
ただし、法人が退職給与の額を支払った日の属する事業年度において、その支払った額を損金経理した場合は、その処理も認められます。
決議で額が確定した事業年度に計上するか、支払った事業年度に損金経理するか、いずれかの取り扱いです。
取締役会での内定額を未払金計上しても損金にならない
退職金の額が具体的に確定する事業年度より前の事業年度に、取締役会で内定した金額を未払金として損金経理しても、その時点では損金算入できません。
退職年金についても同様で、年金総額をまとめて未払金に計上する処理は認められていません。
さらに、事実を隠蔽・仮装して経理した役員給与は、退職金であっても全額が損金不算入です。
出典:法人税基本通達 第9章第2節 第7款 退職給与(国税庁)9-2-28(役員に対する退職給与の損金算入の時期)・9-2-29(退職年金の損金算入の時期)/国税庁タックスアンサー No.5208 役員の退職金の損金算入時期/e-Gov法令検索 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第34条(役員給与の損金不算入)第3項
分掌変更・役員改選・使用人からの昇格時の退職金は損金算入できる?
社長が会長に退く、取締役が監査役になるといった分掌変更でも、実質的に退職したと同様の事情があれば退職給与として扱えます。
一方、使用人から役員に昇格した場合の退職金には別のルールが適用されます。
家族経営で地位の判定が問題になりやすい点は、親族役員とは?メリット・デメリットと2026年税制改正の最新ポイントでも解説しているとおりです。
退職給与として認められる3つの例示(常勤→非常勤/取締役→監査役/給与50%以上減少)
法人税基本通達9-2-32は、分掌変更等により実質的に退職したと同様の事情にあると認められる場合、支給した給与を退職給与として取り扱えると定めています。
具体的な例示は次のとおりです。
| # | 通達が挙げる事実(かっこ書きの除外を必ずセットで記載) |
|---|---|
| (1) | 常勤役員が非常勤役員(常時勤務していないものであっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)になったこと |
| (2) | 取締役が監査役(監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等で令第71条第1項第5号に掲げる要件の全てを満たしている者を除く。)になったこと |
| (3) | 分掌変更等の後におけるその役員(その分掌変更等の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと |
いずれも「実質的に退職したと同様の事情にある」といえる事実の例です。
かっこ書きで除外された「経営上主要な地位を占める者」に当たる場合は、退職給与としては扱えません。

分掌変更後も経営の主要な地位にあれば退職給与と認められない
代表取締役が代表権のない取締役会長になった事案で、審判所は、分掌変更後も経営ないし業務において主要な地位を占め、重要な決定事項に関与していたとして、退職給与に該当しないと判断しました。
一方、退職後に報酬等を受領せず、経営に従事していたとは認められなかった事案では、支給した金員は退職給与として損金算入が認められています。
同じ「分掌変更」でも、結論を分けるのは退職後の実態です。
使用人から役員に昇格した場合の退職金(打切支給)
使用人が役員に昇格した際、退職給与規程に基づいて使用人であった期間分の退職給与を計算し、その時点で支給(打切支給)すれば、支給した日の事業年度の損金に算入できます。
ただし、打切支給として未払金に計上しただけでは認められません。
また、使用人兼務役員に退職給与を役員分と使用人分に分けて支給した場合も、過大かどうかは合計額で判定される点に留意してください。
出典:法人税基本通達 第9章第2節 第7款 退職給与(国税庁)9-2-32(役員の分掌変更等の場合の退職給与)・9-2-36(使用人が役員となった場合の退職給与)・9-2-30(使用人兼務役員に支給した退職給与)/国税不服審判所 公表裁決事例要旨 法人税法関係「役員退職給与」(平成29年7月14日裁決)/国税不服審判所 公表裁決事例要旨 法人税法関係「役員退職給与」(令和2年12月15日裁決)
役員退職金の支給までの流れ|株主総会決議と会社法上の手続き
役員退職金は、金額が適正でも、会社法に沿った決定手続きを経なければ支給できません。
退職給与規程を整備している法人でも、実際の支給には別途、株主総会や監査役の関与といった手続きが必要になります。
事業承継のタイミングで退職金の支給とあわせて検討されることが多い黄金株(拒否権付種類株式)とは?事業承継で後継者の暴走を防ぐ5つの活用法と導入リスクも、あわせて確認しておくと役立ちます。
取締役の退職金は株主総会決議(または定款)で決定する
会社法361条1項により、取締役の報酬等は、定款に定めがなければ株主総会の決議で定めるのが原則です。
退職慰労金も職務執行の対価である以上この「報酬」に含まれ、最高裁は無条件に取締役会へ一任することを認めない旨を示しました。
ただし、一定の支給基準に従う趣旨で取締役会に一任する決議までは無効とはならないと判示されています(現行の会社法361条の前身にあたる旧商法269条についての判断)。
監査役の退職金は定款または株主総会で定め、配分は協議で決める
会社法387条は、監査役の報酬等について、定款に定めがなければ株主総会の決議で定めるとしています。
監査役が2人以上いる場合、各監査役の報酬等について定款の定めも株主総会の決議もないときは、定款または株主総会で定めた報酬等の範囲内で、監査役どうしの協議によって配分を決めます。
監査役の退職金については、取締役会だけで一方的に金額を決められない仕組みです。
出典:e-Gov法令検索 会社法(平成十七年法律第八十六号)第361条(取締役の報酬等)・第387条(監査役の報酬等)/最高裁判所第二小法廷 昭和39年12月11日判決(昭和38(オ)第120号 株主総会決議無効確認請求事件)判決全文PDF/裁判所ウェブサイト
役員が退職金を受け取るときの税金(退職所得の計算)
ここまでは法人側の損金算入を中心に解説しましたが、役員自身が退職金を受け取るときは、所得税の対象となる「退職所得」として課税されます。
退職所得は、原則として給与など他の所得と分離して税額を計算する分離課税です。
退職所得控除や2分の1課税など、独自の仕組みが設けられています。
ここでは、法人側の計算と関わりが深い、控除額の計算方法と役員特有の課税ルールを整理します。
退職所得控除額の計算方法(勤続年数に応じた控除)
退職所得控除額は、勤続年数が20年以下なら「40万円×勤続年数」、20年を超える部分は1年あたり70万円で計算します(下表)。
勤続期間に1年未満の端数があるときは、1年に切り上げて計算します。
たとえば勤続10年2か月なら11年として計算し、控除額は440万円です。
| 勤続年数(=A) | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × A(80万円に満たない場合には、80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 × (A − 20年) |
役員は「特定役員退職手当等」に該当すると1/2課税が適用されない(勤続5年以下)
退職所得は原則、収入金額から退職所得控除額を引いた残額の2分の1に課税されますが、役員には例外があります。
役員等としての勤続年数が5年以下だと「特定役員退職手当等」に該当し、2分の1課税は適用されません。
使用人向けの「短期退職手当等」(300万円を超える部分だけ1/2課税が外れる制度)を役員に当てはめるのは誤りです。
| 区分 | 定義 | 課税退職所得金額 |
|---|---|---|
| 一般退職手当等 | 短期退職手当等・特定役員退職手当等のいずれにも該当しないもの | (収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2 |
| 特定役員退職手当等(役員) | 役員等勤続年数が5年以下の者が受ける、その役員等勤続年数に対応する退職手当等 | 収入金額 − 退職所得控除額(1/2なし) |
| 短期退職手当等(役員以外) | 役員等以外として勤務した期間による勤続年数が5年以下で、特定役員退職手当等に該当しないもの(令和4年1月1日以後支給分) | 「収入金額−退職所得控除額」≦300万円:×1/2/>300万円:150万円+{収入金額−(300万円+退職所得控除額)} |

なお、支払時には源泉徴収が行われ、申告書の提出有無で精算方法が変わります。
出典:e-Gov法令検索 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第30条(退職所得)/国税庁タックスアンサー No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)/国税庁タックスアンサー No.2737 役員等の勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(特定役員退職手当等)/国税庁タックスアンサー No.2740 勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(短期退職手当等)(令和4年1月1日以後)
> 本記事は2026年8月時点の税制・裁判例に基づく内容です。
税制は改正されることがあるため、最新情報は国税庁ホームページ等でご確認ください。
役員退職金の適正額判断はEncoachにご相談ください

役員退職金の適正額は、功績倍率法をはじめとする計算方法だけでなく、業務従事期間や退職の事情、同業類似法人の支給状況など、事案ごとの個別事情を踏まえた総合的な判断が求められる領域です。
一律の目安が存在しない以上、退職給与規程の有無や最終月額報酬・勤続年数、株主総会の決議時期といった自社の材料をそろえたうえでの検討が出発点です。
特に、株主総会決議のタイミングや損金算入時期の見極めは、決算のスケジュールにも関わってきます。
Encoachでは、法人税・会社法の観点から役員退職金の適正額や損金算入時期についてもご相談いただけます。
財務・会計・税務でお困りの際は、LINEからお気軽にご相談ください。
役員退職金の計算についてよくある質問
Q1. 役員退職金の功績倍率はどのように考えればよいですか?
功績倍率に一律の目安はなく、事案ごとに大きく異なります。
過去の裁決・判決では、3倍で計算した申告が認められた事例のほか、平均1.9倍、1.18倍で適正額とされた事例もあります。
「社長は3.0倍が目安」といった情報を鵜呑みにせず、自社の業務従事期間や退職の事情、同業類似法人の状況を踏まえて個別に検討してください。
Q2. 役員退職金の計算式・計算例を教えてください
代表的な計算式は、平均功績倍率法(同業類似法人の平均功績倍率×最終月額報酬×勤続年数)です。
実際に、最終月額報酬32万円・勤続13年の役員について、平均功績倍率1.18倍を用いて計算した490万8,800円が適正額として認められた判決もあります。
倍率は事案ごとに異なるため、自社にそのまま当てはめられる数値ではない点にご注意ください。
Q3. 役員退職金の適正額はどのように判断されますか?
法人税法施行令70条2号により、①業務に従事した期間、②退職の事情、③同業類似法人の退職給与の支給状況の3つに照らして相当性が判断されます。
この3要素を数値化する実務上の方法として、功績倍率法などが使われています。
同業類似法人のデータは税務署が独自に収集するもので、納税者が同じ情報を入手できないのが実情です。
Q4. 役員退職金はいつ損金算入できますか?
原則として、株主総会の決議等により金額が具体的に確定した日の属する事業年度で損金算入します。
ただし、退職給与の額を実際に支払った日の属する事業年度に、その支払額を損金経理した場合はそれも認められます。
取締役会で内定しただけの金額を未払金に計上しても、損金算入が認められるのは決議で額が確定した後です。
Q5. 役員退職金の勤続年数はどのように数えますか?
勤続年数は、退職の日まで引き続き勤務した期間の年数で計算します。
1年に満たない端数が生じた場合は、1年に切り上げます。
たとえば勤続10年2か月であれば11年として計算し、退職所得控除額は40万円×11年で440万円です。
まとめ:役員退職金は目安の倍率でなく判定基準に沿って適正額を算定しよう
役員退職金の適正額は、「◯倍が目安」という一律の数値では決まりません。
業務従事期間・退職の事情・同業類似法人の支給状況という3つの判定要素と、功績倍率法などの計算方法を踏まえた個別の検討が前提です。
功績倍率は事案によって1.18倍から3倍まで幅があり、損金算入は原則として株主総会決議等で額が確定した事業年度に行います。
分掌変更や使用人からの昇格では、実質的に退職したといえるかどうかも争点になります。
まずは自社の退職給与規程と株主総会の決議時期を確認し、勤続年数と最終月額報酬の整理から着手してください。
まずはお気軽にご相談ください。