経常利益と営業利益の5つの違いとは?計算方法から企業の健全性を見抜く方法まで解説
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「営業利益と経常利益、似ているけど具体的な違いがわからない」
「決算書のどちらの利益を見れば、会社の本当の実力がわかるの?」

そんな疑問をお持ちではありませんか。この記事では、営業利益と経常利益の5つの決定的な違いから、それぞれの計算方法、銀行や投資家が経常利益を重視する理由まで、専門用語を避け、具体例を交えながら分かりやすく解説します。

この記事を読めば、二つの利益指標を正しく使い分け、企業の本当の姿を見抜く力が身につきます。

まずは結論!営業利益と経常利益の主な違いが一目でわかる比較表

企業の経営状況を分析する上で重要な「営業利益」と「経常利益」。これら二つの利益はよく混同されがちですが、その性質は大きく異なります。

企業の評価において、営業利益は「本業で稼ぐ力」、経常利益は「会社全体の総合的な収益力」を示します。

本業が順調でも、借入金の返済が多ければ会社全体の利益は減りますし、逆に本業が不調でも、資産運用がうまくいっていれば利益が出ることもあります。以下の比較表で、両者の違いを明確に理解しましょう。

比較項目営業利益経常利益
示すもの本業で稼ぐ力会社全体の総合的な収益力
計算式売上総利益 – 販売費及び一般管理費営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用
分析の範囲事業単体(本業)の収益性会社全体の経常的な活動

企業の利益構造を丸ごと理解!損益計算書における5つの利益の関係性

企業の成績表である「損益計算書」には、5つの利益が記載されています。会社の本当の姿を理解するためには、これら5つの利益がそれぞれ何を示し、どのような関係にあるのかを順を追って把握することが不可欠です。

損益計算書では、以下の5つの利益が順番に計算されます。

  1. 売上総利益(粗利):商売の基本となる利益
  2. 営業利益:本業の稼ぐ力を示す利益
  3. 経常利益:会社全体の総合的な収益力
  4. 税引前当期純利益:税金を払う前の最終利益
  5. 当期純利益(純利益):会社に残る最終的なお金

ここでは、利益が生まれる流れに沿って、各利益の意味を解説していきます。

1. 売上総利益(粗利):商売の基本となる利益

売上総利益は、企業が提供する商品やサービスの基本的な収益力を示す利益のことです。「粗利(あらり)」とも呼ばれます。

これは、企業の売上高から、商品の仕入れや製造にかかった直接的な費用である「売上原価」を差し引いて計算されます。
例えば、80円で仕入れた商品を100円で販売した場合、売上総利益は20円です。この売上総利益が大きいほど、提供する商品やサービスそのものが持つ付加価値が高いことを意味します。

この段階では、人件費や広告費などの販売経費はまだ考慮されていません。

2. 営業利益:本業の稼ぐ力を示す利益

営業利益とは、企業が主軸とする「本業」でどれだけ稼いだかを示す利益です。

計算式は、先ほどの売上総利益から、商品を販売するためにかかった費用や会社を管理するための費用である「販売費及び一般管理費(販管費)」を差し引いて求めます。販管費には、従業員の給与、広告宣伝費、事務所の家賃などが含まれます。

営業利益は、その企業の本業における収益性や事業の効率性をダイレクトに表す指標です。この利益が黒字であれば、本業が順調であると判断できます。

3. 経常利益:会社全体の総合的な収益力

経常利益は、本業の儲けである営業利益に、本業以外の活動で経常的に発生する損益(営業外損益)を加味した利益です。

具体的には、預金の受取利息や保有株式の配当金といった「営業外収益」を加え、借入金の支払利息などの「営業外費用」を差し引いて算出します。

財務活動も含めた、企業の継続的な活動からどれだけの利益を生み出せているかを示すため、銀行や投資家が企業の安定性を判断する際に特に重視する指標です。

4. 税引前当期純利益:税金を払う前の最終利益

税引前当期純利益は、その期に発生したすべての収益からすべての費用を差し引いた、文字通り税金を支払う前の利益です。

経常利益に、固定資産の売却益や災害による損失など、その期にだけ臨時的・偶発的に発生した「特別利益」と「特別損失」を加減して計算されます。

この利益は、企業のすべての活動(経常的な活動+臨時的な活動)から得られた、法人税などを納める直前の最終的な利益額を示します。特別損益の額が大きくなければ、経常利益と近い数値になるのが一般的です。

5. 当期純利益(純利益):会社に残る最終的なお金

当期純利益とは、税引前当期純利益から法人税、住民税、事業税などの税金を差し引いた、一会計期間における最終的な利益です。これが、最終的に会社の手元に残るお金となり、「純利益」とも呼ばれます。

当期純利益は、その期の会社の経営活動の最終的な成果であり、株主への配当金の原資にもなります。この数値がマイナスの場合を「当期純損失」と呼び、いわゆる赤字決算を意味します。

企業の純粋な収益性を見るには、臨時的な損益が含まれるこの利益だけでなく、経常利益などと合わせて総合的に判断することが重要です。

💬 ひとことポイント
損益計算書の5つの利益は、売上から費用を段階的に引いていくことで計算されます。この流れを理解することが、企業の収益構造を把握する第一歩です。

営業利益とは?「本業での稼ぐ力」を3つのポイントで解説

企業の収益性を測る上で欠かせない指標が「営業利益」です。営業利益は、その企業が主軸とする事業、すなわち「本業」でどれだけ効率的に利益を生み出せているかを示します。

ここでは、営業利益について以下の3つのポイントで詳しく解説します。

  1. 営業利益が示すもの:本業の成績表
  2. 営業利益の計算方法:売上総利益 – 販管費
  3. 営業利益からわかること:事業の収益性と効率性

それぞれ見ていきましょう。

1. 営業利益が示すもの:本業の成績表

営業利益は、企業が定款で定めている主たる事業活動から得られた利益であり、いわば「本業の成績表」です。

例えば、飲食店であれば飲食物の販売、小売業であれば商品の販売によって得た利益がこれにあたります。この利益には、財務活動による収益(受取利息など)や、本業とは関係ない臨時的な損益は含まれません。

そのため、純粋にその企業の中核事業が健全かどうか、競争力があるかどうかを判断するための最も基本的な指標となります。営業利益を見ることで、企業の本業が順調に稼げているかどうかが一目でわかります。

2. 営業利益の計算方法:売上総利益 – 販管費

営業利益は、損益計算書において、売上総利益から「販売費及び一般管理費(販管費)」を差し引いて算出されます。計算式は以下の通りです。

営業利益 = 売上総利益 – 販売費及び一般管理費

売上総利益(粗利)は、売上高から商品の仕入れや製造にかかった売上原価を引いたものです。そこからさらに、商品を売るための広告宣伝費や人件費、事務所の家賃といった、事業運営に不可欠な経費(販管費)を差し引いたものが、本業の儲けである営業利益となります。

3. 営業利益からわかること:事業の収益性と効率性

営業利益を分析することで、その企業の本業における収益性と事業運営の効率性が見えてきます。

営業利益が高いということは、主力事業の競争力が強く、かつ人件費や広告費などの経費を効率的にコントロールできている証拠です。

逆に、売上は大きいのに営業利益が低い場合は、仕入れコストが高い、あるいは経費を使いすぎているといった課題が隠れている可能性があります。このように、営業利益は事業そのものの実力を示す重要な指標です。

💬 ひとことポイント
営業利益の分析では、売上高営業利益率(営業利益 ÷ 売上高)も重要です。この比率を時系列で比較したり、同業他社と比較したりすることで、事業の収益性の変化や業界内でのポジションを客観的に把握できます。

経常利益とは?「会社の総合的な実力」を3つのポイントで解説

営業利益が「本業の稼ぐ力」を示すのに対し、「会社の総合的な実力」を評価する上で重要なのが経常利益です。経常利益は、本業の利益に加えて、財務活動など本業以外の経常的な損益も反映した指標です。

ここでは、経常利益の役割を以下の3つの視点から掘り下げていきます。

  1. 経常利益が示すもの:会社全体の平常時の体力
  2. 経常利益の計算方法:営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用
  3. 経常利益からわかること:財務活動を含めた安定性

それぞれ解説します。

1. 経常利益が示すもの:会社全体の平常時の体力

経常利益とは、企業が通常の事業活動全体を通じて、経常的(継続的)に得られる利益のことです。

これは、本業での儲けである営業利益に、預金の受取利息や借入金の支払利息といった、財務活動などから生じる損益(営業外損益)を加味したものです。

固定資産の売却益や災害損失といった一時的な損益は含まないため、その企業が「平常時」にどれだけの利益を生み出す力があるか、つまり会社の「基礎体力」や「本当の収益力」を判断する上で最も適した指標とされています。

2. 経常利益の計算方法:営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用

経常利益は、本業の利益である営業利益に、本業以外の活動から経常的に発生する「営業外収益」を加え、同様に発生する「営業外費用」を差し引いて計算します。

経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用

営業外収益の主な例としては、預貯金の受取利息、保有株式からの受取配当金、為替差益などがあります。一方、営業外費用の主な例は、金融機関からの借入金に対する支払利息や為替差損などです。

3. 経常利益からわかること:財務活動を含めた安定性

経常利益を見ることで、本業の収益力に加えて、資産運用や資金調達といった財務活動を含めた企業全体の収益性や安定性を評価できます。

例えば、本業が好調(営業利益が黒字)でも、多額の借入金によって支払利息が膨らみ、経常利益が赤字になるケースもあります。

逆に、本業が不振(営業利益が赤字)でも、豊富な資金を元にした資産運用がうまくいき、経常利益が黒字になることもあり得ます。このように、経常利益は企業の財務的な安定性を見る上で重要な指標です。

💬 ひとことポイント
銀行が融資審査で最も重視するのが経常利益です。「この会社は、本業と財務活動を合わせて、継続的に返済原資となる利益を生み出せるか?」を見極めるため、経常利益の金額と安定性が厳しくチェックされます。

【ケースで学ぶ】営業利益と経常利益の5つの決定的な違い

営業利益と経常利益は、どちらも企業の収益力を示す重要な指標ですが、その意味合いは大きく異なります。この違いを理解することは、企業の本当の姿を見抜くための第一歩です。

ここでは、両者の決定的な違いを以下の5つのポイントに分けて解説していきます。

  1. 分析できる範囲の違い:「事業単体」か「会社全体」か
  2. 計算に含まれる費用の違い:営業外損益の有無
  3. 評価される場面の違い:事業評価と企業評価
  4. ケース①「営業利益 > 経常利益」:本業の利益を財務が圧迫
  5. ケース②「営業利益 < 経常利益」:財務活動が本業をカバー

それぞれ具体的に見ていきましょう。

1. 分析できる範囲の違い:「事業単体」か「会社全体」か

営業利益と経常利益の最も基本的な違いは、分析の対象となる範囲です。営業利益が「本業」という事業単体の収益力に焦点を当てるのに対し、経常利益は財務活動なども含めた「会社全体」の経常的な活動を評価します。

営業利益は、その企業の中核となる事業活動から直接生み出された利益だけを示すため、事業そのもののパフォーマンスを純粋に測ることができます。一方、経常利益は本業の利益に、本業以外の財務活動などから生じる損益も反映します。

つまり、営業利益は「事業単体の成績」、経常利益は「会社全体の総合力」を示す指標と言えます。

2. 計算に含まれる費用の違い:営業外損益の有無

二つ目の違いは、計算プロセスにあります。両者の計算を分ける決定的な要素は、「営業外損益」が含まれているかどうかです。

営業利益の計算では、本業の売上から売上原価と販管費を差し引くだけで、本業以外の要素は一切考慮しません。

それに対して、経常利益は、その営業利益に、受取利息などの「営業外収益」を加え、支払利息などの「営業外費用」を差し引いて算出されます。この計算式の違いにより、営業利益は本業の収益性を、経常利益は財務活動も含めた企業全体の収益性を表すという役割分担が生まれます。

3. 評価される場面の違い:事業評価と企業評価

分析の範囲や計算方法が違うため、営業利益と経常利益は評価される場面も異なります。一般的に、営業利益は社内での「事業評価」に、経常利益は金融機関や投資家による「企業評価」に用いられる傾向があります。

例えば、社内である事業部の業績を評価する場合、財務活動の影響を除いた純粋な事業の稼ぐ力を示す営業利益が重視されます。

一方、銀行が融資を検討する際や投資家が企業の安定性を判断する際には、借入金の状況など財務体質も含めた総合的な収益力を示す経常利益が極めて重要な判断材料となります。

4. ケース①「営業利益 > 経常利益」の企業からわかること

営業利益が経常利益を上回っている場合、その企業は本業で稼いだ利益を、本業以外の活動(主に財務活動)で減らしていることを示唆しています。これは、営業利益から経常利益を計算する過程で差し引かれる「営業外費用」が、加えられる「営業外収益」よりも大きい状態です。

典型的な例が、借入金が多い企業です。本業ではしっかりと利益(営業利益)を出していても、多額の借入金に対する支払利息(営業外費用)が重くのしかかり、会社全体の利益(経常利益)を圧迫しているケースが考えられます。

この状態は、事業そのものは好調であるものの、財務体質に課題を抱えている可能性を示しています。

5. ケース②「営業利益 < 経常利益」の企業からわかること

逆に、経常利益が営業利益よりも大きい場合は、本業の利益に加えて、財務活動など本業以外の活動でも収益を上げていることを意味します。これは、支払利息などの「営業外費用」よりも、受取利息や配当金、有価証券の売却益といった「営業外収益」の方が多い状態です。

例えば、本業の利益はそれほど大きくなくても、潤沢な自己資金を元にした資産運用(いわゆる「財テク」)がうまくいっている企業でこのパターンが見られます。

本業の収益力に加えて、財務活動の巧みさも示していると評価できる一方で、あまりに営業外収益への依存度が高い場合は、本業の競争力低下を金融収益で補っている可能性も考えられるため、その内訳を注意深く見る必要があります。

💬 ひとことポイント
「営業利益と経常利益の差額」に注目することが、企業分析の鍵です。この差額は主に「営業外損益」、つまり財務活動の巧拙を表します。差額の要因を分析することで、企業の隠れたリスクや強みが見えてきます。

結局どちらが重要?銀行や投資家が経常利益を重視する3つの理由

営業利益と経常利益、企業の分析においてどちらがより重要なのでしょうか。本業の力を示す営業利益も大切ですが、金融機関や投資家といった外部のステークホルダーは、特に「経常利益」を重視する傾向にあります。

それには、企業の総合的な実力を見抜くための、主に以下の3つの理由が存在します。

  1. 企業の「本当の収益力」がわかるから
  2. 財務活動の巧拙がわかるから
  3. 企業の継続性・安定性を判断できるから

それぞれ詳しく解説します。

1. 企業の「本当の収益力」がわかるから

銀行や投資家が経常利益を重視する第一の理由は、それが企業の「本当の収益力」を最も的確に示していると考えられるからです。

営業利益が本業のみの成果を表すのに対し、経常利益は本業の利益に加えて、企業が保有する預金の利息や借入金の支払利息といった財務活動から生じる損益も反映します。

つまり、本業だけでなく、資金の運用や調達といった事業活動全体を通じた、平常時における総合的な稼ぐ力を示すのが経常利益です。一時的な要因を除いた、その企業が継続的に生み出すことのできる利益の実態を表すため、経常利益は企業の基礎的な収益力を測る上で最も信頼性の高い指標と見なされています。

2. 財務活動の巧拙がわかるから

経常利益は、企業の財務活動の巧拙を判断する上でも重要な指標となります。営業利益と経常利益の差額は、主に受取利息や支払利息といった「営業外損益」によって生じます。この差額を分析することで、その企業が資産運用や資金調達をどれだけうまく行っているかが見えてきます。

例えば、営業利益よりも経常利益の方が大きい場合、それは企業が保有する資金を有効に活用して収益を上げている(受取利息や配当金が多い)証拠です。

逆に、営業利益より経常利益が大幅に少ない場合は、借入金が多く支払利息の負担が重いなど、財務面での課題を抱えている可能性が示唆されます。このように、経常利益は本業の成績だけではわからない、企業の財務戦略の成果を明らかにしてくれます。

3. 企業の継続性・安定性を判断できるから

金融機関が融資判断を行う際、最も気にするのが「貸したお金がきちんと返ってくるか」という点です。その判断の拠り所となるのが、企業の継続性と安定性であり、それを示すのが経常利益です。

経常利益は、土地の売却益のような一時的な利益(特別利益)や、災害による損失(特別損失)を含まない、企業が通常の活動で繰り返し得られる利益です。そのため、将来の利益を予測する上での信頼性が高く、その企業が今後も安定して事業を継続し、利益を生み出し続けられるかを判断するための重要な材料となります。

銀行は、この経常利益が安定的かつ継続的に黒字であるかを確認することで、企業の返済能力と長期的な安定性を評価しているのです。

💬 ひとことポイント
株主にとっては最終的な利益である「当期純利益」が重要ですが、銀行や取引先にとっては、企業の「継続性」が何よりも重要です。そのため、一時的な損益を除いた「経常利益」が、企業の信用力を測る共通の物差しとして使われます。

企業の信用調査で役立つ!経常利益を使った経営分析の2つの手法

経常利益は、単に損益計算書上の数字として眺めるだけでなく、企業の経営実態を深く分析するための強力なツールとなります。特に取引先の信用調査などにおいて、企業の収益性や財務体質を見抜くために、主に以下の2つの分析手法が役立ちます。

  1. 収益性を測る「売上高経常利益率」の計算と目安
  2. 財務体質を暴く「営業利益との差額分析」

それぞれ見ていきましょう。

1. 収益性を測る「売上高経常利益率」の計算と目安

企業の総合的な収益性を客観的に評価する代表的な指標が「売上高経常利益率」です。これは、売上高に対して経常利益がどれくらいの割合を占めるかを示すもので、この数値が高いほど、事業全体で効率よく利益を上げられていることを意味します。

計算式は非常にシンプルです。
売上高経常利益率(%) = 経常利益 ÷ 売上高 × 100

この比率を同業他社と比較したり、企業の過去の数値からの推移を見たりすることで、その企業の収益性が業界内でどのレベルにあるのか、また改善傾向にあるのか悪化傾向にあるのかを把握できます。売上高経常利益率は、企業の総合的な収益力を測るための重要なバロメーターです。

2. 財務体質を暴く「営業利益との差額分析」

営業利益と経常利益の差額を分析することで、その企業の財務体質を簡単に見抜くことができます。この差額は、企業が行った財務活動(資金の借入や運用)の結果そのものである「営業外損益」によって生まれるためです。

例えば、「営業利益 > 経常利益」となっている場合、本業で稼いだ利益が支払利息などの営業外費用によって減少していることを意味し、借入金への依存度が高いなど、財務面で課題を抱えている可能性が疑われます。

逆に、「営業利益 < 経常利益」の場合は、資産運用などで本業以外の収益を上げていることを示し、健全な財務活動が行われていると評価できます。このように、営業利益と経常利益の差額に注目するだけで、その企業の財務的な強みや弱みが浮かび上がってくるのです。

💬 ひとことポイント
分析指標は、単年の数字だけでは意味がありません。「時系列比較(過去からの推移)」と「同業他社比較」を行うことで、初めてその数字が良いのか悪いのか、意味のある評価ができます。

財務諸表だけでは見抜けない取引先のリスクはプロの企業調査へ

ここまで見てきたように、営業利益や経常利益などの財務諸表を分析することは、企業の経営状態を把握する上で非常に重要です。しかし、決算書に記載されているのはあくまで過去の実績であり、それだけでは取引先に潜むすべてのリスクを見抜くことはできません。

巧妙な粉飾決算や、数字には表れない経営者の資質、反社会的勢力との関係といった潜在的なリスクは、公開情報だけでは判断が困難です。安全な取引を継続し、予期せぬ損害から自社を守るためには、財務分析と並行して、専門家による踏み込んだ企業調査が不可欠です。

私たちEncoach株式会社は、長年の経験と独自のノウハウを持つ調査のプロフェッショナル集団です。財務データだけでは決して見えない取引先のリスクを徹底的に洗い出し、貴社のビジネスを確固たる安全へと導きます。

経常利益と営業利益に関するよくある5つの質問

ここでは、経常利益や営業利益について、多くの方が抱きがちな疑問にQ&A形式でお答えします。これらのポイントを押さえることで、さらに理解が深まるはずです。

Q1. 経常利益と純利益の具体的な違いは何ですか?

経常利益と純利益の最も大きな違いは、「特別損益」と「税金」を計算に含めるかどうかです。経常利益は会社が通常の活動で稼いだ利益を示すのに対し、純利益はその期の最終的な儲けを示します。

経常利益の計算には、土地の売却益や災害による損失といった、その期にだけ臨時的・偶発的に発生した「特別損益」は含まれません。一方、純利益は経常利益にこの特別損益を加減し、そこからさらに法人税などの税金を差し引いて算出される、会計期間の最終的な利益です。

つまり、経常利益が「会社の平常時の実力」を示すのに対し、純利益は「最終的に会社の手元に残るお金」と理解すると分かりやすいです。

Q2. 営業利益が赤字で経常利益が黒字になるのは、どんな状況ですか?

営業利益が赤字でありながら経常利益が黒字になるのは、本業の損失を、本業以外の経常的な収益でカバーしている状況です。つまり、営業利益に加算される「営業外収益」が、営業利益の赤字額を上回っているケースです。

典型的な例としては、本業の業績は振るわないものの、会社が保有する豊富な資金を株式や不動産で運用し、そこから多額の配当金や賃料収入(営業外収益)を得ている場合などが挙げられます。

本業の収益力には課題があるものの、財務活動(いわゆる「財テク」)がうまくいっている企業で見られるパターンです。ただし、本業の不振を財務収益で補っている状態が続く場合、根本的な事業改善が必要なサインとも言えます。

Q3. 個人事業主の場合、経常利益はどのように考えればよいですか?

個人事業主の所得計算において、法人会計の「経常利益」と完全に一致する勘定科目は存在しません。しかし、その考え方は所得税の計算に応用できます。

個人事業主の所得は、主に「事業所得」や「不動産所得」などから構成されますが、これが法人の営業利益に近いものと考えられます。そして、事業用の預金から生じる受取利息などは「利子所得」として扱われますが、これが法人の営業外収益にあたります。

個人事業主の場合、本業の儲けである事業所得などに、利子所得のような本業以外の経常的な所得を合算したものが、実質的な経常利益に近い概念となります。確定申告では、これらの各種所得を合算して総所得金額を算出し、税額を計算します。

Q4. 経常利益がマイナス(経常損失)だと、すぐに倒産しますか?

経常利益がマイナス(経常損失)になったからといって、ただちに倒産するわけではありません。企業の倒産は、利益が赤字であること(損益上の問題)よりも、手元の資金が尽きて支払いができなくなること(資金繰りの問題)が直接的な原因となるためです。

たとえ経常損失を計上しても、過去の利益の蓄積である内部留保が潤沢であったり、資産を売却したり、金融機関から新たな融資を受けられたりすれば、事業を継続することは可能です。

しかし、経常損失が続く状態は、会社の通常の事業活動全体で利益を生み出せていないことを意味するため、倒産のリスクが非常に高い危険なシグナルであることは間違いありません。

Q5. 経常利益率の業界別平均や目安はありますか?

はい、あります。売上高経常利益率は業種によって大きく異なるため、自社の収益性を評価する際は、業界平均と比較することが重要です。経済産業省が発表する「企業活動基本調査」などで、業種ごとの平均値を確認できます。

以下は、2022年度のデータに基づいた主要な業種の売上高経常利益率の目安(中央値)です。

業種売上高経常利益率の目安(中央値)
全産業5.4%
情報通信業7.7%
建設業5.9%
製造業7.0% (機械)
卸売業3.0%
小売業3.6%
不動産業8.3%
サービス業6.8%

出典:「ザイマニ

これらの数値はあくまで目安であり、自社の数値を業界平均と比較することで、収益性のポジションを客観的に把握する手がかりとなります。

まとめ:営業利益と経常利益の違いを理解し、企業の本当の姿を見抜こう

この記事では、混同されがちな「営業利益」と「経常利益」の5つの違いや、それぞれの指標が持つ意味について詳しく解説しました。

重要なポイントを改めてまとめると、以下のようになります。

  • 営業利益:企業が「本業で稼ぐ力」を示す利益。
  • 経常利益:財務活動なども含めた「会社全体の総合的な収益力」を示す利益。

この2つの利益の違いを正しく理解し、両者のバランスや差額の要因を分析することで、単に決算書の数字を眺めるだけではわからない、企業の本当の姿が見えてきます。自社の経営状況を的確に把握するため、あるいは取引先や投資先の真の実力を見抜くために、ぜひこの知識を活用してください。

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