「財務会計、税務会計、管理会計。言葉は聞くけど、それぞれの違いがよくわからない…」
「会社の数字を経営に活かしたいけど、どこから手をつければいいの?」
この記事では、そんなお悩みを解決するため、3つの会計の目的や役割の違いを、専門家が図解や比較表を交えて徹底解説します。
この記事を読ばれば、各会計の本質が理解でき、税務だけでなく、会社の未来を創る「管理会計」の重要性に気づくはずです。会社の数字を武器に変え、攻めと守りの経営を実現しましょう。
まずは結論!財務・税務・管理会計の主な違いが一目でわかる比較表

会社の経営に不可欠な「会計」には、大きく分けて「財務会計」「税務会計」「管理会計」の3種類が存在します。
これらは目的や作成ルールが異なり、それぞれが重要な役割を担っています。まずは、3つの会計の主な違いを比較表で確認しましょう。
| 比較項目 | 財務会計 | 税務会計 | 管理会計 |
| ①目的 | 利害関係者(株主・銀行など)への財政状態と経営成績の報告 | 税金の計算と納税 | 経営者の意思決定支援 |
| ②報告先 | 株主、投資家、銀行などの利害関係者 | 税務署 | 経営者、役員、事業部長など社内の管理者 |
| ③ルール | 企業会計原則などの会計基準 | 法人税法などの税法 | 会社独自のルール(定めなし) |
| ④時間軸 | 過去の実績 | 過去の実績 | 過去・現在・未来 |
| ⑤強制力 | 法律で義務付けられている(会社法など) | 法律で義務付けられている(税法) | 任意 |
経営者が知るべき財務・税務・管理会計の5つの決定的違い

財務会計、税務会計、管理会計は、一見すると同じ「会計」という枠組みにありますが、その中身は大きく異なります。これらの決定的な違いは、主に以下の5つの観点から整理すると明確に理解できます。
- 目的:「誰のため」の会計か?
- 報告先:「誰に」報告するのか?
- ルール:「何に」基づいて作成するか?
- 時間軸:「いつ」の情報を扱うか?
- 強制力:作成義務はあるのか?
これらの違いを理解することが、会社の数字を正しく読み解き、的確な経営判断を下すための第一歩です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 目的:「誰のため」の会計か?外部報告・納税・内部活用の違い
3つの会計の最も根本的な違いは、「誰のために、何を目指して行うのか」という目的にあります。
財務会計は、株主や銀行といった会社の外部にいる利害関係者(ステークホルダー)に対し、会社の財政状態や経営成績を正しく報告することが目的です。
一方、税務会計は、国や地方自治体に納めるべき税金の額を公平かつ正確に計算するために行われます。そして管理会計は、経営者や管理職が自社の経営状況を把握し、今後の戦略を立てるなど、社内の意思決定に役立てることを目的としています。
このように、目的が異なるため、それぞれのアウトプットも異なってくるのです。
2. 報告先:「誰に」報告するのか?利害関係者・税務署・経営者の違い
会計情報が「誰に報告されるのか」という報告先も、3つの会計を明確に区別するポイントです。
財務会計の報告先は、会社の外部にいる株主、投資家、金融機関といった利害関係者です。 彼らは、その報告書(財務諸表)を見て、その会社に投資すべきか、融資すべきかを判断します。
税務会計の報告先は、言うまでもなく税務署です。計算された所得に基づき、法人税などの申告書を提出し、納税義務を果たします。対照的に、管理会計の報告先は、社長や役員、事業部長といった社内の経営・管理層に限定されます。
外部に公表するものではなく、あくまで内部での活用が前提となります。
3. ルール:「何に」基づいて作成するか?会計基準・税法・独自ルールの違い
各会計が準拠するルールは、それぞれの目的を反映して定められています。
財務会計は、すべての企業が同じ基準で比較できるよう、「企業会計原則」などの一般に公正妥当と認められた会計基準に基づいて作成されます。 これにより、投資家は客観的な指標で企業を評価できます。
税務会計が従うのは、「法人税法」や「所得税法」といった税法です。これは、公平な課税を実現するための法律であり、すべての企業に一律で適用されます。
一方で、管理会計には法律や基準といった統一されたルールは存在しません。経営判断に役立つのであれば、会社ごとに完全に自由な形式や指標を用いて分析・報告することが可能です。
4. 時間軸:「いつ」の情報を扱うか?過去の実績と未来の予測の違い
会計が扱う情報の「時間軸」にも、明確な違いがあります。
財務会計と税務会計は、基本的に「過去」の活動実績をまとめたものです。 例えば、財務会計における損益計算書は、過去1年間の経営成績を示しますし、税務会計も過去の事業年度の所得に対して税額を計算します。
これに対して、管理会計は過去の実績分析はもちろんのこと、「未来」の予測も非常に重視します。
来期の売上目標を立てるための「予算編成」や、プロジェクトの将来的な収益性を評価する「投資判断」など、未来志向の経営戦略に不可欠な情報を提供するのが管理会計の大きな特徴です。
5. 強制力:作成義務はあるのか?法律で定められた義務と任意の取り組みの違い
会計の作成が法律で義務付けられているかどうか、という「強制力」の有無も大きな違いです。
財務会計(決算書の作成・開示)と税務会計(税務申告)は、それぞれ会社法や金融商品取引法、そして税法によってすべての会社に義務付けられています。 これらの義務を怠ると、罰則が科される可能性もあります。
一方で、管理会計の導入や運用は、完全に企業の「任意」です。
法律による作成義務はないため、実施しなくても罰せられることはありません。しかし、的確な経営判断や迅速な意思決定のためには極めて重要であり、多くの成長企業が積極的に取り入れているのが実情です。
💬 ひとことポイント
3つの会計の違いは、「目的」「報告先」「ルール」「時間軸」「強制力」の5つの視点で整理するとスッキリ理解できます。特に「誰のために(目的)」を意識することが、各会計の本質を掴むカギです。
財務会計とは?会社の「成績表」としての役割

財務会計は、会社の経済活動を外部の利害関係者に報告するための会計です。その役割は、主に以下の3つのポイントで理解することができます。
- 最大の目的:利害関係者(株主・銀行など)への情報開示
- 準拠すべきルール:「企業会計原則」などの会計基準
- 主な作成書類:財務三表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)
株主や金融機関といった社外の人々が、会社の経営状況を客観的に判断できるよう、「会社の成績表」を作成し、開示する役割を担います。それぞれ解説していきます。
1. 利害関係者(株主・銀行など)への情報開示が最大の目的
財務会計の最大の目的は、株主や投資家、銀行などの社外の利害関係者に対して、企業の財政状態や経営成績を正しく報告することです。
なぜなら、これらの利害関係者は、公開された財務情報をもとに、その会社への投資を続けるべきか、新たにお金を貸しても大丈夫か、といった重要な意思決定を行うからです。
例えば、投資家は将来の収益性を、銀行は融資の返済能力を、財務諸表から読み取ろうとします。このように、財務会計は会社の信頼性を外部に示すための、非常に重要なコミュニケーションツールとしての役割を果たしているのです。
2. 準拠すべきは「企業会計原則」などの会計基準
財務会計は、すべての企業が共通の物差しで評価されるよう、「企業会計原則」などの一般に公正妥当と認められた会計基準に基づいて作成しなければなりません。
これは、会社ごとにバラバラのルールで決算書を作成してしまうと、企業間の比較ができなくなり、利害関係者が客観的な判断を下せなくなるためです。
例えば、企業会計原則を構成する7つの一般原則の一つである「明瞭性の原則」では、財務諸表によって利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、判断を誤らせないようにすることを求めています。こうした統一されたルールに従うことで、財務諸表の信頼性と客観性が担保されるのです。
3. 主な作成書類:財務三表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)
財務会計のアウトプットとして最も重要な書類が、「財務三表」と呼ばれる以下の3つです。
これらは、それぞれ異なる切り口から会社の経営状態を映し出すため、3つをセットで見ることで会社の全体像を立体的に把握できます。
- 貸借対照表(B/S)
決算日時点での会社の財産(資産)と借金(負債)、そして元手(純資産)のバランスを示し、「財政状態」がわかります。 - 損益計算書(P/L)
一会計期間にどれだけ儲けたか(収益)、そのためにいくら使ったか(費用)、そして最終的に利益がいくら残ったかという「経営成績」を示します。 - キャッシュフロー計算書(C/S)
一会計期間における現金の収入と支出の流れ(キャッシュフロー)を、「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つの区分で示します。
💬 ひとことポイント
財務会計は「外部向けの公式レポート」。利害関係者が会社の健康状態を正しく診断できるよう、国が定めた共通のルール(会計基準)に沿って作成することが鉄則です。
税務会計とは?「納税額」を正確に計算するための会計

税務会計は、会社が納めるべき税金の額を、法律に基づいて正しく計算するために特化した会計分野です。その特徴は、以下の3つの観点から整理できます。
- 目的:公平な課税の実現
- 根拠:「法人税法」などの税法
- 特徴:財務会計の「利益」と税務会計の「所得」にはズレが生じる
財務会計が会社の「成績表」であるのに対し、税務会計は「納税申告書」を作成するための計算プロセスと言えます。詳しく見ていきましょう。
1. 公平な課税を実現するための会計処理
税務会計の唯一の目的は、法人税や事業税などの税額を正確に算出し、国や地方自治体に申告・納税することです。
これは、国の財政を支える重要な税収を確保するとともに、「租税公平主義」の観点から、すべての法人に公平な税負担を求めるために行われます。
もし、各社が財務会計で作成した「利益」をそのまま課税対象にしてしまうと、会社ごとに採用する会計処理の方法によって税額に差が生まれ、不公平が生じる可能性があります。そこで、税法という統一されたルールのもとで課税対象となる「所得」を計算し、公平な課税を実現するのが税務会計の役割なのです。
2. 根拠となるのは「法人税法」などの税法
税務会計が準拠すべき絶対的なルールは、「法人税法」や「所得税法」、「消費税法」といった税法です。
財務会計が「企業会計原則」という複数の基準から成り立つことに対し、税務会計は課税の公平性と強制力を持つ法律のみを根拠とします。
例えば、財務会計上は全額費用として計上できる接待交際費も、税法上は資本金の額に応じて損金(税務上の費用)として認められる金額に上限が設けられています。このように、ある支出が費用になるかならないかは、最終的に税法の規定によって判断されるため、経営者は財務会計上の感覚だけでなく、税法特有のルールを理解しておくことが不可欠です。
3. なぜ発生する?財務会計の「利益」と税務会計の「所得」のズレを具体例で解説
財務会計上の「利益」と税務会計上の「所得」の金額は、多くの場合一致しません。
これは、両者の目的の違いから、収益(益金)や費用(損金)として認識する範囲とタイミングに「ズレ」が生じるためです。 財務会計は利害関係者への報告を目的とする一方、税務会計は公平な課税を目的としているため、考え方が異なるのです。
このズレには、いずれ解消される「一時差異」と、永久に解消されない「永久差異」があります。例えば、将来の退職金支払いに備える「退職給付引当金」は、財務会計では将来の負担に備えて当期の費用として計上しますが、税務会計では実際に支払われるまで損金とは認められません。この結果、会計上の「利益」よりも税務上の「所得」のほうが大きくなります。
💬 ひとことポイント
税務会計は「税金計算のための専門ルール」。財務会計の利益がそのまま税金の対象になるわけではない、ということを覚えておきましょう。税法独自のルールを理解することが、適切な納税と節税の第一歩です。
管理会計とは?会社の「未来」を創るための経営の武器

財務会計や税務会計が過去の実績を報告する「守りの会計」であるのに対し、管理会計は会社の「未来」を創り出すための「攻めの会計」と言えます。その役割と特徴は、以下の3点で理解できます。
- 役割:経営者の意思決定をサポートする社内向け情報
- 特徴:決まったルールはなく、目的に応じて自由に設計可能
- 活用例:予実管理・原価計算・資金繰り管理
法律で定められた義務ではなく、あくまで経営者が自社の経営をより良くするための道具です。それぞれ解説します。
1. 経営者の意思決定をサポートする社内向け情報
管理会計の最大の役割は、経営者が的確な意思決定を下すために必要な社内向けの情報を提供することです。
外部向けの財務会計情報だけでは、「どの商品が一番儲かっているのか」「この事業から撤退すべきか」といった具体的な経営判断は困難です。
管理会計では、部門別や製品別の損益、プロジェクトごとの採算性など、経営者が知りたい情報を、経営者が判断しやすい形式でスピーディーに提供します。これにより、感覚や経験だけに頼るのではなく、具体的なデータに基づいた客観的で質の高い意思決定が可能になるのです。
2. 決まったルールはなく、目的に応じて自由に設計可能
管理会計には、財務会計の「企業会計原則」や税務会計の「税法」のような、守らなければならない統一的なルールは一切存在しません。
そのため、各企業が自社の経営目標や事業内容に応じて、完全に自由にその仕組みを設計できるのが大きな特徴です。
例えば、飲食チェーンであれば店舗ごとの売上や利益率を比較するでしょうし、IT企業であれば顧客獲得コストや解約率といった独自の指標(KPI)を重視するかもしれません。このように、自社の戦略に合わせてオーダーメイドの「経営の羅針盤」を作れる自由度の高さが、管理会計の強みなのです。
3. 具体的な活用例:予実管理・原価計算・資金繰り管理
管理会計は、具体的な手法として以下のようなものに活用され、経営の舵取りをサポートします。これらは会社の現状を可視化し、未来の行動計画を立てる上で不可欠なツールです。
- 予実管理
年度や月次で立てた売上や利益の「予算」と「実績」を比較・分析する手法です。目標達成度を測り、計画とのズレが生じた原因を早期に特定し、軌道修正を図るために行われます。 - 原価計算
製品やサービスごとにかかった費用(原価)を正確に計算することです。これにより、儲かっている製品・損している製品が明確になり、適切な価格設定やコスト削減策の立案に繋がります。 - 資金繰り管理
将来の現金の出入りを予測し、資金ショートを防ぐための管理活動です。いつ、いくら資金が不足しそうかを事前に把握し、融資の申し込みなど先手を打つことが可能になります。
💬 ひとことポイント
管理会計は「未来のための社内作戦会議ツール」。決まったフォーマットはありません。自社の目標達成のために「どんな情報が必要か?」を考え、自由にカスタマイズできるのが最大の魅力です。
管理会計の欠如が招く経営リスク|不正の兆候を見逃さないために

管理会計は、単に経営判断を助けるだけでなく、社内の不正を防止し、健全な組織を維持するための「守りの機能」も果たします。管理会計が機能していない「どんぶり勘定」の会社は、知らないうちに以下のような深刻な経営リスクを抱え込んでいる可能性があります。
- 「どんぶり勘定」が不正の温床になる
- 数値の異常放置が横領や不正会計につながる
- 内部統制が機能せず、不正を未然に防げない
- 不正の疑いがあっても、自社だけでの解決が困難
ここでは、具体的なリスクと対策を解説します。
1. 「どんぶり勘定」が不正の温床になる理由
お金の流れを大雑把にしか把握しない「どんぶり勘定」は、経理不正が発生しやすい土壌そのものです。
売上や経費の管理が曖昧で、誰が何にお金を使っているのかが不明確な状態では、不正な支出や着服があっても気づくことが困難です。
例えば、経費精算のルールが曖昧であれば、カラ出張や水増し請求といった不正が容易に行えてしまいます。しっかりとした管理会計の仕組みがなく、お金の流れがブラックボックス化している状態は、不正を企む者にとって絶好の機会を与えてしまうのです。
2. 数値の異常放置が横領や不正会計につながる危険性
管理会計を導入していないと、帳簿上の小さな数値の異常を見過ごしてしまいがちですが、それが大規模な横領や不正会計の兆候であるケースは少なくありません。
例えば、「原因不明の棚卸資産の減少」や「特定の取引先への支払いの急増」といった異常値を放置すると、不正行為はエスカレートしていきます。
最初は少額の出来心だった不正が、発覚しないことに味をしめて次第に大胆かつ大規模になり、気づいたときには会社経営を揺るがすほどの損害に発展している危険性があります。管理会計によって日頃から数値を詳細にモニタリングしていれば、こうした異常を早期に察知し、被害の拡大を防ぐことが可能です。
3. 内部統制の構築:管理会計で不正を未然に防ぐ仕組みづくり
不正を未然に防ぐためには、管理会計を活用した「内部統制」の仕組みを構築することが極めて重要です。
内部統制とは、社内で不正やミスが起こらないように、業務のプロセスやルールを整備し、適切に運用することです。
例えば、経費の申請者と承認者を分ける、現金や預金の管理担当者と記帳担当者を分ける(職務分掌)といったルールを設けることが挙げられます。管理会計の導入は、こうした業務プロセスの可視化と標準化を促し、相互牽制の効いた体制づくりに直結します。結果として、特定の個人に権限が集中することを防ぎ、不正が起こりにくいクリーンな経営環境を実現するのです。
4. 万が一不正の疑いがある場合は、迷わず専門調査機関へ相談を
もし社内で不正の疑いが浮上した場合は、自社だけで解決しようとせず、速やかに探偵社や調査会社といった専門調査機関へ相談することが賢明です。
不正の調査には、高度な専門知識と客観的な視点が求められます。 不用意に社内で調査を進めると、証拠を隠滅されたり、人間関係の悪化を招いたりするリスクがあります。
企業調査を専門とする調査会社は、法的な知識と豊富な経験に基づき、慎重かつ確実に事実関係を調査します。不正の証拠を確保し、法的な手続きに進む場合でも、専門家の支援は心強い味方となるでしょう。
💬 ひとことポイント
管理会計は「社内の監視カメラ」。お金やモノの動きを細かく見える化することで、不正の芽を早期に発見し、クリーンな経営環境を維持する「守りの砦」としての役割も担っています。
財務・税務・管理会計に関するよくある質問
ここでは、財務会計、税務会計、管理会計について、経営者や経理担当者から寄せられることの多い質問にお答えします。日々の業務や経営判断に役立つポイントを、Q&A形式でわかりやすく解説します。
Q1. 個人事業主に関係があるのはどの会計ですか?
A. 個人事業主にとって最も直接的に関係するのは「税務会計」ですが、事業を成長させるためには「管理会計」の視点も重要になります。
個人事業主には、法人と違って決算を外部に公表する義務がないため、利害関係者への報告を目的とする「財務会計」の必要性は高くありません。
しかし、事業で得た所得に対する所得税の納税義務があるため、税法に基づいて収支を計算し、確定申告を行う「税務会計」は必須です。さらに、日々の経営状態を把握し、事業の成長戦略を立てるために、管理会計の手法を取り入れて売上や経費を分析することが、安定経営への近道です。
Q2. 財務会計と税務会計の具体的なズレ(申告調整)にはどんなものがありますか?
A. 会計上の「利益」と税務上の「所得」のズレには、将来的に解消される「一時差異」と、永久に解消されない「永久差異」の2種類があります。このズレは、財務会計と税務会計で収益や費用を認めるタイミングや範囲が異なるために生じます。
- 一時差異の例
減価償却費の限度超過額や、賞与・退職給付引当金などが代表例です。これらは会計上は費用として計上しますが、税務上は一定の限度額を超えた部分や、実際に支出されるまでは損金として認められません。ただし、将来的にはその差は解消されます。 - 永久差異の例
税務上の損金として認められない寄付金や、上限を超えた交際費などが該当します。これらは会計上は費用でも、税務上は永久に損金とならないため、差が解消されることはありません。
Q3. 中小企業が管理会計を始めるには何から手をつければ良いですか?
A. まずは「月次決算」の早期化と、自社の「現状を正確に把握する」ことから始めるのが最も効果的です。
どんぶり勘定から脱却し、経営判断に使える精度の高い情報を得るための第一歩です。
具体的には、月初5営業日以内には前月の試算表を完成させ、タイムリーに経営数値を把握できる体制を整えましょう。その上で、商品別・サービス別・得意先別といったセグメントで売上や利益を分解し、「どの事業が儲かっているのか」を可視化します。この現状分析が、次の打ち手となる具体的な目標設定や課題発見に繋がるのです。
Q4. 税務会計に関する知識を証明する資格はありますか?
A. 税務会計の専門知識を証明する最も代表的な国家資格は「税理士」です。
税理士は税の専門家であり、税務代理、税務書類の作成、税務相談の3つは法律で定められた独占業務です。法人税や所得税、消費税など、複雑な税法の知識を駆使して適正な納税をサポートする役割を担います。
また、企業の財務諸表が適正であることを証明する監査を独占業務とする「公認会計士」も、税理士登録をすることで税理士と同様の業務を行えます。その他、日商簿記検定1級などの会計資格も、税務会計の基礎となる知識を証明するものとして評価されます。
まとめ:3つの会計を正しく理解し、攻めと守りの経営を実現しよう
ここまで、財務会計、税務会計、管理会計という3つの会計の違いとそれぞれの役割について解説してきました。
- 財務会計: 利害関係者からの信頼を得るための「守り」
- 税務会計: 法令を遵守し、納税義務を果たすための「守り」
- 管理会計: データに基づいた意思決定で未来を創る「攻め」
これら3つの会計は、どれか一つだけ行えば良いというものではなく、それぞれが相互に関連し合いながら会社の経営を支えています。
健全で持続的な成長を目指す上で、税務会計だけでなく、自社の未来を切り拓く武器となる「管理会計」の視点を持つことが極めて重要です。過去の実績をまとめる財務・税務会計だけでは、厳しい競争環境を勝ち抜くことはできません。
自社の強みや弱みを数字で把握し、次の戦略を立てるための管理会計を導入することで、初めて攻守のバランスがとれた強固な経営体制が築かれるのです。
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