利益剰余金と当期純利益の違いとは?経営者が知るべき5つの活用法と財務戦略
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「決算書を見ても、利益剰余金と当期純利益の違いがよくわからない」「結局、会社にお金を残すにはどちらを重視すればいいの?」

経営者であれば一度は抱く、財務諸表に関する疑問。実は、この2つの違いを正しく理解しているかどうかで、会社の倒産リスクや将来の成長スピードが大きく変わります。

この記事では、混同しやすい「利益剰余金」と「当期純利益」の違いを、ダムと川の流れに例えてわかりやすく解説。さらに、黒字倒産を防ぎ、銀行評価を上げるための具体的な財務戦略まで網羅しました。

財務の基礎を固め、どんな不況にも負けない強い会社を作るためのヒントを持ち帰ってください。

北薗 寛人カルロ
監修者
Encoach株式会社代表 北薗 寛人カルロ
2008年よりファッションモデルとして活動し、パリコレ出演やUNIQLO世界広告などの実績を持つ。2015年から従業員1,000人超規模の大手税理士法人にて経験を積み、顧客紹介実績やMVP受賞などの実績を経て、2021年に独立・Encoach株式会社を設立。現在は財務を主軸に、経営者の意思決定と実行を支える伴走型コンサルティングを数多くのクライアントに対して提供。

まずは結論!利益剰余金と当期純利益の違いが一目でわかる比較表

両者の最大の違いは「期間」の概念にあります。1年間の成績表である損益計算書(PL)と、創業からの歴史を表す貸借対照表(BS)、それぞれの役割を整理しましょう。

利益剰余金と当期純利益は、会社の「過去」と「現在」をつなぐ重要な指標です。

簡潔に言えば、当期純利益は「1年間の稼ぐ力(フロー)」であり、利益剰余金は「創業から現在までに蓄積された体力(ストック)」を指します。当期純利益が毎年の成績表なら、利益剰余金はその成績の積み重ねです。

この2つは連動しており、毎年の当期純利益から配当などを引いた残りが、利益剰余金として貸借対照表に積み上がっていきます。

会社の利益の蓄積「利益剰余金」と1年間の成果「当期純利益」の基礎知識

経営において、利益は単なる数字ではありません。会社の安全性や成長余力を示すバロメーターです。

1. 利益剰余金とは?会社の体力を示すストック

利益剰余金とは、会社が創業してから現在までに稼いだ利益の蓄積のことです。よく「内部留保」とも呼ばれ、貸借対照表の純資産の部に表示されます。

これは単なる貯金ではなく、会社が長年かけて培ってきた「基礎体力」のようなもの。赤字や不況などの予期せぬ事態が起きても、利益剰余金が潤沢であれば会社は持ちこたえられます。逆に言えば、この蓄積が少ないと、わずかな赤字で経営危機に陥るリスクがあるのです。

2. 当期純利益とは?会社の稼ぐ力を示すフロー

当期純利益とは、1会計期間(通常1年間)の最終的な利益を指します。売上から原価、販管費、そして法人税などを差し引いたあとに残る、会社にとっての「手取り」です。

損益計算書(PL)の最終行に記載されるため「ボトムライン」とも呼ばれます。この数字がプラスであれば黒字、マイナスであれば赤字となり、その年の経営成績をダイレクトに表します。ただし、あくまで「その1年間」だけの成果である点に注意が必要です。

3.【図解】ダムの水と川の流れで理解する!利益剰余金と当期純利益の切っても切れない関係

この2つの関係は、よく「ダム(利益剰余金)」と「川の流れ(当期純利益)」に例えられます。

川から流れてくる水(当期純利益)が、ダム(会社)に貯まっていき、その貯水量が利益剰余金となります。川の水量が増えればダムの水位も上がり、逆に水が干上がればダムの貯えを取り崩すことになります。

つまり、毎期の黒字経営(川の流れ)があって初めて、強固な財務基盤(ダムの貯水)が作られるのです。

北薗 寛人カルロ
Encoach株式会社代表
北薗 寛人カルロ
当期純利益は「今年の成績」、利益剰余金は「これまでの蓄積」。両方をバランスよく見ることが、健全な経営判断の第一歩です。

利益剰余金は3種類!その構成要素と計算・仕訳の具体例

利益剰余金は以下の3つの要素で構成されています。

  1. 利益準備金:会社法で定められた積立金
  2. 任意積立金:会社が自由に目的を定めて積み立てるお金
  3. 繰越利益剰余金:使い道が決められていない利益の蓄積

それぞれ解説していきます。

1. 利益準備金:会社法で定められた積立金

利益準備金とは、株主への配当を行う際に、会社法によって積み立てが義務付けられているお金です。

会社が利益をすべて配当してしまうと、債権者(銀行や取引先)を守るための財産がなくなってしまいます。そのため、配当金の10分の1を、資本金の4分の1に達するまで強制的に積み立てるルールになっています。会社の安全性を保つための「法律による強制貯金」とイメージしてください。

2. 任意積立金:会社が自由に目的を定めて積み立てるお金

任意積立金とは、会社が特定の目的のために自主的に積み立てるお金のことです。

「将来の工場建設のために修繕積立金をしよう」「役員の退職金に備えて別途積立金を作ろう」といった具合に、使い道を限定して利益を確保しておくものです。株主総会などの決議を経て設定されます。目的を持った貯金であり、計画的な経営を行う企業によく見られる項目です。

3. 繰越利益剰余金:使い道が決められていない利益の蓄積

繰越利益剰余金は、利益剰余金の中でも「使い道が決まっていないフリーな資金」です。

当期純利益が出ると、まずはこの繰越利益剰余金に加算されます。ここから配当を出したり、積立金に回したりします。翌期以降に繰り越される利益の源泉であり、中小企業の決算書では、この科目の金額が実質的な内部留保の厚みを示していることが多いです。

4.【具体例で解説】当期純利益から利益剰余金が計算されるまでの流れと仕訳

決算で当期純利益が確定すると、その金額は貸借対照表の「繰越利益剰余金」に振り替えられます。

例えば、当期純利益が100万円出た場合、損益計算書の利益がゼロになり、その分貸借対照表の利益剰余金が100万円増えます。

計算式:期末の利益剰余金 = 期首の利益剰余金 + 当期純利益 - 配当金など

この仕訳を通じて、1年間のフロー(PL)が資産のストック(BS)へと統合されるのです。

北薗 寛人カルロ
Encoach株式会社代表
北薗 寛人カルロ
利益剰余金の内訳を把握することで、会社の財務戦略が見えてきます。繰越利益剰余金の厚みが、経営の自由度を決めます。

なぜ?利益剰余金がマイナスになる2つの主な原因と危険性

利益剰余金がマイナスになる主な原因は以下の2つです。

  1. 赤字の継続による取り崩し
  2. 過度な配当(※ただし日本では財源規制あり)

それぞれ解説していきます。

1.【原因1】赤字の継続による取り崩し

最も一般的な原因は、慢性的な赤字経営です。赤字(当期純損失)が出ると、過去に積み上げた利益剰余金を取り崩して穴埋めすることになります。

貯金を切り崩して生活している状態と同じです。単年度の赤字ならまだしも、何年も続けば蓄積は底をつき、マイナス(欠損)へと転落します。創業間もない時期を除き、この状態が続くことは経営の持続可能性に直結する深刻な問題です。

2.【原因2】過度な配当(※ただし日本では財源規制あり)

理論上は、稼いだ利益以上に配当を出せば利益剰余金は減ります。しかし、日本の会社法では「分配可能額」という規制があり、利益剰余金などがマイナスになるような過度な配当は原則としてできません。

そのため、配当によって利益剰余金がマイナスになるケースは日本では稀です。もしマイナスになっているなら、配当の出し過ぎではなく、本業での損失が原因である可能性が高いと見るべきでしょう。

3. 利益剰余金のマイナスが示す「債務超過」への危険信号

利益剰余金のマイナスが拡大し、資本金の額を超えてしまうと「債務超過」になります。

これは、資産をすべて売り払っても負債を返済しきれない「実質的な破綻状態」です。銀行からの融資は極めて困難になり、取引先からの信用も失墜します。

利益剰余金がマイナスになることは、会社が倒産に向かっている危険なサインだと認識し、早急な経営改善が必要です。

北薗 寛人カルロ
Encoach株式会社代表
北薗 寛人カルロ
利益剰余金のマイナスは「赤字の継続」が主因です。単年度の赤字で慌てる必要はありませんが、数年続くなら抜本的な改革が必須です。

会社の健康診断!利益剰余金を使った財務分析と5つの経営活用法

利益剰余金の主な活用法は以下の5つです。

  1. 自己資本比率で見る「会社の安全性」
  2. キャッシュフロー計算書と合わせて「黒字倒産」のリスクを回避
  3. 利益剰余金を原資とした「未来への投資」で成長を加速させる
  4. 企業のステージ別「利益剰余金の目標設定」
  5. 事業計画書と連動させた「戦略的な資金繰り」

それぞれ解説していきます。

1.【活用法1】自己資本比率で見る「会社の安全性」

利益剰余金が増えると、自己資本(純資産)が厚くなります。総資産に占める自己資本の割合を「自己資本比率」といい、これが高いほど倒産しにくい会社と評価されます。

銀行は融資の際、この数値を厳しくチェックします。借入金に頼らず、自分たちの稼いだお金(利益剰余金)で経営を回せているかどうかが、対外的な信用力の決定的な差となるのです。

2.【活用法2】キャッシュフロー計算書と合わせて「黒字倒産」のリスクを回避

注意点として、利益剰余金はあくまで会計上の数字であり、必ずしも「現金」として金庫にあるわけではありません。

利益が出ていても、在庫や売掛金になっていれば手元の現金は不足し、「黒字倒産」のリスクがあります。利益剰余金の額だけでなく、キャッシュフロー計算書とセットで確認し、実際に使える現金がどれくらいあるかを把握することが生存戦略の基本です。

3.【活用法3】利益剰余金を原資とした「未来への投資」で成長を加速させる

蓄積した利益剰余金は、守りのためだけでなく、攻めのために使うべきです。設備投資、人材採用、M&Aなど、成長のための再投資に回します。

借入金と違い、返済義務のない自己資金を投資に回せるため、思い切った戦略が取れるのが強みです。内部留保を厚くし、それを次の利益を生む資産に変えていくサイクルこそが、優良企業の成長パターンです。

4.【活用法4】企業のステージ別「利益剰余金の目標設定」

目指すべき利益剰余金の水準は、企業のステージによって異なります。

創業期はまずは黒字化し、マイナスを作らないことが最優先。成長期・成熟期に入れば、「年間売上高の2割」程度の自己資本(資本金+利益剰余金)の確保を目標にすると良いでしょう。これは、万が一売上が2割落ち込むような経済危機が起きても、会社を存続させるための安全マージンとなります。

5.【活用法5】事業計画書と連動させた「戦略的な資金繰り」

利益剰余金を計画的に積み上げるには、行き当たりばったりの経営では不可能です。「5年後に利益剰余金をこれだけ残す」というゴールから逆算し、毎年の売上・利益目標を立てる必要があります。

事業計画書に「目標とする貸借対照表(B/S)」を落とし込むことで、単なる売上目標だけでなく、財務体質の強化を含めた戦略的な資金繰りが可能になります。

北薗 寛人カルロ
Encoach株式会社代表
北薗 寛人カルロ
利益剰余金は「守り」と「攻め」の両面で活用できます。安全性を確保しつつ、成長投資にも回せる余裕を持つことが理想です。

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北薗 寛人カルロ
Encoach株式会社代表
北薗 寛人カルロ
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利益剰余金と当期純利益に関するよくある4つの質問

最後に、経営者の方からよくいただく質問に回答します。用語の混同や、素朴な疑問をここで解消しておきましょう。

Q1. 内部留保と利益剰余金は同じ意味ですか?

基本的には同じ意味と考えて差し支えありません。

厳密には、会計用語として貸借対照表に載るのが「利益剰余金」、経済ニュースなどで企業の蓄えとして語られるのが「内部留保」です。どちらも「過去の利益の蓄積」を指しており、会社の中に残っている体力を表す言葉です。

Q2. 利益は出ているのに、利益剰余金が増えません。なぜですか?

配当金の支払いや、過去の赤字の補填に使われている可能性があります。

利益剰余金の計算式は「期首残高 + 当期純利益 - 配当金」です。たとえ黒字でも、それを上回る配当を出していれば利益剰余金は減ります。また、過去の累積赤字を解消している段階では、プラスに見えてこないこともあります。

Q3. 個人事業主の場合、利益剰余金の考え方はどうなりますか?

個人事業主には「利益剰余金」という勘定科目はありません。

個人の場合、過去の利益の蓄積は「元入金(もといれきん)」という科目に含まれて計算されます。法人化(法人成り)すると、この元入金や蓄積した利益が資本金や利益剰余金として整理されることになります。

Q4. 利益剰余金が多ければ多いほど良い会社と言えますか?

安全性は高いですが、効率性が悪いと見られることもあります。

利益剰余金が多いのは倒産しにくい証拠ですが、過度に溜め込みすぎると「投資をしていない」「株主へ還元していない」と判断され、ROE(自己資本利益率)が下がります。成長投資とのバランスが重要です。

まとめ:利益剰余金と当期純利益の違いを理解し、未来を創る財務戦略を描こう

利益剰余金は「会社の歴史と体力」、当期純利益は「1年間の成績」です。この2つを正しく理解することは、会社の寿命を延ばし、成長させるための第一歩です。

目先の節税や利益だけでなく、将来を見据えて利益剰余金をどう積み上げ、どう使うか。

この視点を持つことで、経営の景色は大きく変わります。ぜひ今回ご紹介したテンプレートや無料相談を活用し、強い財務体質作りをスタートさせてください。

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