マイクロ法人の設立を検討する際、「持ち家を会社の経費にできるのか」は多くの経営者が抱く疑問です。結論から言えば、持ち家でも正しい手順を踏めば経費化は可能ですが、個人の持ち家か法人名義かによってその方法は大きく異なります。
本記事では、マイクロ法人における持ち家の経費化について、4つの具体的なパターンを徹底解説します。住宅ローン控除との兼ね合いや、税務リスクを回避するためのポイントも網羅しました。
自身の状況に最適な経費化スキームを見つけ、賢く手元資金を残すための参考にしてください。
マイクロ法人で持ち家の経費化が注目される理由

なぜ手間をかけてまで持ち家の経費化を目指すのか。その理由は、個人と法人の「税率差」と「社会保険料」の削減効果にあります。
通常、個人の財布(手取り給与)から支払う住居費を、法人の経費(損金)に付け替えることで、法人の利益を圧縮し、法人税を削減することが可能です。
さらに、住居費を法人が負担する分、役員報酬を低く設定すれば、個人の所得税・住民税、そして負担の重い社会保険料を大幅に軽減できます。「会社」と「個人」の財布をトータルで見たとき、手元に残るキャッシュを最大化できる合理的な手法として注目されています。
まずは結論!マイクロ法人と持ち家の経費化パターン比較表

持ち家を経費化するには主に3つのアプローチがあり、それぞれ難易度や節税効果、リスクが異なります。まずは各パターンの全体像を把握し、自社に適用可能な方法を見極めましょう。
| パターン | 方法 | 節税効果 | 難易度 | 特徴 |
| パターン1 | 個人名義のまま法人へ一部賃貸 | 中 | 中 | 事業用スペースのみを経費化。個人の不動産所得申告が必要となるが、最も一般的。 |
| パターン2 | 社宅扱い(役員社宅) | 高 | 高 | 節税効果は高いが、持ち家の場合、個人から法人へ全室賃貸する形となり、住宅ローン控除の適用外になるなどハードルが高い。 |
| パターン3 | 法人への売却 | 特大 | 高 | 建物自体を法人所有にする。移転コストや資金調達が必要だが、減価償却や修繕費をフル活用可能。 |
| パターン4 | 個人事業主からの法人成り | 変動 | 中 | 個人時代の減価償却を引き継げない点や、名義変更の手続きに注意が必要。 |
最も導入しやすいのは、自宅の一部を事務所として法人に貸し出す「パターン1」です。手続きが比較的容易で、居住実態に合わせやすいためです。「パターン3」は効果絶大ですが、売買に伴う登記費用や税金が発生するため、慎重なシミュレーションが求められます。
マイクロ法人が持ち家を経費化する際の基本概念

持ち家を経費にする前に、必ず押さえておくべき税務上のルールがあります。これらを無視してドンブリ勘定で経費計上すると、税務調査で否認されるリスクが高まるためです。
ここでは経費化の土台となる以下3つの重要概念を解説します。
- 家事按分(事業利用割合)の重要性
- 住宅ローン控除との関係
- 減価償却費の計算方法
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 家事按分(事業利用割合)の重要性
持ち家を事務所として使用する場合、すべての費用を経費にできるわけではありません。プライベートな居住部分と事業用部分を明確に区分する「家事按分(かじあんぶん)」が必須となります。
具体的には、総床面積に対する事業用スペースの割合や、使用時間に基づいて「事業利用割合」を算出します。例えば、総床面積の20%を書斎として専用利用しているなら、関連費用の20%を経費計上します。
重要なのは、この割合に対して客観的な根拠を持つことです。図面や利用状況の写真を残し、税務署に対して「なぜこの割合なのか」を合理的に説明できるように準備しておきましょう。
※1 出典:No.2210 家事関連費|国税庁
2. 住宅ローン控除との関係
住宅ローン控除を受けている場合、事業利用割合の設定には細心の注意が必要です。原則として、事業用部分の床面積が50%を超えると、住宅ローン控除が一切受けられなくなってしまいます。これは「居住用」としての要件を満たさなくなるためです。
逆に、事業利用割合を10%以下に抑えれば、控除額への影響をほぼ無くすことができます(居住用割合90%以上なら全額控除対象)。「経費化による法人税等の節税額」と「住宅ローン控除による所得税減税額」を天秤にかけ、どちらがトータルで有利かをシミュレーションすることが不可欠です。
※1 出典:No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
3. 減価償却費の計算方法
持ち家(建物部分)は、購入費用を一度に経費にするのではなく、耐用年数に応じて毎年分割して経費化します。これを減価償却と呼びます。土地部分は価値が減少しないため減価償却の対象外となり、あくまで建物部分のみが計算対象です。
建物の構造によって法定耐用年数は決まっており、木造なら22年、鉄筋コンクリート(RC)なら47年です。計算方法は原則として「定額法」を用います(取得価額×償却率)。持ち家を事務所にする場合、この計算で出た減価償却費に事業利用割合を掛けた金額が、法人の経費として計上できる上限の目安となります。
※1 出典:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁
パターン1|個人名義の持ち家を法人に転貸する場合

個人が所有する自宅の一部を、事務所としてマイクロ法人に貸し出す方法です。最もスタンダードな手法であり、法人と個人の間で「賃貸借契約」を結ぶことで成立します。
具体的な進め方は以下の通りです。
- 転貸契約の仕組みと必要な手続き
- 法人側で経費計上できる金額と項目
- 個人側の税務処理(不動産所得)
- 実例シミュレーション
順を追って解説します。
1. 転貸契約の仕組みと必要な手続き
まず、役員個人(貸主)とマイクロ法人(借主)の間で「賃貸借契約書」を作成します。契約書には、使用する部屋の範囲、使用目的(事務所など)、月額賃料、契約期間などを明記する必要があります。口約束ではなく、書面に残すことが税務上の必須条件です。
重要なのは、あくまで「事務所として使用する部分」について契約を結ぶことです。個人側では、法人から受け取る家賃が不動産収入となります。契約書などの書類は、税務調査の際に実態を証明する重要な証拠となるため、必ず作成し、法人印と個人印を押印して保管してください。
2. 法人側で経費計上できる金額と項目
法人側では、個人に支払う家賃(地代家賃)を全額経費として計上できます。この際、家賃の設定額は「近隣の家賃相場」を基準に、事業で使用する面積割合で算出するのが一般的です。適当な金額設定は認められません。
もし相場より不当に高い家賃を設定すると、超過分が「役員賞与」とみなされ、法人の損金(経費)にならないうえに、個人側で源泉徴収の対象となるリスクがあります。周辺の類似物件(ワンルームマンション等)の坪単価などを参考に、客観的に妥当な賃料(例:相場の床単価×事業用面積)を設定しましょう。
3. 個人側の税務処理(不動産所得)
役員個人は、法人から受け取った家賃収入を「不動産所得」として確定申告する必要があります。受け取った家賃がそのまま利益になるわけではなく、そこから必要経費を差し引くことができます。これがこのスキームの大きなメリットです。
個人の経費として認められるのは、建物の減価償却費、固定資産税、住宅ローンの利息(元金は不可)、火災保険料などのうち、事業用割合に相当する金額です。家賃収入とこれら経費が同額程度になるように家賃を設定すれば、不動産所得はほぼゼロとなり、個人の税負担を増やさずに法人の経費を作ることができます。
※1 出典:No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)|国税庁
4. 実例シミュレーション|月額家賃20万円の場合
例えば、近隣相場が月20万円の物件で、自宅の30%を事務所として使用する場合を考えます。法人は月額6万円(20万円×30%)を家賃として個人に支払います。これにより、法人は年間72万円の地代家賃を経費化できます。
一方、個人側は年間72万円の収入を得ますが、同時に建物の減価償却費や固定資産税、ローン利息などの合計額の30%分を経費計上します。仮に個人の経費合計が240万円なら、その30%は72万円です。収入72万円-経費72万円=所得0円となり、個人には税金がかからず、法人だけが節税メリットを享受できる理想的な形になります。
パターン2|持ち家を社宅扱いにする場合

通常、賃貸物件で行われる「借り上げ社宅」のスキームですが、持ち家の場合でも理論上は可能です。しかし、個人所有の物件を社宅にするには、税務上のハードルやデメリットが伴うため、専門家による慎重な設計が求められます。
持ち家社宅のポイントは以下の通りです。
- 社宅扱いのメリットとデメリット
- 賃貸料相当額の計算方法
- 給与課税の対象にならない条件
- 実例シミュレーション
それぞれ見ていきましょう。
1. 社宅扱いのメリットとデメリット
社宅制度の最大のメリットは、家賃の大部分(50%〜80%程度)を法人の経費にできる点です。役員個人は「賃貸料相当額」のみを負担すればよく、実質的な手取り収入が増加します。会社が家賃を肩代わりしてくれるイメージです。
しかし、持ち家を社宅扱いにする場合、個人から法人へ家全体を貸し出す形になります。これにより、個人の住宅ローン控除が適用外になる可能性が高いです。また、法人から個人への支払いが相場より高いとみなされるリスクもあり、持ち家での社宅適用は賃貸物件に比べてデメリットが大きくなりやすいのが現実です。
2. 賃貸料相当額の計算方法
社宅制度において、役員個人が負担すべき家賃(賃貸料相当額)は、国税庁が定める計算式で算出します。これを「法定家賃」とも呼びます。周辺の家賃相場ではなく、固定資産税評価額をベースに計算するのが特徴です。
計算には、その年度の「建物の固定資産税課税標準額」と「敷地の固定資産税課税標準額」、および総床面積を使用します。一般的に、市場家賃よりもかなり低い金額(相場の10〜20%程度)になることが多く、この市場価格との差額が、給与課税されずに法人が負担できる実質的な節税メリットとなります。
3. 給与課税の対象にならない条件
社宅として認められるためには、役員個人が法人に対して、計算された「賃貸料相当額」を毎月支払う必要があります(通常は給与天引き)。これを怠ると、大きな税務リスクを負うことになります。
もし役員が負担ゼロ(家賃無料)で住んでいる場合、家賃相当額全額が「現物給与」とみなされ、所得税・住民税の課税対象となってしまいます。また、徴収額が法定の賃貸料相当額に満たない場合も、その差額が給与課税されます。適正な金額を計算し、毎月徴収している記録(給与明細など)を残すことが必須条件です。
4. 実例シミュレーション|固定資産税評価額の場合
例えば、建物の課税標準額が1,000万円、敷地が2,000万円、床面積100㎡の物件の場合を考えます。国税庁の計算式(小規模住宅の場合)に当てはめると、賃貸料相当額は月額1〜2万円程度になることがあります。
この場合、法人が物件を借り上げて(あるいは所有して)維持費として月15万円かかっていたとしても、役員からは月2万円を徴収すれば税務上問題ありません。差額の13万円が法人の経費となります。ただし、これは法人が物件を所有または第三者から借りている場合の話であり、個人持ち家の場合は個人の税負担との兼ね合いを慎重に計算する必要があります。
※1 出典:No.2600 役員に社宅などを貸したとき|国税庁
パターン3|持ち家を法人に売却する場合

個人所有の持ち家を法人に売却し、名義を完全に法人に移す方法です。これにより、建物にかかるすべての維持費を法人の経費にでき、完全な「社宅」として運用可能になります。
最も強力な節税手段の一つですが、以下のステップで慎重に進める必要があります。
- 持ち家売却のメリットとデメリット
- 売却価格の決定方法
- 法人側の経費計上
- 個人側の税務処理
詳細を解説します。
1. 持ち家売却のメリットとデメリット
メリットは、建物の減価償却費、固定資産税、修繕費、火災保険料、住宅ローン利息などのすべてを法人の経費にできる点です。個人は社宅として住むため、家計の支出を大幅に削減できます。特に大規模修繕などの高額出費も経費化できるのは大きな魅力です。
デメリットは、初期コストと手間です。売買に伴う登記費用、不動産取得税、登録免許税などの移転コストが発生します。また、個人は住宅ローンを一括返済する必要があり、法人は新たに資金調達をして物件を買い取る必要があるため、綿密な資金繰り計画が重要です。
2. 売却価格の決定方法
個人から法人への売却価格は、好き勝手に決めることはできません。必ず「時価(適正な市場価格)」で取引する必要があります。恣意的な価格設定は税務署の格好の標的となります。
もし時価よりも著しく低い価格で売却すると「みなし譲渡所得」として課税されたり、法人側で「受贈益」が発生して法人税が増えたりするリスクがあります。不動産鑑定士による鑑定評価を取得するか、近隣の取引事例や路線価などを参考にした合理的な価格設定を行い、その根拠資料を保存しておくことが不可欠です。
3. 法人側の経費計上
法人名義になった建物は、法人の資産として減価償却を行います。中古物件として取得するため、法定耐用年数ではなく、残存耐用年数に応じた短い期間で償却できるケース(簡便法)があり、単年度の経費計上額が大きくなるメリットがあります。
加えて、リフォーム費用や内装工事費なども、全額法人の経費として処理可能です。これにより、法人の利益を大きく圧縮することができます。個人の持ち家では経費にできなかった部分まで損金算入できるため、法人の利益が出すぎている場合の対策として非常に有効です。
※1 出典:No.2108 中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却|国税庁
4. 個人側の税務処理
売却した個人側には、不動産を譲渡したことによる「譲渡所得」が発生する可能性があります。売却価格が購入価格(減価償却費を控除した額)を上回った場合、その利益に対して譲渡所得税(約20%〜39%)がかかります。
通常、マイホーム売却には「3,000万円の特別控除」がありますが、同族会社(自分が経営する法人)への売却にはこの特例が適用できない場合が多いです。そのため、売却益が出ないように価格を設定するか、税金を支払ってもなおメリットがあるか、慎重に計算する必要があります。
※1 出典:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁
パターン4|個人事業主がマイクロ法人化した場合の持ち家経費化

これまで個人事業主として持ち家を経費計上していた人が、マイクロ法人を設立(法人成り)した場合の対応です。個人事業のルールと法人のルールは根本的に異なるため、切り替えのタイミングで契約形態や経費の考え方を再構築する必要があります。
主な変更点と戦略は以下の通りです。
- 法人化前後での経費計上の違い
- 法人化に伴う持ち家の経費化戦略
- 法人化による節税メリットの最大化
それぞれ確認しましょう。
1. 法人化前後での経費計上の違い
個人事業主時代は、自己所有の資産を使うため「家事按分」をして減価償却費などの一部を経費にするだけで済みました。しかし法人化後は、個人と法人は法的に別人格となるため、「賃貸借契約」または「売買契約」という契約行為が必要になります。
なんとなく今まで通り経費にする、ということはできません。法人設立と同時に、個人(貸主)と法人(借主)の間で「事務所の賃貸借契約書」を作成し、実際に賃料の支払いを開始するという明確な切り替え処理が必要です。この手続きを怠ると経費が否認される原因となります。
2. 法人化に伴う持ち家の経費化戦略
法人化のタイミングは、持ち家の経費化戦略を根本から見直す好機です。個人事業では認められなかった「社宅」という選択肢(パターン3の売却など)も視野に入ります。
いきなり売却するのが難しい場合は、まずは「パターン1(賃貸)」から始め、法人の資金力がついてきた段階で「パターン3(売却)」へ移行するという段階的な戦略も有効です。初期段階では、賃貸契約により法人の経費を作りつつ、個人の住宅ローン控除を維持する(事業割合を10%以下にするなど)運用が手堅いでしょう。
3. 法人化による節税メリットの最大化
法人化することで、経費計上の柔軟性が高まります。例えば、個人事業では全額経費にしにくかったリフォーム費用なども、法人との賃貸契約において「事務所の内装工事」として法人が負担することで、経費化しやすくなる場合があります。
また、役員報酬の設定と持ち家の経費化を組み合わせることで、個人の所得税率をコントロールし、世帯全体の手取りを最大化するシミュレーションを行いましょう。役員報酬を下げて所得税・社会保険料を抑えつつ、家賃という形で法人から個人へ資金を移動させるスキームは、マイクロ法人の王道的な節税策です。
※1 出典:No.2108 中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却|国税庁
持ち家経費化で注意すべき5つのポイント

持ち家の経費化は節税効果が高い反面、税務署からのチェックも厳しくなりがちです。「公私混同」とみなされ、否認されて追徴課税を受けないよう、以下の5つのポイントを必ず守って運用してください。
- 家事按分の根拠資料の保管
- 適正な転貸料の設定
- 住宅ローン控除との両立
- 社宅扱いにする場合の給与課税
- 税務調査への対策
重要なポイントを解説します。
1. 家事按分の根拠資料の保管
「なぜその事業利用割合なのか」を証明できる客観的な資料を必ず保管しましょう。自宅の図面上で事業用スペースをマーキングしたものや、デスクやPCが置かれた使用状況がわかる写真、業務日報などが有効です。
「なんとなく30%」といった根拠のないドンブリ勘定は最も危険です。税務調査が入った際、こうした客観的な資料を即座に提示できれば、調査官の心証も良くなり、否認されるリスクを大幅に下げることができます。実態と乖離した割合設定は絶対に避けましょう。
2. 適正な転貸料の設定
法人から個人へ支払う家賃(転貸料)は、高すぎても安すぎても税務上の問題になります。高すぎる場合は「役員賞与(損金不算入)」とみなされ、安すぎる(無償など)場合は法人側に「受贈益」が発生するリスクがあります。
近隣の同等物件(広さや築年数が近いもの)の募集チラシや、不動産ポータルサイトのスクリーンショットを保存し、「相場に基づいている」という証拠を残しておきましょう。相場とかけ離れない常識的な範囲で設定することが鉄則です。
3. 住宅ローン控除との両立
前述の通り、事業利用割合を50%超にしてしまうと、住宅ローン控除が全額カットされます。住宅ローン残高が多い場合、経費化による法人税の節税額よりも、ローン控除による所得税の減税額の方が金額が大きいケースも多々あります。
目先の経費だけでなく、ローン控除の残存期間と金額を確認し、トータルで損をしない割合(例えば10%以下にして控除を全額守るなど)に設定するバランス感覚が重要です。両方のメリットを享受できるギリギリのラインを見極めましょう。
4. 社宅扱いにする場合の給与課税
社宅として運用する場合、役員から徴収すべき「賃貸料相当額」の計算ミスや徴収漏れに注意してください。計算式は複雑なため、自己流で行わず、固定資産税の通知書をもとに税理士に計算してもらうことを強く推奨します。
また、徴収は毎月の給与天引きで行い、給与明細に「社宅費」や「地代家賃」などの項目ではっきりと記録を残すことが、税務調査対策として有効です。実際に徴収している事実がないと、現物給与として課税されるのを防げません。
5. 税務調査への対策
持ち家に関連する経費は、個人の生活費(家事費)と混同されやすいため、税務調査の重点項目になりやすいです。契約書、領収書、按分の根拠資料、振込履歴などをセットで整理しておきましょう。
特に、個人と法人の間でお金が実際に動いていること(通帳の履歴)が重要です。帳簿上の処理だけでなく、毎月決まった日に家賃の振り込みを行うなど、実態を伴わせることが最大の防御策です。不明瞭な取引は疑われる原因となるため、透明性を確保してください。
マイクロ法人の持ち家経費化で最大限の節税効果を得るための3つのステップ

持ち家経費化は、ただ契約書を作れば終わりではありません。現状分析から実行まで、戦略的に進めることで初めて効果を発揮します。失敗しないための3つのステップをご紹介します。
- 現状把握|あなたの持ち家の経費化ポテンシャルを診断
- 戦略立案|4つのパターンから最適な方法を選択
- 実行と最適化|税理士と協力して実装
具体的なアクションプランは以下の通りです。
1. 現状把握|あなたの持ち家の経費化ポテンシャルを診断
まずはご自身の状況を整理しましょう。「持ち家の名義」「住宅ローン残高と控除の残り期間」「建物の構造(木造かRCか)と築年数」「事業で実際に使える面積」を正確に確認します。
これにより、どのパターンが適用可能か、住宅ローン控除を優先すべきか、あるいは売却した方が得かといった方向性が見えてきます。特に築古の木造住宅などは、減価償却のメリットが出やすいため要チェックです。
2. 戦略立案|4つのパターンから最適な方法を選択
現状把握に基づき、前述の4パターンから最も効果的なものを選びます。初期コストをかけたくないなら「パターン1」、資金に余裕があり節税効果を最大化したいなら「パターン3」など、会社のフェーズに合わせた選択が重要です。
ここで無理な計画を立てないことが、長期的な安定運用につながります。専門家の意見も交えて決定しましょう。例えば、将来的に会社をたたむ可能性があるなら、売却(パターン3)は避けた方が無難かもしれません。
3. 実行と最適化|税理士と協力して実装
方針が決まったら、税理士の監修のもとで契約書作成、適正な家賃設定、登記などの実務を行います。運用開始後も、事業利用割合の見直しや、法人の成長に合わせたスキーム変更(賃貸から売却へ移行など)を定期的に検討し、節税効果を最適化し続けましょう。
一度決めたら終わりではなく、状況に応じてメンテナンスすることが大切です。法改正や税制変更にもアンテナを張り、常に適法な状態を保つよう心がけてください。
マイクロ法人の持ち家経費化に関するよくある質問
持ち家の経費化に取り組む際、多くの経営者が直面する疑問や不安にお答えします。実務的なQ&Aを通して、運用のイメージをより具体的に掴んでください。
Q1. 事業利用割合は何%が目安ですか?
一般的には、床面積ベースで10%〜30%程度が妥当なラインとされています。住宅ローン控除をフル活用したい場合は10%以下、控除がない場合は実態に合わせて30%程度まで設定するケースが多いです。50%を超えると居住用とみなされなくなるリスクがあるため、特別な事情がない限り避けるのが無難です。
Q2. 転貸料を支払わない場合はどうなりますか?
法人が個人に家賃を支払わない(無償で借りる)場合、法人の経費にはなりません。逆に、通常支払うべき家賃相当額が「受贈益(もらい得)」として法人の収益に計上され、法人税が増える可能性があります。また、個人側も減価償却費などを経費計上できなくなります。必ず契約に基づき「適正な家賃」を支払うようにしましょう。
Q3. 住宅ローンの元金は経費にできますか?
いいえ、元金の返済部分は一切経費になりません。経費にできるのは**「利息部分」のみ**です。元金返済はあくまで借入金(負債)の減少であり、費用の発生ではないためです。これは個人事業主でも法人への賃貸でも同様のルールです。シミュレーションの際は利息のみを経費として計算してください。
Q4. 社宅扱いにすると給与が増えますか?
いいえ、むしろ額面給与を減らすことができます。会社が家賃を負担する分、役員報酬を同額程度減額しても、役員の手取り額や生活水準が変わらない(または増える)設計にするのが一般的です。これにより、報酬月額に連動する社会保険料や所得税の負担を下げることができ、手元に残るお金を最大化できます。
Q5. 個人事業主時代の減価償却費はどうなりますか?
法人成りした場合、個人事業時代の減価償却資産(建物など)は、法人に引き継ぐ(売却や現物出資)か、個人所有のまま賃貸するかを選択します。賃貸する場合(パターン1)、個人側で引き続き減価償却を行い、不動産所得の経費として計上します。ただし、業務転用資産としての償却計算の継続性に注意が必要です。
※1 出典:No.2210 家事関連費|国税庁
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まとめ|マイクロ法人で持ち家を経費化し、最大限の節税効果を実現しよう
マイクロ法人における持ち家の経費化は、経営者の手取りを増やすための強力な武器です。「パターン1(賃貸)」から「パターン3(売却)」まで、自社の状況に合わせた手法を選ぶことで、住宅関連費という大きな支出を賢く節税につなげることができます。
しかし、住宅ローン控除との兼ね合いや税務リスクなど、落とし穴も存在します。自己判断で進めず、専門家の知見を借りながら、盤石な節税スキームを構築してください。正しい知識と戦略で、あなたの会社と個人の資産を守り抜きましょう。
