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社員旅行は経費にできる?税務調査で否認されないための5つの条件と3つの注意点
「社員旅行の経費はどこまで認められるのだろう?」「税務調査で指摘されたらどうしよう…」と、社員旅行の経費計上でお悩みの経営者や経理担当者の方は多いのではないでしょうか。 この記事を読めば、社員旅行を経費として正しく計上するための5つの必須条件から、税務調査で否認されないための具体的な注意点まで、すべてが明確になります。 国税庁の基準をわかりやすく解説し、明日から使える実務ポイントを凝縮しました。 まずは結論!社員旅行が経費になるかならないか一目でわかる比較表 社員旅行の費用を「福利厚生費」として処理するには、国税庁が定める条件のクリアが必須です。条件を満たさない場合、会社が負担した費用は「従業員への給与」とみなされ、課税対象となってしまいます。 条件の全体像を整理しましたので、まずは以下の比較表で確認しましょう。 項目経費にできる(福利厚生費)経費にできない(給与課税)旅行期間4泊5日以内(海外は現地滞在日数)5泊6日以上参加率全従業員(または職場単位)の50%以上全従業員の50%未満会社負担額1人10万円程度まで(少額の範囲内)社会通念上、高額すぎる参加対象全従業員(支店・部署単位も可)役員や特定社員のみ不参加者対応何も支給しない現金を支給する(全員課税リスク有) これらは法律上の明記ではありませんが、実務上の重要な判断基準です。 社員旅行を経費にするための5つの必須条件 社員旅行の費用を「福利厚生費」として計上するには、国税庁の指針や実務上の目安となる5つの条件をクリアする必要があります。これらを満たさない場合、会社負担分が給与とみなされるため注意が必要です。 それぞれ詳しく解説していきます。 1. 旅行期間は「4泊5日」以内か? 福利厚生費として認められる旅行期間は、4泊5日以内と定められています。この日数は一般的な社員旅行を想定した基準であり、これを超えると「単なる遊び」と判断され、給与課税されるリスクが高まります。 海外旅行の場合は、「現地での滞在日数が4泊5日以内」であれば問題ありません。移動にかかる機内泊などは日数に含まれないため、例えば「4泊6日(機中泊含む)」のハワイ旅行でも、現地滞在が条件内なら経費として認められます。 2. 参加率は「全従業員の50%」以上か? 社員旅行は、従業員に公平な機会を与える行事でなければなりません。そのため、旅行への参加者が全従業員数の50%以上であることが要件です。ここでの「全従業員」には、正社員だけでなく、普段から勤務しているパートやアルバイトも含まれます。 ただし、必ずしも全社一斉に行う必要はありません。支店や工場といった「職場単位」で実施し、その部署の半数以上が参加していれば条件を満たします。現場の状況に合わせて柔軟に計画を立てましょう。 3. 会社負担額は1人あたり「10万円」が目安 会社が負担する費用は、世間一般の常識的な範囲内でなければなりません。明確な法律の上限はありませんが、過去の事例から「会社負担額1人あたり10万円以内」が実務上の安全ラインとされています。 これは「少額不追求」という考え方に基づき、少額かつ一般的な行事であれば、あえて税金をかけないという趣旨です。あまりに高額な費用負担は給与(経済的利益)とみなされるため、豪華すぎるプランには注意が必要です。 4. 全従業員が参加対象になっているか? 社員旅行は一部の特権的な人のためではなく、全従業員を対象として企画する必要があります。「役員だけの旅行」や「成績優秀者限定の旅行」は、福利厚生費とは認められません。これらは地位や功績に対する報酬とみなされ、給与や賞与として課税されます。 経費計上するためには、全従業員(または職場単位の全員)に参加の機会を与え、その中から希望者を募るプロセスが不可欠です。特定の人だけが得をする仕組みは避けましょう。 5. 不参加者に現金を支給していないか? 旅行に参加しない従業員に対し、費用の代わりに現金を渡すことは絶対にNGです。「何もあげないのは不公平」という配慮でも、現金を渡すと「旅行か現金かを選べる状態」とみなされます。 選択権があると判断された場合、不参加者の現金だけでなく、参加者の旅行費用も含めて全員分が「給与」として課税されてしまいます。節税のつもりが全員への課税を招くため、最も注意すべき落とし穴です。 💬 ひとことポイント「1人10万円」はあくまで実務上の目安ですが、超えると否認リスクが急上昇します。最大の地雷は「不参加者への現金支給」。これをやると参加者も含めて全員が給与課税となるため、絶対におやめください。 ※参照:国税庁 税務調査で指摘される!経費にできない社員旅行3つのNGパターン 基本的な条件を満たしているように見えても、実態が伴わなければ否認されます。税務調査で「福利厚生費として認められない」と指摘されやすい、代表的な3つのNGパターンを確認しておきましょう。 役員だけ・特定の社員だけの「ご褒美旅行」 家族・取引先が参加する旅行(費用負担の問題) 実質的に私的旅行とみなされるケース それぞれ解説していきます。 1. 役員だけ・特定の社員だけの「ご褒美旅行」 参加者が限定されている旅行は、公平性の観点から福利厚生費として認められません。例えば、「役員だけの旅行」は役員賞与とみなされ、会社の経費にならないばかりか、個人の所得税も発生します。 また、「成績優秀者の招待旅行」も同様に、功績に対する報酬(給与)として扱われます。会社としては経費にできても、従業員には所得税・住民税がかかるため、福利厚生とは区別して考える必要があります。 2. 家族・取引先が参加する旅行 福利厚生費は、あくまで「自社の従業員」のために使われるお金です。家族や取引先の同伴自体は問題ありませんが、その費用を会社が負担すると経費(福利厚生費)にはなりません。 家族の費用を負担:その従業員に対する給与として課税 取引先の費用を負担:接待交際費として処理(損金算入に制限あり) トラブルを避けるため、家族同伴の場合は「家族分は全額自己負担」とし、会社からの支払いは従業員本人分のみに限定するのが鉄則です。 3. 実質的に私的旅行とみなされるケース 名目が社員旅行でも、中身が個人的な旅行と変わらない場合は否認されます。税務調査では「会社の行事としての実態があるか」が厳しくチェックされるため、以下のようなケースは危険です。 完全フリープラン:費用だけ会社が出し、行動も食事も自由 名ばかり研修:スケジュールのほぼ全てが観光 これらは「私的旅行の肩代わり」とみなされます。会社主導の団体行動や食事会を工程に組み込み、しおりや写真を証拠として残すことが重要です。 💬 ひとことポイント税務調査で否認されると、会社は源泉徴収漏れ、社員は所得税増額という「ダブルパンチ」を食らいます。「バレないだろう」という甘い判断は禁物です。 【ケーススタディ】こんな社員旅行は経費にできる?ケース別判断基準 実務では判断に迷うグレーゾーンも存在します。ここでは具体的なケースを取り上げ、経費にできるかどうかの判断基準を解説します。自社の状況と照らし合わせてみてください。 海外への社員旅行(5泊7日・機中泊2日) 参加率が50%未満になってしまった 豪華すぎる旅行プラン 研修を兼ねた社員旅行 それぞれ解説していきます。 1.【ケース1】海外への社員旅行(5泊7日・機中泊2日) 結論から言うと、「現地での滞在日数が4泊5日以内」であれば経費として認められます。海外旅行の場合、移動の機中泊などは日数にカウントしません。重要なのは「現地で何泊するか」です。 例えば7日間の旅行でも、往復の機内で2泊し、現地宿泊が4泊ならセーフです。逆に、現地で5泊するプランは基準を超えるため、原則として給与課税のリスクが高まります。スケジュールを組む際は、現地滞在日数を基準に考えましょう。 2.【ケース2】参加率が50%未満になってしまった 原則として否認リスクが高いですが、事情によっては認められる事例も出てきています。国税庁のQ&Aによると、「全従業員に参加の機会がある」「不参加者に現金を渡していない」等の条件を満たしていれば、結果的に50%未満でも認められるケースがあります。 ただし、これはあくまで「結果的に減ってしまった」場合の救済的な解釈です。最初から少人数で行くことは推奨されません。基本は50%以上の参加を目指し、全員への案内などプロセスを確実に踏むことが不可欠です。 3.【ケース3】豪華すぎる旅行プラン 「社会通念上、妥当な金額」を逸脱すると、費用の「全額」が給与課税される恐れがあります。例えば、会社負担が1人30万円を超えるような海外高級リゾートやファーストクラス利用は、福利厚生の範囲を超えた「私的な利益供与」とみなされます。 怖いのは、超過分だけでなく総額が課税されるケースが多いことです。確実に福利厚生費として処理するためには、節度ある金額設定(会社負担10万円程度)を守るのが最も安全な対策です。 4.【ケース4】研修を兼ねた社員旅行 業務に必要な部分は「研修費」、それ以外は「福利厚生費」として区分します。セミナー受講や工場視察など、明確な業務が含まれる時間は全額経費計上が可能です。 一方、観光や自由時間は福利厚生費となるため、社員旅行の要件(4泊5日以内など)を満たす必要があります。重要なのは「研修」と「観光」を明確に分けること。スケジュール表や研修レポートを保管し、単なる観光旅行ではないことを客観的に証明できるようにしましょう。 💬 ひとことポイント海外旅行は「機中泊を除いた現地滞在」で判定されます。ただし、豪華すぎる内容は全額否認のリスク大。実務上の目安(4泊・10万円)を守るのが無難です。 税務調査で慌てない!社員旅行の経費計上で必要な2つの実務対応 将来の税務調査で堂々と主張するためには、事前の準備と事後の処理が命です。ここでは必ず押さえておくべき2つの実務対応について解説します。 証拠書類(稟議書・参加者リスト・写真など)を必ず保管する 就業規則・福利厚生規程に明記する それぞれ解説していきます。 1. 証拠書類(稟議書・参加者リスト・写真など)を必ず保管する 税務調査で最も重視されるのは、「その旅行が本当に行われたか」を証明できる客観的な証拠です。口頭説明だけでは不十分なため、以下の書類は必ず揃えておきましょう。 企画段階:稟議書、旅行代理店の見積書 実施段階:行程表、参加者リスト、現地での集合写真 事後:領収書、研修レポート(ある場合) これらの書類は法人税法上、原則7年間の保存が義務付けられています。数年後の調査で困らないよう、体系的に整理して保管してください。 2. 就業規則・福利厚生規程に明記する 社員旅行が、会社の公式な制度であることを明確に示すことも重要です。就業規則や「福利厚生規程」の中に、社員旅行に関するルールを明文化しておくことを強く推奨します。 目的:従業員の慰安と親睦 対象:全従業員 費用負担:会社負担の範囲 規程として明文化することで、「場当たり的なイベント(私的旅行)」ではなく、制度として運用されている証明になります。税務調査での説得力が増すだけでなく、従業員への公平性も担保できます。 💬 ひとことポイント税務調査の対策は「証拠」が全てです。日程表や写真の保管はもちろん、就業規則への明記も忘れずに。口頭ではなく、客観的な資料で「会社の公式行事」であることを証明しましょう。 社員旅行の経費計上に関するよくある5つの質問 ここでは、社員旅行の経費に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。日々の業務の参考にしてください。 Q1. 勘定科目は何になりますか? 基本は「福利厚生費」ですが、目的によって使い分けが必要です。要件を満たす慰安旅行なら全額「福利厚生費」ですが、実態に合わせて以下の科目を検討します。 研修費・旅費交通費:業務に必要な研修や視察(移動費・会場費など) 接待交際費:取引先を招待した場合の、取引先負担分の費用 旅行の主たる目的がどこにあるかで判断しましょう。 Q2. 従業員の家族が参加した場合の費用はどうなりますか? 家族の分は会社負担にせず、「自己負担」としてもらいます。福利厚生費として認められるのは従業員本人のみ。家族の分まで会社が出すと、その分は従業員への「給与」となり課税されます。 家族同伴を認める場合は、本人から徴収するか、給与天引きで精算するルールを徹底しましょう。会社が負担していなければ、給与課税の問題は発生しません。 Q3. 個人事業主でも社員旅行は経費にできますか? 「家族以外の従業員」を雇用していれば可能です。法人と同様、従業員を対象とした慰安旅行であれば「福利厚生費」として計上できます。 ただし、「事業主と専従者(家族従業員)だけ」で行く旅行は、単なる家族旅行(家事費)とみなされ、経費にはなりません。経費にするには、家族以外の一般従業員も参加していることや、強制ではなく任意参加であることなど、「事業上の福利厚生」である実態が必要です。 Q4. アルバイトやパートも参加率の計算に含める必要はありますか? はい、原則として含める必要があります。福利厚生は「全従業員に公平に提供されること」が要件であり、ここには恒常的に勤務しているパートやアルバイトも含まれます。 参加率50%を計算する際の分母にも含めてください。最初から除外して企画すると、機会の平等性が損なわれていると判断され、否認されるリスクがあるため注意しましょう。 Q5. 旅行先で会議をすれば研修旅行として認められますか? 単に「名目上の会議時間」を設けただけでは認められません。研修旅行(業務)として経費計上するには、旅行先でなければできない理由や、明確な成果が求められます。 具体的な事業計画の策定 現地の工場や市場視察 こうした実質的な活動を行い、議事録やレポートを証拠として残す必要があります。観光がメインの実態であれば、会議以外の部分は給与課税される可能性があります。 社員旅行の経費化・財務改善でお悩みならEncoachの財務コンサルティングへ 「このプランで本当に税務調査は大丈夫か」「もっと効果的な節税方法はないか」社員旅行をはじめとする経費化の判断や、会社の財務に関する悩みは尽きないものです。そんな時は、私たちEncoachの財務コンサルタントにお任せください。1,000社以上の支援実績を持つ財務のプロが、あなたの会社の状況を徹底的に分析します。 財務のプロがあなたの状況に合わせた最適な節税・財務プランを無料で診断 Encoachでは、お客様一人ひとりの決算状況に合わせて、今回の社員旅行が財務的にプラスになるか、あるいは他に優先すべき節税策があるか、具体的な数値を基に無料で診断いたします。現在の利益状況やキャッシュフロー、将来の事業計画まで考慮し、あなたにとって最も有利な選択肢をご提案。「なんとなく」の節税ではなく、データに基づいた盤石な財務戦略を一緒に考えましょう。 規定の整備から税務調査対策までワンストップでサポート 社員旅行を経費にするために不可欠な「福利厚生規程」の作成や、税務調査で指摘されないための議事録・証拠書類の整備まで、Encoachがワンストップでサポートします。あなたは本業や旅行の企画に集中しているだけで、気づけば税務リスクのない最適な運用が実現している。そんな理想の環境をご提供するのが私たちの役目です。税務署にも堂々と説明できる、強い会社作りをお手伝いします。 まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください 少しでも興味をお持ちいただけましたら、まずはお気軽に無料相談へお申し込みください。無理な勧誘は一切いたしません。あなたの会社の財務状況を改善し、手元資金を最大化するための有益な情報をご提供することをお約束します。「今の計画で問題ないか確認したいだけ」でも大歓迎です。あなたの勇気ある一歩が、会社の未来を大きく変えるかもしれません。下記のリンクから、今すぐお問い合わせください。 まとめ 社員旅行を経費にするためには、以下の5つの条件をクリアすることが基本です。 期間は4泊5日以内 参加率は50%以上 会社負担は10万円程度 全従業員が対象 不参加者に現金を渡さない 特に「不参加者への現金支給」は一発アウトの要因となるため、絶対に行ってはいけません。また、税務調査に備えて、写真を残す、就業規則に記載するといった「証拠作り」も忘れずに行いましょう。 不明点がある場合は、自己判断せずに税理士へ相談することをおすすめします。 -
マイクロ法人設立で社会保険料を劇的に削減!メリット・デメリットと失敗しないための全知識
順調な売上とは裏腹に、重くのしかかる社会保険料や税金の負担。「手元にお金が残らない」と嘆く個人事業主の間で、今「マイクロ法人」が注目されています。 個人事業と法人を使い分ける「二刀流」なら、合法的に年間数十万円もの社会保険料を削減できる可能性があります。 ただし、安易な設立は禁物。財務のプロが、メリットから設立手順、失敗しないための全知識を徹底解説します。 まずは1分で診断!あなたにマイクロ法人は本当に必要? マイクロ法人は万人に適した選択肢ではありません。事業規模や今後の展望によって、向き不向きがはっきり分かれます。まずは5つの質問で、設立すべきかセルフチェックしてみましょう。 【診断チャート】 個人事業の所得(売上-経費)が500万円を超えている? 複数の事業を行っている、または明確に分離できる事業がある? 会社員で、副業の所得が年間300万円を超えている? 今後、融資や法人格が必要な取引先と契約する可能性がある? 帳簿付けや確定申告などの事務作業を、専門家に任せても良い? 「はい」が3つ以上なら検討の価値大。2つ以下でも、将来の選択肢として知識を深めておいて損はありません。 💬 ひとことポイント「はい」の数だけでなく、事業の将来性も重要です。今は規模が小さくても、将来的に大きくしたいなら早めの法人化が有利に働くこともあります。 【診断結果A】今すぐ設立を検討すべき人の3つの特徴 診断で「はい」が多かった方は、マイクロ法人の恩恵を最大限に受けられる可能性が高いでしょう。特に以下の3つの特徴に当てはまるなら、積極的な情報収集と検討をおすすめします。 個人事業の所得が安定して高い方 複数の事業を持つ方 社会的信用度を高めたい方 それぞれ解説していきます。 1. 個人事業の所得が安定して高い方 所得が増えるほど、国民健康保険料や所得税の負担は青天井に重くなります。ここでマイクロ法人を活用し、適切な役員報酬を設定することで、社会保険料等の負担を劇的に最適化できます。 今まで税金や保険料で消えていたお金を、自分の手元や事業投資に回せるようになるのが最大の魅力です。所得が500万円を超えてくると、個人事業主としての負担感は急増するため、法人化による節税効果がコストを上回りやすくなります。 2. 複数の事業を持つ方 事業を明確に分離できる場合、片方をマイクロ法人化する「二刀流」戦略が非常に有効です。 個人と法人の税率差や社会保険の仕組みを活かし、手取りの最大化が狙えます。 例えば、コンサル業と物販、Web制作と資産運用など、性質の異なる事業を持っているなら絶好のチャンスです。それぞれの事業で最適な税制を選択することで、全体の手取り額を大きく増やせる可能性があります。 3. 社会的信用度を高めたい方 法人格を持つことで、金融機関からの融資や大手企業との新規取引がスムーズに進むケースが多々あります。 事業拡大や対外的な信頼性を重視するなら、法人化は強力な武器になります。「個人」では越えられない信用の壁を、法人格が取り払ってくれるでしょう。特にBtoBビジネスにおいて、取引条件として「法人であること」を求められるケースは少なくありません。 💬 ひとことポイント「所得が高い」「事業が複数ある」は、マイクロ法人で成功するための黄金条件です。これらが揃っているなら、迷っている時間がもったいないかもしれません。 【診断結果B】まだ個人事業主のままが有利な人の3つの特徴 逆に、設立を急ぐと損をしてしまうケースもあります。コストや手間を考慮すると、個人事業主のまま活動する方が有利な人の特徴も押さえておきましょう。 所得がそれほど高くない方 事業が一つしかなく、分離が難しい方 事務作業が苦手で、コストをかけたくない方 それぞれの理由を見ていきます。 1. 所得がそれほど高くない方 事業所得が300万円以下の場合、法人化のメリットよりも維持コストが上回る可能性があります。 法人住民税の均等割(赤字でも年約7万円)や税理士報酬などを払うと、かえって手取りが減ってしまうことも。マイクロ法人は固定費がかかるため、一定以上の利益がないと節税効果が出ません。目先の節税だけでなく、トータルの収支を見極める必要があります。 2. 事業が一つしかなく、分離が難しい方 実態として分けられない事業を無理に法人に移すと、税務署から「租税回避行為」とみなされるリスクがあります。 事業実態の伴わない法人化は危険です。「誰が見ても別の事業」と言える明確な区分けができないなら、無理な法人化は避けるべきです。税務調査で否認されると、過去に遡って課税されるなど大きなペナルティを受けることになります。 3. 事務作業が苦手で、コストをかけたくない方 法人は個人事業主よりも経理処理や税務申告が厳格で複雑です。専門家のサポートなしでの運営はハードルが高く、その外注コストも予算に含める必要があります。 「面倒なことは嫌だ」「固定費は増やしたくない」という方は、個人事業主の身軽さを選ぶ方が無難でしょう。法人の事務負担は想像以上に重く、本業の時間を圧迫してしまう恐れもあります。 💬 ひとことポイント設立の目安は「個人事業なら所得500万」「会社員副業なら所得300万」が分岐点。維持コストや手間も考慮し、トータルな手取りで判断しましょう。 そもそもマイクロ法人とは?個人事業主との違い 言葉は聞くけれど実態がよく分からない方も多いはず。「社長一人の小さな会社」と個人事業主、一般的な法人の違いを整理します。 マイクロ法人の定義と「一人会社」との違い マイクロ法人とは法律用語ではなく、一般的に「社長一人、もしくは家族だけで経営している小規模な会社」を指す俗称です。 会社法上は株式会社や合同会社と変わりませんが、従業員はおらず、社長自身が事業のすべてを担います。「個人事業に近い規模感と機動力で運営される法人」という実態を捉えた言葉です。実質的には「一人会社」と同義で使われることが多く、組織拡大を目指さない点が特徴です。 【比較表】マイクロ法人 vs 個人事業主 vs 一般的な法人 それぞれの立ち位置を明確にするため、主な違いを表にまとめました。 項目個人事業主マイクロ法人一般的な法人設立費用ほぼ0円約6万円~約20万円~社会的信用△〇◎税金(個人)所得税(累進)所得税(給与)所得税(給与)社会保険国保・国民年金健保・厚生年金健保・厚生年金赤字の税金なし年約7万円~年約7万円~ 特に注目すべきは「社会保険」と「赤字の場合」の違いです。これらがマイクロ法人を検討する上で重要な判断材料となります。 💬 ひとことポイントマイクロ法人は「法人格を持った個人事業主」のようなイメージ。個人事業主の手軽さと、法人の節税メリットや社会的信用を、うまく両立させるための知恵と言えます。 なぜ今、マイクロ法人がフリーランスや副業で注目されるのか? 近年、フリーランス人口の増加や副業解禁を背景に注目度が急上昇しています。その最大の理由は、やはり「社会保険料の削減効果」にあります。 社会保険料の「最適化」という考え方 個人事業主が加入する国民健康保険料は、所得に比例して負担額が増え、上限額も年々引き上げられています。一方で、マイクロ法人を設立して役員報酬を低く設定すればどうなるでしょうか。 社会保険料(健康保険・厚生年金)を、法律で認められた最低限の負担に抑えることが可能です。この「社会保険料の最適化」こそが、マイクロ法人戦略の核心であり最大の魅力です。高所得になっても保険料を低く固定できる仕組みが、多くの人を惹きつけています。 💬 ひとことポイント「稼げば稼ぐほど保険料が上がる」という個人事業主の悩みに対する、合法的な解決策。それがマイクロ法人による社会保険料の最適化なのです。 【年間数十万円の節税効果】マイクロ法人の5つの絶大なメリット 社会保険料の削減以外にも、経営を有利に進めるための恩恵は多岐にわたります。マイクロ法人がもたらす5つの主要なメリットを見ていきましょう。 社会保険料を最適化できる 所得税・住民税の負担を軽減できる 経費にできる範囲が広がる 社会的信用度が向上する 赤字を10年間繰り越せる 各メリットの詳細を解説します。 1. 社会保険料を最適化できる【最大のメリット】 マイクロ法人の最大の利点です。例えば、役員報酬を月額4万5,000円〜6万円程度に設定すれば、社会保険料の総額は年間約27万円程度(会社負担分含む)に抑えられます。 個人事業で年間80万円以上の国保・年金を支払っているケースと比較すると、その差額は50万円以上にもなり得ます。残りの生活資金は個人事業の利益から得る「二刀流」を行うことで、合法的に社会保険料を最適化できるのです。 2. 所得税・住民税の負担を軽減できる(所得分散) 法人から役員報酬を受け取ることで、サラリーマンに認められている経費枠「給与所得控除(最低55万円〜)」を活用できます。 個人事業の所得(事業所得)だけでなく、法人からの給与(給与所得)を得ることで所得の種類が分散されます。控除額の分だけ課税対象となる所得が減るため、結果として所得税や住民税が安くなります。一つの財布から高い税率で払うより、分散して低い税率を適用させる賢い方法です。 3. 経費にできる範囲が広がる(役員報酬・社宅など) 法人格を持つことで、経費として認められる範囲が格段に広がります。最も大きいのは、自分自身への役員報酬が法人の経費(損金)になることです。 さらに、賃貸物件を法人契約して「社宅」扱いにすれば家賃の大部分を経費にできたり、出張手当を経費化できたりと、個人契約よりも大きな節税効果が見込めます。個人の財布から出ていた支出を、会社の経費として処理できる項目が増えるのは大きな利点です。 4. 社会的信用度が向上し、融資や取引で有利になる 法人は個人事業主と比べて社会的信用度が高いと評価されます。法務局に登記され、会社の基本情報が公開されているため、取引相手も安心して契約を結べるからです。 コンプライアンスを重視する大手企業との取引が可能になるほか、金融機関からの融資審査でも土俵に乗りやすくなります。 事業を拡大していく上で、法人格が持つ信用力は大きな武器です。個人のままでは門前払いされるような案件でも、法人ならチャンスが広がります。 5. 赤字を10年間繰り越せる(欠損金の繰越控除) 事業開始当初は赤字になることも珍しくありません。法人の場合、その年に出た赤字(欠損金)を翌年以降10年間にわたって繰り越し、将来の黒字と相殺して法人税を減らせます。 個人事業主(青色申告)の繰越期間は3年間ですが、法人は10年間。事業の立ち上げ期を支える重要なセーフティネットと言えるでしょう。長い期間で損益を通算できるため、大きな投資をした年の赤字を無駄にせず、将来の税負担軽減に使えます。 💬 ひとことポイントメリットは社会保険料削減だけではありません。「経費の範囲拡大」や「社会的信用」など、事業を成長させるための武器が手に入ります。多角的な視点で評価しましょう。 【年間数十万円の節税効果】マイクロ法人の5つの絶大なメリット メリットの裏には必ずデメリットがあります。良い面だけに飛びつかず、コストや手間などの負の側面もしっかり理解した上で判断することが重要です。 設立・維持にコストと手間がかかる 会計・税務処理が複雑になる お金の引き出しが自由にできなくなる 失敗を避けるために知っておくべき3点です。 1. 設立・維持にコストと手間がかかる(法人住民税など) 個人事業主が開業届だけで始められるのに対し、法人の設立には約6万〜20万円の費用がかかります。さらに、赤字でも毎年必ず発生する「法人住民税の均等割」にも注意が必要です。 これは「法人の会費」のような税金で、最低でも年間約7万円の負担となります。利益が出ていなくても支払い義務があるため、事業が軌道に乗るまでは重荷になる可能性があります。固定費が増えることは経営のリスク要因となるため、事前の資金計画が欠かせません。 2. 会計・税務処理が複雑になり、専門家のサポートが推奨される 法人の会計や申告は、個人事業主とは比べ物にならないほど複雑です。複式簿記による厳密な帳簿付けに加え、決算報告書や法人税申告書の作成など、高度な専門知識が求められます。 税務知識のない方が一人でミスなく行うのは困難です。多くは税理士に依頼することになりますが、その顧問料もランニングコストとして考慮しなければなりません。ソフトで自力処理も可能ですが、税務リスクを避けるにはプロの手を借りるのが一般的です。 3. お金の引き出しが自由にできなくなる(役員報酬の制限) 個人事業主なら利益をいつでも自由に使えますが、法人は違います。会社のお金と個人のお金は厳格に区別されるため、役員報酬として決めた額以外は自由に引き出せません。 しかも役員報酬は原則1年間変更できません。「今月は生活費が足りないから会社から借りよう」といった安易な引き出しはNGであり、この資金の不自由さは大きなストレスになり得ます。個人の生活費は、予め設定した報酬内でやりくりする必要があります。 💬 ひとことポイントデメリットで最も大きいのは「固定費」と「資金拘束」の問題です。赤字でもかかる税金と税理士コスト、そして自由に使えない会社のお金。これらを許容できるか冷静な計算が必要です。 マイクロ法人で大失敗する3つの典型的なケース 節税のつもりが、税務調査で否認されたり手取りが減ったりしては本末転倒。初心者が陥りやすい3つの失敗パターンと対策を解説します。 事業の分離が曖昧で「実質一体」と見なされる 役員報酬の設定を間違え、生活苦や年金減を招く 安易な資金移動で「役員貸付金」地獄に陥る それぞれの対策を見ていきましょう。 1.【ケース1】事業の分離が曖昧で「実質一体」と見なされる 個人事業とマイクロ法人の「二刀流」で最も注意すべき点です。取引先や業務実態が重複していると、税務署から「実質的に一つの個人事業だ」と判断されるリスクがあります。 もし租税回避行為と認定されると、法人の所得が個人の所得として合算され、多額の追徴課税を課されかねません。契約書や請求書を完璧に使い分けるなど、客観的な分離が不可欠です。第三者から見ても明確に事業が分かれている状態を作り出すことが重要です。 2.【ケース2】役員報酬の設定を間違え、生活苦や年金減を招く 社会保険料を抑えたい一心で報酬を下げすぎると、手元の生活費が不足します。逆に高く設定しすぎれば、保険料負担が増えて法人化の意味がなくなってしまいます。 特に注意が必要なのは、将来受け取る厚生年金額や、病気・怪我の際の「傷病手当金」も低くなる点です。目先の節税だけでなく、将来のリスクと生活資金のバランスを慎重に見極めましょう。手取りの最大化と生活の安定、両方を考慮した報酬設定が求められます。 3.【ケース3】安易な資金移動で「役員貸付金」地獄に陥る 「会社にお金があるから」と個人的な支払いに使うのは厳禁です。これは「役員貸付金」となり、会社が社長にお金を貸している状態として、銀行融資などで致命的なマイナス評価を受けます。 さらに、貸付金には利息を計上して法人税を払う必要まで出てきます。会社の資金はあくまで会社のもの。 公私混同は、税務上も経営上も百害あって一利なしです。通帳やカードは厳格に分け、1円たりとも混同しない強い意志が必要です。 💬 ひとことポイント失敗例の根源は「やりすぎ」と「公私混同」にあります。客観的に見て不自然な節税策は必ず否認されます。常に「税務署から見てどう見えるか?」という視点を持つことが重要です。 【図解】最強の二刀流戦略!マイクロ法人設立7つのステップ マイクロ法人のメリットを最大化し、デメリットを最小化するための具体的な手順を解説します。段取りよく進めることが成功への近道です。 事業の切り分けと法人化する事業の決定 会社の基本事項の決定 定款の作成と認証 資本金の払込み 法人設立登記の申請 税務署・自治体への法人設立届出 年金事務所・労基署などへの届出 各ステップのポイントを押さえましょう。 Step1. 事業の切り分けと法人化する事業の決定 まずは現在行っている事業の棚卸しです。売上が安定的で、かつ個人事業と明確に分離できる事業を選んで法人化します。 例えば「Web制作は個人、資産運用は法人」のように、事業内容や取引先が異なるものを選ぶのが理想です。この最初の切り分けが、後の税務リスク(実質一体とみなされるリスク)を回避する最重要ポイントになります。事業の将来性も見据えて、どちらを法人に残すか慎重に決めましょう。 Step2. 会社の基本事項の決定(商号・目的・本店所在地など) 法人化する事業が決まったら、会社の骨格を決めます。商号(会社名)、事業目的、本店所在地、資本金、決算期などを具体的に定めていきましょう。 特に事業目的は、将来展開する可能性のある事業も幅広く記載しておくことが重要です。後から追加するには登記変更の手間と費用がかかるためです。本店所在地は自宅やレンタルオフィスなどが選択肢になりますが、賃貸の場合は法人登記可否の確認も忘れずに行いましょう。 Step3. 定款の作成と認証 基本事項を基に、会社の憲法とも言える「定款」を作成します。株式会社は公証役場での認証が必要ですが、合同会社は不要です。 紙で作成すると4万円の収入印紙が必要ですが、電子定款(PDF)なら0円で済みます。 設立費用を抑えたい場合は、電子定款に対応したクラウドサービスや専門家を活用するのが賢明です。最近はオンラインで完結するサービスも増えているため、コスト削減のためにも検討してみましょう。 Step4. 資本金の払込み(通帳がない場合も対応) 定款ができたら、発起人(設立者)個人の銀行口座に資本金を払い込みます。ネット銀行などで通帳がない場合は、振込内容が分かる画面を印刷すれば証明書類として認められます。 資本金は1円から可能ですが、信用力や口座開設の審査を考慮し、少なくとも数十万〜100万円程度は用意しておくのが一般的です。払い込み後、証明書類を作成して実印を押印し、「払込証明書」を完成させます。 Step5. 法人設立登記の申請 必要書類を揃えて法務局に登記申請を行います。この申請日が記念すべき「会社の設立日」となります。不備がなければ1〜2週間で完了します。 登録免許税(株式会社は最低15万円、合同会社は最低6万円)が必要です。手続きは複雑なため、司法書士に依頼するか、オンラインの設立支援サービスを利用するのが一般的です。自分で行うことも可能ですが、書類不備による手戻りを防ぐならプロに任せるのが安心です。 Step6. 税務署・自治体への法人設立届出 登記完了後、速やかに税務署や自治体に届出を行います。「法人設立届出書」や「青色申告承認申請書」などが必須です。 特に「青色申告承認申請書」は提出期限(設立から3ヶ月以内等)を1日でも過ぎるとアウトです。その年は青色申告の特典(赤字繰越など)を使えなくなるため、設立届と一緒に必ず提出しましょう。設立後の最初の大仕事であり、絶対に忘れてはならない手続きです。 Step7. 年金事務所・労働基準監督署などへの届出 最後に社会保険関係の手続きです。社長一人の会社であっても、法人は社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務付けられています。 年金事務所に「新規適用届」などを提出しましょう。なお、従業員を雇わない限り労働保険(労災・雇用保険)の手続きは不要です。書類作成はややこしいですが、これを済ませれば晴れてマイクロ法人としてのスタートです。 💬 ひとことポイント設立手続きは「段取りが八割」。特にStep1の「事業の切り分け」とStep6の「青色申告の期限遵守」は、将来の節税効果を左右する超重要ポイントです。絶対にミスがないよう確認しましょう。 マイクロ法人設立・運用にお悩みならEncoachの財務コンサルティングへ 「自分に最適な報酬額がわからない」「税務調査が不安」「手続きが難しそう」。そんなお悩みは、財務のプロであるEncoach株式会社にお任せください。 最適な設立シミュレーションを無料でご提案 会計・税務から社会保険までワンストップでサポート 専門家と二人三脚の安心感 私たちが提供する3つの価値をご紹介します。 1. 最適な設立シミュレーションを無料でご提案 お客様の事業内容や将来のビジョンを丁寧にヒアリングし、個人事業のままの場合とマイクロ法人を設立した場合の税金・社会保険料を詳細に比較します。 「本当に設立すべきか」「いくらの役員報酬がベストか」を客観的な数字で提示。納得のいく意思決定ができるよう、最適なプランをご提案します。感覚ではなく数値に基づいた判断ができるため、失敗のリスクを大幅に減らせます。まずは無料相談で効果を実感してください。 2. 会計・税務から社会保険までワンストップでサポート 設立前の相談から、定款作成・登記のサポート、設立後の税務顧問、社会保険手続きまで。マイクロ法人に関わるあらゆる業務をワンストップで対応します。 お客様は面倒な手続きや計算から解放され、ご自身の事業に集中できます。各分野の専門家がチームで連携し、あなたの事業成長をバックアップします。初めての法人運営でも、迷うことなく本業に専念できる環境を提供します。 3. 気兼ねない相談体制 「こんなこと聞いていいのかな?」という小さな疑問も大歓迎です。税務調査が入った際も私たちが窓口となり、適切に対応しますのでご安心ください。 専門家と二人三脚で進めることで、設立コスト以上の安心と、事業への集中環境が手に入ります。一人で悩んで時間を浪費するより、プロの知見を借りて最短距離で成功を目指しましょう。ぜひお気軽にご相談ください。 💬 ひとことポイントマイクロ法人設立は、専門家と二人三脚で進めるのが成功の秘訣です。設立コスト以上に、将来にわたる安心と事業成長への集中という、大きなリターンが得られます。 マイクロ法人に関するよくある5つの質問 最後に、経営者の皆様からよくいただく質問を5つピックアップし、Q&A形式でお答えします。細かい疑問点を解消し、理解を深めましょう。 Q1. 資本金は1円でも大丈夫? 法律上は可能ですが、現実的にはお勧めできません。資本金は会社の体力や信用力を示す指標であり、1円では銀行口座が開設できなかったり、取引先から不安視されたりする恐れがあります。 また、設立直後の経費や運転資金も必要です。設立費用や数ヶ月分の資金を考慮し、少なくとも数十万円〜100万円程度は用意しておくのが実務上の安全ラインです。見栄えだけでなく、実務上のスムーズさを考えて金額を決めましょう。 Q2. サラリーマン(会社員)でも設立できますか?副業はバレますか? 設立自体は可能です。ただし、住民税の金額から会社に副業がバレるリスクがあります。法人の役員報酬は給与所得となり、本業の給与と合算されて住民税が通知されるからです。 一般的に言われる「普通徴収にすればバレない」は個人事業の話です。「絶対にバレない方法はない」と認識し、就業規則を確認するなどリスク管理を徹底する必要があります。本業に支障が出ないよう、慎重に進めることが大切です。 Q3. どのタイミングで設立するのがベストですか?(年収の目安) 一概には言えませんが、一般的に個人事業の課税所得が500万円~800万円を超えてきたあたりが一つの目安です。 このくらいの所得になると個人の税・社会保険料負担が重くなり、法人の維持コスト(均等割や税理士報酬)を払っても節税メリットが出やすくなるからです。ただし、事業の成長速度や今後の計画によって最適な時期は変わります。正確な判断には専門家のシミュレーションをお勧めします。 Q4. 赤字でも税金はかかりますか? はい、かかります。これがマイクロ法人の大きなデメリットの一つです。事業が赤字で利益ゼロでも、法人住民税の「均等割」として最低年約7万円の納税義務があります。 個人事業主なら赤字であれば税金はかからないため、大きな違いです。設立初年度から、この固定費を負担できるだけの見通しがあるか確認しておきましょう。赤字でもキャッシュアウトが発生することを忘れてはいけません。 Q5. 自分で設立手続きはできますか? 最近は便利なオンラインサービスもあり、自分で行うことも可能です。しかし、定款の目的設定や税務署への各種届出(特に青色申告)には専門知識が必要で、ミスをすると将来の節税メリットを失うリスクがあります。 「手間なく確実に進めたい」「最初の設定で失敗したくない」という方は、数万円の手数料を払ってでも専門家に依頼するのが最も安全で確実です。時間は貴重な資源ですから、プロに任せて本業に集中するのも賢い選択です。 まとめ:マイクロ法人は諸刃の剣。専門家と相談し、慎重な判断を マイクロ法人は、個人事業主やフリーランス、副業を持つサラリーマンにとって、社会保険料や税金の負担を劇的に軽減できる可能性を秘めた強力なツールです。特に「二刀流」戦略は、手取りを最大化する有効な手段と言えるでしょう。 しかし、設立・維持コストや税務調査のリスクなど、多くのデメリットも存在します。メリットだけを見て安易に設立すると、かえって経営を圧迫しかねません。 成功の鍵は、①客観的な事業分離、②適切な役員報酬設定、③公私混同の排除の3点に尽きます。「自分の場合はどうなる?」と迷ったら、まずはEncoachのような専門家にご相談ください。最適な一歩を共に考えましょう。 -
会社の利益剰余金とは?目標目安や増やし方、マイナスのリスクをプロが解説
赤字が続いてもびくともしない会社がある一方、黒字なのに倒産してしまう会社も少なくありません。その命運を分けるのが、会社の「基礎体力」とも言える利益剰余金です。 この記事では、利益剰余金の基本から、倒産しない強い会社を作るための具体的な目標設定、増やし方まで、プロの視点で徹底解説します。 まずは結論!利益剰余金が多い会社と少ない会社の違い 利益剰余金とは、創業から現在までに会社が稼ぎ出した「利益の蓄積」のこと。この蓄積が十分にあるかどうかで、不測の事態への抵抗力や銀行からの評価に決定的な差が生まれます。 具体的にどのような違いが生じるのか、財務のプロが着目するポイントは以下の通りです。 【利益剰余金の多寡による比較】 比較項目利益剰余金が多い会社(内部留保が厚い)利益剰余金が少ない会社(内部留保が薄い)倒産抵抗力不況に強い過去の蓄積がクッションとなり、一時的な赤字でも持ちこたえられる。経営危機に脆い損失を吸収するバッファが薄く、わずかな赤字で資金ショートのリスクが高まる。銀行融資有利な条件を引き出せる<br>「自己資本が厚い」と評価され、低金利・無担保など好条件での調達が可能。審査が厳しくなる財務基盤が脆弱とみなされ、融資を断られるか、高い金利を求められる。成長投資「攻め」の経営が可能自己資金で投資できるため、チャンスを逃さず挑戦できる。機会損失のリスク日々の資金繰りが優先され、成長のチャンスでも投資資金を捻出できない。 このように、利益剰余金は単なる会計上の数字ではありません。不況時には会社を守る「防波堤」となり、平時には成長を加速させる「エンジン」となる、経営の安定装置そのものなのです。 💬 ひとことポイント利益剰余金は、その会社の過去の頑張りを記録した「通信簿」のようなものです。銀行や新規取引先は、今の売上だけでなく「過去にどれだけ利益を残してきたか(=利益剰余金)」を見て、信用できる相手かを判断しています。 そもそも利益剰余金とは?会社の「貯金力」を示す重要指標 利益剰余金という言葉は知っていても、経営にどう関わるのか正確に理解している経営者は意外と多くありません。ここでは基本的な考え方から決算書との関係性まで、以下の4つのポイントで解説します。 会社の「利益の蓄積」である 貸借対照表(B/S)の純資産にある 3つの要素で構成される 損益計算書(P/L)と連動する それぞれ詳しく見ていきましょう。 1. 利益剰余金は会社の「利益の蓄積」であり「内部留保」の中核 利益剰余金とは、会社が創業してから稼いだ利益から、税金や配当を支払った後に残った「利益の蓄積」です。ニュースなどで耳にする「内部留保」も、一般的にはこの利益剰余金を指します。 ただし、必ずしも「現金」として金庫に保管されているわけではありません。利益剰余金はあくまで計算上の「元手」であり、実際には設備(建物や機械)や在庫、売掛金など、さまざまな資産に形を変えて会社の中に存在しています。「利益=現金」ではない点には注意が必要です。 2. 貸借対照表(B/S)のどこにある?純資産の部を図解 利益剰余金は、決算書の一つである「貸借対照表(B/S)」で確認できます。貸借対照表は、「資産」「負債」「純資産」の3つで構成されていますが、利益剰余金はこのうち「純資産の部」に含まれます。 純資産は、株主が出資した「資本金」などと利益剰余金から成り立っており、銀行などへ返済する必要のない自己資本です。つまり、純資産に占める利益剰余金の割合が高いほど、会社の財務基盤は盤石であると言えます。 3. 利益剰余金を構成する3つの要素 利益剰余金は、大きく分けて以下の3つの要素で構成されています。それぞれの役割を理解することで、より深く資金の性格を把握できます。 利益準備金会社法で積み立てが義務付けられたお金です。配当を行う際、配当額の10分の1を積み立てる必要があります(資本金の4分の1に達するまで)。債権者を保護するためのルールです。 任意積立金会社が独自の目的(将来の設備投資など)のために、任意で積み立てるお金です。定款や株主総会の決議によって設定されます。 繰越利益剰余金当期の損益を加減算し、最終的に会社に残っている利益のプールです。ここから配当や積立金への振替が行われます。 4. 損益計算書(P/L)の「当期純利益」との関係性 利益剰余金は、「損益計算書(P/L)」と密接に連動しています。損益計算書で計算された最終利益である「当期純利益」が、貸借対照表の「繰越利益剰余金」に合流する仕組みです。 つまり、毎年黒字を出せば利益剰余金は雪だるま式に増え、赤字になれば取り崩されます。P/Lの成果(フロー)が、B/Sの体力(ストック)として蓄積される。この循環を理解し、毎年の利益を積み上げることが財務改善の第一歩です。 💬 ひとことポイント重要なのは「利益剰余金=現金」ではないということ。あくまで会計上の数字です。実際の現金の動きはキャッシュフロー計算書で確認し、「勘定合って銭足らず」にならないよう注意しましょう。 なぜ利益剰余金が重要なのか?会社を強くする3つの理由 利益剰余金は、ただの会計上の数字ではありません。会社の未来を左右する極めて重要な経営資源です。利益剰余金を積み上げていくことで、会社は以下の「守り」「攻め」「信用」という3つの力を手に入れることができます。 【守り】赤字でも「債務超過」を防ぐ 【攻め】リスクを取った投資が可能になる 【信用】銀行格付けが上がり融資が有利になる 具体的に解説します。 1.【守り】赤字でも「債務超過」を防ぎ、倒産リスクを下げる 十分な利益剰余金は、会社の財務を守る「防波堤」です。経営には売上の急減や災害など、予期せぬ事態がつきものですが、過去の蓄積があれば単年度の赤字を吸収できます。 もし蓄えが乏しいと、わずかな赤字で「債務超過(資産<負債)」に転落してしまいます。債務超過は金融機関からの信用を失墜させ、資金調達を困難にするため、倒産の直接的な引き金になりかねません。利益剰余金の厚みこそが、危機に対する最大の保険なのです。 2.【攻め】リスクを取った投資や借入が可能になる 利益剰余金(自己資本)の厚みは、成長のための「リスク許容度」を高めます。返済義務のない自己資本が充実していれば、万が一投資が回収できなくても会社は揺らぎません。そのため、経営者は大胆な意思決定が可能になります。 また、「利益剰余金が厚い=過去に利益を現金化してきた実績がある」ケースが多いため、手元資金でスピーディーに投資を実行できます。借入が必要な場合でも、自己資本が厚い会社は借入余力が大きいため、成長資金をスムーズに調達できるのです。 3.【信用】銀行格付けが上がり、融資条件が有利になる 利益剰余金の多さは、会社の「社会的信用度」の証明書です。金融機関が融資審査を行う際、企業の「格付け」を行いますが、ここで最も重視される指標の一つが「自己資本比率」です。 格付けが高いと、「融資の可否」だけでなく、「金利の引き下げ」や「無担保・無保証」など、有利な条件を引き出せる可能性が格段に高まります。利益剰余金を積み上げることは、銀行との交渉力を高め、より低コストで安定した資金調達を実現する最短ルートと言えるでしょう。 💬 ひとことポイント利益剰余金は「守り」だけでなく、未来への「攻め」の原資にもなります。このお金があるからこそ、思い切った事業投資や人材採用ができるのです。 あなたの会社は大丈夫?倒産しないための利益剰余金3つの目安 利益剰余金の重要性は理解できても、「具体的にいくら貯めればいいのか?」と迷う方もいるでしょう。ここでは、経営状態を判断する際に重視すべき3つのステップに沿って、目指すべき水準を解説します。 【最低ライン】利益剰余金のプラス化 【安全圏】月商の3ヶ月分 【業種別】ビジネスモデルに合った目標 自社の決算書と照らし合わせて確認してみてください。 1.【最低ライン】まずは「利益剰余金がプラス」を目指す 最初の目標は、利益剰余金の残高を「1円でも多くプラスにする(黒字化)」ことです。もしマイナスであれば、創業からの赤字が累積していることを意味し、その額が資本金を食いつぶすと「債務超過」という危険な状態になります。 債務超過は、銀行融資がストップする最大の要因であり、事実上の「倒産予備軍」です。まずは単年度の黒字を積み重ね、過去の赤字を解消して利益剰余金をプラスに転換することが、会社存続のための絶対条件です。 2.【安全圏】「月商の3ヶ月分」を目標にする 倒産しない強い会社を作るための標準的な目標は、利益剰余金を「月商の3ヶ月分」確保することです。多くの専門家が「手元資金として月商の3ヶ月分」を推奨していますが、これを実現する裏付けとなるのが同額程度の利益剰余金です。 例えば、月商1,000万円の会社なら、3,000万円の利益剰余金がある状態が理想です。これだけの蓄えがあれば、売上が急減するような危機的状況でも、半年〜1年程度は耐えられる体力が生まれます。まずは「月商の3倍」を合言葉にしましょう。 3.【業種別】ビジネスモデルに合った目標値を見つける より現実的な目標を設定するには、自社の「資金繰りの特徴」を考慮することが重要です。一概に売上比率で決めるのではなく、業種ごとの特徴に合わせて微調整しましょう。 飲食・小売業(日銭が入る):月商の1〜2ヶ月分現金が回りやすいため比較的少なくて済みますが、不況の影響を受けやすいため油断は禁物です。 建設・製造業(立替期間が長い):月商の3〜6ヶ月分支払いが先行するため、厚い運転資金が必要です。優良企業の自己資本比率は40〜50%と高水準です。 IT・コンサル業:月商の3ヶ月分以上固定費(人件費)が重いため、売上減が即赤字に繋がります。雇用を守るためにも厚めの蓄積が求められます。 💬 ひとことポイントまずはシンプルに「月商の3倍」を目標にしてみましょう。この水準をクリアできれば、銀行からの評価も格段に上がり、そう簡単には倒産しない「強い財務体質」になったと言えます。 利益剰余金がマイナス!債務超過が会社に与える3つのリスク もし利益剰余金がマイナスなら、経営の黄色信号。さらに資本金まで食いつぶし「純資産がマイナス(債務超過)」になると、会社は以下の3つのリスクに直面します。 銀行融資のハードルが上がる 取引先や条件を失う 資金ショートによる実質的倒産 それぞれの恐ろしさを解説します。 1. 銀行融資のハードルが極限まで上がる 債務超過は、銀行から「返済能力が欠如している」とみなされる最大の要因です。原則として格付けが「要注意先」以下に下がり、新規の融資を受けることは極めて困難になります。 「経営改善計画書」を提出して支援を受けられるケースもありますが、金利の上昇や追加担保の要求など、条件が厳しくなることは避けられません。資金調達の道が細ることは、会社の生命線が絶たれることに等しいのです。 2. 信用調査によって取引先や条件を失う 「中小企業の決算書は見られない」と高を括ってはいけません。帝国データバンクなどの信用調査会社を通じて、あなたの会社の財務状況(評点)は取引先に伝わります。 取引先が債務超過を知れば、「売掛金が回収できないかも」と警戒するのは当然です。その結果、突然の取引停止や、「掛け(後払い)」から「現金前払い」への変更を求められるなど、資金繰りを直撃する厳しい要求を突きつけられるリスクがあります。 3. 資金ショートによる「実質的倒産」が現実味を帯びる 債務超過そのものが倒産ではありませんが、倒産への最短ルートであることは間違いありません。追加融資が閉ざされ、取引条件も厳しくなれば、手元の資金(キャッシュ)は急速に枯渇します。 最終的に、従業員の給与や手形の決済ができず、資金ショートを起こした時点で会社は終わりを迎えます。利益剰余金のマイナスは、この最悪のシナリオへ向かう「スリップ事故」の始まりです。傷が浅いうちに、早期の黒字化対策を打つ必要があります。 💬 ひとことポイント利益剰余金のマイナスは、人間で言えば「出血」です。資本金という「輸血」があるうちは持ちこたえられますが、それが尽きれば(=債務超過)、命に関わる事態になります。一刻も早い止血(黒字化)が必要です。 利益剰余金を増やすための具体的な3つのステップ 利益剰余金を増やすことに魔法のような裏技はありません。しかし、場当たり的な経営ではなく、数字に基づいた正しいステップを踏めば、着実に会社の「基礎体力」を強化していくことが可能です。 多くの黒字企業が実践している、具体的な3つのステップを紹介します。 自社の「実力値」を把握する 「逆算思考」で利益目標を決める 税金を払って「内部留保」に残す 1.【Step1】まずは自社の「実力値」を正確に把握する 全ての戦略は、現在地を知ることから始まります。まずは直近の貸借対照表(B/S)を用意し、以下の2点をチェックしましょう。 残高はプラスか?:マイナスの場合は、あといくら利益を出せばゼロに戻せるのか把握します。 推移はどうなっているか?:過去3期分を比較し、「年々増えている」のが理想です。「横ばい」や「減少」の場合は、慢性的な収益力不足か、過度な節税・配当が原因の可能性があります。 2.【Step2】「逆算思考」で必要な利益目標を決める 「結果的に利益が出た」ではなく、「必要な蓄積額から逆算して利益を作る」のが強い会社の鉄則です。例えば、5年後に利益剰余金を3,000万円増やしたいなら、年間600万円の税引後利益(内部留保)が必要です。 ここからさらに逆算します。法人税率を約30%と仮定すると、税引前利益は約860万円(600万円÷0.7)必要になります。「目標とする内部留保額」→「必要な税引後利益」→「必要な税引前利益」→「必要な売上高」という順序で、根拠のある年間計画を策定しましょう。 3.【Step3】税金を払い、堂々と「内部留保」に残す ここが最大のポイントですが、利益剰余金とは「法人税を支払った後の残り」です。つまり、利益剰余金を最大化するためには、「適正に税金を払う」という痛みを伴う決断が不可欠です。 多くの経営者は「節税」に熱心になりますが、経費を使って利益を圧縮すれば、当然ながら会社に残るお金も減ります。「目先の税金を減らすこと」と「将来のために会社にお金を残すこと」はトレードオフの関係。「今年は会社を強くするために、あえて節税せずに税金を払う」といった戦略的な判断が求められます。 💬 ひとことポイント過度な節税は、会社の体力を奪う「麻薬」になりかねません。「税金は、会社を強くするための必要経費(内部留保コスト)」と割り切り、堂々と利益を計上する勇気を持ちましょう。 利益剰余金の管理・目標設定にお悩みならEncoachへ 「利益剰余金の重要性はわかったけれど、自社だけで管理するのは難しい」「具体的な目標設定や利益計画の立て方がわからない」そんなお悩みをお持ちの経営者の方も多いのではないでしょうか。 Encoach株式会社では、そんな経営者の皆様に寄り添い、会社の成長をサポートする財務コンサルティングを提供しています。 財務のプロがあなたの会社の課題を正確に可視化します 私たちは、元大手税理士法人で1000社以上の経営者と向き合ってきた財務のプロフェッショナルです。貴社の決算書を拝見すれば、どこに課題があり、どこに成長のポテンシャルが眠っているのかを正確に読み解くことができます。 感覚的な経営から脱却し、数字に基づいた的確な意思決定ができるよう、財務状況をわかりやすく「可視化」します。会社の健康状態を正しく把握し、次の一手を打つための羅針盤を提供します。 事業計画策定から資金繰り改善まで伴走型でサポート Encoachのコンサルティングは、単なるアドバイスではありません。事業計画や資金繰り表の作成、月次の予実管理まで、経営者と二人三脚で進める「伴走型」のサポートが特徴です。 財務知識に自信がない方でも、私たちが隣でサポートしますのでご安心ください。経営者が本業に集中できる環境を整えながら、質の高いPDCAサイクルを回し、着実に会社を成長軌道に乗せていきます。 利益剰余金に関するよくある5つの質問 最後に、利益剰余金に関して経営者の方からよく寄せられる質問にお答えします。多くの人が疑問に思うポイントを解消し、理解をさらに深めていきましょう。 Q1. 利益剰余金は「現金」として金庫にあるのですか? いいえ、必ずしも現金として存在するわけではありません。利益剰余金はあくまで「過去にこれだけ利益を生み出した」という計算上の記録です。その利益(お金)が今どうなっているかは、貸借対照表の「資産の部」を見る必要があります。 例えば、利益剰余金が1億円あっても、その多くが建物や機械、あるいは売れていない在庫に形を変えている場合、手元の現金はほとんどないこともあり得ます。これを「勘定合って銭足らず」と言います。会社の安全性を測るには、利益剰余金の額だけでなく、すぐに使える「現預金」がどれだけあるかもセットで確認しましょう。 Q2. 利益剰余金を増やすには、結局どうすればいいですか? シンプルに言えば、「税金を払った後の利益(税引後利益)」を積み上げるしかありません。利益剰余金は、売上から全ての経費を引き、さらに法人税等を支払った後の「残りカス」です。したがって、増やす方法は以下の2つに集約されます。 本業で利益を出す:売上アップ、コスト削減で税引前利益を最大化する。 社外流出を抑える:配当金や過度な役員報酬の増額を控え、会社内に資金を留める。 魔法のような裏技はありません。地道に利益を出し、税金を払い、内部留保として残し続ける。これが唯一にして最短の道です。 Q3. 役員報酬を増やすのと、利益剰余金を貯めるのはどちらが優先ですか? 会社の財務基盤が弱いうちは、「利益剰余金」を優先すべきです。役員報酬を増やせば、個人の手取りは増え、会社の利益(法人税)は減らせますが、会社の純資産は増えません。 会社が赤字や債務超過の状態で役員報酬を高く取りすぎると、銀行からの融資が受けられなくなるリスクがあります。まずは利益剰余金を「月商の3ヶ月分」程度まで貯め、会社が倒産しない体力をつけてから、役員報酬での還元を検討するのが経営のセオリーです。 Q4. 個人事業主の場合、利益剰余金という考え方はありますか? 正確にはありませんが、「元入金(もといれきん)」がそれに近い役割を果たします。個人事業主の決算書(青色申告決算書)には利益剰余金という項目はありませんが、事業の元手である「元入金」が、前年の利益や事業主借・貸の精算を経て毎年変動します。 法人における「資本金+利益剰余金」の役割を、個人では「元入金」が担っていると考えてください。この元入金が年々増えている個人事業主は、健全な経営ができている証拠です。 Q5. 利益剰余金が多いと税務調査で狙われやすくなりますか? 「多いから」という理由だけで狙われることはありません。むしろ利益剰余金が多いのは、過去に正しく申告・納税してきた優良企業の証でもあります。税務署が注視するのは、「売上規模に対して利益率が異常に低い」「売上が急増しているのに利益が変わらない」といった不自然な変動です。 ただし、多額の利益剰余金があるのに、それが「使途不明金」や「貸付金」などに化けている場合は、厳しくチェックされる可能性があります。クリーンな会計処理であれば、積み上げること自体を恐れる必要はありません。 まとめ:利益剰余金は会社の「履歴書」であり「命綱」 この記事では、利益剰余金の仕組みから、具体的な目標設定、そして増やし方までを解説してきました。 最後に改めて強調したいのは、「利益剰余金は、会社が生き残るための命綱である」ということです。 守り: 赤字や不況から会社を守る防波堤になる 攻め: 成長投資や融資を引き出す信用力になる 継続: 毎年の納税と内部留保の積み重ねが、強い会社を作る 目先の節税に走って利益を消してしまうのではなく、堂々と税金を払い、胸を張って利益剰余金を積み上げていく。その経営判断こそが、あなたの会社を10年、20年と続く強い企業へと育てていくはずです。 -
持ち家を自宅兼事務所にして年間124万円節税!経費にできる項目と社宅スキームを解説
「持ち家でも経費にできるの?」「住宅ローン控除はどうなる?」個人事業主や法人経営者にとって、自宅兼事務所の活用は節税の大きなチャンスです。 しかし、ルールを誤ると税務調査で否認されるリスクも。この記事では、経費計上の基本から、年間124万円もの効果を生む「社宅スキーム」まで、財務のプロが徹底解説します。 【1分で診断】あなたの持ち家はどこまで経費にできる? まずは簡単な5つの質問で、あなたが今すぐ何をすべきか診断してみましょう。ご自身の状況に最も近い選択肢を選んでください。 現在の事業形態は?A. 個人事業主B. 法人経営者 住宅ローンの状況は?A. 住宅ローン控除を受けているB. 住宅ローンはない(完済済み・控除期間終了) 事業で自宅を使用する割合は?A. 50%未満(または10%程度)B. 50%以上 年間の事業所得(個人の場合)または役員報酬(法人の場合)は?A. 800万円未満B. 800万円以上 経理や税務の手続きは?A. 自分でやっている、またはこれからやるB. 税理士に任せている 診断A:今すぐ「事業割合10%」を目指すべき個人事業主 1-A〜5-Aに多く当てはまる方は、「住宅ローン控除」を最大限活用する戦略が鉄則です。 実は、事業用部分を床面積の10%以下に抑えれば、住宅ローン控除を満額受けつつ、その10%分を経費に計上できる特例があります。逆に、不用意に50%以上にすると控除が全額消滅するため注意が必要です。 まずは「家事按分(生活費と事業費を分けること)」の基礎を学び、控除と経費の「いいとこ取り」を目指しましょう。 診断B:情報収集から始めるべき個人事業主 まだ事業を始めたばかりの方や経費計上に不安がある方は、正しい知識の習得が急務です。 特に電気代や通信費などの家事按分は、税務調査で最もチェックされやすい項目。「なんとなく50%」ではなく、使用時間や面積といった客観的な根拠を記録として残すことが身を守ります。 まずはこの記事で解説する計算ルールを理解し、根拠のある節税対策をスタートさせましょう。 診断C:「法人への売却」検討も視野に入る法人経営者 Bの項目が多い方は、個人所有の自宅を会社に売却し「社宅」にする方法を検討してください。 建物の減価償却費や固定資産税、修繕費などを法人の経費にできる上、社長個人の家賃負担を相場の10〜20%程度に抑えられる可能性があります。 ただし、移転コストやローンの借り換えが必要になるため、長期的なメリットがコストを上回るかシビアな計算が必要です。 💬 ひとことポイント個人事業主なら「事業割合10%以下」でローン控除フル活用が定石。法人経営者の「持ち家社宅化」は、登記費用や税金などの移転コストも含めた損益計算が必須です。 【徹底比較】個人事業主の「家事按分」と法人の「社宅スキーム」の違い 持ち家を経費にする方法は、個人事業主と法人で大きく異なります。それぞれの特徴を理解し、どちらが自分にとって有利なのかを把握しましょう。 比較項目個人事業主(家事按分)法人(社宅スキーム:所有型)経費にできる金額事業で使用する割合のみ(例:全体の20〜30%)建物等の維持費全額(減価償却費、固定資産税など)個人の実質負担住宅ローンの大半は個人負担相場の10〜20%程度(賃料相当額のみ負担)手続きの難易度比較的簡単(按分計算の根拠作成のみ)非常に高い(売却登記、銀行交渉など)節税効果限定的非常に大きい住宅ローン控除併用可能(事業割合10%以下なら満額)併用不可(法人へ売却するため適用外) 1. 個人事業主の場合:狙い目は「事業割合10%」でのローン控除フル活用 個人事業主の基本は、自宅費用のうち事業で使った分だけを経費にする「家事按分」です。 しかし、住宅ローン控除を受けている場合は要注意。事業割合が50%を超えると控除がゼロになります。一方、事業割合を10%以下に抑えれば、住宅ローン控除を満額受けながら、その10%分を経費にする「いいとこ取り」が可能です。 節税効果を最大化するには、このバランス調整がカギとなります。 2. 法人の場合:維持費を経費にしつつ、個人負担を激減させる 法人なら、社長個人の持ち家を会社が買い取る「社宅スキーム(所有型)」が強力です。 建物が法人名義になるため、減価償却費や固定資産税、保険料などの維持コストをすべて法人の経費にできます。社長個人は「賃料相当額」を会社に支払いますが、これは市場家賃の10〜20%程度で済みます。 会社は経費増で法人税を減らし、社長は手取りを減らさずに住居費を抑えられる、まさに一石二鳥の仕組みです。 💬 ひとことポイント手軽に住宅ローン控除と経費を併用したいなら「個人事業主(按分10%)」、移転コストをかけてでも数百万円単位の節税を狙うなら「法人化(社宅)」が正解です。法人の場合は銀行ローンの借り換えハードルが高い点もお忘れなく。 【基礎編】個人事業主向け!持ち家で経費にできる7つの項目 個人事業主が持ち家を経費にする際の基本は「家事按分」です。ここでは、代表的な7つの項目について解説します。 減価償却費 固定資産税・都市計画税 住宅ローンの金利 火災保険料・地震保険料 水道光熱費 通信費 修繕費・リフォーム費用 これらの費用を漏れなく、かつルール通りに計上することが節税の第一歩です。それぞれ見ていきましょう。 1. 減価償却費:建物部分を経費にする 持ち家は時の経過とともに価値が減少します。この減少分を、法定耐用年数に応じて毎年経費にするのが「減価償却費」です。 土地は価値が減らないため対象外ですが、建物部分は経費化できます。例えば、3,000万円で購入した木造住宅(耐用年数22年)のうち、建物価格が1,500万円だった場合、定額法の償却率0.046を掛けて計算します。 購入時の売買契約書で「建物価格」を確認し、正しく計算しましょう。 2. 固定資産税・都市計画税:納税額の一部を経費に 毎年支払う固定資産税や都市計画税も、家事按分の対象です。 納税通知書に記載されている税額のうち、事業で使用している割合(面積比や時間比)を経費として計上できます。固定資産税は土地と建物それぞれにかかりますが、どちらも按分計算の対象となります。 納税通知書は捨てずにしっかり保管し、事業割合を乗じて忘れずに計上しましょう。 3. 住宅ローンの金利:控除との「両取り」を意識 住宅ローン返済中の方は、返済額のうち**「利息部分」のみ**を経費にできます(元本は経費になりません)。 重要なのは「住宅ローン控除」との兼ね合いです。事業割合が50%を超えると控除が受けられなくなりますが、10%以下に抑えれば控除を満額受けつつ、その10%分の金利を経費にできます。 控除期間中は、欲張らず「10%経費」に留めるのが賢い選択です。 4. 火災保険料・地震保険料:経費と控除を使い分ける 建物にかけている火災保険料や地震保険料も、事業割合分を経費にできます。 特に地震保険料については、「事業用部分は経費(損害保険料)」、「居住用部分は所得控除(地震保険料控除)」として明確に区分して申告する必要があります。 例えば、地震保険料が2万円で事業割合が30%の場合、6,000円は経費、残りの1万4,000円は地震保険料控除の対象となります。二重計上はできないので注意しましょう。 5. 水道光熱費:基本は「電気代」のみ 水道光熱費も経費になりますが、デスクワーク中心の事業であれば、経費として認められやすいのは主に**「電気代」**です。 水道代やガス代については、料理教室や美容室など、業務で直接使用する明確な理由がない限り、税務調査で否認されるリスクがあります。 電気代については、使用時間やコンセントの数、あるいは使用面積などで合理的な按分基準を設けて計上しましょう。 6. 通信費:インターネット・固定電話代を按分 インターネット回線の使用料や固定電話の基本料金も、家事按分の対象です。これらは使用日数や時間で按分するのが一般的です。 例えば、週5日稼働であれば「週7日のうち5日=約70%」を事業割合とするなど、実態に即した基準を設定します。スマートフォンの料金も、業務通話の履歴などが明確であれば按分可能です。 プライベート利用と混在しやすい項目なので、説明できる基準を持っておくことが大切です。 7. 修繕費・リフォーム費用:事業に関連する部分のみ 持ち家の修繕費やリフォーム費用も、経費にできる可能性があります。 例えば、仕事部屋の壁紙の張り替えや、業務用の空調設備の修理などは全額経費にしやすい項目です。一方、屋根や外壁の塗装など家全体に関わる修繕は、事業割合で按分します。 なお、建物の価値を高めるような大規模なリフォームは「資本的支出」とみなされ、一括経費にできず減価償却が必要になる場合があるため注意してください。 💬 ひとことポイント個人事業主の経費化は「家事按分」がすべて。特に「事業割合10%」での住宅ローン控除との併用テクニックは効果絶大です。水道光熱費は「電気代」を中心に、根拠のある計上を心がけましょう。 【図解】家事按分の計算方法|面積と時間で合理的に按分する2つの基準 家事按分で最も重要なのは「客観的で合理的な基準」で事業割合を計算することです。 税務調査で「なぜこの割合なのですか?」と聞かれた際に、明確に説明できなければなりません。ここでは、代表的な2つの計算基準を解説します。 面積基準(主に建物関連費用) 時間基準(主に光熱費・通信費) それぞれの使い分けを見ていきましょう。 1. 面積基準:事業で使うスペースの割合で計算 面積基準は、自宅全体の床面積のうち、事業専用で使っているスペースの面積が占める割合で計算する方法です。 主に、地代家賃、減価償却費、固定資産税、火災保険料など、建物そのものにかかる費用を按分する際に用います。リビングの一角などプライベートと区分できない空間は認められないリスクがあるため、間取り図などで「事業専用部屋」であることを示せるようにしましょう。 計算式:事業専用スペースの面積 ÷ 自宅全体の面積 = 事業使用割合 2. 時間基準:事業で使う時間の割合で計算 時間基準は、1日(または1週間・1ヶ月)のうち、事業を行っている時間の割合で計算する方法です。 主に、電気代やインターネット通信費など、利用頻度に応じて発生する費用を按分する際に用います。「週の稼働日数」や「1日の活動時間に対する業務時間」で算出します。 いずれの場合も、日々の業務時間を記録した日報や、使用実績がわかる資料を残しておくことが重要です。 計算式:事業で使用した時間 ÷ 全体の時間 = 事業使用割合 💬 ひとことポイント家賃などは「面積」、通信費などは「時間」や「日数」での按分が基本。電気代は使用状況に合わせて選びましょう。最も重要なのは、税務署に「なぜその割合なのか」を説明できる根拠(間取り図や業務記録)を残すことです。 【上級編】年間124万円の節税も!持ち家を社宅にして経費を最大化するスキーム 個人事業主の家事按分では満足できない、もっと大きな節税をしたい、という法人経営者におすすめなのが「社宅スキーム」です。 これは、経営者個人の持ち家を法人に売却、または法人が借り上げて、役員社宅として利用する方法です。正しく活用すれば、大きな節税効果が期待できます。 1. なぜ社宅制度が強いのか?個人事業主の家事按分との決定的違い 社宅スキームが強い理由は、経費にできる範囲の広さにあります。 個人事業主の家事按分では事業使用割合(30%など)しか経費にできませんでした。しかし、法人所有の社宅にすれば、建物にかかる維持費(減価償却費、固定資産税、保険料、修繕費、借入金利息など)の多くを法人の経費に計上できます。 社長個人は、税法で定められた「賃料相当額」を会社に支払うだけで済み、実質的な住居費負担を大幅に抑えられます。 2. 【シミュレーション】年間124万円の経費を生み出す仕組みとは? 実際にどれくらいの効果があるのでしょうか。建物価格2,000万円(木造、耐用年数22年)の持ち家を社宅にしたケースで試算します。 減価償却費:約91万円 固定資産税:約25万円 火災保険料など:約8万円 法人の経費合計:約124万円 ここから、社長が法人に支払う社宅家賃を差し引いた残額が、法人の節税メリットとなります。さらに社長個人にとっては、固定資産税などの支払いがなくなり、手取りが増える効果もあります。 3. 【重要】持ち家を法人に売却して社宅化する4ステップと注意点 持ち家を社宅化する一般的な方法は、社長個人から法人へ自宅を売却することです。ただし、個人の住宅ローンが残っている場合は要注意です。 金融機関との調整:法人への名義変更は契約違反になるため、借り換え等の承諾が必要。 不動産売買契約:適正価格(時価)での契約が必要。鑑定評価が推奨されます。 所有権移転登記:法務局で移転登記。不動産取得税や登録免許税が発生します。 賃貸借契約:法人と社長個人の間で、社宅契約を結びます。 4. 役員負担は1〜2割?「賃料相当額」の計算方法 社長が法人に支払う家賃(賃料相当額)は、国税庁の定める計算式で算出します。「小規模な住宅」(木造などで床面積132㎡以下)の場合、以下の3つの合計額となります。 (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)× 0.2% 12円 ×(その建物の総床面積(㎡)/ 3.3㎡) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 0.22% この計算式で算出される金額は、市場家賃よりも大幅に安くなるケースが多く、その差額が実質的なメリットとなります。 💬 ひとことポイント社宅スキームは強力ですが、住宅ローンの完済や移転コスト(不動産取得税など)、売却時の譲渡所得税など、導入ハードルも高い手法です。トータルで得するかどうか、必ず税理士とシミュレーションを行いましょう。 【要注意】持ち家を経費化する際に失敗しないための4つのチェックリスト 持ち家の経費化はメリットが大きい反面、ルールを間違えると税務調査で指摘され、追徴課税を受けるリスクもあります。ここでは、失敗しないために最低限確認すべき4つのポイントを解説します。 住宅ローン控除との併用は可能か? 按分割合の根拠は明確か? 青色申告を選択しているか? 社宅スキームの売却価格は適正か? 1. 住宅ローン控除との併用は可能か?(最重要) 個人事業主の場合、事業割合の設定に最大の注意が必要です。 50%以上:住宅ローン控除は全額適用外。 10%〜50%未満:控除額が減額(居住部分のみ適用)。 10%以下:住宅ローン控除を全額受けられます。 多くの場合、事業割合を高く設定して経費を増やすよりも、住宅ローン控除をフル活用する方がトータルの節税効果が高い傾向にあります。必ずシミュレーションを行いましょう。 2. 按分割合の根拠は明確に説明できるか? 税務調査で最もチェックされやすいのが「按分割合の合理性」です。客観的な証拠なしに「なんとなく30%」と設定するのは危険です。 面積基準なら「事業専用スペースを明示した間取り図」、時間基準なら「業務時間を記録した活動報告書」などの準備が有効です。プライベートと混在するリビングなどは、原則として按分の対象外となるリスクが高い点も押さえておきましょう。 3. 青色申告と白色申告での取り扱いの違いは? 青色申告と白色申告では、家事按分の認められやすさに違いがあります。 青色申告:取引記録等で業務遂行上必要であることが明らかにできれば経費計上可能。 白色申告:原則、事業割合が「おおむね50%超」でなければ計上不可。 自宅兼事務所で事業を行うなら、経費計上の範囲が広く、特別控除などのメリットもある青色申告を選択することを強く推奨します。 4. 社宅スキームのデメリットと注意点は? 社宅スキーム導入時、個人から法人へ自宅を売却する「売却価格」の設定は慎重に行う必要があります。 時価より著しく低い価格(低額譲渡)や高い価格で売買すると、法人税の対象になったり、役員賞与とみなされたりするリスクがあります。単なる「売買」にとどまらず、思わぬ税金がかかる恐れがあるため、不動産鑑定士や税理士による適正な価格算定が不可欠です。 💬 ひとことポイント「住宅ローン控除」との兼ね合いは最大の落とし穴です。事業割合を増やして目先の経費を作るより、住宅ローン控除(10〜13年間)を維持した方が得なケースが大半です。必ず比較計算を行いましょう。 自宅兼事務所の経費化・法人化でお悩みならEncoachの財務コンサルティングへ 「自分に最適な方法がわからない」「具体的な節税額を知りたい」持ち家の経費化に関する悩みは尽きないものです。そんな時は、私たちEncoachの財務コンサルタントにお任せください。1,000社以上の支援実績を持つ財務のプロが、あなたの状況を徹底的に分析します。 財務のプロがあなたの状況に合わせた最適な節税プランを無料でシミュレーション Encoachでは、お客様一人ひとりの状況に合わせて、個人事業主のまま家事按分をすべきか、法人化して社宅スキームを導入すべきか、具体的な数値を基に無料でシミュレーションいたします。 住宅ローンの残高や所得状況、将来のライフプランまで考慮し、あなたにとって最も有利な選択肢をご提案。「なんとなく」ではない、データに基づいた最適な節税プランを一緒に考えましょう。 複雑な按分計算から法人設立・社宅制度導入までワンストップでサポート 家事按分の面倒な計算や、社宅スキーム導入に伴う法人設立、不動産登記、各種契約書の作成まで、Encoachがワンストップでサポートします。 あなたは本業に集中しているだけで、気づけば最適な節税が実現している。そんな理想の環境をご提供するのが私たちの役目です。税務調査にも堂々と対応できる、盤石な体制を一緒に作り上げましょう。 まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください 少しでも興味をお持ちいただけましたら、まずはお気軽に無料相談へお申し込みください。無理な勧誘は一切いたしません。あなたの会社の財務状況を改善するための、有益な情報をご提供することをお約束します。 「話を聞いてみるだけ」でも大歓迎です。あなたの勇気ある一歩が、会社の未来を大きく変えるかもしれません。下記のリンクから、今すぐお問い合わせください。 💬 ひとことポイント財務の悩みは、一人で抱え込んでも解決しません。専門家は、あなたが思いもよらない視点や解決策を知っています。無料相談は、あなたの会社を次のステージへ進めるための、最も確実で簡単な方法です。 自宅兼事務所の経費に関するよくある5つの質問 最後に、自宅兼事務所の経費に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。あなたの疑問も、ここで解決するかもしれません。 Q1. 持ち家をリフォームした場合の費用は経費にできますか? A1. はい、内容や金額によって可能です。原状回復(壊れた箇所を直す)のための費用であれば「修繕費」として一括で経費にできます。目安として60万円未満、または修繕周期が約3年以内のものが該当します。ただし、価値を高める大規模なリフォームは資産計上が必要です。 Q2. 住宅ローンを完済している場合はどうなりますか? A2. 節税の選択肢が大きく広がります。住宅ローン控除との兼ね合いを気にする必要がなくなるため、個人事業主であれば事業割合を50%以上に設定し、経費を最大化しやすくなります。法人経営者の場合も、銀行の承諾ハードルがなくなるため、社宅スキーム導入の絶好の機会です。 Q3. 親名義の持ち家を事務所として使っている場合、経費にできますか? A3. 「生計を一にしているか」で扱いが異なります。親と生計を別にしていれば、支払った家賃を経費にできます。しかし、同居などで**生計を一にしている場合、家賃は経費にできません。**その代わり、親が負担している固定資産税等のうち、事業使用分を経費として計上可能です。 Q4. 税務調査で按分割合を否認されないためにはどうすればいいですか? A4. 「客観的で合理的な根拠」を資料として残すことが最重要です。面積基準であれば事業用スペースを色分けした間取り図、時間基準であれば業務日報などを必ず用意しましょう。「なぜその割合になるのか」を第三者に論理的に説明できる資料があれば、それが最大の防御策となります。 Q5. 法人化して社宅にする場合、どのくらいの費用がかかりますか? A5. 法定費用として数十万円〜が必要です。法人設立の実費(約6〜25万円)に加え、自宅を法人へ移すための登記費用(登録免許税・司法書士報酬)や不動産取得税が発生します。トータルで数十万〜100万円程度の初期コストを見込み、回収可能かシミュレーションしましょう。 まとめ:持ち家の経費化はルール理解が必須!専門家と相談して最適な節税を実現しよう 今回は、持ち家を自宅兼事務所として経費にする方法について、個人事業主向けの「家事按分」から、法人向けの「社宅スキーム」まで解説しました。 個人事業主:減価償却費や固定資産税などを合理的に按分する。ローン控除があるなら「事業割合10%以下」を検討。 法人経営者:大きな節税なら「社宅スキーム」。ただし移転コストや手続きの複雑さを考慮する。 どちらを選択するにせよ、最も重要なのは「ルールを正しく理解し、客観的な根拠に基づいて処理する」ことです。この記事を参考に、あなたの会社に最適な節税方法を見つけ、力強い経営を実現してください。 -
旅費規程で年間100万円の節税も!財務のプロが教える作成方法と8つのステップ
「出張のたびに経費精算が面倒」「日当の基準が曖昧で社員から不満が出た」。経営者なら一度は抱える悩みですが、実は「旅費規程」一つで解決できるかもしれません。 旅費規程は単なるルールブックではありません。正しく運用すれば、年間100万円以上の節税効果を生み出し、経理業務を劇的に効率化する「最強の経営ツール」となります。1000社以上の財務改善を支援してきたプロの視点から、税務調査で否認されない作成方法を徹底解説します。 まずは結論!旅費規程を導入すべき会社とそうでない会社 旅費規程は会社と個人の双方に「節税」と「業務効率化」のメリットをもたらしますが、すべての事業者に適しているわけではありません。特に「個人事業主(本人利用)」は制度の対象外となるため注意が必要です。自社が導入すべきかどうか、以下の表でチェックしてみましょう。 項目旅費規程を導入すべき会社(向いている)導入できない、または慎重に検討すべき会社事業形態法人(一人社長などの小規模法人も含む)個人事業主・フリーランス(※事業主本人には日当を出せません)出張頻度社長や役員、従業員の出張が多い(目安:年数回以上の宿泊や遠距離移動がある)出張がほとんどない(年に1〜2回程度、近場のみなど)財務状況黒字決算で、手元のキャッシュに余裕がある(法人税等の節税メリットを享受したい)赤字続き、または資金繰りが厳しい(日当支給によるキャッシュアウトが負担になる)管理体制経費精算の手間を削減したい運用ルール(出張報告書など)を守れる社内ルールの管理・作成が苦手<br>どんぶり勘定で済ませたい もしあなたの会社が「導入すべき会社」に当てはまるなら、この先を読み進める価値は十分にあります。一度作ってしまえば、「会社は経費算入(法人税・消費税減)」「個人は非課税収入(所得税・住民税ゼロ)」というダブルの恩恵を受け続けられる強力な武器となるでしょう。 💬 ひとことポイント個人事業主の方はご自身への日当支給が認められないため、従業員を雇っていない限り導入のメリットはありません。また、法人の一人社長であっても「カラ出張」を疑われないよう、出張報告書の作成など厳格な運用が求められます。 そもそも旅費規程とは?会社と社員の双方にメリットがある最強の節税策 なぜ旅費規程が「最強の節税策」と呼ばれるのか。その理由は、経費としての認められ方と、会社・個人の双方にかかる税負担を同時に減らせる仕組みにあります。ここでは、以下の3つのポイントに分けて解説します。 なぜ「経費」として認められるのか 4つの税金が安くなる仕組み 規程がない場合のリスク それぞれ詳しく見ていきましょう。 1. 旅費規程の基本!なぜ「経費」として認められるのか? 旅費規程とは、役員や従業員が出張する際のルールを定めた社内規程のことです。この規程に基づいて支給される「出張手当(日当)」は、税金の計算上、給与ではなく「実費弁償(実際にかかった費用の穴埋め)」として扱われます。 出張には食事代や通信費、細かな移動費など、領収書の取りにくい細かな出費がつきもの。税務署も「社会通念上妥当な金額」であれば、これらを実費相当とみなし、受け取る個人に対して「非課税所得」とすることを認めているのです。この非課税の枠組みを合法的に活用することが、節税の基本となります。 2.【図解】4つの税金(法人税・消費税・所得税・社会保険料)が安くなる仕組み 旅費規程の最大のメリットは、一つの税金だけでなく、会社と個人のキャッシュフローに関わる「4つの負担」を同時に軽減できる点です。 法人税:日当は全額「旅費交通費」として経費(損金)にできるため、会社の利益が圧縮され税金が減ります。 消費税:国内出張の日当は「課税仕入れ」扱いとなり、会社が納める消費税から控除可能です(※海外出張は対象外)。 所得税・住民税:受け取る社員にとって「給与」ではなく「実費弁償」となるため、税金がかかりません。 社会保険料:労働の対価ではないため、原則として社会保険料の計算基準(標準報酬月額)に含まれず、会社・社員双方の保険料負担が増えません。 例えば、社長に月数万円の日当を支給した場合、同額を役員報酬として増額するケースに比べ、年間で数十万円〜100万円規模の手残り金額(会社+個人)の差が生まれることも珍しくありません。 3. 旅費規程がない場合のリスクとは? 逆に、旅費規程を作らずに社長の判断で都度「出張手当」を支給したらどうなるでしょうか。この場合、税務調査で「役員への臨時ボーナス(役員賞与)」とみなされる可能性が極めて高くなります。 役員賞与と判断されると、以下の「往復ビンタ」を受けます。 会社側:経費(損金)として認められず、その分に法人税が課される(損金不算入)。 個人側:給与所得として課税され、所得税・住民税・社会保険料が増える。 従業員への支給でも、規程がないと給与認定され、源泉徴収漏れを指摘されるリスクがあります。明確なルールなき支給は、節税どころかペナルティを招く危険な行為なのです。 💬 ひとことポイント「手取りを増やしたいから日当を出す」という動機でもOKですが、必ず「文書化されたルール(規程)」という防具を装備し、株主総会等での決議を経てから実行しましょう。 節税だけじゃない!旅費規程がもたらす4つの経営メリット 旅費規程の魅力は節税だけにとどまりません。実は、会社の経営基盤そのものを強くする、実務的なメリットが4つ存在します。 業務効率化(インボイス対応の負担軽減) 公平性の確保(不満の解消) コスト管理(予算の固定化) 採用力強化(福利厚生の充実) これらを理解することで、旅費規程の真の価値が見えてきます。 1.【業務効率化】インボイス対応の負担減!精算事務を劇的にスリム化 実費精算の場合、経理担当者は従業員から回収した領収書が「適格請求書(インボイス)」の要件を満たしているか、登録番号や税率を一枚ずつ確認しなければなりません。 しかし、旅費規程に基づいて支給する出張旅費等(日当・宿泊費・交通費)には、消費税法上の「出張旅費特例」が適用されます。これにより、会社はインボイス(領収書)の保存が不要となり、一定事項を記載した「帳簿のみの保存」で仕入税額控除が可能になります。 「領収書の厳格なチェック」という膨大な事務作業から解放されることは、制度導入後の現在において、節税以上に大きなメリットと言えるでしょう。 2.【公平性の確保】社員の不満をなくし、エンゲージメント向上 「A部長は高級ホテルなのに、自分はビジネスホテル」「出張のたびに精算ルールが変わる」。こうした曖昧さは、社員の不公平感やモチベーション低下を招きます。 旅費規程は、役職や出張先に応じた明確な「ものさし」となります。全社員に適用される公平なルールがあることで、「誰が行っても同じ基準」という納得感が生まれ、社員は安心して業務に集中できます。組織の透明性を高めることは、会社への信頼感にも直結します。 3.【コスト管理】予算の「見える化」と社員のコスト意識向上 実費精算では、繁忙期などで宿泊費が高騰すると、会社の経費負担も青天井になりがちです。旅費規程で宿泊費を「定額支給」にすれば、出張1回あたりのコストが固定化され、予算管理が容易になります。 さらに、社員には「規定額より安く泊まれば、差額は自分の手取りになる」というインセンティブが働くため、無駄に高いホテルを避け、自発的にコストを抑えようとする意識が芽生えます。結果として、会社全体の無駄な出費が抑制される効果が期待できます。 4.【採用力強化】「手取りが増える」福利厚生としてアピール 優秀な人材の獲得競争が激化する中、旅費規程は強力な採用ツールになります。求職者に対し、「当社には出張手当があり、非課税で手取り収入が増える仕組みがある」と具体的にアピールできるからです。 これは単なる給与額の提示以上に、「社員の税金や手取りのことまで考えてくれる会社」というポジティブなメッセージとなります。特に出張が多い営業職などの採用では、他社との差別化を図る決定打になり得ます。 💬 ひとことポイント「出張=疲れるもの」から「出張=少しお小遣いが増える楽しみ」に変われば、社員のフットワークも軽くなり、結果として営業成績や現場対応力の向上にもつながります! 税務調査で否認されない旅費規程の作り方8つのステップ それでは、具体的な作成方法を見ていきましょう。税務調査で「これは認められません」と言われないためには、正しい手順とポイントを押さえることが不可欠です。以下の8つのステップに沿って進めれば、誰でも安全な規程が作成可能です。 目的と範囲の明確化 出張の定義 旅費の種類 金額設定 役職差の設定 手続きの決定 承認と届出 周知と保管 順に解説します。 Step1. 規程の「目的」と「適用範囲」を明確にする まず冒頭で「何のためのルールなのか」を宣言します。「役員及び従業員が出張する際の手続きと基準を定めるものである」といった一文を入れましょう。 次に適用範囲ですが、原則として「全役員・全従業員」を対象にします。「社長だけ」といった特定の人物のみを対象にすると、給与とみなされ否認されるリスクが高まります。 ※注意:パート・アルバイトを出張させる可能性がある場合、一律に対象外とすると「同一労働同一賃金」の観点で問題になることがあります。業務実態に合わせて適用するか、別途ルールを設けましょう。 Step2. 「出張」の定義を具体的に定める(距離・時間) 次に、「どのような場合に『出張』とみなすか」という線引きを明確にします。ここが曖昧だと、現場での混乱や税務署との見解の相違を生みます。一般的には「直線距離」や「移動距離」で定義します。 【定義の例】 距離基準:「勤務地から片道100km以上(または50km以上)の移動を伴う業務」 時間基準:「移動・業務を含め○時間以上の拘束がある場合」 自社のエリア事情に合わせて、誰もが迷わない定義を設定しましょう。 Step3. 支給する旅費の種類を決める(交通費・宿泊費・日当) 旅費規程で支給する費用の種類を定義します。 交通費:電車、飛行機、タクシー代などの実費 宿泊費:ホテル代や旅館代(定額支給または実費上限) 日当(出張手当):出張中の食事代や少額の雑費を補填するもの この他、海外出張時の「支度金(パスポート取得費等の補填)」や、長期出張の「赴任手当」なども定めることが可能です。 Step4. 【最重要】日当・宿泊費を「相場の範囲内」で設定する ここが最重要ポイントです。金額が高すぎると「節税ではなく脱税(給与課税)」と指摘されます。「社会通念上妥当な金額」の目安として、民間調査データ(産労総合研究所など)を参考にすると安全です。 【日当の一般的な相場目安(国内出張)】 社長・役員クラス: 3,000円 〜 5,000円 一般社員クラス: 2,000円 〜 3,000円 自社の規模や財務状況も考慮し、この範囲内で設定するのが無難です。 Step5. 役職ごとの金額差を設定する際の注意点 役職(社長、部長、一般社員など)に応じて金額に差をつけることは認められています。ただし、その差は合理的でなければなりません。「社長は日当5万円だが社員は1,000円」といった極端な格差は否認リスクを高めます。 一般社員の金額を基準とし、役職が上がるごとに1.2倍〜2倍程度までの勾配をつけるのが一般的かつ安全な設計です。 Step6. 出張の申請から精算までの社内手続きを定める 規程の実効性を担保するため、運用ルール(ワークフロー)を定めます。基本は、「出張申請書」による事前承認と、「出張報告書」による事後報告のセットです。 特に「出張報告書」は、税務調査で「本当に仕事で行ったのか(カラ出張ではないか)」を証明する最重要証拠となります。訪問先、用件、成果などを記載させるよう規定しましょう。 Step7. 株主総会の承認と就業規則としての届出 作成した規程を法的に有効にするための手続きです。 株主総会での決議(必須):役員への旅費支給は、お手盛り防止のため株主総会決議(または定款への記載)が必要です。これがないと税務上、役員賞与とみなされる危険があります。 労基署への届出:従業員を含める場合、旅費規程は「就業規則の一部」となります。常時10人以上の従業員がいる事業場では、労働基準監督署への届出が必要です。 Step8. 作成した規程の全社への周知と適切な保管 最後に、完成した規程を全社員に周知し、いつでも閲覧できる状態にします(周知義務)。また、「株主総会の議事録」と「制定した規程」はセットで厳重に保管してください。 税務調査が入った際、調査官はまず「規程はいつ制定されたか」「株主総会で承認されているか」を確認します。このエビデンス(証拠)が節税の正当性を守る盾となります。 💬 ひとことポイント特にStep7の「株主総会議事録」は要注意。「作ったつもり」で議事録が残っていないケースが多発しています。必ず作成し、実印を押して金庫に保管しましょう。 いくらが妥当?日当・宿泊費のリアルな金額相場を大公開 旅費規程を作成する上で、最も頭を悩ませるのが「金額設定」でしょう。高すぎると税務リスクになり、低すぎると社員の持ち出しになります。ここでは、国内・海外出張のリアルな相場と、2025年に大きく変わった「国家公務員の旅費基準」について解説します。 1.【国内出張】役職別の宿泊費・日当の相場一覧(2023年度調査より) 産労総合研究所の「2023年度 国内・海外出張旅費に関する調査」によると、民間企業の平均的な支給額は以下の通りです。2019年頃と比較し、宿泊費の実費上限などは微減・横ばいの傾向が見られます。 役職宿泊費(定額支給の場合)日当(1日あたり)社長10,000円 〜 15,000円3,000円 〜 5,000円役員10,000円 〜 13,000円3,000円 〜 4,000円部長クラス9,000円 〜 11,000円2,500円 〜 3,000円一般社員8,600円 〜 9,800円2,000円 〜 2,500円 【ポイント】宿泊費は「定額支給」をやめ、ホテル代高騰に対応するため「実費精算(上限あり)」に切り替える企業が増えています。日当については、一般社員で2,000円〜3,000円、役員で3,000円〜5,000円の範囲が、税務署にも説明しやすい安全圏と言えるでしょう。 2.【海外出張】地域別の宿泊費・日当の相場一覧 海外出張は円安や現地の物価上昇が著しいため、国・地域ごとに等級を分けて設定するのが一般的です(以下は北米・欧州などの主要地域目安)。 項目支給額の目安備考宿泊費1.5万円 〜 2.5万円地域の実勢価格に合わせて設定<br>(※実費支給が主流)日当4,000円 〜 7,000円国内日当に2,000円程度上乗せが相場 【ポイント】海外の日当は、食事代やチップなどの雑費がかさむため、国内より高めに設定されます。ただし、1万円を超えるような高額な日当は、その根拠(現地の物価データ等)がない限りリスクが高いため注意が必要です。 3. 要注意!「国家公務員の旅費法」は2025年に大改正されました これまで民間企業の「お手本」とされてきた国家公務員の旅費基準ですが、2025年4月の法改正で仕組みがガラリと変わりました。 宿泊費: 従来の「定額支給」が廃止され、「上限付き実費支給」に変更されました。 例:東京都内宿泊の上限額 → 19,000円(職務10級以下)〜40,000円(総理大臣等) 日当: 旧来の「日当」は廃止・再編され、新たに「宿泊手当(一律2,400円)」等が新設されました。 ▼民間企業への影響この改正により、「公務員が定額でもらっているから、ウチも定額でOK」というロジックは使いにくくなりました。今後は、「宿泊費は実費精算(または実勢に即した上限設定)」+「日当は手当として数千円支給」というスタイルが、官民問わずスタンダードになっていくと考えられます。規程作成の際は、古い公務員基準(日当3,800円等)を鵜呑みにしないよう注意してください。 💬 ひとことポイント「節税したい」からといって、宿泊費を相場(1〜1.5万円)より極端に高く設定(例:3万円定額など)すると、実費との差額が「給与」とみなされるリスクが高まります。欲張らず「実費+α(数千円の日当)」で設計するのが賢明です。 【諸刃の剣】旅費規程で失敗する3つのケースと税務調査対策 旅費規程は強力な節税ツールですが、運用を一歩間違えれば「脱税行為」とみなされ、重加算税を含む追徴課税を招くリスクがあります。ここでは、税務調査で特に狙われやすい3つの失敗例と、その具体的な防衛策を解説します。 1.【ケース1】金額設定が「相場」より著しく高い 最も多い失敗は、節税効果を狙うあまり、日当や宿泊費を相場からかけ離れた高額に設定してしまうケースです。「社長の日当は1日3万円」といった極端な設定は、税務調査で「不相当に高額な部分は給与(役員賞与)」と認定され、会社の経費から否認される可能性が高いです。 ▼対策:客観的な「根拠」を残す2025年の公務員旅費法改正により、公務員基準(旧・定額日当)を根拠にするのは難しくなりました。現在は以下の2点を重視してください。 民間相場データの活用: 産労総合研究所などの統計データ(社長3,000〜5,000円程度)を参考にし、突出しない範囲に収める。 決定プロセスの正当化: 株主総会議事録に、金額の算定根拠や決議内容を明記し、「恣意的に決めたわけではない」証拠を残す。 2.【ケース2】「カラ出張」を疑われる(記録・証拠がない) いくら立派な規程があっても、その出張が実在したか証明できなければアウトです。特に定額支給の場合、「領収書がいらないから」と何も残していないと、税務署から「本当に行ったのか?(カラ出張ではないか)」と厳しく追及されます。 ▼対策:定額支給でも「事実証拠」は捨てるな以下の「3点セット」を必ずセットで保管してください。 出張報告書: 「誰と会って、どんな話をしたか」という業務内容の記録。 出張精算書: 移動ルートや金額の計算書。 事実証明資料: ホテルの予約確認メール、航空券の半券、ETC利用明細など。 ※インボイス制度の特例で「帳簿のみ保存」が認められる場合でも、税務調査対策としてホテルの領収書等を保管しておくのが、最強の防衛策です。 3.【ケース3】社長や役員しか利用していない 「規程上は全社員対象だが、実際には社長しか日当をもらっていない」というケースも危険です。実態として「役員への利益供与(隠れボーナス)」と判断されかねません。 ▼対策:従業員への適用実績を作る規程の適用範囲を「全役員・全従業員」とするのは当然ですが、重要なのは運用です。たとえ頻度が少なくても、一般社員が出張した際には規程通りに日当を支給し、その実績(精算履歴)を残してください。「社員にも公平に適用されている」という事実こそが、役員分の支給を正当化する最大の防御壁となります。 💬 ひとことポイント税務調査官は「高すぎる金額」と「実態のない出張」を狙っています。数行の「出張報告書」と、スマホで撮った「ホテルの看板写真」一枚があるだけでも、調査時の心証は劇的に良くなります。 旅費規程の作成・運用にお悩みならEncoachの財務コンサルティングへ 「自社に最適な金額設定がわからない」「税務調査で否認されないか不安だ」。旅費規程の作成には、専門的な知識と多くの手間がかかります。そんな経営者の皆様のお悩みを、私たちEncoach株式会社が解決します。 財務のプロがあなたの会社に最適な旅費規程をオーダーメイドで設計 私たちは、これまで1000社以上の財務改善を支援してきた経験豊富な財務のプロフェッショナル集団です。貴社の事業内容、出張の実態、財務状況を徹底的に分析し、節税効果を最大化しつつ、税務リスクを最小限に抑える最適な旅費規程をオーダーメイドで設計します。 テンプレートをただ当てはめるだけでは、本当の意味での「使える規程」にはなりません。貴社の成長戦略に貢献する、攻めの財務ツールとしての旅費規程をご提案します。 税務調査も安心!作成から運用までワンストップで徹底サポート Encoachのサポートは、規程を作って終わりではありません。株主総会議事録の作成サポート、従業員への説明会、そして実際の運用フローの構築まで、ワンストップで徹底的に伴走します。 万が一の税務調査の際にも、財務のプロとして、規程の合理性を理論的に説明し、経営者の皆様をしっかりお守りします。専門家がバックにいるという安心感が、経営者が本業に集中できる環境を生み出します。まずは無料相談から、お気軽にお問い合わせください。 💬 ひとことポイント自己流の規程で税務否認されると、節税額以上の追徴課税が発生します。プロの知見は「保険」であり、同時にキャッシュフローを最大化する「投資」でもあります。 旅費規程に関するよくある5つの質問 最後に、旅費規程に関して経営者の皆様からよくいただく質問を5つピックアップし、Q&A形式でお答えします。細かい疑問点を解消し、旅費規程への理解をさらに深めましょう。 Q1. 個人事業主でも旅費規程は作れますか? A1. 事業主本人には適用できませんが、従業員には適用可能です。 残念ながら、個人事業主本人の出張に対し、旅費規程に基づく非課税の日当を支給することはできません。また、同居の家族従業員(専従者)への支給も、税務上「生計を一にする親族」として認められないケースが一般的です。ただし、生計を別にする従業員を雇用している場合は、その従業員に対して旅費規程を適用し、日当を支給することは可能です。 ※法人化(法人成り)すれば、社長自身も「役員」として日当を受け取れるようになります。 Q2. 日当に食事代を含めても良いですか? A2. はい、むしろ日当には「食事代」が含まれていると解釈されます。 日当は本来、出張に伴う食事代や少額の雑費(飲み物代など)を補填する「実費弁償」としての手当です。そのため、日当とは別に「昼食代」を経費精算するのは二重計上となり、認められません。ただし、取引先との会食費用は、業務遂行上の「接待交際費」または「会議費」として、日当とは別に実費精算することが可能です。 Q3. 海外出張の場合の注意点はありますか? A3. 日当・宿泊費を国内より高めに設定し、必要に応じて「支度金」を定めます。 海外は物価や為替の影響を受けるため、地域(北米・欧州・アジア等)ごとに等級を分けて金額を設定するのが一般的です。また、パスポート取得費や予防接種代、スーツケース購入補助などの名目で、海外出張時(初回のみ等)に支給する「支度金」を規程に盛り込むことも可能です。これも社会通念上妥当な範囲(例:数万円〜10万円程度)であれば、非課税扱いとなります。 Q4. 規程を作れば、領収書は一切不要になりますか? A4. 「精算上の提出」は不要になりますが、「保管」は強く推奨します。 旅費規程に基づいて支給する定額の日当や宿泊費は、インボイス制度の「出張旅費特例」により、インボイス(領収書)の保存がなくても会社は消費税の控除が可能です。しかし、税務調査で「本当に宿泊したのか(カラ出張ではないか)」を問われた際、ホテルの領収書や明細書が唯一の決定的な証拠となります。経理提出は不要でも、万が一のために画像データ等で保管しておくのが賢明です。 Q5. 途中で規程の内容を変更することはできますか? A5. 可能ですが、金額を下げる場合は「従業員の同意」が原則必要です。 規程の変更自体は可能ですが、日当を減額するなどの変更は、労働契約法上の「不利益変更」にあたります。会社側の都合だけで一方的に変更することはできず、「合理的な変更理由(経営悪化など)」と「従業員への十分な説明・合意」が必要です。トラブルを防ぐためにも、変更の際は社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。 まとめ:旅費規程は中小企業こそ活用すべき最強の経営ツール 旅費規程は、単なる経費精算のルールではありません。法人税、消費税、所得税、社会保険料という4つの負担を合法的に軽減し、会社のキャッシュフローを最大化する「攻めの節税策」です。同時に、経理業務の効率化、社内の公平性確保、そして採用力の強化まで実現する、まさに中小企業にとって「最強の経営ツール」と言えるでしょう。 確かに、税務調査で否認されない規程を作成するには、専門的な知識と手間がかかります。しかし、その手間を乗り越えた先には、会社の経営基盤を盤石にする大きなメリットが待っています。 -
財務とは?経理との5つの違いから仕事内容・必要な資格まで専門家が解説
「財務って何?経理とどう違うの?」「会社の成長に重要とは聞くけど、具体的にどんな仕事?」そんな疑問を抱えていませんか。 この記事では、財務とは何か、その役割を経理との明確な違いから具体的な仕事内容、キャリアに役立つ資格まで、財務のプロが徹底解説します。 最後まで読めば、財務が会社の未来を創る「攻めの要」であることが理解でき、明日からの仕事や経営に活かせる知識が身につきます。 まずは結論!財務と経理の主な違いが一目でわかる比較一覧表 財務と経理は、会社のお金を扱う点は同じですが、その役割と目的は全く異なります。 財務が未来志向で企業の成長を資金面から支える「攻めの財務」であるのに対し、経理は過去の取引を正確に記録・管理する「守りの経理」と理解すると分かりやすいでしょう。 両者の主な違いは以下の表の通りです。 観点財務経理時間軸未来過去・現在主な役割会社の未来のために資金を調達し、運用する(攻め)日々のお金の動きを正確に記録・管理する(守り)主な仕事内容財務戦略の立案、資金調達(融資・出資)、予算管理、資金運用、IR活動仕訳・記帳、現預金管理、経費精算、決算書の作成情報の提供先経営陣、金融機関、投資家など社外の利害関係者経営陣、各事業部門など社内の関係者仕事のゴール企業価値を最大化すること会社の財務状況を正確に把握できるようにすること 💬 ひとことポイント財務は未来の資金計画、経理は過去の資金記録。この「時間軸」の違いが、両者を理解するうえで最も重要なポイントです! 財務とは?会社の未来を創る「攻め」の管理部門 財務とは、会社の未来を創るために資金を管理する「攻め」の管理部門です。 会社が将来にわたって成長するために必要なお金を集め、その活用法を計画・実行する役割を担います。 経理が作成した過去の会計データなどを分析し、未来の企業価値を最大化するための戦略を立てる、経営の中核を担う重要な仕事といえるでしょう。 財務の役割は「未来のお金」を最適化し企業価値を高めること 財務の最も重要な役割は、未来のお金を最適化し、企業価値を高めることです。 企業の持続的な成長には、事業の源泉となる資金をいかに効率よく集め、使うかが直結します。 例えば、金融機関と融資交渉を行ったり、投資家向けにIR活動(※)をしたりして事業に必要な資金を調達します。また、余剰資金を有利な条件で運用し、新たな収益源を確保することも重要な仕事です。 このように、財務は単にお金を管理するだけでなく、会社の未来を創る戦略的な機能を持っています。 ※IR活動:株主や投資家に対し、投資判断に必要な情報を提供していく活動全般のこと。 財務状況とは企業の「体力」を示す通知表 財務状況とは、企業の収益力や支払い能力を数値で示した「企業の体力」を示す通知表です。 人間でいう「健康診断の結果」のようなもので、その中心となるのが経理が作成する財務諸表(※)です。 例えば、財務諸表の一つである貸借対照表を見れば、会社がどれくらいの資産や負債を持っているかが分かり、企業の体力を測れます。自己資本比率が高ければ、返済不要な資金が多く経営が安定した「筋肉質な会社」と判断できるでしょう。 このように財務状況を分析し、企業の健康状態を正確に把握することが、将来の経営戦略を立てる土台となります。 ※財務諸表:企業の財政状態や経営成績を株主や債権者などに報告するために作成される書類のこと。貸借対照表、損益計算書などがある。 💬 ひとことポイント財務は未来を創るための羅針盤!経理が作った過去の地図(財務諸表)を読み解き、会社の未来への航路を描くのが財務の役割です。 財務の具体的な7つの仕事内容 財務の仕事は、会社の未来を創るための多岐にわたる活動を含みます。経営の根幹を支える財務戦略の策定から日々の資金繰り、会社の成長を加速させるM&Aまで、7つの具体的な仕事内容を解説します。 財務戦略の立案:経営目標達成のための資金計画 資金調達:銀行融資や出資など未来への投資資金を集める 予算管理:会社全体のお金の流れを計画・統制する 資金運用:余剰資金を投資し効率的に増やす M&A・事業投資:企業の成長を加速させる戦略実行 IR活動:投資家に向けて経営状況を報告する 監査対応:企業の財務状況の健全性を示す それぞれ見ていきましょう。 1. 財務戦略の立案:経営目標達成のための資金計画 財務の最重要業務は、経営目標を達成するための資金計画、すなわち財務戦略を立案することです。 企業のビジョンを実現するには「いつ、いくら資金が必要で、どう調達し、何に投資するか」という設計図が不可欠だからです。 具体的には、経理が作成した財務諸表を分析して会社の現状を把握します。そのうえで「5年後に売上を倍増させる」といった経営目標から逆算し、必要な資金額や最適な調達方法(借入や増資など)を盛り込んだ中長期の資金計画を作成します。 2. 資金調達:銀行融資や出資など未来への投資資金を集める 企業の成長に必要な運転資金や設備投資資金などを、最適な方法で外部から集めてくることが財務の重要な役割です。 事業拡大や新規プロジェクトには多額の資金が欠かせません。 調達方法には、返済義務がある「融資」と、返済不要だが株式を渡す「出資」の2種類があります。財務は、会社の状況や目的に応じてどちらが最適かを判断し、金融機関や投資家と交渉を行うのです。会社の未来を左右する重要な資金を集める、責任ある仕事といえます。 3. 予算管理:会社全体のお金の流れを計画・統制する 予算管理とは、会社全体の利益目標を達成するため、各部門の収入と支出を計画し、その実績を統制する仕事です。 これは、限られた経営資源を有効活用し、会社を計画通りに運営するための重要な業務といえます。 具体的には、まず全社の売上や利益の目標を立て、各部署に必要な経費などの予算を割り振ります。そして定期的に「予算」と「実績」を比較分析し、目標との間にズレ(予算差異)が生じていれば、原因を調査して改善策を講じるのです。 4. 資金運用:余剰資金を投資し効率的に増やす 事業活動で生まれた余剰資金(キャッシュ)を、投資などを通じて効率的に運用し、会社の資産をさらに増やすことも財務の仕事です。 現代のような低金利時代では、使途のない資金をただ銀行口座に預けておくだけでは、インフレによって実質的な価値が目減りするリスクがあります。 そこで財務は、当面の事業運営に必要ない「余剰資金」の範囲内で、株式や債券などの金融商品に投資し、リターンを追求します。安全性と収益性のバランスを考慮し、会社の資産を最大化することが求められます。 5. M&A・事業投資:企業の成長を加速させる戦略実行 M&A(企業の合併・買収)や大規模な事業投資は、企業の成長を飛躍的に加速させるための重要な財務戦略です。 自社だけで技術開発や市場開拓を行うには長い時間とコストがかかります。しかしM&Aによって他社の技術や販路、人材を一気に獲得できれば、短期間で事業規模を拡大できます。 財務部門は、M&Aの候補となる企業の価値を算定したり、買収先の財務状況を精査(デューデリジェンス)したりする中心的な役割を担う、専門性の高い業務です。 6. IR活動:投資家に向けて経営状況を報告する IR(Investor Relations)活動とは、株主や投資家といった社外の利害関係者に対し、会社の経営や財務の状況を正しく報告する広報活動全般を指します。 企業が安定的に成長していくためには、投資家からの信頼を得て、いつでも資金調達がしやすい環境を整えておくことが重要です。 具体的には、決算発表時に「決算説明会」を開催して業績や今後の経営戦略を説明したりします。地道な情報発信を通じて自社の魅力を伝え、良好な関係を築くことがIR活動のゴールです。 7. 監査対応:企業の財務状況の健全性を示す 監査対応とは、公認会計士や監査役が行う監査を受け、会社の財務諸表が正しく作成され、内部統制が有効に機能していることを証明する業務です。 会社の決算情報が信頼できるものであることを、第三者によって客観的に担保してもらうための重要な手続きといえます。 監査では、財務部門が中心となって会計帳簿や取引の証拠書類などを提示し、会計処理の方法について監査人に説明します。監査法人から受けた指摘事項を改善することで、企業の透明性と信頼性を向上させることにつながります。 💬 ひとことポイント財務の仕事は「戦略立案」から「M&A」まで非常に幅広いです。すべてに共通するのは、会社の「未来」を良くするための活動であるという点です。 もう迷わない!財務・経理・会計の明確な3つの違い 会社のお金を扱う仕事には「財務」「経理」「会計」がありますが、これらの違いを明確に説明するのは難しいかもしれません。 大枠として「会計」というルールの中に、過去のお金を扱う「経理」と未来のお金を扱う「財務」があると考えると分かりやすいでしょう。ここでは3つの視点から、その違いを解説します。 時間軸の違い:財務は「未来」、経理は「過去」 役割の違い:「攻めの財務」と「守りの経理」 情報提供先の違い:財務は「社外」、経理は「社内」 1. 時間軸の違い:財務は「未来」、経理は「過去」 財務と経理の最も大きな違いは、お金を扱う時間軸の向きが正反対である点です。 経理はあくまで過去に発生した取引を正確に記録し、現在の財政状態をまとめる役割を担います。 一方の財務は、経理が作成した決算書という「過去のデータ」を分析し、それをもとに未来の資金計画や投資戦略を立てるのです。経理が作成した「過去の地図」を頼りに、財務が「未来への航路」を描くという関係で成り立っています。 2. 役割の違い:「攻めの財務」と「守りの経理」 両者の役割は、しばしば「攻めの財務」と「守りの経理」と表現されます。 財務の主なミッションは、資金調達やM&A、新規事業投資などを通じて会社の成長を加速させ、企業価値を最大化することにあります。そのため、未来の収益を見据えてリスクを取る「攻め」の姿勢が求められます。 対照的に経理は、日々のお金の流れをミスなく正確に記録・管理し、法令を遵守することで、会社の資産と信頼性を守る「守り」の役割を担います。 3. 情報提供先の違い:財務は「社外」、経理は「社内」 誰に情報を提供するかも、財務と経理の大きな違いです。 財務が主に情報を届ける相手は、金融機関や投資家、株主といった「社外」の利害関係者です。これは、資金調達やIR活動といった、外部との交渉や説明責任を果たすことが財務の重要な業務だからです。 一方で、経理がまとめる情報は、主に経営陣や各事業部の責任者といった「社内」の関係者のために活用されます。これは、社内の業績管理やコスト削減といった、経営の意思決定に役立てることが目的だからです。 💬 ひとことポイント「時間軸(未来⇔過去)」「役割(攻め⇔守り)」「相手(社外⇔社内)」という3つの対比で覚えると、財務と経理の違いがスッキリ整理できます。 財務担当者に向いている人とは?求められる4つのスキルとおすすめの資格 財務の仕事は、単に数字に強いだけでは務まりません。会社の未来を創る重要な役割のため、専門知識に加え、経営的な視点や交渉力、高い倫理観が求められます。 財務担当者に不可欠な4つのスキルと、キャリアアップに役立つ資格を解説します。 財務諸表の読解力と分析スキル 経営陣や金融機関と渡り合う交渉力・コミュニケーション能力 会社の未来を見通す経営的視点と戦略的思考力 プレッシャーに強く、高い倫理観を持っている 【補足】財務でキャリアアップするための有利な資格 1. 財務諸表の読解力と分析スキル 財務担当者にとって最も基礎的かつ重要なスキルは、財務諸表を正しく読み解き、会社の経営状態を分析する力です。 なぜなら、あらゆる財務戦略は、自社の現状を客観的な数字で正確に把握することから始まるからです。 財務諸表を分析すれば、会社の収益性や安全性、成長性といった「企業の体力」を多角的に評価できます。この分析を通じて経営上の課題を発見し、改善策を提案することが、財務担当者の付加価値となるのです。 2. 経営陣や金融機関と渡り合う交渉力・コミュニケーション能力 財務の仕事は、社内外の多くの関係者を巻き込みながら進めるため、高度な交渉力とコミュニケーション能力が求められます。 立案した財務戦略や資金計画の妥当性を経営陣に分かりやすく説明し、納得してもらう必要があります。 また、資金調達の場面では、銀行などの金融機関に対して自社の事業の将来性を魅力的に伝え、有利な条件を引き出すための交渉力が不可欠です。論理的に説明し、信頼関係を築く対話力が極めて重要になります。 3. 会社の未来を見通す経営的視点と戦略的思考力 財務担当者には、単に数字を管理するだけでなく、会社全体の目標達成のために資金をどう活用すべきか考える「経営的視点」と「戦略的思考力」が求められます。 なぜなら、財務は経営戦略そのものと密接に結びついているからです。 例えば「5年後の業界地図はどう変わるか」「その中で自社が成長するために、今どの事業に投資すべきか」といった長期的な視点で資金配分を考える必要があります。短期的な視点にとらわれず、常に会社全体の持続的な成長を考えて行動することが、優れた財務担当者の条件です。 4. プレッシャーに強く、高い倫理観を持っている 会社の未来を左右する多額の資金を扱う財務の仕事は、大きなプレッシャーが伴います。 そのため、予期せぬ事態が起きても冷静な判断力を保つ精神的な強さが不可欠です。 同時に、会社の重要情報を扱い、巨額の資金を動かす立場にあるからこそ、法令遵守はもちろんのこと、不正を許さない極めて高い倫理観が求められます。株主や金融機関、従業員といったすべての利害関係者からの信頼こそが財務部門の基盤であり、その信頼は担当者一人ひとりの誠実な行動によって成り立っています。 【補足】財務でキャリアアップするための有利な資格 財務の仕事に就くために必須の資格はありませんが、専門知識を証明し、キャリアアップを目指す上で有利になる資格は存在します。 公認会計士・税理士:会計・税務の最高峰の専門家。財務戦略の立案やM&Aといった高度な財務業務に直結するため、キャリアアップに極めて有利です。 日商簿記検定:特に2級以上は必須の知識とみなされることが多いです。経理が作成した財務データを理解できなければ、財務分析は始まりません。 ファイナンシャルプランナー(FP):金融、税金、投資といった幅広い知識は、企業の資金運用や事業承継計画にも応用できます。 💬 ひとことポイント財務は「分析力」「交渉力」「戦略的思考力」そして「倫理観」が重要。資格はあくまで知識の証明。実務でこれらのスキルを磨くことがキャリアアップの鍵です。 会社の成長ステージ別|財務の重要性と中小企業が抱える3つの課題 財務が果たすべき役割は、会社の成長段階によって変化します。創業期には資金調達、成長期には運転資金の管理が最重要課題です。 そして安定期・成熟期には、M&Aなどを通じてさらなる企業価値向上を目指します。各ステージで財務がどう機能するのか、その重要性を解説します。 創業期:事業計画に基づいた融資・資金調達 成長期:事業拡大に向けた追加の資金調達と予算管理 安定期・成熟期:M&Aや新規事業投資による企業価値の最大化 創業期:事業計画に基づいた融資・資金調達 創業期における財務の最重要ミッションは、事業をスタートさせ、軌道に乗せるための初期資金を確保することです。 自己資金だけでは設備投資や運転資金をまかなえないケースがほとんどだからです。 この段階ではまだ事業実績がないため、金融機関や投資家から信頼を得るには、説得力のある「事業計画書」がすべてです。事業の将来性や収益性を客観的な数字で示し、融資や出資に繋げることが財務の最初の大きな仕事となります。 成長期:事業拡大に向けた追加の資金調達と予算管理 成長期には、売上拡大に伴って急増する運転資金を管理し、資金ショートを防ぐことが財務の最大の課題です。 売上が伸びると、仕入れ代金や人件費などの支払いも増加し、入金よりも支払いが多くなる「黒字倒産」のリスクが高まります。 これを防ぐために、精度の高い「予算管理」が不可欠です。月次の資金繰り表を作成してキャッシュの流れを常に監視し、必要に応じて金融機関からの追加融資を計画的に実行します。事業の成長スピードを落とさずに、安定した経営基盤を維持するバランス感覚が求められるのです。 安定期・成熟期:M&Aや新規事業投資による企業価値の最大化 事業が安定・成熟期に入ると、財務の役割は既存事業の維持から、M&Aや新規事業投資を通じて企業価値をさらに最大化させることへとシフトします。 市場の成長が鈍化する中で持続的に成長を続けるには、自社にない技術や販路を持つ他社を買収(M&A)したり、将来性のある新たな分野へ投資したりする「攻めの財務戦略」が有効です。 その際、財務は投資対象となる企業の価値を正しく評価し、投資のリスクとリターンを分析する重要な役割を担います。 💬 ひとことポイント会社の成長ステージによって財務の役割は「資金調達」→「資金管理」→「価値創造」へと進化します。自社のステージに合った財務戦略が重要です。 中小企業に財務部がない理由と潜むリスク 多くの中小企業では、コストや人材不足から専任の財務部を置かず、経営者や経理担当者が兼任しているのが実情です。 しかし、これには大きなリスクが潜んでいます。 日々の経理業務に追われ、未来を見据えた財務戦略に手が回らず、資金繰りが場当たり的になりがちです。財務知識が不十分なまま金融機関と交渉し、不利な条件で契約してしまうケースも少なくありません。 また、業務が特定の人物に集中する「属人化」は、不正の温床になったり、担当者の退職で業務が完全に停止したりする危険性もはらんでいます。 💬 ひとことポイント財務の不在は、気づかぬうちに会社の成長機会を逃し、リスクを増大させる時限爆弾のようなものです。早めの対策が肝心です。 財務の専門家に相談すべき3つのケース 中小企業が自社だけで高度な財務課題に対応するのは容易ではありません。会社の将来を大きく左右する重要な局面では、客観的な視点と専門知識を持つ外部の専門家を頼ることが成功の確率を高めます。 財務のプロに相談を検討すべき3つの代表的なケースをご紹介します。 数千万円以上の大規模な資金調達を成功させたい M&Aを検討しているが、相手企業の財務状況調査(デューデリジェンス)に不安がある 会社の資金繰りが悪化しており、原因調査と改善策の立案を急いでいる ケース1:数千万円以上の大規模な資金調達を成功させたい 数千万円から億単位の大規模な資金調達は、融資元の金融機関や投資家を納得させる、より精緻な事業計画と交渉戦略が不可欠です。 調達額が大きくなるほど、審査のハードルは格段に上がり、計画の実現可能性や企業の将来性を厳しく評価されるからです。 財務の専門家は、客観的な市場分析や財務予測に基づいた説得力のある事業計画書を作成し、複数の金融機関の中から最も有利な条件を引き出すための交渉を代行します。これにより、経営者は本業に集中しながら、事業成長に必要な資金を最適な形で確保できる可能性が高まります。 ケース2:M&Aを検討しているが、相手企業の財務状況調査(デューデリジェンス)に不安がある M&Aの成功は、買収対象企業の価値やリスクを正確に見抜く「財務デューデリジェンス」にかかっていると言っても過言ではありません。 決算書に現れない簿外債務や、将来の業績を悪化させる要因を見逃したまま買収を進めると、後に深刻な損失を被るリスクがあります。 財務の専門家は、第三者の客観的な立場で対象企業の財務状況を徹底的に調査し、隠れたリスクを洗い出します。これにより、買収価格が妥当かどうかを判断し、リスクを織り込んだ上で安全にM&Aを実行するための的確なアドバイスを提供します。 ケース3:会社の資金繰りが悪化しており、原因調査と改善策の立案を急いでいる 資金繰りの悪化は、放置すれば倒産に直結しかねない緊急事態であり、迅速かつ的確な原因究明と対策が求められます。 売上の減少、過剰な在庫、回収できない売掛金など、原因は様々ですが、社内の人間だけでは根本的な問題に気づけないことも少なくありません。 財務の専門家は、キャッシュフローの動きを詳細に分析して資金繰り悪化の真因を特定します。そして、即効性のある改善策(不要資産の売却など)と、中長期的な再発防止策(収益構造の見直しなど)を立案・実行。危機的な状況において、冷静な判断と実行力で会社の立て直しをサポートします。 💬 ひとことポイント「大きな資金調達」「M&A」「資金繰りの悪化」は会社の運命を左右する三大テーマ。迷ったらすぐに専門家に相談することが、最善の結果につながります。 財務に関するよくある質問 財務の世界は専門性が高く、多くの疑問が寄せられます。ここでは、キャリアに関する質問から、学習方法、企業規模による仕事内容の違いまで、財務に関するよくある質問にQ&A形式で分かりやすくお答えします。 Q1. 財務の仕事は未経験からでも挑戦できますか? 結論から言うと、未経験から財務職に挑戦することは不可能ではありませんが、簡単な道ではありません。 多くの企業は専門知識や実務経験を重視するため、経験者の方が有利な傾向にあります。 しかし、金融機関での勤務経験や、経理部門で財務諸表の作成に関わった経験など、関連性の高い職務経験があれば、未経験でも十分にアピールできます。まずは経理職として経験を積みながら簿記などの資格を取得し、財務部門へのキャリアチェンジを目指すのが現実的なキャリアパスの一つです。 Q2. 財務の勉強は何から始めるべきですか? 財務の勉強は、まず「会計」の基礎を学び、財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)を読めるようになることから始めるのが最も効率的です。 なぜなら、財務分析や戦略立案は、すべて会計データという土台の上になりたっているからです。 具体的には、日商簿記検定2級の取得を目指して学習することをおすすめします。簿記を学ぶことで、会社のお金がどのように記録され、決算書が作成されるのかという一連の流れを体系的に理解できます。基礎が固まったら、専門書やオンライン講座などを活用して、財務分析や企業価値評価といった、より実践的な分野へと学習を進めていくと良いでしょう。 Q3. 大企業と中小企業で財務の仕事内容に違いはありますか? はい、企業規模によって財務の仕事内容は大きく異なります。 大企業では財務部と経理部が完全に独立しており、担当業務が細分化・専門化されています。資金調達、M&A、IRなど、特定の分野のスペシャリストとして深い知識を追求できます。 対して中小企業では、一人の担当者が経理と財務の両方を兼任することが一般的です。日々の資金繰り管理から金融機関との交渉、経営計画の策定まで、幅広く携わるため、経営全体を見渡すゼネラリストとしての経験を積むことができます。 まとめ:財務の理解は、企業の未来を創る第一歩 この記事では、財務の役割や経理との違い、具体的な仕事内容から必要なスキルまで、網羅的に解説してきました。 過去の取引を記録する「守りの経理」とは対照的に、財務は未来の企業価値を最大化するための「攻めの管理部門」です。財務戦略の立案から資金調達、M&Aの実行まで、その仕事は会社の成長と存続に直結する重要な役割を担っています。 財務の仕事は、単に数字を扱うだけではありません。財務諸表を分析して課題を発見し、経営陣や金融機関と交渉しながら、会社の未来を創っていく戦略的な仕事です。この記事を読んで財務への理解を深めることが、あなたの会社の未来をより良い方向へ導く、確かな第一歩となるでしょう。 財務戦略でお悩みなら、Encoach株式会社へご相談ください 財務の重要性は理解できても、自社だけで最適な戦略を立て、実行するのは容易ではありません。Encoach株式会社は、代表の北園が大手税理士法人で1,000社以上の経営者を支援した経験を基に設立した、経営財務コンサルティングのプロフェッショナル集団です。 私たちは、単なる数字のアドバイスにとどまらず、経営者の「想い」を実現するための「未来の数字」を共に創り上げる伴走支援を信条としています。 資金繰りの不安解消から、成長を加速させるための資金調達、M&A戦略まで、財務に関するあらゆる課題に、経営者の右腕として寄り添います。初回のご相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。 -
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「金融機関から融資を受けたいけど、説得力のある経営計画書の書き方が分からない…」「会社の進むべき道筋を明確にしたいけど、何から手をつければいい?」 この記事では、そんな悩みを抱える経営者の方へ、資金調達や組織力強化に直結する**「経営計画書」の書き方を、テンプレート付きで徹底解説します。** 経営計画書と事業計画書の違いといった基本から、金融機関も納得する具体的な作成ステップ、そして計画倒れを防ぐ活用法まで、この記事を読めばすべてが分かります。 数々の企業を支援してきたプロが監修した無料テンプレートも活用し、会社の未来を描く羅針盤を手に入れましょう。 そもそも経営計画書とは?事業計画書との3つの違い 経営計画書と事業計画書は、どちらも会社の未来を描く設計図ですが、その役割と中身は異なります。この違いを理解することが、ぶれない経営戦略を立てる第一歩です。 ここでは、目的、期間、内容という3つの観点から、それぞれの違いを分かりやすく解説します。 1. 目的の違い:経営計画書は「社内向け」、事業計画書は「社外向け」 経営計画書と事業計画書の最も大きな違いは、その目的が「社内向け」か「社外向け」かという点です。 経営計画書は、企業の理念やビジョンを全社員で共有し、組織の足並みをそろえるための「社内の約束事」としての役割が強いです。 対して事業計画書は、金融機関や投資家から融資や出資を得る際に提出します。事業の将来性や収益性を客観的なデータで示し、相手を説得するための「社外への説明資料」という性格を持ちます。 2. 期間の違い:経営計画書は「中長期(3〜5年)」、事業計画書は「短期(1年)」 経営計画書が「中長期(3〜5年)」の視点で描かれるのに対し、事業計画書は「短期(1年)」の具体的な実行計画を定めるのが一般的です。 多くの企業では、まず3〜5年後になりたい姿を「中期経営計画」として策定します。 この大きな目標を達成するために、年度ごとの具体的なアクションに落とし込んだものが、短期経営計画です。これは事業計画書とほぼ同じ意味で使われます。長期的な視点で会社の進むべき道筋を示し、それを足元の行動へとつなげる関係にあります。 3. 内容の違い:経営計画書は「会社の羅針盤」、事業計画書は「行動計画」 経営計画書が企業の理念やビジョンといった「会社の羅針盤」の役割を担う一方、事業計画書は具体的な「行動計画」と位置づけられます。 経営計画書は、「私たちは何のために存在するのか」という企業の根本的な価値観や、目指すべき未来像(ビジョン)といった、より抽象的で根本的な方針を示すものです。 それに対し事業計画書は、その方針を実現するために「誰が」「何を」「いつまでに」行うのか、そしてその結果どれだけの売上や利益を見込むのか、といった具体的な戦術と数値計画にまで落とし込まれています。 比較項目経営計画書事業計画書目的社内の意思統一、方向性の共有金融機関、投資家など社外への説明、資金調達対象者経営者、従業員金融機関、投資家、取引先期間中長期(3〜5年)短期(1年)内容企業理念、ビジョン、経営戦略、基本方針具体的な行動計画、販売戦略、数値計画、資金計画役割会社の進むべき方向を示す「羅針盤」目標達成のための具体的な「行動計画」 💬 ひとことポイント経営計画書は「会社の夢」、事業計画書は「夢の叶え方」。まずは誰に何を伝えたいのかを明確にすることが、計画書作成の第一歩です! 経営計画書を作成する3つのメリット 経営計画書は、単なる書類作成にとどまらず、企業の成長を加速させる強力なエンジンです。明確な計画を立てることで、日々の業務に追われる中で見失いがちな会社の進むべき道筋が明らかになり、組織全体に活力が生まれます。 計画書がもたらす代表的なメリットは以下の3つです。 会社の進むべき方向性が明確になる 金融機関や投資家からの信用力が向上する 組織の一体感を醸成し、社員の主体性を引き出せる それぞれ解説していきます。 1. 会社の進むべき方向性が明確になる 経営計画書の策定は、経営理念やビジョンという目的地へたどり着くための、具体的な航路図を描く作業です。 多くの経営者は頭の中に事業の構想を持っていますが、それを言語化・数値化する過程で、自社の現状、市場での立ち位置、そして将来のリスクを客観的に分析せざるを得ません。 このプロセスを経ることで、事業展開や人材採用、資金調達といった経営判断の場面で、場当たり的な意思決定を避け、一貫性のある選択ができるようになります。 2. 金融機関や投資家からの信用力が向上する 綿密に練られた経営計画書は、金融機関や投資家に対して「計画的に経営できる企業」という客観的な信頼の証となります。 融資審査の際、金融機関は事業の将来性や返済能力を厳しく評価します。その際に、具体的な数値目標とその根拠が示された計画書を提示することで、自社の事業内容や成長戦略への理解が深まります。 結果として、「この会社に任せられる」という信用力が高まります。資金調達がスムーズに進んだり、より有利な条件での取引が可能になったりする可能性が高まるでしょう。 3. 組織の一体感を醸成し、社員の主体性を引き出せる 会社が目指すビジョンや目標を全社員で共有することで、組織全体に一体感が生まれ、従業員一人ひとりのパフォーマンス向上につながります。 経営計画書を通じて会社の進むべき方向性が示されると、従業員は自分の日々の業務が会社のどの目標達成に貢献しているのかを理解できます。 これにより、仕事への目的意識やモチベーションが高まり、指示待ちではなく自発的に行動する「主体性」が引き出されます。策定の段階から従業員を巻き込むことで、計画は「自分ごと」となり、全社一丸となって目標達成に向かう強力な推進力が生まれるでしょう。 💬 ひとことポイント経営計画書は、社長の頭の中を「見える化」するツールです。社内外の協力者を増やし、会社を力強く前進させるための設計図だと考えましょう。 【無料ダウンロード】Encoach代表・北薗監修の経営計画書テンプレート ここでは、Encoach代表の北薗が数々の企業の経営支援を行う中で、実用性を追求し磨き上げたオリジナルの経営計画書テンプレートを、2つの形式でご紹介します。 どちらも無料で、すぐにお使いいただけます。ご自身の目的や使い慣れたツールに合わせて、最適なものをお選びください。 1. 今すぐ使える!経営計画書テンプレート(Googleスプレッドシート) 本記事で最もおすすめする、資金調達から組織運営まで幅広く対応できる網羅的なテンプレートです。 経営計画に必要な要素を体系的に整理しており、このテンプレートに沿って入力するだけで、説得力のある計画書が完成します。 Googleスプレッドシート形式のため、アカウントがあれば無料で利用でき、チームでの共同編集や専門家との共有もスムーズです。 ▼テンプレートはこちら▼ 💬 ひとことポイントまずは汎用性の高いスプレッドシート形式がおすすめです。数値計画の自動計算や複数人での同時編集機能は、効率的な計画書作成の強い味方になります。 【記入例付き】テンプレートを使った経営計画書の書き方10ステップ ここからは、テンプレートを使った経営計画書作成の具体的な手順に入ります。会社の根幹となる理念の策定から、具体的な行動計画の策定まで、10のステップに分けて、各項目で何を書くべきかを記入例を交えながら詳しく解説します。 企業理念・ビジョン・ミッション(会社の存在意義) 会社概要(自社の基本情報) 事業ドメイン(誰に、何を、どのように提供するか) 外部環境分析(市場・競合の動向) 内部環境分析(自社の強み・弱み) SWOTクロス分析と経営戦略(分析から戦略を導き出す) 個別戦略(マーケティング・販売戦略) 行動計画(誰が・いつまでに・何をするか) 数値計画・財務計画(最も重要な定量目標) エグゼクティブサマリー(要約) 一つひとつのステップを着実に進めることで、説得力のある計画書が完成します。 1. 企業理念・ビジョン・ミッション(会社の存在意義) 経営計画の根幹をなすのが、会社の存在意義や目指すべき姿を言語化した企業理念・ビジョン・ミッションです。 これらは、あらゆる経営判断のブレない軸となり、社員の行動指針にもなります。 理念:「社会においてどのような存在でありたいか」という企業の究極的な目的 ビジョン:3〜5年後に「具体的にどのような会社になっているか」という未来像 ミッション:ビジョンを実現するための「具体的な使命や役割」 例えば、「テクノロジーで人々の暮らしを豊かにする」という理念のもと、「3年後、地域で最も信頼されるITパートナーになる」というビジョンを掲げ、そのために「中小企業のDX化をワンストップで支援する」というミッションを遂行する、といった形で定義します。 2. 会社概要(自社の基本情報) 会社の基本情報を正確に記載することで、読み手(特に金融機関など)に信頼感を与え、計画全体の信憑性を高めます。 ここでは、社名、所在地、設立年月日、資本金、事業内容、役員構成、従業員数、取引銀行といった登記情報や基本情報を簡潔にまとめます。 特に、代表者の経歴は、事業に関連する経験やスキルをアピールする重要な項目です。なぜこの事業を立ち上げたのかという「創業の動機」と合わせて記載することで、事業への情熱や本気度を伝えることができます。 3. 事業ドメイン(誰に、何を、どのように提供するか) 事業ドメインとは、「誰に」「何を」「どのように」提供するのかを明確に定義し、事業活動の範囲を定めることです。 これにより、経営資源を集中させるべき領域を特定できます。 例えば、「都心で働く健康志向の30代女性(誰に)」に対し、「国産有機野菜を使った栄養バランスの取れたランチボックス(何を)」を、「サブスクリプション型の宅配サービス(どのように)」で提供する、といった具合です。 ターゲット顧客を絞り込み、自社ならではの提供価値と方法を明確にすることで、競合との差別化ポイントが明らかになり、後のマーケティング戦略が立てやすくなります。 4. 外部環境分析(市場・競合の動向) 自社ではコントロールできない外部の市場や競合の動向を客観的に分析し、事業の「機会(Opportunity)」と「脅威(Threat)」を洗い出します。 主な分析手法として、世の中の大きな潮流を分析する「PEST分析」や、業界の構造を分析する「ファイブフォース分析」などがあります。 PEST分析とは、政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの観点から、法改正や景気動向、ライフスタイルの変化などが自社に与える影響を整理する手法です。公的機関の統計データなども活用し、客観的な視点で分析することが重要です。 5. 内部環境分析(自社の強み・弱み) 自社の持つ技術・人材・資金・ブランド力といった経営資源を客観的に評価し、競争上の「強み(Strength)」と「弱み(Weakness)」を把握します。 これは、自社でコントロール可能な内部の要因を分析する作業です。 顧客アンケートの結果や、財務諸表の分析、従業員へのヒアリングなどを通じて、「他社に負けない独自の技術力」といった強みと、「資金調達力が弱い」といった弱みをリストアップします。 弱みを悲観的に捉えるのではなく、克服すべき課題として正直に認識することが、実現可能な計画を立てる上で不可欠です。 6. SWOTクロス分析と経営戦略(分析から戦略を導き出す) 外部環境と内部環境の分析結果を掛け合わせる「クロスSWOT分析」を通じて、自社の強みを活かして機会を掴むための具体的な経営戦略を導き出します。 ここまでの分析を具体的な行動指針へと昇華させる、計画策定の心臓部です。 強み × 機会(積極化戦略) 強み × 脅威(差別化戦略) 弱み × 機会(改善・挽回戦略) 弱み × 脅威(防衛・撤退戦略) 例えば、高い技術力(強み)を持つ企業が、市場拡大(機会)という追い風を受け、「新製品開発に積極的に投資する」といった戦略を立てることができます。 7. 個別戦略(マーケティング・販売戦略) 経営戦略を絵に描いた餅で終わらせないために、マーケティング、販売、開発といった機能ごとに具体的な戦術を策定します。 全社的な経営戦略が「方針」であるならば、個別戦略はそれを実行するための「方法」です。例えば、「若年層の新規顧客獲得」という経営戦略に基づき、マーケティング戦略として「SNS広告の強化」、販売戦略として「学割キャンペーンの実施」などを具体的に定めます。 製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販促(Promotion)を考える「4P分析」などのフレームワークを活用すると、抜け漏れなく戦略を整理できます。 8. 行動計画(誰が・いつまでに・何をするか) 戦略を具体的な実行に移すため、「誰が」「いつまでに」「何を」行うのかをタスクレベルまで落とし込んだ詳細な行動計画を作成します。 ここで重要になるのが5W1Hの視点です。例えば、「新商品のWebサイト制作」というタスクに対し、「マーケティング部のAさんが(誰が)」「来年3月末までに(いつまでに)」「商品紹介ページのコンテンツを作成し、デザインをBさんに依頼する(何を)」といったレベルまで具体化します。 ガントチャートなどのツールを使い、各タスクの担当者と期限を一覧化することで、進捗管理が容易になり、計画の実行性が格段に高まります。 9. 数値計画・財務計画(最も重要な定量目標) これまでの戦略や行動計画が、絵に描いた餅で終わらないように、具体的な数値に落とし込み、事業の実現可能性と収益性を客観的に証明するのが数値計画・財務計画です。 具体的には、以下の5つの計画を作成します。 9-1. 売上計画 9-2. 人員・人件費計画 9-3. 設備投資計画 9-4. 損益計算書(P/L)計画 9-5. 資金繰り表(キャッシュフロー計算書) それぞれ、作成のポイントを解説します。 9-1. 売上計画の立て方 売上計画は、「客単価 × 顧客数」といった基本的な式をベースに、事業の特性に応じて分解して積み上げて作成します。 例えば、小売店であれば「1日の来客数 × 購入率 × 客単価 × 営業日数」で計算できます。商品数が多い場合は「商品カテゴリごとの平均単価 × 販売数」で算出することもあるでしょう。 単に前年比で目標を立てるのではなく、「新規顧客を〇人増やす」「リピート率を〇%向上させる」といった具体的な行動計画と連動させることが重要です。これにより、計画の精度と説得力が格段に高まります。 9-2. 人員計画・人件費計画の立て方 人員・人件費計画は、事業計画を遂行するために「どのような人材が」「何人必要なのか」を明らかにし、それにかかるコストを算出するものです。 まずは現状の人員構成と総人件費を正確に把握します。その上で、売上計画の達成に必要な営業担当者や、新規事業に必要な開発者などを部署ごと・役職ごとに洗い出し、採用や育成の計画を立てましょう。 人件費は、給与だけでなく社会保険料や福利厚生費なども含めて試算することが重要です。ここを漏れなく計算することで、より実態に近い費用計画を立てられます。 9-3. 設備投資計画の立て方 設備投資計画とは、事業の成長や生産性向上のために必要な設備投資について、その内容、金額、時期を具体的に定めるものです。 新規出店のための店舗改装費、生産能力向上のための機械導入、業務効率化のためのシステム開発などがこれにあたります。 投資の必要性を明確にした上で、「その投資によってどれくらいの収益が見込めるか(投資利益率)」や「何年で元が取れるか(回収期間)」といった指標を用いて、投資の妥当性を客観的に示すことが求められます。 9-4. 損益計算書(P/L)計画の作り方 損益計算書(P/L)計画は、売上計画や各種費用計画を統合し、最終的に会社にどれくらいの利益が残るのかを示すものです。 売上高から始まり、売上総利益、営業利益、経常利益、そして税引後当期純利益までを、月次および年次で予測します。 金融機関などは特に、計画に描かれた利益が着実に生み出されるかを見ています。楽観的・悲観的ないくつかのシナリオを用意しておくと、事業のリスクを多角的に検討している証となり、より説得力が増すでしょう。 9-5. 資金繰り表(キャッシュフロー計算書)の作り方 利益が出ていても手元に現金がなければ会社は立ち行かなくなるため、現金の出入りを正確に予測する資金繰り表(キャッシュフロー計算書)の作成は不可欠です。 キャッシュフローは、本業の儲けを示す「営業活動」、設備投資などによる「投資活動」、借入や返済による「財務活動」の3つに区分して現金の増減を把握します。 これにより、いつ資金が不足しそうかを事前に察知でき、余裕を持った資金調達の準備を進めることができます。黒字倒産のリスクを回避するためにも、極めて重要な計画です。 10. エグゼクティブサマリー(要約) エグゼクティブサマリーは、経営計画書全体の要点を1〜2ページ程度に凝縮したもので、多忙な経営者や投資家が最初に目を通す最も重要な部分です。 この計画を通じて「何を解決し(課題)」「どのように実現し(解決策)」「どのような成果が見込めるのか(期待される結果)」を簡潔かつ魅力的に伝える必要があります。 事業のビジョン、市場機会、競争優位性、数値目標のハイライト、必要な資金額などを盛り込み、読み手が詳細を読み進めたくなるような、いわば「予告編」の役割を果たします。 💬 ひとことポイント計画書のステップは、会社の現状を健康診断し、未来の処方箋を書くプロセスです。特に、SWOT分析から具体的な行動計画への落とし込みが、戦略の成否を分けます。 説得力を3倍高める!経営計画書作成で押さえるべき4つのコツ せっかく時間をかけて作成する経営計画書。その説得力を飛躍的に高め、読み手の心を動かすためには、押さえるべきいくつかのコツがあります。 重要なポイントは以下の4つです。 客観的なデータと根拠を示す 5W2Hを意識して具体的に記述する 実現可能な計画を立てる 第三者(専門家)のレビューを受ける これらを意識するだけで、計画書は単なる書類から、事業を成功に導く強力な武器へと変わります。 1. 客観的なデータと根拠を示す 経営計画書に記載する市場予測や売上目標は、希望的観測ではなく、客観的なデータや事実に基づいてその根拠を明確に示す必要があります。 なぜその市場が成長すると言えるのか、なぜその売上目標が達成可能なのかについて、公的機関が発表している統計データや信頼できる調査会社のレポートなどを引用して説明します。 例えば、「当社のターゲット市場は今後5年で10%成長する見込み」と記述するなら、その根拠として「〇〇総合研究所の市場動向調査(2025年版)」といった出典を明記しましょう。 2. 5W2Hを意識して具体的に記述する 行動計画や戦略を記述する際は、5W2Hを意識することで、内容が具体的かつ明確になります。 5W2Hとは、いつ(When)・どこで(Where)・誰が(Who)・何を(What)・なぜ(Why)・どのように(How)・いくらで(How much)を指すフレームワークです。 「売上を拡大する」といった曖昧な表現ではなく、「来年4月から(When)、関東エリアの(Where)、営業部のAチームが(Who)、新商品のBを(What)販売する」といったレベルまで具体的に落とし込みます。これにより、誰が見ても行動すべき内容が一目瞭然となり、計画の実行性が担保されます。 3. 実現可能な計画を立てる 経営計画は、夢を語るだけでなく、自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ)を踏まえた上で、実現可能なものでなければなりません。 高すぎる目標や、現状とかけ離れた計画は、かえって社内外からの信頼を損なう原因となります。売上計画を立てる際には、過去の実績や現在の営業リソースを考慮し、少し挑戦的ではあるものの、現実的に達成可能なラインを見極めることが重要です。 計画の実現可能性を示すことで、金融機関は「この会社は堅実に事業を運営できる」と判断し、融資の確度が高まります。 4. 第三者(専門家)のレビューを受ける 完成した経営計画書は、必ず自分以外の第三者、特に経営や財務の専門家に見てもらい、客観的なフィードバックを受けることが極めて重要です。 自分では完璧だと思っていても、論理の飛躍や説明不足、矛盾点など、当事者だからこそ気づけない落とし穴は意外と多く存在します。 税理士や中小企業診断士、経営コンサルタントといった専門家は、数多くの企業の計画書を見ており、金融機関がどこを重視するかを熟知しています。彼らからの指摘を反映させることで、計画の精度と説得力は格段に向上します。 💬 ひとことポイント「情熱」を「論理」で補強するのが、説得力ある計画書の秘訣。客観的なデータ(Fact)、具体的な行動(Action)、そして実現可能性(Feasibility)の3点を常に意識しましょう。 作っただけでは無意味!経営計画書を成果につなげる3つの活用法 経営計画書は、作成して棚に飾っておくだけでは一枚の紙に過ぎません。その価値は、組織全体に浸透させ、日々の活動に落とし込み、着実に実行されて初めて生まれます。 計画を「絵に描いた餅」で終わらせないための具体的な活用法は以下の3つです。 経営計画発表会を開催し、全社で目標を共有する 定期的な進捗確認会議(モニタリング)を実施する 人事評価制度と連動させる それぞれ解説していきます。 1. 経営計画発表会を開催し、全社で目標を共有する 経営計画発表会は、社長自らが会社のビジョンや今期の目標を全社員に直接語りかけ、組織全体のベクトルを合わせるための極めて重要なイベントです。 多くの社員は日々の業務に追われ、会社の全体像や向かうべき方向を見失いがちです。発表会という公式な場で、経営者の想いや計画の背景にある熱意を伝えることで、社員は計画を「自分ごと」として捉え、仕事への目的意識が高まります。これにより組織の一体感が醸成され、計画達成に向けた強力な推進力が生まれるのです。 2. 定期的な進捗確認会議(モニタリング)を実施する 計画の実行性を担保し、「絵に描いた餅」で終わらせないためには、定期的な進捗確認会議(モニタリング)を通じて、計画と現実のギャップを埋めていく作業が不可欠です。 多くの計画が失敗する原因は、実行段階での管理不足にあります。月次や四半期ごとに経営会議を開き、売上や利益などの数値目標と実績を比較検証します。 計画通りに進んでいない項目があれば、その原因を深掘りし、すぐに対策を講じることが重要です。このPDCAサイクルを回し続けることで、計画の精度が高まり、目標達成の確度も向上します。 3. 人事評価制度と連動させる 経営計画の目標と個人の評価基準を連動させることで、社員は「会社の目標達成が自らの評価や成長に直結する」と認識し、モチベーションを高く保ちながら業務に取り組むようになります。 会社が目指す方向と、社員一人ひとりの頑張る方向が一致して初めて、組織の力は最大化されます。 例えば、経営計画で掲げた「新規顧客獲得数」や「生産性向上率」といった目標を、部署や個人の評価項目に具体的に落とし込みます。その達成度合いが昇給や賞与に反映される仕組みを構築することで、社員の主体的な行動を促し、組織全体の成長を加速させることができます。 💬 ひとことポイント計画は「作る」ことより「使う」ことが100倍重要です。発表会で「宣言」し、会議で「確認」し、評価で「連動」させる。この3点セットで、計画を会社の血肉に変えましょう。 経営計画書の作成・実行にお悩みならEncoach株式会社へ 経営計画書の作成から実行までには、専門的な知識と多大な労力が求められます。「計画の立て方が分からない」「作ったはいいが、どう活用すればいいのか…」 そんな経営者の悩みに寄り添い、ゴールまで伴走するのが私たちEncoach株式会社です。財務のプロフェッショナルが、あなたの会社の成長を力強くサポートします。 1. 財務のプロが伴走し、実現可能な数値計画の策定を支援します 財務のプロが伴走することで、金融機関も納得する、客観的根拠に基づいた実現可能性の高い数値計画の策定が可能です。 特に専門性が問われるのが数値計画です。知識や経験が不足したまま作成すると、希望的観測に基づいた非現実的な計画になりがちです。 Encoachでは、財務コンサルタントがお客様と伴走し、事業の実態に即した売上計画や資金繰り計画の策定を支援します。これにより、融資審査などの場面でも説得力を持つ、盤石な計画を共に作り上げます。 2. 計画倒れで終わらせない!モニタリング体制の構築までサポートします 私たちは計画を「作って終わり」にせず、月次の予実管理(モニタリング)を通じて計画が着実に実行される体制の構築まで一貫してサポートします。 素晴らしい計画も、実行されなければ意味がありません。Encoachでは、定期的なミーティングを通じて計画の進捗状況を確認し、目標と実績の間に生まれたギャップの原因を分析、軌道修正を支援する「伴走支援」を強みとしています。 このPDCAサイクルを経営に定着させることで、「計画倒れ」を防ぎ、着実な目標達成へと導きます。 3. まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください 「経営の漠然とした悩みを相談できる相手がいない」と感じていませんか?ぜひ一度、当社の無料相談をご活用ください。 初回のヒアリングでは、お客様の現状の課題や財務状況、そして目指す未来の姿を丁寧に伺い、課題解決に向けた具体的なアクションプランをご提案します。相談したからといって、無理に契約を迫ることは一切ありません。 会社の未来をより良くするための第一歩として、まずはお気軽にLINE相談ください。 💬 ひとことポイント一人で悩む時間はもったいない!専門家は、あなたの会社の「外部CFO」です。客観的な視点と専門知識で、計画の質と実行力を劇的に高めるお手伝いをします。 経営計画書テンプレートに関するよくある4つの質問 経営計画書の作成にあたり、多くの方が抱く疑問にお答えします。 Q1. テンプレートは無料で使えますか? はい、この記事で提供しているEncoach監修のテンプレートをはじめ、多くの高品質なテンプレートが無料で利用可能です。 ExcelやGoogleスプレッドシート形式で提供されているものが多く、自社の状況に合わせてカスタマイズして活用できます。無料であっても、金融機関の融資審査で求められる項目を網羅した実用的なものが数多く存在します。 Q2. トヨタのような大企業の経営計画書は参考になりますか? 中小企業がそのまま真似するのは困難ですが、考え方や構成を学ぶ上で非常に参考になります。 大企業の経営計画は、長期的な視点でのビジョンの描き方、事業ポートフォリオ戦略、グローバル市場への対応など、学ぶべき点が多くあります。それらのエッセンスを抽出し、自社の規模や事業フェーズに合わせて応用することが、計画の質を高める上で有効です。 Q3. 個人事業主でも経営計画書は必要ですか? 法的な作成義務はありませんが、作成することを強く推奨します。 経営計画書を作成する過程で、事業の強みや課題、将来の方向性が明確になります。また、日本政策金融公庫からの融資や各種補助金の申請時には、事業計画の提出が必須となるケースがほとんどです。事業を客観的に見つめ直し、成長の道筋を描くために、ぜひ作成しましょう。 Q4. 経営計画書と事業計画書はどちらを先に作るべきですか? 一般的には、会社の理念や3〜5年後の姿を示す中長期の「経営計画書」を先に作り、それを達成するための単年度の具体的な行動計画である「事業計画書」を次に作成します。 まず会社の進むべき大きな方向性(経営計画)を定め、その目的地に至るための詳細な地図(事業計画)を描くという流れです。これにより、一貫性のあるブレない経営が実現できます。 まとめ 本記事では、経営計画書の重要性から、Encoach代表監修の無料テンプレートを使った具体的な書き方、そして計画を成果につなげるための活用法までを網羅的に解説しました。経営計画書は、会社の未来を左右する設計図です。 経営計画書を成功させる鍵は、客観的なデータに基づいた実現可能な計画を立て、組織全体で共有し、粘り強く実行し続けることにあります。 この記事とテンプレートが、あなたの会社の成長を加速させる一助となれば幸いです。計画策定や実行の過程で悩みが生じた際は、一人で抱え込まず、ぜひEncoachの無料相談をご活用ください。財務のプロが、あなたの会社の理想の未来を実現するために伴走します。 -
営業利益・経常利益・純利益の違いとは?5つの利益の関係と経営分析のコツも
「営業利益と経常利益、純利益って、言葉は聞くけど違いがよくわからない…」「決算書を見ても、結局どの数字が一番重要なの?」 この記事では、会社の成績表である損益計算書に登場する「営業利益」「経常利益」「純利益」という3つの利益の違いと関係性を、プロの財務コンサルタントが初心者にもわかりやすく解説します。 この記事を読めば、それぞれの利益が持つ意味を完全に理解し、経営者・投資家・銀行といった異なる立場から、会社の本当の実力を見抜くための分析スキルが身につきます。 まずは結論!営業利益・経常利益・純利益の違いが一目でわかる比較表 企業の経営状況を読み解く上で欠かせない「営業利益」「経常利益」「純利益」。これら3つの利益の違いを理解することが、財務分析の第一歩です。 それぞれの利益が何を示しているのか、以下の表でその定義、特徴、計算式を確認しましょう。 利益の種類定義特徴計算式営業利益売上総利益から販売費・一般管理費を差し引いた利益本業による稼ぐ力を示す指標です。広告宣伝費や人件費など、事業運営に必要なコストを差し引いた利益を指します。営業利益 = 売上総利益 – 販売費および一般管理費経常利益営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引いた利益本業以外の財務活動なども含めた、会社の平常時における総合的な収益力を示します。例えば、受取利息や支払利息などがこれに含まれます。経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用純利益税引前当期純利益から法人税などを差し引いた最終的な利益一時的な損益や税金もすべて反映した、会社が最終的に手元に残せる利益です。株主への配当や将来への投資の源泉となります。当期純利益 = 税引前当期純利益 – 法人税等 会社の成績表!損益計算書(P/L)における5つの利益の流れ 会社の経営成績を示す「損益計算書」には、実は5つの利益が登場します。 利益は、売上から費用を差し引いていく過程で計算され、この流れを理解することが会社の儲けの構造を多角的に分析するカギとなります。 具体的には、利益は「売上総利益」→「営業利益」→「経常利益」→「税引前当期純利益」→「当期純利益」の順番で計算されます。 この流れを理解することで、会社が「何で」「どれくらい」儲けたのかを明らかにできるのです。 損益計算書に登場する5つの利益は以下の通りです。 すべての利益の源泉「売上総利益(粗利)」 本業の稼ぐ力を示す「営業利益」 会社の実力を示す「経常利益」 税金計算の元になる「税引前当期純利益」 最終的な会社の手残り「当期純利益(純利益)」 それぞれ詳しく見ていきましょう。 1. すべての利益の源泉「売上総利益(粗利)」 売上総利益は「粗利(あらり)」とも呼ばれ、事業の基本的な収益力を示す最も源泉となる利益です。 これは、商品の販売やサービスの提供によって得られた「売上高」から、その商品を作るためや仕入れるために直接かかった費用である「売上原価」を差し引いて計算されます。 例えば、80円で仕入れた商品を100円で販売した場合、売上総利益は20円です。この利益は、提供する商品やサービスの付加価値そのものを表しているため、すべての利益の源泉と言える重要な指標です。 2. 本業の稼ぐ力を示す「営業利益」 営業利益とは、会社が「本業」でどれだけ稼いだかを示す利益指標です。 先ほどの売上総利益から、商品を販売するためや会社を運営するためにかかった経費である「販売費及び一般管理費(販管費)」を差し引くことで算出されます。 販管費には、営業担当者の給料や広告宣伝費、オフィスの家賃などが含まれます。営業利益を見ることで、その企業が本業のビジネスでしっかりと利益を出せているかという、事業そのものの収益性がわかります。 3. 会社の実力を示す「経常利益」 経常利益は、会社の本業の儲け(営業利益)に、本業以外で経常的に発生する収益と費用を加減した利益です。 これにより、財務活動なども含めた会社全体の平常時の収益力が明らかになります。 例えば、銀行預金の受取利息(営業外収益)や借入金の支払利息(営業外費用)などがこれにあたります。本業が好調でも、多額の借入金があり支払利息が大きいと経常利益は圧迫されます。そのため、金融機関は融資の際にこの経常利益を重視する傾向があります。 4. 税金計算の元になる「税引前当期純利益」 税引前当期純利益は、その名の通り、税金を支払う前の最終的な利益額を示す指標です。 これは、経常利益に対して、その期にだけ発生した特別な利益(特別利益)や損失(特別損失)を加減して計算されます。 特別利益には固定資産の売却益などが、特別損失には災害による損失などが該当します。税引前当期純利益は、法人税などの税額を計算する際の基礎となる数字であり、企業のその期のすべての活動を含んだ利益と評価できます。 5. 最終的な会社の手残り「当期純利益(純利益)」 当期純利益(または純利益)は、税引前当期純利益から法人税などの各種税金を差し引いて計算される、会計期間における最終的な手残り利益です。 これは、一年間の企業活動の最終的な成果であり、株主への配当金の原資となったり、将来の成長のための内部留保として会社に蓄えられたりします。 当期純利益こそが、一年間の経営活動の末に会社の手元に最終的にいくら残ったのかを示す、まさに会社の成績表といえるでしょう。 💬 ひとことポイント利益は5段階で計算される!どの段階で利益が減っているかを見るのが、会社分析の第一歩です。例えば、営業利益が出ていないなら本業に、経常利益が低いなら財務活動に課題があるかもしれません。 【シーン別解説】営業利益・経常利益・純利益、結局どれが一番重要なの? 営業利益、経常利益、純利益は、それぞれ異なる企業の側面を映し出すため、一概に「これが一番重要」とは言えません。 重要なのは、あなたが「誰の立場で」「何を知りたいか」によって、注目すべき利益を使い分けることです。 ここでは、経営者、投資家、銀行という3つの異なる視点から、どの利益がなぜ重要なのかを解説します。 立場ごとに重視する利益は以下の通りです。 経営者が重視すべきは「営業利益」と「経常利益」 投資家が注目するのは「純利益」と「営業利益」 銀行(融資担当者)が見ているのは「経常利益」 それぞれ解説していきます。 1. 経営者が重視すべきは「営業利益」と「経常利益」 経営者は日々の経営判断や事業戦略を立てる上で、本業の稼ぐ力を示す「営業利益」と、会社全体の経常的な収益力を示す「経常利益」の両方を重視すべきです。 なぜなら、営業利益は主力事業が健全に成長しているかを示す直接的な指標だからです。この利益が伸びていなければ事業の根幹が揺らいでいるサインと言えます。 一方、経常利益は借入金の利息負担や資産運用の成果といった財務活動も反映するため、会社全体の資金繰りや財務体質の健全性も併せて確認できます。 2. 投資家が注目するのは「純利益」と「営業利益」 投資家は、投資先の将来性や株主への還元力を評価するために、最終的な儲けである「純利益」と、本業の収益性を示す「営業利益」に注目します。 その理由は、純利益は株主への配当金の原資や、企業の再投資に回される内部留保の源泉となり、企業の成長ポテンシャルに直結するからです。 一方で、純利益は不動産の売却といった一時的な要因に左右されることがあるため、持続的な収益力を見極めるには、本業でどれだけ稼いでいるかを示す営業利益の確認が不可欠です。 3. 銀行(融資担当者)が見ているのは「経常利益」 銀行などの金融機関が融資審査を行う際に最も重視するのは「経常利益」です。 なぜなら、銀行が融資で最も知りたいのは「貸したお金を利息も含めて、継続的に返済してくれる能力があるか」であり、その返済原資となるのが企業の経常的な収益力、すなわち経常利益だからです。 純利益は、災害による損失などで一時的に赤字になることがありますが、経常利益が安定して黒字であれば、銀行は「返済能力は十分にある」と判断しやすくなります。 💬 ひとことポイント見る人の立場で重要度が変わる!自分がどの視点で会社を見たいのかを明確にすることが大切です。経営者なら事業の足腰、投資家なら成長性、銀行なら返済能力、というように目的意識を持って決算書を見ましょう。 3つの利益でここまで分かる!会社の健康診断を行う4つのケーススタディ 損益計算書に並ぶ3つの主要な利益(営業利益・経常利益・純利益)の関係性を読み解くことで、企業の経営状態をより深く、多角的に分析できます。 まるで健康診断のように、数字の組み合わせから企業の隠れた課題や強みが見えてくるのです。 ここでは、特に注意すべき4つのケーススタディを通して、具体的な分析方法を解説します。 注目すべき4つのケースは以下の通りです。 【ケース1】営業利益は黒字なのに経常利益が赤字の会社 【ケース2】経常利益は黒字なのに純利益が赤字の会社 【ケース3】営業利益と経常利益の差が異常に大きい会社 【ケース4】利益は出ているのに現金がない(黒字倒産)の危険性 1.【ケース1】営業利益は黒字なのに経常利益が赤字の会社 この状況は、本業ではしっかり利益を出せているものの、借入金の支払利息など、財務活動が経営全体の足を引っ張っている危険な状態を示唆しています。 本業の儲けである営業利益から、支払利息などの営業外費用を差し引いたものが経常利益です。 そのため、営業利益が黒字でも、それを上回る営業外費用(特に支払利息や為替差損など)が発生していると、経常利益は赤字になってしまいます。事業そのものに問題はなくとも、過大な借入金が収益を圧迫しているため、早急な財務体質の改善が求められます。 2.【ケース2】経常利益は黒字なのに純利益が赤字の会社 このケースは、会社の通常の事業活動は好調であるものの、その期に限定された突発的な損失(特別損失)によって、最終的な利益が赤字になってしまった状態を表します。 経常利益に、固定資産の売却損益や災害による損失といった一時的な損益(特別損益)を加減し、税金を差し引いたものが最終的な純利益です。 そのため、経常利益が黒字でも、それを上回る巨額の特別損失が発生すれば、純利益は赤字になります。この場合は一過性の損失が原因である可能性が高いため、過度に悲観する必要はありません。むしろ、経常利益が黒字である点を評価し、来期以降のV字回復を期待できるケースと言えるでしょう。 3.【ケース3】営業利益と経常利益の差が異常に大きい会社 営業利益と経常利益の差額は、その会社の財務活動の実態を映し出します。この差が異常に大きい場合、本業以外の活動が経営に与える影響が極めて大きいことを意味しており、その内容を慎重に分析する必要があります。 例えば、経常利益が営業利益を大幅に上回っている場合、本業の儲け以上に、株式の配当金や不動産賃料収入といった「財テク」による収益が大きいことを示します。 一見すると好ましい状況に見えますが、本業の収益力が低下しているのを財務収益で補っている可能性も考えられ、注意が必要です。 4.【ケース4】利益は出ているのに現金がない(黒字倒産)の危険性 黒字倒産とは、損益計算書上では利益(黒字)が出ているにもかかわらず、支払いに必要な現金が不足し、会社が倒産してしまう状況を指します。 この最大の原因は、会計上の「利益」と手元にある「現金(キャッシュ)」のズレにあります。日本の企業間取引では、商品を販売してもすぐに現金が入金されるとは限らず、「売掛金」として後日入金されるのが一般的です。 この売掛金は会計上、売上として利益に計上されますが、手元に現金はありません。そのため、利益の額だけを見て安心するのではなく、現金の動きを示すキャッシュフローを常に監視することが、企業の生死を分けるのです。 💬 ひとことポイント利益の「差額」に注目!「営業利益と経常利益の差」は財務活動の状況、「経常利益と純利益の差」は一時的な損益の大きさを表します。この差額を分析することで、会社の隠れたストーリーが読めてきます。 財務分析をさらに深めるための3つの重要経営指標 営業利益や経常利益といった利益の「額」を見るだけでは、企業の本当の実力はわかりません。 売上に対してどれだけ効率的に利益を生み出せているかという「率」で見ることで、企業の収益性や効率性を客観的に評価できます。 ここでは、財務分析をさらに深めるために不可欠な3つの重要指標を解説します。 分析に不可欠な3つの指標は以下の通りです。 本業の収益性がわかる「売上高営業利益率」 会社の総合的な稼ぐ力がわかる「売上高経常利益率」 資本の効率性がわかる「自己資本利益率(ROE)」 1. 本業の収益性がわかる「売上高営業利益率」 売上高営業利益率とは、売上高に対して本業の儲けである「営業利益」がどれくらいの割合を占めるかを示す指標で、企業の「本業における稼ぐ力」を直接的に測ることができます。 計算式は「営業利益 ÷ 売上高 × 100」で、この数値が高いほど、本業の収益性が高く、競争力のある事業を行っていると判断できます。 この指標を同業他社と比較したり、時系列で推移を見たりすることで、自社の事業の強みや課題を浮き彫りにすることが可能です。 2. 会社の総合的な稼ぐ力がわかる「売上高経常利益率」 売上高経常利益率とは、売上高に対する「経常利益」の割合を示す指標です。 本業の収益力に加え、財務活動の巧拙も含めた「会社全体の総合的な稼ぐ力」を評価することができます。計算式は「経常利益 ÷ 売上高 × 100」となります。 例えば、売上高営業利益率は高いのに、売上高経常利益率が低い場合、支払利息の負担が重いなど、財務体質に課題がある可能性が示唆されます。この指標を業界平均と比較することも有効です。 3. 資本の効率性がわかる「自己資本利益率(ROE)」 自己資本利益率(ROE: Return On Equity)とは、株主が出資したお金(自己資本)を使って、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。 計算式は「当期純利益 ÷ 自己資本 × 100」で、この数値が高いほど、株主の資本を有効活用して高いリターンを生み出している「稼ぐ効率の良い会社」と評価されます。 ROEは、特に投資家が企業の収益性と成長性を判断する上で最も重視する指標の一つです。一般的にROEが10%を超えると優良企業の一つの目安とされます。 💬 ひとことポイント「額」だけでなく「率」で見よう!率は、会社の規模に関係なく収益性を客観的に比較できる便利なモノサシです。同業他社や過去の自社と比較することで、会社の現在地がより明確になります。 営業利益・経常利益・純利益に関するよくある5つの質問 ここでは、営業利益、経常利益、純利益に関して、多くの人が抱く疑問にQ&A形式でお答えします。 これらのポイントを押さえることで、財務諸表への理解がさらに深まります。 Q1. 人件費はどの利益の計算に含まれますか? A. 人件費は、本業の儲けを示す「営業利益」を算出する過程で、費用として差し引かれます。 具体的には、従業員の給与や賞与といった人件費は、その役割に応じて「売上原価」(例:工場の製造スタッフ)または「販売費及び一般管理費」(例:営業担当者、本社スタッフ)に含まれます。 したがって、人件費は営業利益の額を直接左右し、その後の経常利益や純利益の計算にも影響を与える重要なコストです。 Q2. 減価償却費はどこに影響しますか? A. 減価償却費は、人件費と同様に「営業利益」の計算に影響します。 減価償却費とは、工場設備や社用車といった高額な固定資産の購入代金を、法律で定められた使用可能な期間(耐用年数)にわたって分割し、毎年少しずつ費用として計上する会計処理です。 この費用は「売上原価」や「販売費及び一般管理費」に含まれるため、営業利益を計算する際に差し引かれます。実際に現金の支出を伴わない費用であるため、利益を調整し節税効果がある一方で、キャッシュフローの計算では利益に足し戻される特徴があります。 Q3. 純利益が赤字だとどうなりますか? A. 純利益が赤字(当期純損失)になると、企業の信用力が低下し、資金調達が難しくなるなど、経営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。 金融機関は融資の際に企業の返済能力を厳しく審査するため、最終利益が赤字の会社は「経営がうまくいっていない」と見なされ、新規の借入や融資条件の維持が困難になることがあります。 また、赤字が続くと内部留保が取り崩され、運転資金の不足や倒産のリスクも高まります。ただし、赤字の原因が一時的な特別損失による場合は、経常利益が黒字であれば過度に悲観する必要はありません。 Q4. 個人事業主の場合も考え方は同じですか? A. はい、儲けを計算する基本的な考え方は同じですが、会計上の用語が一部異なります。 個人事業主の場合、法人の利益に相当するものは「所得」と呼ばれます。 具体的には、1年間の総収入から必要経費を差し引いた「事業所得」が、法人の「営業利益」に近い概念となります。法人のように複雑な利益計算はありませんが、収入から経費を引いて儲けを把握するという本質は同じです。 Q5. 英語ではそれぞれ何と言いますか? A. グローバルなビジネスシーンや海外企業の決算書では、利益は以下のように英語で表記されます。 日本語英語売上高Sales / Net Sales売上総利益Gross Profit営業利益Operating Income / Operating Profit経常利益Ordinary Income / Recurring Profit当期純利益Net Income / Net Profit 💬 ひとことポイント利益と現金は別物!特に減価償却費は現金の支出を伴わない費用です。決算書上の利益だけでなく、キャッシュフロー計算書で現金の動きも必ず確認しましょう。 まとめ:3つの利益の違いを理解し、会社の本当の実力を見抜こう 今回は、多くのビジネスパーソンが混同しがちな「営業利益」「経常利益」「純利益」という3つの利益の違いと、その関係性について詳しく解説しました。 営業利益: 本業でどれだけ稼いだかを示す「本業の収益力」 経常利益: 財務活動なども含めた「会社全体の総合的な収益力」 純利益: すべての活動の結果、最終的に会社に残った「本当の成績」 重要なのは、どれか一つだけを見るのではなく、それぞれの利益が持つ意味を理解し、その差額から企業の経営状態を多角的に読み解くことです。 この記事を通して、損益計算書の数字の裏側にある企業のストーリーを読み解く楽しさを感じていただけたなら幸いです。もし、より深い分析や具体的な経営改善でお悩みの場合は、ぜひ一度Encoachの無料相談をご活用ください。 -
経常利益と人件費の関係とは?計算方法から適正比率、改善方法を解説
「会社の経常利益を伸ばしたいが、人件費はどのくらいが適正なのだろうか」「コストと捉えがちな人件費と利益の関係性が知りたい」そんなお悩みはありませんか。 この記事では、経常利益と人件費の基本的な関係性から、自社の状況を客観的に分析するための4つの重要指標、さらには利益を最大化するための5つの具体策までを専門家が分かりやすく解説します。 この記事を読めば、人件費を未来への投資として捉え、持続可能な利益体質を築くための具体的な方法がわかります。 経営者が知るべき経常利益と人件費の3つの基本 企業の健全な成長を目指す上で、利益とコストの関係を正しく理解することは不可欠です。 特に、会社の総合的な収益力を示す「経常利益」と、経営の根幹をなす「人件費」は、常にセットで考えなければならない重要な経営指標です。ここでは、これら2つの指標の基本的な関係性について、3つのポイントから解説します。 1. 経常利益とは?会社の「総合的な収益力」を示す最重要指標 経常利益とは、会社が毎年どれくらい安定して稼ぐ力があるかを示す「総合的な収益力」の指標です。 本業の儲けである「営業利益」に、本業以外で得た収益(営業外収益)と費用(営業外費用)を加減して算出します。 例えば、製造業の会社が、持っている不動産の家賃収入(営業外収益)を得たり、銀行への借入金の利息(営業外費用)を支払ったりした場合、それらを営業利益と合算したものが経常利益となります。 このように、経常利益は一時的な大きな利益や損失を含まないため、「会社の平常時における真の実力」を表す指標として、銀行の融資審査や投資家が企業価値を判断する際に特に重視されるのです。 2. 人件費は経常利益の計算に含まれる?損益計算書(P/L)の位置付けで解説 結論として、人件費は経常利益を計算するより手前の、「営業利益」を算出する段階で費用として計上されます。 会社の成績表である「損益計算書(P/L)」において、人件費は「販売費及び一般管理費(販管費)」に含まれるのが一般的です。 損益計算書での利益の計算プロセスは、以下のようになります。 売上総利益 = 売上高 – 売上原価 営業利益 = 売上総利益 – 販売費及び一般管理費(←ここに人件費が含まれる) 経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用 つまり、人件費は本業の儲けである営業利益に直接影響し、その結果が経常利益の金額を左右するため、コントロールが非常に重要な費用項目といえます。 3.【図解】混同しやすい4つの利益との違い(売上総利益・営業利益・税引前当期純利益・当期純利益) 損益計算書には経常利益のほかにも複数の利益が登場し、それぞれ異なる意味を持ちます。これらの違いを正しく理解することで、自社の収益構造を多角的に分析できます。 利益の種類計算式何を示す利益か売上総利益売上高 – 売上原価商品やサービスの基本的な儲け(粗利)営業利益売上総利益 – 販管費本業での稼ぐ力経常利益営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用会社全体の総合的な収益力税引前当期純利益経常利益 + 特別利益 – 特別損失税金を支払う前の、その期に発生した全ての事象を含んだ利益当期純利益税引前当期純利益 – 法人税等最終的に会社に残る利益 例えば、長年使用してきた工場を売却して得た一時的な利益(特別利益)は、経常利益には含まれません。 経常利益は、このような一時的な損益を除いた「会社の継続的な実力」を測る上で最適な指標と言えるでしょう。 💬 ひとことポイント利益は5人兄弟のようなもの!売上総利益(長男)、営業利益(次男)、経常利益(三男)、税引前利益(四男)、当期純利益(五男)。それぞれの役割を理解すれば、会社の成績がより深く読めるようになります。 自社の人件費は適正?経営状況を可視化する4つの重要指標 自社の人件費が本当に適正なのか、客観的に評価することが重要です。ここでは、経営状況を数字で見える化し、人件費の妥当性を判断するための4つの重要指標を紹介します。 1.【労働分配率】会社の付加価値に対して人件費は適正か?業種別の目安も紹介 労働分配率とは、会社が生み出した儲け(付加価値)のうち、どれだけを人件費として従業員に還元したかを示す割合です。この比率が高いほど、儲けの多くが人件費に充てられていることを意味します。 付加価値とは、おおむね売上総利益(売上高-売上原価)と捉えると分かりやすいでしょう。 計算式は「労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値 × 100」です。自社の労働分配率を業種別の平均値と比較することで、人件費配分の客観的な判断が可能になります。例えば、飲食サービス業は78.8%ですが製造業は54.5%と、業種で大きく水準が異なります(2022年度調査)。 出典:2022年企業活動基本調査確報-2021年度実績-|経済産業省 2.【売上高人件費率】売上に対して人件費をかけすぎていないか? 売上高人件費率とは、売上高に占める人件費の割合を示し、企業の生産性を測る指標の一つです。この比率が低いほど、少ない人件費で効率よく売上を上げている、つまり収益性が高いと判断できます。 計算式は「売上高人件費率(%) = 人件費 ÷ 売上高 × 100」となります。 ただし、この指標は業種による差が大きいため注意が必要です。例えば、中小企業庁「中小企業実態基本調査(令和5年確報・2022年度実績)」によると、情報通信業は19.3%であるのに対し、卸売業は5.9%と、ビジネスモデルの違いが大きく反映されています。自社の数値を評価する際は、こうした公的な業種別データを参考にすることが重要です。 出典:中小企業庁「中小企業実態基本調査(令和5年確報・2022年度実績)」 3.【一人当たり経常利益】従業員一人がどれだけ効率的に利益を生んでいるか? 一人当たり経常利益とは、従業員一人がどれだけの経常利益を生み出しているかを示す指標で、労働生産性を測るために用いられます。 計算式は「一人当たり経常利益 = 経常利益 ÷ 従業員数」です。 この数値が高いほど、従業員一人ひとりが効率的に利益創出に貢献していることを示します。この指標を時系列で比較することで、生産性向上のための施策が実際に利益に結びついているかどうかの効果測定にも活用可能です。企業の成長のためには、この指標を継続的に高めていく意識が重要です。 4.【売上高経常利益率】本業と本業以外を合わせた会社の収益性は高いか? 売上高経常利益率とは、売上高に対して経常利益がどれだけ残ったかを示す比率で、企業の総合的な収益性を判断する代表的な指標です。 計算式は「売上高経常利益率(%) = 経常利益 ÷ 売上高 × 100」となります。 本業の収益性のみを示す営業利益率に対し、この比率は財務活動なども含めた会社全体の収益力を評価できます。比率が高いほど、本業の収益力に加え財務活動もうまくいっている健全な経営状態であると判断できるでしょう。中小企業庁が2024年3月に公表した「令和5年中小企業実態基本調査速報」によると、2022年度の中小企業の売上高経常利益率は平均で4.29%となっています。 出典:令和5年中小企業実態基本調査速報(要旨) 💬 ひとことポイントこれらの指標は単体で見るのではなく、複数組み合わせ、さらに業界平均や過去の自社データと比較することが肝心です。多角的な視点で自社の立ち位置を正確に把握しましょう。 経常利益を最大化する!人件費を最適化する5つの具体策 経常利益を最大化するには、人件費の最適化が不可欠です。しかし、人件費は未来への「投資」でもあります。従業員のやる気を維持しながら利益を出すための、具体的な5つのステップは以下の通りです。 【現状把握】自社の立ち位置を正確に知る 【生産性向上】ITツール導入などで無駄をなくす 【付加価値向上】商品・サービスの価値を高める 【人事評価制度】成果と報酬を連動させる 【採用・人員配置】戦略的な人材活用を行う それぞれ詳しく解説します。 1.【現状把握】まずは自社の各種指標を正確に計算し立ち位置を知る 人件費最適化の第一歩は、自社の現状を客観的な数値で正確に把握することから始まります。 まずは「労働分配率」や「売上高人件費率」などの指標を計算し、業界平均と比較して自社の立ち位置を明確にしましょう。 これらの指標を計算することで、自社が売上や付加価値に対して人件費をかけ過ぎていないか、あるいは適正な範囲にあるのかを客観的に評価できます。この現状把握が、これから進めるべき施策の方向性を定めるための羅針盤となるのです。 2.【生産性向上】ITツール導入や業務フローの見直しで無駄をなくす 従業員一人ひとりの生産性を高めることは、実質的な人件費の最適化に直結します。少ない人数や時間でより多くの成果を生み出す体制を構築することが重要です。 ITツールの導入や業務フローの見直しによって、これまで時間を要していた定型業務や情報共有を効率化し、従業員がより付加価値の高い業務に集中できる環境を整えましょう。 例えば、クラウド型の業務管理システムやコミュニケーションツールを活用することで、書類作成の時間を大幅に削減したり、不要な会議を減らしたりできます。これにより残業時間も削減され、結果として人件費を抑制しながら利益を向上させることが可能です。 3.【付加価値向上】商品・サービスの単価や価値を高め利益の源泉を増やす 人件費を直接削減するのではなく、それを上回る利益を生み出すことも重要なアプローチです。そのためには、事業が生み出す「付加価値」そのものを高める必要があります。 競合他社との差別化を図り、商品・サービスの単価やブランド価値を高めることで、利益の源泉そのものを増やしましょう。 付加価値が高まれば、顧客に選ばれる理由が明確になり、価格競争から脱却して適正な価格設定が可能になります。新商品の開発や既存サービスの品質向上など、自社の強みを活かして付加価値を高める戦略を検討することが、持続的な利益成長につながります。 4.【人事評価制度】成果と報酬を連動させ従業員のモチベーションを高める 従業員の働きが適正に評価され、報酬に反映される仕組みは、生産性向上に不可欠です。公平で透明性の高い人事評価制度は、従業員のエンゲージメントを高めます。 企業の目標達成への貢献度に応じて報酬が決まる、成果と連動した人事評価制度を構築・運用しましょう。 「頑張れば報われる」という実感が得られることで、従業員は自律的に目標達成や自己成長への意欲を高めます。短期的な成果だけでなく、チームへの貢献度といったプロセスも評価に組み込むなど、多角的な視点を持つことが組織全体の健全な成長を促す上で重要です。 5.【採用・人員配置】事業計画に基づいた戦略的な人材活用を行う 事業の成長ステージや戦略に合わせて、必要な人材を確保し、適材適所に配置することは、人件費を「投資」として最大限に活かすための鍵となります。 場当たり的な増員ではなく、中長期的な事業計画に基づいた戦略的な要員計画を立て、採用や人員配置を行いましょう。 経営計画を達成するために、どの部署に、どのようなスキルを持つ人材が、何人必要なのかを明確にすることが重要です。従業員一人ひとりのスキルや適性を見極め、最も能力を発揮できる部署へ配置することで、組織全体のパフォーマンスを最大化し、無駄のない効率的な人員体制を構築できます。 💬 ひとことポイント人件費の最適化は「削減」だけが答えではありません。「生産性向上」や「付加価値向上」といった攻めのアプローチと組み合わせることで、企業の成長と従業員の満足度を両立させましょう。 人件費や利益構造の改善に専門家の視点が必要ならEncoach株式会社へ 人件費の最適化や利益構造の改善は、多くの経営者が直面する根深い課題です。しかし、これらの問題は専門的な知識と客観的な視点を取り入れることで、解決への糸口が見つかります。 ここでは、多くの経営者がなぜ人件費の課題でつまずくのかを解説するとともに、解決策としてEncoach株式会社の財務コンサルティングサービスをご紹介します。 1. なぜ多くの経営者が人件費の課題でつまずくのか? 多くの経営者が人件費の課題でつまずくのは、短期的な視点でコスト削減を急ぎ、人件費を単なる「コスト」としてしか捉えられなくなるからです。 業績が悪化すると、財務諸表の中で大きな割合を占める人件費に真っ先に手をつけてしまいがちです。 しかし、この安易な削減は、従業員のモチベーション低下や優秀な人材の流出を招き、長期的には企業の競争力を削いでしまう危険性をはらんでいます。人件費の裏側には、従業員の生活や会社の未来を支える「人」がいるという視点が欠けてしまうことが、根本的なつまずきの原因です。 2. Encoach株式会社が提供する財務コンサルティングとは Encoach株式会社では、財務の専門家が経営者に伴走し、利益体質な経営を実現するための財務コンサルティングを提供しています。 私たちは、単に数字を分析するだけでなく、経営者が自信を持って事業に集中できる「仕組み」と「環境」を整えることを重視しています。 事業計画書の策定から月次の予実管理、資金繰りのサポートまでを一貫して行い、会社の財務状態を可視化し、本質的な経営課題の解決を支援します。財務知識に自信がない方でも、質の高いPDCAサイクルを回せるようになり、未来への新たなチャレンジを後押しします。 3. まずは無料相談から!貴社の課題をヒアリングします 「自社の人件費は本当に適正なのか」「利益を出すために、何から手をつければいいかわからない」といったお悩みはありませんか。Encoach株式会社では、そのような経営者の皆様に向けて、無料の個別相談会を実施しています。 貴社の現状や課題を丁寧にヒアリングし、専門家の視点から解決の方向性をご提案します。この相談が、貴社の未来をより良くするための第一歩となるはずです。無理な勧誘は一切ありませんので、まずはお気軽にお問い合わせください。 💬 ひとことポイント財務の課題は、社内の人間だけでは客観的な判断が難しいもの。信頼できる外部の専門家をパートナーにすることで、これまで見えなかった課題や新たな可能性が見えてきます。 経常利益と人件費に関するよくある4つの質問 ここでは、経常利益と人件費に関して、経営者や管理職の方からよく寄せられる質問にお答えします。基本的な疑問を解消し、より深く財務を理解するための一助となれば幸いです。 Q1. 営業利益が赤字で経常利益が黒字の場合、どう考えればいいですか? A. 本業では損失が出ていますが、本業以外の収益(営業外収益)でその損失をカバーし、結果的に利益が出ている状態です。 本業の収益力に課題がある一方で、有価証券の売却益や受取配当金といった財務活動がうまくいっているケースが考えられます。ただし、一時的な営業外収益で黒字になっている可能性もあるため、本業の立て直しが急務と判断できます。なぜ営業赤字なのかを分析し、早急に対策を講じる必要があります。 Q2. 営業利益と経常利益、経営においてどちらがより重要ですか? A. どちらも重要ですが、一般的には企業の「本業の稼ぐ力」を直接示す「営業利益」がより重視される傾向にあります。 本業が健全に成長しているかを見るには営業利益を、会社全体の総合的な収益力や財務活動を含めた実力を見るには経常利益を確認するのが適切です。会社の根幹である事業の収益性を評価できるため、金融機関の融資審査などでは特に営業利益が注目されます。 Q3. 役員報酬も損益計算書上では人件費として扱われますか? A. 会計処理上、役員報酬は従業員の給与とは区別され、「役員報酬」という勘定科目で販売費及び一般管理費に計上されるのが一般的です。 広い意味では人件費の一部と捉えられますが、会計・税法上は従業員の給与(人件費)とは明確に異なる扱いを受けます。これは、役員と会社が雇用契約ではなく委任契約に基づいているためです。金融機関などが会社の財務を分析する際は、この役員報酬の額も重要なチェックポイントとなります。 Q4. 人件費を減らさずに経常利益を増やすことは可能ですか? A. はい、可能です。人件費の削減は利益を増やすための一つの手段に過ぎず、安易な削減はかえって経営を悪化させるリスクがあります。 人件費を維持または増やしながら経常利益を増やすには、「売上を増やす」「人件費以外の経費を削減する」「生産性を向上させる」といったアプローチが有効です。具体的には、商品単価を上げる、ITツール導入で業務を効率化し残業代を減らす、付加価値の高い事業に人材を再配置するなどの方法が考えられます。 まとめ: 人件費はコストではなく未来への投資。正しく分析し、利益体質な経営を目指そう 本記事では、経常利益と人件費の関係性から、具体的な分析指標、そして利益を最大化するための最適化ステップまでを解説しました。 経常利益は会社の総合的な収益力を示す重要な指標であり、人件費はその利益を生み出すための源泉です。重要なのは、人件費を単なる「コスト」として捉えるのではなく、企業の未来を創るための「投資」と認識することです。 労働分配率や一人当たり経常利益といった客観的な指標を用いて自社の現状を正しく分析し、生産性向上や付加価値向上といった前向きなアプローチで人件費の最適化を図ることが、持続可能な利益体質の経営を実現する鍵となります。 -
経常利益率の目安は?【2025年最新】業種別・中小企業の平均値を解説
「自社の経常利益率は、他社と比べて高いのか低いのか?」「業種ごとの経常利益率の目安が知りたい」 そんな経営者のために、本記事では経常利益率の目安を業種別・企業規模別に一覧表で徹底比較します。さらに、基本的な計算方法から具体的な改善策まで、税務・財務の専門家が分かりやすく解説。 この記事を読めば、自社の経営状態を客観的に把握でき、明日からの財務改善に繋がる具体的な一手が見つかります。 まずは結論!経常利益率の業種別・企業規模別の目安が一覧でわかる比較表 企業の総合的な収益力を測る「経常利益率」は、業種や企業規模によって目指すべき水準が大きく異なります。 自社の経営状態を客観的に把握するためには、まず自社の経常利益率を算出し、これらの平均値と比較することが第一歩です。 平均より高ければ経営が順調な可能性があり、低ければ何らかの課題を抱えているかもしれません。 この比較表を参考に自社の現在地を確認し、今後の経営戦略や財務改善に役立てていきましょう。 経常利益率の業種別・企業規模別 目安比較表 業種・分類経常利益率の目安出典全業種 (中小企業)約4.3%中小企業庁 全業種 (大企業)約11.0%日本経済新聞 優良企業の目安10%以上-製造業5.1%中小企業庁 建設業4.71%中小企業庁 IT・情報通信業7.04%中小企業庁 小売業2.53%中小企業庁 運輸業、郵便業3.44%中小企業庁 次の章からは、経常利益率の基本的な意味や計算方法について、さらに詳しく解説します。 💬 ひとことポイントまずは自社の立ち位置確認から!この表はあくまで一般的な目安です。自社の数字と比較し、なぜ差があるのかを考えることが経営改善のスタートになります。 そもそも経常利益率とは?企業の「総合的な収益力」がわかる3つの基本 経常利益率は、会社の「健康状態」を総合的に判断するための重要な指標です。 この指標は、本業の儲けを示す「営業利益」だけでなく、預金の利息や借入金の利息といった財務活動なども含めた、会社全体の平常時の収益力を示します。 そのため、経常利益率を正しく理解し分析することで、より実態に近い経営体力や資金効率を評価できるのです。 この章では、経常利益率の正しい意味、よく似た指標である「営業利益率」との違い、そして誰でも1分でできる計算方法という3つの基本を解説します。これらのポイントを押さえることで、自社の収益構造を正しく理解し、的確な経営判断を下す土台ができます。 1. 経常利益率の正しい意味と経営における重要性 結論として、経常利益率とは、企業の本業の儲けに加えて、財務活動なども含めた「会社全体の平常時の収益力」を示す指標です。 なぜなら、本業の成績を示す営業利益だけでなく、受取利息や支払利息といった「営業外」の損益も反映するため、より実態に近い経営体力を評価できるからです。 例えば、本業が順調で営業利益が多くても、多額の借入金があり支払利息が嵩んでいれば、経常利益率は低くなります。 このように、経常利益率は企業の収益性だけでなく、財務体質の健全性をも映し出す鏡であり、経営分析において極めて重要な役割を果たします。 2. 意外と知らない「営業利益率」との決定的な違いと比較方法 営業利益率と経常利益率は混同されがちですが、その違いを理解することが重要です。 営業利益率が「本業で稼ぐ力」を示すのに対し、経常利益率は「会社全体で経常的に稼ぐ力」を示します。 それぞれの利益は以下のように計算され、その違いが指標の意味の違いに繋がります。 営業利益:売上から売上原価と販管費を差し引いた「本業の利益」 経常利益:営業利益に「営業外収益(受取利息など)」を加え、「営業外費用(支払利息など)」を差し引いた利益 例えば、本業の傍らで行っている資産運用が成功していれば、経常利益率は営業利益率よりも高くなります。この2つの指標を比較することで、本業の収益性に加え、財務活動が経営に与える影響まで分析できるのです。 3. 1分でわかる経常利益率の計算方法 経常利益率は、複雑な知識がなくても簡単な計算式で算出できます。 売上高経常利益率(%)= 経常利益 ÷ 売上高 × 100 この計算式の「経常利益」は、本業の利益である「営業利益」に、受取利息などの「営業外収益」を足し、支払利息などの「営業外費用」を引くことで算出できます。 例えば、売上高が1億円で、最終的な経常利益が400万円だった場合、経常利益率は「400万円 ÷ 1億円 × 100 = 4%」となります。 この計算により、売上に対してどれだけの総合的な利益が残ったのかが一目でわかり、自社の収益性を客観的に評価することが可能です。 💬 ひとことポイント「経常」とは「平常時」のこと。本業の力に加え、資金繰りの上手さ(財務活動)も反映された、会社の総合的な実力値と捉えましょう。 【2025年最新データ】経常利益率の目安を4つの基準で徹底比較 自社の経常利益率が適正な水準にあるかを知ることは、経営改善の第一歩です。 しかし、その目安は企業の状況によって大きく変わります。 ここでは「全業種の平均」「優良企業の基準」「業種別の違い」「中小企業特有の視点」という4つの基準から、自社の立ち位置を客観的に測るための具体的な数値とポイントを解説します。 これらの基準と比較することで、自社の強みや弱みを多角的に把握し、次の戦略へと繋げることが可能になります。 1. 全業種の平均目安は「4〜5%」が一般的 結論として、全業種の経常利益率の平均的な目安は、一般的に4%から5%程度とされています。 これは、中小企業庁が公表する統計データなどでも示される標準的な収益水準であり、多くの企業がこの範囲に収まる傾向にあります。 例えば、売上が1億円の会社であれば、経常利益が400万円から500万円出ている状態が平均的といえるでしょう。 まずはこの数値を基準として、自社の収益性が平均と比べて高いのか、あるいは低いのかを把握することが大切です。 2. 「優良企業」と呼ばれる目安は「10%以上」 一般的に「優良企業」と呼ばれるには、経常利益率10%以上が一つの重要なベンチマークとなります。 なぜなら、10%を超える経常利益率を安定的に維持するには、高い付加価値を持つ商品・サービスの提供や、徹底したコスト管理、優れた財務戦略など、盤石な経営基盤が必要不可欠だからです。 特に、利益率が高いとされるIT業界のトップ企業や、独自の技術力を持つ製造業などでは、20%を超える企業も珍しくありません。 この10%という水準は、単に収益性が高いだけでなく、事業の競争力や持続可能性を示す指標ともいえるでしょう。 3. 【業種別】経常利益率の平均目安(製造業・小売業・IT・建設業など) 経常利益率の平均は、業種ごとのビジネスモデルやコスト構造によって大きく異なります。 自社の収益性を正しく評価するためには、同業種の平均値と比較することが不可欠です。 例えば、多額の設備投資が必要な製造業の平均が3〜5.3%程度であるのに対し、知的労働が中心のIT・情報通信業では7〜10%と比較的高くなる傾向があります。一方で、薄利多売のビジネスモデルである小売業や運送業では、1〜3%が平均的な水準です。 自社が属する業界の平均値をベンチマークとすることで、より精度の高い経営分析が可能になります。 4. 【中小企業】経常利益率の平均目安と見るべきポイント 中小企業の場合、経常利益率の数値だけを見て一喜一憂するのは早計です。 その数値に至った背景や企業の成長ステージもあわせて考慮することが重要です。なぜなら、中小企業は大企業に比べて経営資源が限られており、一時的な投資や外部環境の変化によって利益率が大きく変動しやすいためです。 例えば、事業拡大のために先行投資を行っている成長段階の企業では、一時的に利益率が低くなることがあります。 逆に、利益率が高くても、それが資産売却など一過性の収益によるものであれば、手放しでは喜べません。数字の裏側にあるストーリーを読み解く視点が求められます。 💬 ひとことポイント比較する相手が重要!やみくもに全業種平均と比較するのではなく、まずは自社と同じ業種、同じ企業規模の平均値と比べてみましょう。 自社の健康診断!経常利益率をさらに深掘り分析する2つの視点 経常利益率をただ眺めるだけでは、経営の課題は見えてきません。 本業の儲けを示す「営業利益率」と比較することで、自社の収益構造や財務体質をより深く、立体的に分析できます。 なぜなら、本業の儲け(営業利益)と会社全体の儲け(経常利益)の差を見ることで、財務活動が利益に貢献しているのか、それとも足を引っ張っているのかが明確になるからです。 ここでは、2つの代表的なケースを通して、自社の「健康状態」を診断する方法を解説します。 1. ケース① 経常利益率 > 営業利益率:財務活動が好調な証拠 経常利益率が営業利益率を上回っている場合、それは本業以外の財務活動がうまくいっている好調なサインと読み取れます。 これは、本業で稼いだ利益(営業利益)に加えて、受取配当金や有価証券の売却益といった「営業外収益」が、支払利息などの「営業外費用」を上回っていることを意味します。 例えば、余剰資金を有効活用した資産運用が成功しているケースや、本業に関連する子会社からの配当金が多い場合などがこれにあたります。 本業の力に加えて、資産活用の巧みさが会社全体の収益を押し上げている、健全な状態といえるでしょう。 2. ケース② 経常利益率 < 営業利益率:支払利息など財務体質に課題あり もし経常利益率が営業利益率よりも低いのであれば、財務体質に何らかの課題を抱えている可能性を示唆しています。 本業ではしっかりと利益を出せているにもかかわらず、会社全体の利益が目減りしている状況だからです。 この主な原因として考えられるのが、借入金に対する支払利息の負担です。その他にも、保有している有価証券の評価損などが影響している場合もあります。 本業の収益が、営業外のコストによって圧迫されているこの状態は、資金繰りの悪化にも繋がりかねません。早急に借入金の返済計画を見直すなど、財務体質の改善に着手する必要があるでしょう。 💬 ひとことポイント「経常利益率 ー 営業利益率」で計算してみよう!プラスなら財務が優秀、マイナスなら財務に課題あり、というシンプルな健康診断ができます。 経常利益率が低い…経営をV字回復させる4つの具体的な改善策 経常利益率が低いという現実は、企業の収益構造に何らかの課題が潜んでいるサインです。 しかし、打ち手は一つではありません。「収益性の改善」「コスト削減」「財務改善」という複数の視点からアプローチすることで、経営のV字回復は十分に可能です。 ここでは、明日から着手できる4つの具体的な改善策を、それぞれの専門家が解説します。 【収益性改善】売上総利益(粗利)を改善する 【コスト削減】販売費及び一般管理費(販管費)を削減する 【財務改善】営業外収益を増やす(資産活用など) 【財務改善】営業外費用を減らす(借入金の見直しなど) 1. 【収益性改善】売上総利益(粗利)を改善する まず着手すべきは、事業の根幹である売上総利益(粗利)を改善し、利益の源泉そのものを大きくすることです。 粗利は売上から原価を引いた最も基本的な利益であり、ここの改善が後続するすべての利益指標に好影響を与えるからです。 具体的な方法としては、複数の仕入先と交渉して原材料費を削減する、商品の提供方法を工夫して付加価値を高め価格を引き上げる、といったアプローチが考えられます。 自社の製品やサービスの価値を再定義し、原価と価格の両面から見直すことが、収益性改善の確かな一歩となります。 2. 【コスト削減】販売費及び一般管理費(販管費)を削減する 次に、利益を圧迫する要因となりがちな販売費及び一般管理費(販管費)を削減し、利益を確保できる筋肉質なコスト体質を目指しましょう。 販管費には人件費や広告宣伝費、オフィスの家賃などが含まれ、売上に直接連動しない固定費も多いため、聖域なく見直すことが重要です。 例えば、費用対効果の低い広告を停止する、ペーパーレス化を進めて消耗品費や印刷費を削減する、専門業務をアウトソーシングして人件費を変動費化する、といった施策が有効です。 一つ一つのコストを精査し、無駄をなくす地道な努力が、着実に利益率を向上させます。 3. 【財務改善】営業外収益を増やす(資産活用など) 本業の強化と並行して、活用できていない資産を見直し、営業外収益を増やすことで、会社全体の収益基盤を厚くすることが可能です。 本業の業績に左右されにくい収益源を確保することは、経営の安定化に直結します。 具体的な方法としては、使用していない土地や建物(遊休資産)を売却または賃貸に出す、保有している株式や金融商品を見直してより収益性の高いものに組み替える、といった資産の有効活用が挙げられます。 自社に眠っている資産を洗い出し、新たな収益源に変えられないか検討してみましょう。 4. 【財務改善】営業外費用を減らす(借入金の見直しなど) 最後に、営業外費用の大部分を占める支払利息を削減することは、経常利益率の改善に即効性のある打ち手です。 複数の金融機関に相談し、現在よりも有利な条件で融資を借り換えることで、支払利息という財務コストを直接的に削減できます。 金利の低いローンに借り換える、返済期間を延長して月々の返済負担を軽減するなど、様々な方法が考えられます。 これによりキャッシュフローが改善し、新たな投資や事業拡大への余力も生まれます。定期的な借入状況の見直しは、健全な財務体質を維持するために不可欠です。 💬 ひとことポイント改善策は「利益の分解」で考える!経常利益は「粗利-販管費+営業外収益-営業外費用」です。この4つの要素のどこに問題があり、どこから手をつけるべきか考えましょう。 専門家による経営改善・財務コンサルティングならEncoach株式会社へ 経常利益率の改善をはじめとする経営課題の解決は、時に専門家の客観的な視点と知見を要します。 自社だけで悩みを抱え込まず、外部の力を活用することも、飛躍への近道です。 Encoach株式会社は、経営者の皆様に寄り添い、未来を創る財務戦略のパートナーとなることを目指しています。 1. なぜ自社だけでの経営改善は難しいのか? 自社だけで経営改善を進めようとすると、日々の業務に追われ、客観的な視点を失いがちになるため、根本的な課題解決が難しい場合があります。 内部の人間だけでは、これまでの慣習や人間関係にとらわれ、大胆な改革に踏み切れないことも少なくありません。 また、財務や会計に関する専門知識が不足している場合、どこから手をつけるべきか分からず、時間だけが過ぎてしまうこともあります。 第三者である専門家が加わることで、しがらみのない客観的な立場で課題を抽出し、専門知識に基づいた的確な解決策を実行することが可能になるのです。 2. Encoachが提供する財務コンサルティングサービスのご紹介 Encoach株式会社は、財務の専門家が経営者に伴走し、「未来の数字を創る」ための経営財務コンサルティングを提供しています。 私たちは、過去の数字をまとめるだけの税務顧問とは一線を画し、事業計画や資金繰り表の作成支援を通じて、経営者が数字に基づいた的確な意思決定を下せるようサポートします。 月次の予実管理を徹底し、経営の現状を「見える化」することで、課題を早期に発見し、次の一手を共に考えます。 財務と向き合う仕組みを構築し、経営者が安心して新たな挑戦に集中できる環境を整えることが、私たちの使命です。 3. ご相談から改善実行までの流れとお客様の声 まずはお気軽に無料相談にお申し込みください。経験豊富なコンサルタントが、経営者様の想いやビジョン、そして現在の課題を丁寧にヒアリングします。 その上で、財務データを分析し、各企業様の状況に合わせたオーダーメイドの改善プランをご提案、実行までを伴走支援します。 お客様からは「資金繰りの不安から解放された」「数字の根拠を持って銀行と交渉できるようになった」「専門家が隣にいる安心感で、本業に集中できるようになった」といったお声を多数いただいています。 私たちは、1,000社以上の経営者を支援してきた実績とノウハウで、貴社の持続的な成長を力強く後押しします。 経常利益率に関するよくある4つの質問(Q&A) 経常利益率について、多くの経営者や実務担当者から寄せられる疑問があります。 ここでは、特に質問の多い4つのポイントをQ&A形式で分かりやすく解説します。 これらの知識は、日々の経営判断や分析をより確かなものにするために役立ちます。 1. 経常利益率の業種別ランキングはどこで見られますか? A. 経常利益率の公式な業種別データは、経済産業省の「企業活動基本調査」や中小企業庁の「中小企業実態基本調査」といった公的統計で確認できます。 これらの調査は毎年実施され、ウェブサイト上で結果が公開されているため、信頼性の高い情報源として活用できます。また、民間の調査会社や金融機関、業界団体が独自に調査・分析したレポートを発表している場合もありますので、複数の情報源を比較参照することをお勧めします。 2. 経常利益率が高すぎると何か問題はありますか? A. 基本的に経常利益率が高いこと自体は、収益性が優れている証であり、問題ではありません。しかし、その理由を分析することは重要です。 例えば、固定資産の売却といった一過性の「特別利益」によって利益率が一時的に高まっている場合、翌年度以降は元の水準に戻る可能性が高いです。 また、従業員への還元や未来への投資を過度に抑制した結果として高い利益率が実現している場合は、長期的な成長を阻害するリスクも考慮すべきでしょう。 3. 赤字(経常損失)の場合、経常利益率はどう考えれば良いですか? A. 経常利益が赤字(経常損失)の場合、経常利益率はマイナスの数値となり、これは平常時の事業活動全体でコストを賄いきれていない危険な状態を示します。 早急にその原因を究明し、対策を講じる必要があります。 主な原因としては、本業の不振(営業損失)、借入金利の増大、あるいはその両方が考えられます。まずは営業利益の段階で黒字か赤字かを確認し、問題の所在を特定した上で、売上向上策、コスト削減、財務改善といった抜本的な対策に取り組むべきです。 4. 個人事業主でも経常利益率の考え方は同じですか? A. 個人事業主の場合でも、事業の総合的な収益力を測るという点で、経常利益率の考え方そのものは法人と同様に非常に重要です。 ただし、会計上の扱いや税金の計算方法が法人とは異なります。個人事業主の確定申告における「所得金額」は、法人の利益に近い概念ですが、事業主の給与(生活費)が経費として計上されない点などに違いがあります。 そのため、法人と全く同じ基準で数値を比較するのではなく、過去の自分の事業成績と比較したり、同業の個人事業主の状況を参考にしたりして、経営状態を判断することが現実的です。 まとめ:経常利益率を目安に、データに基づいた強い会社作りを目指そう ここまで見てきたように、経常利益率は企業の「総合的な収益力」と「財務の健全性」を一枚の鏡のように映し出す、極めて重要な経営指標です。 自社の経常利益率を正しく把握し、業種別・企業規模別の平均値と比較することから、データに基づいた客観的な経営改善は始まります。 しかし、単に数字の良し悪しに一喜一憂するだけでは不十分です。大切なのは、その数字の背景にあるストーリーを読み解くこと。営業利益率と比較して財務体質を分析したり、時系列で変化を追いかけたりすることで、自社の強みと弱みがより鮮明になります。 もし経常利益率が低いのであれば、本記事で紹介した「収益性改善」「コスト削減」「財務改善」という4つの具体的な改善策を参考に、できることから着手してみてください。自社だけでの改善が難しいと感じたときは、専門家の客観的な視点を取り入れることも有効な選択肢です。 この記事をきっかけに、一人でも多くの経営者が自社の数字と真摯に向き合い、データに基づいた力強い会社作りへの一歩を踏み出すことを心から願っています。 -
労働分配率とは?計算方法から業種別目安、危険信号まで5つのステップで徹底解説
「人件費が高すぎて利益が出ない」「従業員への還元が適切かわからない」と悩んでいませんか?労働分配率とは、企業が生み出した付加価値のうち人件費が占める割合を示す重要な経営指標です。この指標を正しく理解することで、人件費の適正性を客観的に判断し、従業員満足度と企業収益のバランスを最適化できます。 本記事では、労働分配率の基本概念から具体的な計算方法、業種別・企業規模別の適正目安、さらに数値の異常から読み取れる経営上のリスクまでを5つのステップで詳しく解説します。 労働分配率を活用した健全な経営により、従業員のモチベーション向上と企業の持続的成長を両立させましょう。 まずは結論!労働分配率の重要ポイントがわかる早見表 労働分配率とは、企業が生み出した付加価値(儲け)のうち、どれだけ人件費として従業員に分配したかを示す割合です。この指標を把握することで、人件費が適正かどうかを客観的に判断し、従業員満足度と企業収益の最適なバランスを見つけられます。 経営者が押さえるべき重要ポイントを表に整理しました。 項目内容基本的な計算式労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値 × 100一般的な適正水準50~60%判断基準業種別目安・企業規模別目安・過去の自社データとの比較高い場合のリスク収益性低下・投資資金不足・経営の硬直化低い場合のリスク従業員の士気低下・人材流出・過剰労働改善のポイント労働生産性の向上・粗利率の改善・業績連動型制度の導入 💬 ひとことポイント労働分配率は、会社の「儲け」と「人件費」のバランスシート。このバランス感覚が、経営の舵取りを左右します! 【STEP1】労働分配率とは?企業の「人件費の適正度」を測るモノサシ 労働分配率は、企業の財務分析において人件費の適正性を判断する重要な指標です。ここでは、労働分配率の基本から、経営者が知っておくべき理由、そして関連指標である労働生産性との関係まで解説します。 1. 労働分配率とは?わかりやすく解説 労働分配率とは、企業が生み出した付加価値のうち、人件費が占める割合を示す指標のことです。計算式は「労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値 × 100」で表されます。 例えば、150万円で仕入れた商品を250万円で販売した場合、付加価値(儲け)は100万円です。この付加価値100万円を稼ぐために人件費が60万円かかっていれば、労働分配率は60%(60万円 ÷ 100万円)となります。 一般的に50~60%が適正水準とされますが、業種や企業規模で大きく異なるため、同業他社や過去の自社データとの比較が重要です。 2. なぜ経営者は労働分配率を把握すべきなのか?3つの理由 経営者が労働分配率を把握すべき理由は、主に以下の3点です。 人件費の適正性を判断するため 良好な労使関係を維持するため 経営戦略の重要な判断材料とするため それぞれ解説していきます。 1. 人件費の適正性を判断するため 労働分配率は人件費の適正性を判断する重要な指標だからです。 人件費が高すぎると企業の収益性を圧迫します。逆に低すぎれば、従業員のモチベーションが低下し、優秀な人材が流出する原因にもなりかねません。 自社の労働分配率を客観的に把握し、適切な水準に保つことが、企業の持続的な成長に不可欠です。 2. 良好な労使関係を維持するため 労働分配率が適切なバランスを保つことで、良好な労使関係を築けるからです。 従業員は、自身の貢献が正当に評価され、給与として還元されていると感じることで満足度が高まります。 一方で、企業側も成長に必要な投資原資を確保できます。この双方のバランスを取ることが、企業の成長と従業員の満足度向上につながるのです。 3. 経営戦略の重要な判断材料とするため 労働分配率の分析は、経営における意思決定の重要な判断材料となります。 例えば、設備投資や新規事業への投資資金をどの程度確保できるか、あるいは人材にどれだけ投資を配分すべきか、といった戦略的な検討を行う際の基準となります。 適正な労働分配率を維持することは、企業の持続的成長と従業員の福祉向上を両立させるために不可欠なのです。 3. 労働分配率とセットで見るべき「労働生産性」との重要な関係 労働分配率と労働生産性は表裏一体の関係にあり、両方を併せて分析することで企業の真の収益力を把握できます。 労働生産性とは「付加価値 ÷ 従業員数」で算出され、従業員1人あたりが生み出す付加価値(儲け)を示す指標です。 これら2つの指標の関係は「労働分配率 × 労働生産性 ÷ 100 = 1人あたり人件費」という式で表せます。つまり、労働分配率が同じでも、労働生産性が向上すれば、従業員の給与水準を上げることが可能になるのです。 💬 ひとことポイント労働分配率は、従業員の給与を決めるだけでなく、会社の成長戦略にも直結する超重要指標!「労働生産性」とセットで見るのがプロの視点です。 【STEP2】労働分配率の計算方法を3ステップでマスター【シミュレーション付】 労働分配率を正確に算出するには、まず「人件費」の範囲と「付加価値」の計算方法を正しく理解することが重要です。ここでは、実際の計算手順を具体例とともに詳しく解説します。 1. 人件費の範囲を正しく理解する(役員報酬・福利厚生費など) 労働分配率の計算における「人件費」には、給与・賞与だけでなく、役員報酬や各種福利厚生費も含まれます。 具体的には、以下の項目がすべて人件費に該当します。 給与・賞与 雑給(アルバイトなど) 役員報酬 法定福利費(社会保険料の会社負担分など) 福利厚生費(通勤手当、住宅手当など) 退職金 特に決算賞与など、見落としがちな間接的人件費を漏れなく集計することが、正確な労働分配率を算出する第一歩となります。 2. 「付加価値」を算出する2つの方法(控除法・加算法) 付加価値の計算方法には、中小企業向けの「控除法」と大企業向けの「加算法」の2種類があります。 控除法は「付加価値 = 売上高 – 外部購入価額」という簡単な計算式です。外部購入価額には、仕入高や運送費、材料費などが含まれます。計算が簡単なため、中小企業で広く用いられています。 一方、加算法は計算式が複雑で、より精密な分析が可能です。製造過程で付加価値が高くなる大企業などに向いています。 3. 具体例でわかる!労働分配率の計算シミュレーション ここでは、A社(売上高5,000万円、製造業)の事例で、控除法による計算方法を解説します。 1. 付加価値の計算「付加価値 = 売上高 – 外部購入価額」5,000万円 – (仕入高2,000万円 + 材料費800万円 + 運送費200万円) = 2,000万円 2. 人件費の計算「人件費 = 給与+役員報酬+法定福利費+福利厚生費」1,200万円 + 300万円 + 240万円 + 60万円 = 1,800万円 3. 労働分配率の計算「労働分配率 = 人件費 ÷ 付加価値 × 100」1,800万円 ÷ 2,000万円 × 100 = 90% この90%という数値は製造業の平均51.0%と比べて非常に高く、人件費の見直しや生産性向上が急務であることがわかります。 💬 ひとことポイント正確な計算が第一歩!「人件費」には福利厚生費や役員報酬も含まれることを見落とさないようにしましょう。計算を間違えると、経営判断も誤ります。 【STEP3】あなたの会社は適正?労働分配率の2つの判断基準 労働分配率の適正性を判断するには、業種別・企業規模別の目安と、自社の過去データとの比較が重要です。ここでは、具体的な数値基準を示しながら、あなたの会社の労働分配率が適正かどうかを判断する方法を解説します。 1. 【業種別】労働分配率の目安一覧(製造業・IT業など) 労働分配率は業種によって大きく異なり、製造業では51.0%、IT業界(情報通信業)では53.7%が平均的な水準です。 経済産業省の2021年企業活動基本調査によると、主な業種の労働分配率は以下のようになっています。 業種労働分配率製造業51.0%情報通信業(IT業界)53.7%卸売業49.7%小売業49.4%飲食サービス業74.9%電気・ガス業22.3% 人的サービスが中心の飲食業などは労働分配率が高く、大規模な設備投資が必要な電気・ガス業などは低い傾向にあります。 出典:経済産業省「2021年企業活動基本調査(2020年度実績)」 2. 【企業規模別】労働分配率の目安一覧 企業規模が大きくなるほど労働分配率は低下する傾向にあり、大企業(資本金10億円以上)では52.4%、中小企業では約79~91%となっています。 中小企業庁の2023年版中小企業白書によると、2021年度の企業規模別労働分配率は以下の通りです。 企業規模(資本金)労働分配率10億円以上(大企業)52.4%1千万円以上1億円未満(中規模企業)78.8%1千万円未満(小規模企業)91.0% 出典:中小企業庁「2023年版中小企業白書」第1部第3章第3節 生産性の現況 リンク:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2023/chusho/b1_3_3.html 大企業は設備投資の余力があるため労働分配率が低く、中小企業は人的資源への依存度が高いため労働分配率が高くなる傾向があります。 3. 他社比較より重要な「過去の自社データとの比較」 労働分配率の適正性を判断する上で最も重要なのは、過去3~5年間の自社データとの比較による傾向分析です。 同業他社との比較も参考になりますが、経営戦略や事業モデルの違いにより数値は大きく異なるためです。 注目すべきは、労働分配率の変動幅と変動要因の分析です。例えば、前年比で10%以上も上昇した場合、売上減少による付加価値の低下、あるいは人件費の急激な増加が考えられます。継続的なモニタリングで、経営課題の兆候を早期に把握することが可能になります。 💬 ひとことポイント他社との比較も大事ですが、もっと重要なのは「過去の自社」との比較。自社の傾向を掴むことが、適正水準を見極める最短ルートです! 【STEP4】労働分配率から企業の危険信号を読み解く7つのポイント 労働分配率の異常値は、企業経営における重要な危険信号となります。ここでは、数値の高低から読み取れるリスクと具体的な改善策、さらに与信調査での活用方法まで詳しく解説します。 1. 労働分配率が高い場合の原因と3つのリスク 労働分配率が業種平均を大幅に上回る場合、企業の収益構造に重大な問題が潜んでいる可能性があります。主なリスクは以下の3つです。 利益率の低下 経営の硬直化 資金繰りの悪化 それぞれ解説していきます。 1. 利益率の低下 労働分配率が80%を超えると、利益率が著しく低下し、将来への投資が困難になります。 人件費が利益を圧迫するため、設備投資や研究開発への資金確保が難しくなり、企業の将来的な競争力が大幅に低下する恐れがあります。 事業の成長に必要な投資ができなくなり、じわじわと経営が立ち行かなくなるリスクが高まります。 2. 経営の硬直化 人件費は固定費の性質が強いため、一度上がると簡単には下げられず、経営の柔軟性が失われます。 売上が減少しても人件費をすぐに削減することは難しく、市場の変動や景気の後退に迅速に対応できなくなります。 これにより、経営判断の選択肢が狭まり、赤字に転落しやすい脆弱な財務体質になってしまうリスクがあります。 3. 資金繰りの悪化 労働分配率が90%を超えるような状況では、資金繰りの悪化が深刻な問題となります。 キャッシュフローの大部分が人件費の支払いに充てられるため、手元資金が枯渇し、緊急時の資金調達が困難になる可能性があります。 金融機関からの融資も厳しくなり、企業の存続そのものを脅かす深刻な経営課題へと発展します。 2. 労働分配率を健全に下げるための4つの改善策 労働分配率を健全な水準に引き下げるには、単純な人件費削減ではなく、付加価値の向上を伴うアプローチが重要です。 生産性の向上 売上拡大による付加価値の増加 変動費の削減 人事制度の見直し ITシステムの導入や業務プロセスの改善で生産性を上げたり、新商品開発で売上を拡大したりすることで、人件費を維持しつつ労働分配率を改善できます。 3. 労働分配率が低い場合の原因と2つのリスク 労働分配率が業種平均を大幅に下回る場合(例:製造業で40%未満など)、従業員への還元が不適切な可能性があります。 優秀な人材の流出 従業員のモチベーション低下 同業他社と比較して著しく給与水準が低い場合、優秀な人材が他社へ転職し、企業の競争力が長期的に低下する恐れがあります。また、従業員が貢献に見合う報酬を得られていないと感じ、組織全体のパフォーマンスが低下するリスクもあります。 4. 労働分配率を健全に上げるための3つの改善策 労働分配率を健全な水準に引き上げるには、従業員への適切な還元と企業業績の両立が重要です。 成果報酬制度の導入 福利厚生の充実 人材投資の強化 業績向上に応じて従業員への還元を増やす成果報酬制度や、住宅手当などの福利厚生を充実させることで、実質的な労働分配率を向上させることが可能です。従業員のスキルアップ支援なども、長期的な生産性向上につながります。 5. 【要注意】急激な労働分配率の変化は不正のサイン? 労働分配率が短期間で20%以上変動した場合、経営上の異常事態または不正行為の可能性を疑う必要があります。 特に、売上が横ばいにもかかわらず労働分配率が急激に上昇した場合、架空の人件費計上や売上の過少申告といった不正が考えられます。 逆に急激に低下した場合は、給与の未払いや簿外取引による売上計上などが疑われます。定期的なモニタリングで異常値を早期に発見し、適切に対処することが企業のリスク管理において重要です。 6. 役員報酬の設定で労働分配率はどう変わるか 役員報酬は労働分配率の計算に含まれるため、その設定方法が指標に大きな影響を与えます。 特に中小企業では、役員報酬が人件費総額に占める割合が高く、その設定次第で労働分配率が10~20%変動することもあります。 業績連動型の役員報酬を導入すれば、好業績時は労働分配率が上昇し、不調時は低下します。一方、固定報酬制の場合は、売上変動に対して労働分配率の動きが緩やかになります。 7. 取引先の与信調査に労働分配率を活用する方法 労働分配率は取引先の経営健全性を判断する重要な指標として活用できます。 業界平均から大幅に乖離している企業は、経営上の問題を抱えている可能性が高く、与信リスクが高いと判断できます。 具体的には、労働分配率が業界平均の1.5倍を超える企業は資金繰り悪化のリスクが、0.5倍未満の企業は従業員の定着率や品質面でのリスクが考えられます。他の財務指標と組み合わせて総合的に評価することが重要です。 💬 ひとことポイント高すぎても低すぎても危険信号!労働分配率の異常値は、会社の健康状態を示すバロメーター。放置は禁物です。 【STEP5】原因不明の数値悪化はプロに相談!Encoachの企業調査 労働分配率の原因不明な悪化は、従業員の不正行為や企業経営上の重大な問題を示すサインかもしれません。ここでは、専門機関による企業調査の必要性と、Encoachの調査サービスについて詳しく解説します。 1. 不正の兆候?従業員の横領で労働分配率が悪化するケース 従業員による横領や着服は、労働分配率を異常に悪化させる重要な要因の一つです。 経費精算での交通費の不正請求、領収書の改ざんなど、様々な手口により企業の財務状況は悪化します。 特に経理担当者による会社資金の横領は、売上の過少申告や架空経費の計上を伴うことがあり、付加価値を実際より低く見せ、結果として労働分配率を異常に高く見せる可能性があります。 2. 採用候補者や取引先の信用調査でリスクを回避 採用段階での信用調査は、将来的な人的リスクを回避する最も効果的な方法です。 経歴詐称、ハラスメント歴、財務上の問題など、面接だけでは判明しない潜在的なリスクを事前に把握できます。 同様に、取引先の与信調査においても労働分配率は重要な判断指標となります。業界平均から大きく乖離している企業は経営上の問題を抱えている可能性が高く、適切な与信枠を設定することで取引リスクを最小化できます。 3. まずは無料相談から | Encoachの強みと実績 Encoach株式会社は、財務を主軸とした事業戦略の伴走支援を行う経営財務コンサルティング会社です。 代表取締役の北薗は、大手税理士法人で6年間にわたり1,000社以上の経営者支援を経験し、社内トップ1%の紹介実績と史上初の3年連続MVP受賞という実績を持ちます。 財務知識に自信がない経営者や資金繰りに不安がある企業に対し、本来あるべき事業計画・資金繰り表の作成を伴走しながらサポートします。 💬 ひとことポイント数字の裏に不正が隠れていることも…。原因不明の数値悪化は、専門家への相談をためらわないでください。早期発見が会社を守ります。 労働分配率に関するよくある質問(Q&A) 労働分配率について、経営者からよく寄せられる質問にお答えします。計算方法から適正水準まで、実務で役立つポイントを詳しく解説します。 Q1. 労働分配率は低い方が良いのですか? 労働分配率は単純に低い方が良いわけではなく、業種や企業規模に応じた適正水準を保つことが重要です。 低すぎる場合は従業員への還元が不足している可能性があり、従業員のモチベーション低下や優秀な人材の流出を招くリスクがあります。 最適な労働分配率は、従業員のモチベーション向上と企業の収益性のバランスを取ることです。自社の状況に合わせて目標水準を設定し、労働生産性の向上を図りながら、従業員への還元を増やすことが理想的なアプローチです。 Q2. 中小企業の労働分配率の目安はどれくらいですか? 中小企業の労働分配率は企業規模によって大きく異なり、小規模企業(資本金1,000万円未満)では91.0%、中規模企業(資本金1,000万円以上1億円未満)では78.8%が目安となります。 大企業の52.4%と比較して著しく高い水準にあります。 この差は、中小企業が人的資源への依存度が高く、設備投資への余力が限られているためです。労働分配率が90%を超える状況では資金繰りが懸念されるため、同規模・同業他社との比較や過去の自社データとの継続的な比較が重要になります。 Q3. 決算賞与は労働分配率の計算に含めますか? はい、決算賞与は労働分配率の計算に含める必要があります。 労働分配率の計算における人件費には、基本給や定期賞与だけでなく、決算賞与や業績賞与も含まれます。これらの賞与は従業員への還元の一部であり、企業の付加価値配分を正確に把握するために必要な要素です。 決算賞与などを含めた年間の人件費総額で労働分配率を算出することで、より正確な経営分析が可能になります。 Q4. 赤字の場合、労働分配率はどうなりますか? 赤字の場合でも労働分配率の計算は可能ですが、分母となる付加価値がマイナスになるため、数値の解釈には注意が必要です。 付加価値がマイナスの場合、労働分配率は数学的にマイナス値となりますが、この数値単体では経営判断の参考になりません。 このような場合は、売上高に対する人件費の割合(人件費率)や、過去の黒字時期との比較分析が有効です。赤字企業では労働分配率そのものよりも、キャッシュフロー分析などによる流動性の管理が優先されるべき課題となります。 まとめ: 労働分配率を正しく理解し、データに基づいた健全な経営を目指そう 労働分配率は企業の健全性を測る重要な経営指標であり、従業員への適切な還元と企業の収益性のバランスを示すモノサシです。 本記事でご紹介した通り、単純に数値の高低だけで判断するのではなく、業種別・企業規模別の目安と過去の自社データとの比較により、総合的な分析を行うことが重要になります。 労働分配率の適正な管理により、従業員のモチベーション向上と企業の持続的成長を両立させることが可能です。経営者の皆様には、月次または四半期ごとの継続的な測定により、データに基づいた経営判断を実践していただきたいと思います。 -
経常利益と営業利益の5つの違いとは?計算方法から企業の健全性を見抜く方法まで解説
「営業利益と経常利益、似ているけど具体的な違いがわからない」「決算書のどちらの利益を見れば、会社の本当の実力がわかるの?」 そんな疑問をお持ちではありませんか。この記事では、営業利益と経常利益の5つの決定的な違いから、それぞれの計算方法、銀行や投資家が経常利益を重視する理由まで、専門用語を避け、具体例を交えながら分かりやすく解説します。 この記事を読めば、二つの利益指標を正しく使い分け、企業の本当の姿を見抜く力が身につきます。 まずは結論!営業利益と経常利益の主な違いが一目でわかる比較表 企業の経営状況を分析する上で重要な「営業利益」と「経常利益」。これら二つの利益はよく混同されがちですが、その性質は大きく異なります。 企業の評価において、営業利益は「本業で稼ぐ力」、経常利益は「会社全体の総合的な収益力」を示します。 本業が順調でも、借入金の返済が多ければ会社全体の利益は減りますし、逆に本業が不調でも、資産運用がうまくいっていれば利益が出ることもあります。以下の比較表で、両者の違いを明確に理解しましょう。 比較項目営業利益経常利益示すもの本業で稼ぐ力会社全体の総合的な収益力計算式売上総利益 – 販売費及び一般管理費営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用分析の範囲事業単体(本業)の収益性会社全体の経常的な活動 企業の利益構造を丸ごと理解!損益計算書における5つの利益の関係性 企業の成績表である「損益計算書」には、5つの利益が記載されています。会社の本当の姿を理解するためには、これら5つの利益がそれぞれ何を示し、どのような関係にあるのかを順を追って把握することが不可欠です。 損益計算書では、以下の5つの利益が順番に計算されます。 売上総利益(粗利):商売の基本となる利益 営業利益:本業の稼ぐ力を示す利益 経常利益:会社全体の総合的な収益力 税引前当期純利益:税金を払う前の最終利益 当期純利益(純利益):会社に残る最終的なお金 ここでは、利益が生まれる流れに沿って、各利益の意味を解説していきます。 1. 売上総利益(粗利):商売の基本となる利益 売上総利益は、企業が提供する商品やサービスの基本的な収益力を示す利益のことです。「粗利(あらり)」とも呼ばれます。 これは、企業の売上高から、商品の仕入れや製造にかかった直接的な費用である「売上原価」を差し引いて計算されます。例えば、80円で仕入れた商品を100円で販売した場合、売上総利益は20円です。この売上総利益が大きいほど、提供する商品やサービスそのものが持つ付加価値が高いことを意味します。 この段階では、人件費や広告費などの販売経費はまだ考慮されていません。 2. 営業利益:本業の稼ぐ力を示す利益 営業利益とは、企業が主軸とする「本業」でどれだけ稼いだかを示す利益です。 計算式は、先ほどの売上総利益から、商品を販売するためにかかった費用や会社を管理するための費用である「販売費及び一般管理費(販管費)」を差し引いて求めます。販管費には、従業員の給与、広告宣伝費、事務所の家賃などが含まれます。 営業利益は、その企業の本業における収益性や事業の効率性をダイレクトに表す指標です。この利益が黒字であれば、本業が順調であると判断できます。 3. 経常利益:会社全体の総合的な収益力 経常利益は、本業の儲けである営業利益に、本業以外の活動で経常的に発生する損益(営業外損益)を加味した利益です。 具体的には、預金の受取利息や保有株式の配当金といった「営業外収益」を加え、借入金の支払利息などの「営業外費用」を差し引いて算出します。 財務活動も含めた、企業の継続的な活動からどれだけの利益を生み出せているかを示すため、銀行や投資家が企業の安定性を判断する際に特に重視する指標です。 4. 税引前当期純利益:税金を払う前の最終利益 税引前当期純利益は、その期に発生したすべての収益からすべての費用を差し引いた、文字通り税金を支払う前の利益です。 経常利益に、固定資産の売却益や災害による損失など、その期にだけ臨時的・偶発的に発生した「特別利益」と「特別損失」を加減して計算されます。 この利益は、企業のすべての活動(経常的な活動+臨時的な活動)から得られた、法人税などを納める直前の最終的な利益額を示します。特別損益の額が大きくなければ、経常利益と近い数値になるのが一般的です。 5. 当期純利益(純利益):会社に残る最終的なお金 当期純利益とは、税引前当期純利益から法人税、住民税、事業税などの税金を差し引いた、一会計期間における最終的な利益です。これが、最終的に会社の手元に残るお金となり、「純利益」とも呼ばれます。 当期純利益は、その期の会社の経営活動の最終的な成果であり、株主への配当金の原資にもなります。この数値がマイナスの場合を「当期純損失」と呼び、いわゆる赤字決算を意味します。 企業の純粋な収益性を見るには、臨時的な損益が含まれるこの利益だけでなく、経常利益などと合わせて総合的に判断することが重要です。 💬 ひとことポイント損益計算書の5つの利益は、売上から費用を段階的に引いていくことで計算されます。この流れを理解することが、企業の収益構造を把握する第一歩です。 営業利益とは?「本業での稼ぐ力」を3つのポイントで解説 企業の収益性を測る上で欠かせない指標が「営業利益」です。営業利益は、その企業が主軸とする事業、すなわち「本業」でどれだけ効率的に利益を生み出せているかを示します。 ここでは、営業利益について以下の3つのポイントで詳しく解説します。 営業利益が示すもの:本業の成績表 営業利益の計算方法:売上総利益 – 販管費 営業利益からわかること:事業の収益性と効率性 それぞれ見ていきましょう。 1. 営業利益が示すもの:本業の成績表 営業利益は、企業が定款で定めている主たる事業活動から得られた利益であり、いわば「本業の成績表」です。 例えば、飲食店であれば飲食物の販売、小売業であれば商品の販売によって得た利益がこれにあたります。この利益には、財務活動による収益(受取利息など)や、本業とは関係ない臨時的な損益は含まれません。 そのため、純粋にその企業の中核事業が健全かどうか、競争力があるかどうかを判断するための最も基本的な指標となります。営業利益を見ることで、企業の本業が順調に稼げているかどうかが一目でわかります。 2. 営業利益の計算方法:売上総利益 – 販管費 営業利益は、損益計算書において、売上総利益から「販売費及び一般管理費(販管費)」を差し引いて算出されます。計算式は以下の通りです。 営業利益 = 売上総利益 – 販売費及び一般管理費 売上総利益(粗利)は、売上高から商品の仕入れや製造にかかった売上原価を引いたものです。そこからさらに、商品を売るための広告宣伝費や人件費、事務所の家賃といった、事業運営に不可欠な経費(販管費)を差し引いたものが、本業の儲けである営業利益となります。 3. 営業利益からわかること:事業の収益性と効率性 営業利益を分析することで、その企業の本業における収益性と事業運営の効率性が見えてきます。 営業利益が高いということは、主力事業の競争力が強く、かつ人件費や広告費などの経費を効率的にコントロールできている証拠です。 逆に、売上は大きいのに営業利益が低い場合は、仕入れコストが高い、あるいは経費を使いすぎているといった課題が隠れている可能性があります。このように、営業利益は事業そのものの実力を示す重要な指標です。 💬 ひとことポイント営業利益の分析では、売上高営業利益率(営業利益 ÷ 売上高)も重要です。この比率を時系列で比較したり、同業他社と比較したりすることで、事業の収益性の変化や業界内でのポジションを客観的に把握できます。 経常利益とは?「会社の総合的な実力」を3つのポイントで解説 営業利益が「本業の稼ぐ力」を示すのに対し、「会社の総合的な実力」を評価する上で重要なのが経常利益です。経常利益は、本業の利益に加えて、財務活動など本業以外の経常的な損益も反映した指標です。 ここでは、経常利益の役割を以下の3つの視点から掘り下げていきます。 経常利益が示すもの:会社全体の平常時の体力 経常利益の計算方法:営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用 経常利益からわかること:財務活動を含めた安定性 それぞれ解説します。 1. 経常利益が示すもの:会社全体の平常時の体力 経常利益とは、企業が通常の事業活動全体を通じて、経常的(継続的)に得られる利益のことです。 これは、本業での儲けである営業利益に、預金の受取利息や借入金の支払利息といった、財務活動などから生じる損益(営業外損益)を加味したものです。 固定資産の売却益や災害損失といった一時的な損益は含まないため、その企業が「平常時」にどれだけの利益を生み出す力があるか、つまり会社の「基礎体力」や「本当の収益力」を判断する上で最も適した指標とされています。 2. 経常利益の計算方法:営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用 経常利益は、本業の利益である営業利益に、本業以外の活動から経常的に発生する「営業外収益」を加え、同様に発生する「営業外費用」を差し引いて計算します。 経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用 営業外収益の主な例としては、預貯金の受取利息、保有株式からの受取配当金、為替差益などがあります。一方、営業外費用の主な例は、金融機関からの借入金に対する支払利息や為替差損などです。 3. 経常利益からわかること:財務活動を含めた安定性 経常利益を見ることで、本業の収益力に加えて、資産運用や資金調達といった財務活動を含めた企業全体の収益性や安定性を評価できます。 例えば、本業が好調(営業利益が黒字)でも、多額の借入金によって支払利息が膨らみ、経常利益が赤字になるケースもあります。 逆に、本業が不振(営業利益が赤字)でも、豊富な資金を元にした資産運用がうまくいき、経常利益が黒字になることもあり得ます。このように、経常利益は企業の財務的な安定性を見る上で重要な指標です。 💬 ひとことポイント銀行が融資審査で最も重視するのが経常利益です。「この会社は、本業と財務活動を合わせて、継続的に返済原資となる利益を生み出せるか?」を見極めるため、経常利益の金額と安定性が厳しくチェックされます。 【ケースで学ぶ】営業利益と経常利益の5つの決定的な違い 営業利益と経常利益は、どちらも企業の収益力を示す重要な指標ですが、その意味合いは大きく異なります。この違いを理解することは、企業の本当の姿を見抜くための第一歩です。 ここでは、両者の決定的な違いを以下の5つのポイントに分けて解説していきます。 分析できる範囲の違い:「事業単体」か「会社全体」か 計算に含まれる費用の違い:営業外損益の有無 評価される場面の違い:事業評価と企業評価 ケース①「営業利益 > 経常利益」:本業の利益を財務が圧迫 ケース②「営業利益 < 経常利益」:財務活動が本業をカバー それぞれ具体的に見ていきましょう。 1. 分析できる範囲の違い:「事業単体」か「会社全体」か 営業利益と経常利益の最も基本的な違いは、分析の対象となる範囲です。営業利益が「本業」という事業単体の収益力に焦点を当てるのに対し、経常利益は財務活動なども含めた「会社全体」の経常的な活動を評価します。 営業利益は、その企業の中核となる事業活動から直接生み出された利益だけを示すため、事業そのもののパフォーマンスを純粋に測ることができます。一方、経常利益は本業の利益に、本業以外の財務活動などから生じる損益も反映します。 つまり、営業利益は「事業単体の成績」、経常利益は「会社全体の総合力」を示す指標と言えます。 2. 計算に含まれる費用の違い:営業外損益の有無 二つ目の違いは、計算プロセスにあります。両者の計算を分ける決定的な要素は、「営業外損益」が含まれているかどうかです。 営業利益の計算では、本業の売上から売上原価と販管費を差し引くだけで、本業以外の要素は一切考慮しません。 それに対して、経常利益は、その営業利益に、受取利息などの「営業外収益」を加え、支払利息などの「営業外費用」を差し引いて算出されます。この計算式の違いにより、営業利益は本業の収益性を、経常利益は財務活動も含めた企業全体の収益性を表すという役割分担が生まれます。 3. 評価される場面の違い:事業評価と企業評価 分析の範囲や計算方法が違うため、営業利益と経常利益は評価される場面も異なります。一般的に、営業利益は社内での「事業評価」に、経常利益は金融機関や投資家による「企業評価」に用いられる傾向があります。 例えば、社内である事業部の業績を評価する場合、財務活動の影響を除いた純粋な事業の稼ぐ力を示す営業利益が重視されます。 一方、銀行が融資を検討する際や投資家が企業の安定性を判断する際には、借入金の状況など財務体質も含めた総合的な収益力を示す経常利益が極めて重要な判断材料となります。 4. ケース①「営業利益 > 経常利益」の企業からわかること 営業利益が経常利益を上回っている場合、その企業は本業で稼いだ利益を、本業以外の活動(主に財務活動)で減らしていることを示唆しています。これは、営業利益から経常利益を計算する過程で差し引かれる「営業外費用」が、加えられる「営業外収益」よりも大きい状態です。 典型的な例が、借入金が多い企業です。本業ではしっかりと利益(営業利益)を出していても、多額の借入金に対する支払利息(営業外費用)が重くのしかかり、会社全体の利益(経常利益)を圧迫しているケースが考えられます。 この状態は、事業そのものは好調であるものの、財務体質に課題を抱えている可能性を示しています。 5. ケース②「営業利益 < 経常利益」の企業からわかること 逆に、経常利益が営業利益よりも大きい場合は、本業の利益に加えて、財務活動など本業以外の活動でも収益を上げていることを意味します。これは、支払利息などの「営業外費用」よりも、受取利息や配当金、有価証券の売却益といった「営業外収益」の方が多い状態です。 例えば、本業の利益はそれほど大きくなくても、潤沢な自己資金を元にした資産運用(いわゆる「財テク」)がうまくいっている企業でこのパターンが見られます。 本業の収益力に加えて、財務活動の巧みさも示していると評価できる一方で、あまりに営業外収益への依存度が高い場合は、本業の競争力低下を金融収益で補っている可能性も考えられるため、その内訳を注意深く見る必要があります。 💬 ひとことポイント「営業利益と経常利益の差額」に注目することが、企業分析の鍵です。この差額は主に「営業外損益」、つまり財務活動の巧拙を表します。差額の要因を分析することで、企業の隠れたリスクや強みが見えてきます。 結局どちらが重要?銀行や投資家が経常利益を重視する3つの理由 営業利益と経常利益、企業の分析においてどちらがより重要なのでしょうか。本業の力を示す営業利益も大切ですが、金融機関や投資家といった外部のステークホルダーは、特に「経常利益」を重視する傾向にあります。 それには、企業の総合的な実力を見抜くための、主に以下の3つの理由が存在します。 企業の「本当の収益力」がわかるから 財務活動の巧拙がわかるから 企業の継続性・安定性を判断できるから それぞれ詳しく解説します。 1. 企業の「本当の収益力」がわかるから 銀行や投資家が経常利益を重視する第一の理由は、それが企業の「本当の収益力」を最も的確に示していると考えられるからです。 営業利益が本業のみの成果を表すのに対し、経常利益は本業の利益に加えて、企業が保有する預金の利息や借入金の支払利息といった財務活動から生じる損益も反映します。 つまり、本業だけでなく、資金の運用や調達といった事業活動全体を通じた、平常時における総合的な稼ぐ力を示すのが経常利益です。一時的な要因を除いた、その企業が継続的に生み出すことのできる利益の実態を表すため、経常利益は企業の基礎的な収益力を測る上で最も信頼性の高い指標と見なされています。 2. 財務活動の巧拙がわかるから 経常利益は、企業の財務活動の巧拙を判断する上でも重要な指標となります。営業利益と経常利益の差額は、主に受取利息や支払利息といった「営業外損益」によって生じます。この差額を分析することで、その企業が資産運用や資金調達をどれだけうまく行っているかが見えてきます。 例えば、営業利益よりも経常利益の方が大きい場合、それは企業が保有する資金を有効に活用して収益を上げている(受取利息や配当金が多い)証拠です。 逆に、営業利益より経常利益が大幅に少ない場合は、借入金が多く支払利息の負担が重いなど、財務面での課題を抱えている可能性が示唆されます。このように、経常利益は本業の成績だけではわからない、企業の財務戦略の成果を明らかにしてくれます。 3. 企業の継続性・安定性を判断できるから 金融機関が融資判断を行う際、最も気にするのが「貸したお金がきちんと返ってくるか」という点です。その判断の拠り所となるのが、企業の継続性と安定性であり、それを示すのが経常利益です。 経常利益は、土地の売却益のような一時的な利益(特別利益)や、災害による損失(特別損失)を含まない、企業が通常の活動で繰り返し得られる利益です。そのため、将来の利益を予測する上での信頼性が高く、その企業が今後も安定して事業を継続し、利益を生み出し続けられるかを判断するための重要な材料となります。 銀行は、この経常利益が安定的かつ継続的に黒字であるかを確認することで、企業の返済能力と長期的な安定性を評価しているのです。 💬 ひとことポイント株主にとっては最終的な利益である「当期純利益」が重要ですが、銀行や取引先にとっては、企業の「継続性」が何よりも重要です。そのため、一時的な損益を除いた「経常利益」が、企業の信用力を測る共通の物差しとして使われます。 企業の信用調査で役立つ!経常利益を使った経営分析の2つの手法 経常利益は、単に損益計算書上の数字として眺めるだけでなく、企業の経営実態を深く分析するための強力なツールとなります。特に取引先の信用調査などにおいて、企業の収益性や財務体質を見抜くために、主に以下の2つの分析手法が役立ちます。 収益性を測る「売上高経常利益率」の計算と目安 財務体質を暴く「営業利益との差額分析」 それぞれ見ていきましょう。 1. 収益性を測る「売上高経常利益率」の計算と目安 企業の総合的な収益性を客観的に評価する代表的な指標が「売上高経常利益率」です。これは、売上高に対して経常利益がどれくらいの割合を占めるかを示すもので、この数値が高いほど、事業全体で効率よく利益を上げられていることを意味します。 計算式は非常にシンプルです。売上高経常利益率(%) = 経常利益 ÷ 売上高 × 100 この比率を同業他社と比較したり、企業の過去の数値からの推移を見たりすることで、その企業の収益性が業界内でどのレベルにあるのか、また改善傾向にあるのか悪化傾向にあるのかを把握できます。売上高経常利益率は、企業の総合的な収益力を測るための重要なバロメーターです。 2. 財務体質を暴く「営業利益との差額分析」 営業利益と経常利益の差額を分析することで、その企業の財務体質を簡単に見抜くことができます。この差額は、企業が行った財務活動(資金の借入や運用)の結果そのものである「営業外損益」によって生まれるためです。 例えば、「営業利益 > 経常利益」となっている場合、本業で稼いだ利益が支払利息などの営業外費用によって減少していることを意味し、借入金への依存度が高いなど、財務面で課題を抱えている可能性が疑われます。 逆に、「営業利益 < 経常利益」の場合は、資産運用などで本業以外の収益を上げていることを示し、健全な財務活動が行われていると評価できます。このように、営業利益と経常利益の差額に注目するだけで、その企業の財務的な強みや弱みが浮かび上がってくるのです。 💬 ひとことポイント分析指標は、単年の数字だけでは意味がありません。「時系列比較(過去からの推移)」と「同業他社比較」を行うことで、初めてその数字が良いのか悪いのか、意味のある評価ができます。 財務諸表だけでは見抜けない取引先のリスクはプロの企業調査へ ここまで見てきたように、営業利益や経常利益などの財務諸表を分析することは、企業の経営状態を把握する上で非常に重要です。しかし、決算書に記載されているのはあくまで過去の実績であり、それだけでは取引先に潜むすべてのリスクを見抜くことはできません。 巧妙な粉飾決算や、数字には表れない経営者の資質、反社会的勢力との関係といった潜在的なリスクは、公開情報だけでは判断が困難です。安全な取引を継続し、予期せぬ損害から自社を守るためには、財務分析と並行して、専門家による踏み込んだ企業調査が不可欠です。 私たちEncoach株式会社は、長年の経験と独自のノウハウを持つ調査のプロフェッショナル集団です。財務データだけでは決して見えない取引先のリスクを徹底的に洗い出し、貴社のビジネスを確固たる安全へと導きます。 経常利益と営業利益に関するよくある5つの質問 ここでは、経常利益や営業利益について、多くの方が抱きがちな疑問にQ&A形式でお答えします。これらのポイントを押さえることで、さらに理解が深まるはずです。 Q1. 経常利益と純利益の具体的な違いは何ですか? 経常利益と純利益の最も大きな違いは、「特別損益」と「税金」を計算に含めるかどうかです。経常利益は会社が通常の活動で稼いだ利益を示すのに対し、純利益はその期の最終的な儲けを示します。 経常利益の計算には、土地の売却益や災害による損失といった、その期にだけ臨時的・偶発的に発生した「特別損益」は含まれません。一方、純利益は経常利益にこの特別損益を加減し、そこからさらに法人税などの税金を差し引いて算出される、会計期間の最終的な利益です。 つまり、経常利益が「会社の平常時の実力」を示すのに対し、純利益は「最終的に会社の手元に残るお金」と理解すると分かりやすいです。 Q2. 営業利益が赤字で経常利益が黒字になるのは、どんな状況ですか? 営業利益が赤字でありながら経常利益が黒字になるのは、本業の損失を、本業以外の経常的な収益でカバーしている状況です。つまり、営業利益に加算される「営業外収益」が、営業利益の赤字額を上回っているケースです。 典型的な例としては、本業の業績は振るわないものの、会社が保有する豊富な資金を株式や不動産で運用し、そこから多額の配当金や賃料収入(営業外収益)を得ている場合などが挙げられます。 本業の収益力には課題があるものの、財務活動(いわゆる「財テク」)がうまくいっている企業で見られるパターンです。ただし、本業の不振を財務収益で補っている状態が続く場合、根本的な事業改善が必要なサインとも言えます。 Q3. 個人事業主の場合、経常利益はどのように考えればよいですか? 個人事業主の所得計算において、法人会計の「経常利益」と完全に一致する勘定科目は存在しません。しかし、その考え方は所得税の計算に応用できます。 個人事業主の所得は、主に「事業所得」や「不動産所得」などから構成されますが、これが法人の営業利益に近いものと考えられます。そして、事業用の預金から生じる受取利息などは「利子所得」として扱われますが、これが法人の営業外収益にあたります。 個人事業主の場合、本業の儲けである事業所得などに、利子所得のような本業以外の経常的な所得を合算したものが、実質的な経常利益に近い概念となります。確定申告では、これらの各種所得を合算して総所得金額を算出し、税額を計算します。 Q4. 経常利益がマイナス(経常損失)だと、すぐに倒産しますか? 経常利益がマイナス(経常損失)になったからといって、ただちに倒産するわけではありません。企業の倒産は、利益が赤字であること(損益上の問題)よりも、手元の資金が尽きて支払いができなくなること(資金繰りの問題)が直接的な原因となるためです。 たとえ経常損失を計上しても、過去の利益の蓄積である内部留保が潤沢であったり、資産を売却したり、金融機関から新たな融資を受けられたりすれば、事業を継続することは可能です。 しかし、経常損失が続く状態は、会社の通常の事業活動全体で利益を生み出せていないことを意味するため、倒産のリスクが非常に高い危険なシグナルであることは間違いありません。 Q5. 経常利益率の業界別平均や目安はありますか? はい、あります。売上高経常利益率は業種によって大きく異なるため、自社の収益性を評価する際は、業界平均と比較することが重要です。経済産業省が発表する「企業活動基本調査」などで、業種ごとの平均値を確認できます。 以下は、2022年度のデータに基づいた主要な業種の売上高経常利益率の目安(中央値)です。 業種売上高経常利益率の目安(中央値)全産業5.4%情報通信業7.7%建設業5.9%製造業7.0% (機械)卸売業3.0%小売業3.6%不動産業8.3%サービス業6.8% 出典:「ザイマニ」 これらの数値はあくまで目安であり、自社の数値を業界平均と比較することで、収益性のポジションを客観的に把握する手がかりとなります。 まとめ:営業利益と経常利益の違いを理解し、企業の本当の姿を見抜こう この記事では、混同されがちな「営業利益」と「経常利益」の5つの違いや、それぞれの指標が持つ意味について詳しく解説しました。 重要なポイントを改めてまとめると、以下のようになります。 営業利益:企業が「本業で稼ぐ力」を示す利益。 経常利益:財務活動なども含めた「会社全体の総合的な収益力」を示す利益。 この2つの利益の違いを正しく理解し、両者のバランスや差額の要因を分析することで、単に決算書の数字を眺めるだけではわからない、企業の本当の姿が見えてきます。自社の経営状況を的確に把握するため、あるいは取引先や投資先の真の実力を見抜くために、ぜひこの知識を活用してください。 -
【専門家が解説】予実管理とは?目的から簡単な始め方、失敗しない5つのコツまで
「予実管理を始めたいが、何から手をつければいいかわからない」「Excelでの管理に限界を感じている」 といった悩みはありませんか。この記事では、予実管理とは何かという基本から、経営を加速させるメリット、具体的な始め方、そして失敗しないための5つのコツまで専門家が解説します。 この記事を読めば、予実管理の全体像が明確になり、明日から自社で実践するための具体的な第一歩を踏み出せるようになります。 まずは結論!予実管理の目的・メリット・手順がわかる早見表 予実管理の全体像を素早く理解するために、その目的、メリット、そして具体的な手順を一覧にまとめました。この表を確認するだけで、予実管理がなぜ重要で、どのように進めればよいのか、その骨子を掴むことができます。 項目内容目的経営目標を達成するために、計画(予算)と実績の差異を分析し、経営課題を可視化すること。データに基づいた客観的な意思決定を支援し、安定した経営基盤を築きます。メリット・経営状況が「見える化」され、課題を早期に発見できる・迅速かつ的確な経営判断が可能になる・組織全体の目標達成への意識が向上する手順1. 【PLAN】目標設定と予算の策定2. 【DO】実績の収集3. 【CHECK】予算と実績の比較・差異分析4. 【CHECK】差異を生んだ根本原因の特定5. 【ACTION】改善策の立案と実行 予実管理とは?経営の現在地を把握する羅針盤 予実管理は、単なる数字の比較作業ではありません。企業の目標達成を支え、持続的な成長を促すための重要な経営の羅針盤です。 ここでは、予実管理の基本的な意味から、関連用語との違いまでを掘り下げて解説します。 1. 予実管理とは「予算」と「実績」を比較し、目標達成へ導く経営手法 結論として、予実管理とは、企業が立てた「予算(計画)」と、実際の活動結果である「実績」を比較・分析し、目標達成へと導く経営管理手法を指します。 なぜなら、計画通りに進んでいるか、あるいは計画からどの程度ずれているのかを定期的に確認することで、問題の早期発見と迅速な軌道修正が可能になるためです。 例えば、売上予算1,000万円に対し実績が800万円だった場合、その200万円の差がなぜ生まれたのかを分析し、次の打ち手を考えます。このように、予実管理は計画と現実のギャップを埋め、企業をゴールへと着実に前進させるためのナビゲーションシステムといえるでしょう。 2. 「予実」とは?言葉の基本的な意味を解説 「予実(よじつ)」とは、「予算(予定)」と「実績」という2つの言葉を組み合わせたビジネス用語です。ここでの「予算」は、売上や利益、コストなど、企業が一定期間で達成を目指す「目標数値」を指します。 一方の「実績」は、その期間における実際の企業活動の結果そのものです。 例えば、「今月の売上予算は500万円」と計画し、月末に「実績は450万円だった」と結果が出たとします。この計画(予算)と結果(実績)のセットが「予実」であり、この2つを管理することが予実管理の出発点となります。この基本的な言葉の意味を理解することが、正確な予実管理を行う第一歩です。 3. 予実管理と予算管理、管理会計の決定的な違い これらは混同されやすい言葉ですが、目的と範囲に明確な違いがあります。 結論から言うと、予実管理が「計画と実績の比較・分析による軌道修正」に焦点を当てるのに対し、予算管理は「目標達成のための計画策定と資源配分」が中心です。 航海に例えると、目的地を定めて航路図や食料を準備するのが「予算管理」です。そして、航海中に現在地と航路図を見比べてズレを修正するのが「予実管理」にあたります。 これら両方を含む、経営判断に役立てるための社内向け会計の仕組み全体が「管理会計」と呼ばれます。 💬 ひとことポイント予実管理は「過去の結果」を「未来の行動」につなげるための架け橋です。単なる数字合わせで終わらせず、次の一手を考えるためのツールと捉えましょう。 予実管理は意味ない?経営を加速させる3つのメリット 「予実管理は手間がかかるだけで意味がない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、適切に運用すれば、予実管理は経営を大きく加速させる強力な武器となります。 どんぶり勘定の経営から脱却し、持続的な成長を実現するための3つのメリットを解説します。 経営状況の「見える化」で課題を早期発見できる データに基づいた迅速で的確な経営判断が可能になる 組織全体の目標達成への意識が向上し、人材育成にもつながる 1. 経営状況の「見える化」で課題を早期発見できる 予実管理の最大のメリットは、会社の経営状況が数字によって「見える化」され、課題をいち早く発見できる点にあります。予算という「あるべき姿」と実績という「現実の姿」を定期的に比較することで、計画とのズレを客観的に把握できるからです。 例えば、月次の売上実績が予算を下回った場合、その原因が営業活動の停滞なのか、市場の変化なのかを即座に検討し始められます。 このように、予実管理によって経営の健康状態が可視化されるため、問題が深刻化する前に対策を打つことが可能になります。 2. データに基づいた迅速で的確な経営判断が可能になる 予実管理は、経営者の勘や経験だけに頼らない、客観的なデータに基づいた的確な意思決定をサポートします。売上や経費、利益といった具体的な数値を根拠にすることで、判断の精度とスピードが格段に向上するためです。 例えば、ある商品の利益率が予算よりも低いというデータがあれば、その原因を分析し、価格改定やコスト削減といった具体的なアクションを迅速に検討できます。 数字という客観的な事実に基づいて判断することで、より確実性の高い経営戦略を立てられるようになるのです。 3. 組織全体の目標達成への意識が向上し、人材育成にもつながる 予実管理を全社で取り組むことで、組織全体の目標達成への意識が高まり、社員の成長にもつながります。会社全体の目標が各部門、そして個人の目標へと具体的に落とし込まれることで、従業員一人ひとりが「自分ごと」として目標達成を意識するようになるからです。 例えば、各部門が自部門の予算達成に向けて主体的に工夫を凝らすようになります。 このプロセスを通じて、管理職はコスト感覚やマネジメントスキルを実践的に学ぶことができ、結果として経営視点を持った人材が育っていきます。 💬 ひとことポイントメリットを最大化する鍵は「リアルタイム性」です。月次、週次とチェックの頻度を上げるほど、経営のハンドルを素早く切れるようになります。 予実管理の具体的なやり方【5つのステップで解説】 予実管理は、闇雲に始めても長続きしません。ここでは、多くの企業で実践されているPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)に基づいた、誰でも始められる5つの具体的なステップを解説します。 この流れに沿って進めることで、効果的な予実管理体制を構築できます。 【PLAN】目標設定と予算の策定 【DO】実績の収集(月次決算の実施) 【CHECK】予算と実績の比較・差異分析 【CHECK】差異を生んだ根本原因の特定 【ACTION】改善策の立案と実行 1. 【PLAN】目標設定と予算の策定 最初のステップは、企業の経営目標に基づき、現実的で納得感のある予算を策定することです。達成不可能な高すぎる目標や、簡単すぎる低すぎる目標では、社員のモチベーションを維持できず、管理自体が形骸化してしまうからです。 具体的には、過去の実績や市場の成長率といった客観的なデータを参考にしつつ、現場部門の意見もヒアリングしながら、会社全体、部門、チームや個人へと目標を落とし込んでいきます。 なぜこの目標数値なのかという根拠を明確にし、関係者全員で共有することが、予実管理を成功させるための最も重要な鍵となります。 2. 【DO】実績の収集(月次決算の実施) 予算を策定したら、次はその予算に対応する実績データを収集します。このとき重要なのは、できるだけ短いサイクルで実績を把握することです。 実績の把握が遅れると、問題の発見や軌道修正もその分遅れてしまうため、多くの企業では月単位で実績を集計する「月次決算」を行っています。 年次決算ほど厳密な正確性は求められませんが、売上、原価、人件費などの数値を迅速に集計し、経営状況をタイムリーに把握することが目的です。 3. 【CHECK】予算と実績の比較・差異分析 月次の実績値が出たら、当初立てた予算と比較し、どの項目で、どれくらいの差(差異)が生まれているかを分析します。この差異の大きさや発生箇所を特定することが、経営課題を明らかにするための第一歩です。 具体的には、勘定科目ごとに予算と実績の数値を並べ、「差異額(実績-予算)」や「達成率(実績÷予算)」を算出します。 これにより、どの項目が計画通りに進んでいて、どの項目に問題があるのかが一目でわかります。 4. 【CHECK】差異を生んだ根本原因の特定 予算と実績の差異を確認した後は、「なぜその差異が生まれたのか」という根本的な原因を深掘りします。表面的な現象だけを捉えて対策を打っても、同じ問題が再発する可能性が高いため、本質的な原因を突き止める必要があります。 例えば、「売上予算が未達」という結果に対し、原因が「新規の商談数が少ない」ことだとします。 ここで終わらず、「なぜ商談数が少ないのか?」をさらに掘り下げ、「競合の新サービスにより自社の魅力が薄れた」「営業担当者の提案スキルが不足している」といった根本原因まで特定します。 5. 【ACTION】改善策の立案と実行 根本原因が特定できたら、最後にそれを解決するための具体的な改善策を立案し、実行に移します。分析や評価だけで終わらせず、具体的な行動につなげて初めて、予実管理は経営改善のツールとして機能します。 例えば、根本原因が「営業担当者の提案スキル不足」であれば、「営業研修を実施する」「成功事例を共有する仕組みを作る」といったアクションプランを立て、責任者と期限を決めて実行します。 そして、その改善策の結果は、次の月の実績としてまた評価されます。このPDCAサイクルを回し続けることで、組織は継続的に学び、成長していくことができるのです。 💬 ひとことポイントPDCAは一度回して終わりではありません。「C(Check)」で原因を深掘りし、「A(Action)」を次の「P(Plan)」に活かすことで、らせん状に組織が成長していきます。 予実管理で失敗しないための5つのコツ 予実管理を導入しても、うまく機能しなければ意味がありません。形骸化させず、経営改善に直結させるためには、いくつかの重要なコツがあります。 ここでは、予実管理を成功に導き、失敗を避けるための5つのポイントを、具体的な理由とともに解説します。 目的を明確にし、全社で共有する 現実的で納得感のある予算目標を設定する 細かい差異にこだわりすぎず、重要なポイントに絞る できるだけ短いサイクル(月次)でPDCAを回す 現場へのフィードバックと対話を徹底する 1. 目的を明確にし、全社で共有する 予実管理を成功させる最初の鍵は、「何のために行うのか」という目的を明確にし、経営層から現場の従業員まで全員で共有することです。目的が曖昧なままでは、予実管理が単なる数字合わせの作業となり、従業員の当事者意識が生まれにくいからです。 例えば、「ノルマ達成を監視するため」ではなく、「課題を早期発見し、みんなで迅速に解決するため」といったポジティブな目的を共有することで、現場も協力しやすくなります。 経営目標達成という共通のゴールに向かうためのツールであると全社で認識を合わせることが、予実管理を形骸化させないための第一歩です。 2. 現実的で納得感のある予算目標を設定する 予実管理の土台となる予算目標は、現実的で、かつ現場が納得できる水準に設定することが極めて重要です。到底達成不可能な高すぎる目標は社員のやる気を削ぎ、逆に簡単に達成できる低すぎる目標は成長の機会を奪ってしまうからです。 具体的には、過去の実績データや市場動向を分析しつつ、実際に予算達成に向けて動く現場の責任者の意見を取り入れながら策定するプロセスが不可欠です。 挑戦的でありながらも、達成への道筋が見える納得感のある目標設定が、組織のモチベーションを引き出します。 3. 細かい差異にこだわりすぎず、重要なポイントに絞る 予実管理においては、発生したすべての差異を細かく分析するのではなく、経営へのインパクトが大きい重要な差異に絞って分析することが効率的です。すべての差異に同じ熱量で対応しようとすると、分析に多大な時間がかかり、本当に注力すべき大きな問題を見過ごすことになりかねません。 例えば、「差異が予算の10%以上、または金額で100万円以上の項目を優先的に分析する」といった社内ルールを設けることが有効です。 重要な差異に分析のリソースを集中させることが、迅速で効果的な改善アクションにつながります。 4. できるだけ短いサイクル(月次)でPDCAを回す 予実管理の精度と効果を高めるためには、できるだけ短いサイクルでPDCA(計画・実行・評価・改善)を回すことが欠かせません。半期や年一回の振り返りでは、問題が起こってから時間が経ちすぎてしまい、原因の特定が困難になったり、対応が手遅れになったりするからです。 理想は、月次決算に合わせて毎月予実の比較分析と改善策の検討を行うことです。 短いサイクルで軌道修正を繰り返すことで、経営判断のスピードが上がり、年度末の目標達成の確度を格段に高めることができます。 5. 現場へのフィードバックと対話を徹底する 予実差異の原因を分析し、改善策を実行するためには、管理部門から現場へ一方的に指示するのではなく、双方向の対話を徹底することが重要です。差異が生まれた背景や真の原因は、日々の業務を行っている現場にしかわからない情報の中に隠れていることが多いからです。 例えば、予算未達の結果に対して単に「なぜ達成できなかったのか」と詰問するのではなく、「何が障壁になっているか」「どうすればうまくいくか」を共に考える姿勢が求められます。 分析結果を現場と共有し、対話を通じて改善策を一緒に考えるプロセスが、現場の主体性を引き出し、実効性のある打ち手につながるのです。 💬 ひとことポイント予実管理は「管理」という言葉がついていますが、本質は「対話」です。数字をきっかけに現場と対話し、一緒に未来を創っていくことが成功の秘訣です。 予実管理に使うツールは?Excelとシステムの比較 予実管理を始めるにあたり、多くの企業がまずExcel(スプレッドシート)を利用します。しかし、事業の拡大とともにExcelでの管理に限界を感じ、専用の「予実管理システム」へ移行するケースも少なくありません。 ここでは、それぞれのツールのメリット・デメリットを比較し、自社に合った選び方を解説します。 1. まずはExcel(スプレッドシート)から始めるメリット・デメリット 結論として、特に中小企業や小規模な部門で予実管理を始める場合、追加コストがかからず、多くの人が使い慣れているExcelは非常に有効なツールです。 しかし、その手軽さの裏には、事業規模が大きくなるにつれて顕在化するデメリットも存在します。 メリットデメリットコスト・追加の導入費用が不要・大規模な運用には不向き操作性・多くの従業員が基本的な操作に習熟している・関数やマクロの知識が必要になる場合がある柔軟性・自社の管理項目に合わせて自由にフォーマットを作成可能・フォーマットが属人化しやすい共有・集計・メールや共有フォルダで簡単に共有できる・複数人での同時編集が難しい<br>・各部署からのデータ集計に手間がかかる管理・手軽に始められる・ファイルが増え、バージョン管理が煩雑になる Excelは導入のハードルが低く、まずは予実管理を試してみたいというフェーズにおいて最適な選択肢と言えます。 2. Excelでの管理に限界を感じたら「予実管理システム」の導入を検討 「各部署のExcelファイルを集計するのに時間がかかりすぎる」「どのファイルが最新かわからなくなる」といった課題に直面したら、それは「予実管理システム」の導入を検討すべきサインです。 予実管理システムは、Excel管理で発生しがちな問題を解決するために設計されています。 例えば、会計システムや販売管理システムから実績データを自動で取り込んだり、複数の担当者が同時に入力したりすることが可能です。これにより、手作業による集計工数や入力ミスが劇的に削減されます。 データの収集・集計作業を自動化し、分析や改善策の検討といった本来注力すべき業務に時間を使えるようにすることが、システムを導入する最大のメリットです。 💬 ひとことポイントツールの選択は会社のフェーズに合わせましょう。最初はExcelで十分。しかし「集計が大変」「ミスが多い」と感じたら、それは事業が成長している証拠であり、システム化を考える良いタイミングです。 専門家の伴走で予実管理を成功させたいならEncoachへ 自社だけで予実管理を軌道に乗せるのが難しい、あるいは、もっと質の高い経営判断に繋げたいとお考えなら、専門家の知見を活用するのも有効な選択肢です。 私たちEncoachは、単なる数値管理に留まらない、貴社の未来をデザインするための伴走支援を提供します。ここでは、Encoachが提供する具体的なサービスをご紹介します。 1. 貴社に合わせた予実管理体制の構築をゼロから支援 結論として、Encoachは貴社の事業内容や成長フェーズに合わせ、最適な予実管理の仕組みをゼロから構築するサポートを行います。 なぜなら、画一的なテンプレートを当てはめるのではなく、経営者が本当に見るべき数値を可視化し、自走できる体制を作ることが重要だと考えているからです。 具体的には、事業計画のヒアリングから始まり、未来の資金繰りまでを見据えた管理表の作成を伴走支援します。感覚的な経営から脱却し、客観的な数字に基づいて事業をコントロールできる体制を共に作り上げます。 2. 経営判断を加速する月次レビューの定例化と質の向上 Encoachは、月次での予実レビューを定例化し、その質を高めることで、経営判断のスピードと精度を向上させます。 予実管理は、一度仕組みを作って終わりではなく、定期的な振り返りと軌道修正のサイクルを回し続けることに本質があるからです。 私たちは、毎月のレビューに同席し、差異分析のサポートや次のアクションに繋がる問いかけを行います。これにより、経営者が財務状況をリアルタイムで把握し、自信を持って次の打ち手を決定できる「攻めの経営」への変革を後押しします。 3. 資金調達や事業計画策定まで見据えたコンサルティング 私たちの支援は、足元の予実管理に留まりません。将来の成長に必要な資金調達や、その基盤となる説得力のある事業計画の策定までを一貫してサポートします。 金融機関や投資家は、事業の将来性を数字で示すことができる企業を評価するため、精緻な事業計画と予実管理の実績は不可欠です。 Encoachは、成長ストーリーを具体的な数値計画に落とし込み、金融機関の紹介まで含めた資金調達の実行を支援します。 会社の未来をより良くするための第一歩として、まずはお気軽にLINE相談ください。 LINEで無料相談を申し込む 💬 ひとことポイント専門家の活用は、時間と精度を買う賢い投資です。社内に知見がない段階でも、プロの伴走があれば最短ルートで効果的な予実管理体制を築けます。 予実管理に関するよくある質問 予実管理について、多くの経営者や管理職の方から寄せられる代表的な質問にお答えします。疑問を解消し、予実管理への理解をさらに深めましょう。 Q1. 中小企業や個人事業主でも予実管理は必要ですか? 結論から言うと、むしろ経営資源が限られる中小企業や個人事業主にとってこそ、予実管理は極めて重要です。 なぜなら、どんぶり勘定の経営では、気づかないうちに資金繰りが悪化したり、事業機会を逃したりするリスクが高いからです。 予実管理を行えば、売上の減少や想定外のコスト増といった経営リスクを早期に察知し、手遅れになる前に対策を打つことができます。経営状況を客観的な数字で把握し、安定した事業運営と成長の基盤を築くために、事業規模に関わらず予実管理は必須の経営ツールと言えます。 Q2. 予実管理はプロジェクトのスケジュール管理にも応用できますか? はい、応用できます。予実管理の基本的な考え方は「計画と実績を比較し、その差異を分析して改善に繋げる」ことであり、これはプロジェクト管理にもそのまま当てはまります。 プロジェクトにおいては、売上やコストといった「お金」の予算だけでなく、作業工数や進捗率といった「時間」の予算も設定します。 そして、計画したスケジュールと実際の進捗を比較し、遅れが生じている場合はその原因を分析して、リソースの再配分などの対策を講じます。お金、時間、人のリソースを計画通りに進め、プロジェクトを成功に導くために、予実管理のフレームワークは非常に有効です。 Q3. 赤字部門の予実管理は、どのように進めれば良いですか? 赤字部門の予実管理で最も重要なのは、赤字からの脱却という明確な目標を設定し、その原因を徹底的に分析することです。 まずは、なぜ赤字に陥っているのかを「売上」「変動費」「固定費」に分解して分析します。原因が、売上か、原価か、あるいは人件費や家賃などの固定費なのかを特定するのです。 その上で、例えば「3ヶ月で単月黒字化する」といった具体的な利益目標を立て、コスト削減や売上向上施策など、原因に直接アプローチするアクションプランを実行・管理していくことが重要です。 Q4. 予実差異の分析は、具体的に何を見れば良いのでしょうか? 予実差異の分析では、単に「予算と実績の差額」を見るだけでは不十分です。なぜその差異が生まれたのかを深掘りするために、差異をさらに分解して見ることが重要になります。 例えば、売上高の差異であれば、「販売単価の変動による差異(価格差異)」と「販売数量の変動による差異(数量差異)」に分けて分析します。 これにより、「値引きが原因で利益が減ったのか」あるいは「販売個数が足りなかったのか」といった真の原因が明確になり、より的確な対策を立てることが可能になります。 まとめ:予実管理は目標達成への最短ルート。まずは第一歩から踏み出そう 本記事では、予実管理の基本的な意味から、そのメリット、具体的な進め方、そして成功させるためのコツまでを網羅的に解説しました。 予実管理とは、単なる数字の管理作業ではなく、会社の目標達成というゴールに向かって、現在地と進むべき方向を確認するための「経営の羅針盤」です。 経営状況を「見える化」し、迅速な意思決定を可能にすることで、変化の激しい時代を乗り越えるための強力な武器となります。 「難しそう」と感じるかもしれませんが、まずはExcelを使って、売上と主要な経費だけでも管理を始めてみましょう。大切なのは、完璧を目指すことよりも、まずは第一歩を踏み出し、PDCAサイクルを回し始めることです。 -
財務会計・税務会計・管理会計の違いとは?目的・役割から実務まで専門家が解説
「財務会計、税務会計、管理会計。言葉は聞くけど、それぞれの違いがよくわからない…」「会社の数字を経営に活かしたいけど、どこから手をつければいいの?」 この記事では、そんなお悩みを解決するため、3つの会計の目的や役割の違いを、専門家が図解や比較表を交えて徹底解説します。 この記事を読ばれば、各会計の本質が理解でき、税務だけでなく、会社の未来を創る「管理会計」の重要性に気づくはずです。会社の数字を武器に変え、攻めと守りの経営を実現しましょう。 まずは結論!財務・税務・管理会計の主な違いが一目でわかる比較表 会社の経営に不可欠な「会計」には、大きく分けて「財務会計」「税務会計」「管理会計」の3種類が存在します。 これらは目的や作成ルールが異なり、それぞれが重要な役割を担っています。まずは、3つの会計の主な違いを比較表で確認しましょう。 比較項目財務会計税務会計管理会計①目的利害関係者(株主・銀行など)への財政状態と経営成績の報告税金の計算と納税経営者の意思決定支援②報告先株主、投資家、銀行などの利害関係者税務署経営者、役員、事業部長など社内の管理者③ルール企業会計原則などの会計基準法人税法などの税法会社独自のルール(定めなし)④時間軸過去の実績過去の実績過去・現在・未来⑤強制力法律で義務付けられている(会社法など)法律で義務付けられている(税法)任意 経営者が知るべき財務・税務・管理会計の5つの決定的違い 財務会計、税務会計、管理会計は、一見すると同じ「会計」という枠組みにありますが、その中身は大きく異なります。これらの決定的な違いは、主に以下の5つの観点から整理すると明確に理解できます。 目的:「誰のため」の会計か? 報告先:「誰に」報告するのか? ルール:「何に」基づいて作成するか? 時間軸:「いつ」の情報を扱うか? 強制力:作成義務はあるのか? これらの違いを理解することが、会社の数字を正しく読み解き、的確な経営判断を下すための第一歩です。それぞれ詳しく見ていきましょう。 1. 目的:「誰のため」の会計か?外部報告・納税・内部活用の違い 3つの会計の最も根本的な違いは、「誰のために、何を目指して行うのか」という目的にあります。 財務会計は、株主や銀行といった会社の外部にいる利害関係者(ステークホルダー)に対し、会社の財政状態や経営成績を正しく報告することが目的です。 一方、税務会計は、国や地方自治体に納めるべき税金の額を公平かつ正確に計算するために行われます。そして管理会計は、経営者や管理職が自社の経営状況を把握し、今後の戦略を立てるなど、社内の意思決定に役立てることを目的としています。 このように、目的が異なるため、それぞれのアウトプットも異なってくるのです。 2. 報告先:「誰に」報告するのか?利害関係者・税務署・経営者の違い 会計情報が「誰に報告されるのか」という報告先も、3つの会計を明確に区別するポイントです。 財務会計の報告先は、会社の外部にいる株主、投資家、金融機関といった利害関係者です。 彼らは、その報告書(財務諸表)を見て、その会社に投資すべきか、融資すべきかを判断します。 税務会計の報告先は、言うまでもなく税務署です。計算された所得に基づき、法人税などの申告書を提出し、納税義務を果たします。対照的に、管理会計の報告先は、社長や役員、事業部長といった社内の経営・管理層に限定されます。 外部に公表するものではなく、あくまで内部での活用が前提となります。 3. ルール:「何に」基づいて作成するか?会計基準・税法・独自ルールの違い 各会計が準拠するルールは、それぞれの目的を反映して定められています。 財務会計は、すべての企業が同じ基準で比較できるよう、「企業会計原則」などの一般に公正妥当と認められた会計基準に基づいて作成されます。 これにより、投資家は客観的な指標で企業を評価できます。 税務会計が従うのは、「法人税法」や「所得税法」といった税法です。これは、公平な課税を実現するための法律であり、すべての企業に一律で適用されます。 一方で、管理会計には法律や基準といった統一されたルールは存在しません。経営判断に役立つのであれば、会社ごとに完全に自由な形式や指標を用いて分析・報告することが可能です。 4. 時間軸:「いつ」の情報を扱うか?過去の実績と未来の予測の違い 会計が扱う情報の「時間軸」にも、明確な違いがあります。 財務会計と税務会計は、基本的に「過去」の活動実績をまとめたものです。 例えば、財務会計における損益計算書は、過去1年間の経営成績を示しますし、税務会計も過去の事業年度の所得に対して税額を計算します。 これに対して、管理会計は過去の実績分析はもちろんのこと、「未来」の予測も非常に重視します。 来期の売上目標を立てるための「予算編成」や、プロジェクトの将来的な収益性を評価する「投資判断」など、未来志向の経営戦略に不可欠な情報を提供するのが管理会計の大きな特徴です。 5. 強制力:作成義務はあるのか?法律で定められた義務と任意の取り組みの違い 会計の作成が法律で義務付けられているかどうか、という「強制力」の有無も大きな違いです。 財務会計(決算書の作成・開示)と税務会計(税務申告)は、それぞれ会社法や金融商品取引法、そして税法によってすべての会社に義務付けられています。 これらの義務を怠ると、罰則が科される可能性もあります。 一方で、管理会計の導入や運用は、完全に企業の「任意」です。 法律による作成義務はないため、実施しなくても罰せられることはありません。しかし、的確な経営判断や迅速な意思決定のためには極めて重要であり、多くの成長企業が積極的に取り入れているのが実情です。 💬 ひとことポイント3つの会計の違いは、「目的」「報告先」「ルール」「時間軸」「強制力」の5つの視点で整理するとスッキリ理解できます。特に「誰のために(目的)」を意識することが、各会計の本質を掴むカギです。 財務会計とは?会社の「成績表」としての役割 財務会計は、会社の経済活動を外部の利害関係者に報告するための会計です。その役割は、主に以下の3つのポイントで理解することができます。 最大の目的:利害関係者(株主・銀行など)への情報開示 準拠すべきルール:「企業会計原則」などの会計基準 主な作成書類:財務三表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書) 株主や金融機関といった社外の人々が、会社の経営状況を客観的に判断できるよう、「会社の成績表」を作成し、開示する役割を担います。それぞれ解説していきます。 1. 利害関係者(株主・銀行など)への情報開示が最大の目的 財務会計の最大の目的は、株主や投資家、銀行などの社外の利害関係者に対して、企業の財政状態や経営成績を正しく報告することです。 なぜなら、これらの利害関係者は、公開された財務情報をもとに、その会社への投資を続けるべきか、新たにお金を貸しても大丈夫か、といった重要な意思決定を行うからです。 例えば、投資家は将来の収益性を、銀行は融資の返済能力を、財務諸表から読み取ろうとします。このように、財務会計は会社の信頼性を外部に示すための、非常に重要なコミュニケーションツールとしての役割を果たしているのです。 2. 準拠すべきは「企業会計原則」などの会計基準 財務会計は、すべての企業が共通の物差しで評価されるよう、「企業会計原則」などの一般に公正妥当と認められた会計基準に基づいて作成しなければなりません。 これは、会社ごとにバラバラのルールで決算書を作成してしまうと、企業間の比較ができなくなり、利害関係者が客観的な判断を下せなくなるためです。 例えば、企業会計原則を構成する7つの一般原則の一つである「明瞭性の原則」では、財務諸表によって利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、判断を誤らせないようにすることを求めています。こうした統一されたルールに従うことで、財務諸表の信頼性と客観性が担保されるのです。 3. 主な作成書類:財務三表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書) 財務会計のアウトプットとして最も重要な書類が、「財務三表」と呼ばれる以下の3つです。これらは、それぞれ異なる切り口から会社の経営状態を映し出すため、3つをセットで見ることで会社の全体像を立体的に把握できます。 貸借対照表(B/S)決算日時点での会社の財産(資産)と借金(負債)、そして元手(純資産)のバランスを示し、「財政状態」がわかります。 損益計算書(P/L)一会計期間にどれだけ儲けたか(収益)、そのためにいくら使ったか(費用)、そして最終的に利益がいくら残ったかという「経営成績」を示します。 キャッシュフロー計算書(C/S)一会計期間における現金の収入と支出の流れ(キャッシュフロー)を、「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つの区分で示します。 💬 ひとことポイント財務会計は「外部向けの公式レポート」。利害関係者が会社の健康状態を正しく診断できるよう、国が定めた共通のルール(会計基準)に沿って作成することが鉄則です。 税務会計とは?「納税額」を正確に計算するための会計 税務会計は、会社が納めるべき税金の額を、法律に基づいて正しく計算するために特化した会計分野です。その特徴は、以下の3つの観点から整理できます。 目的:公平な課税の実現 根拠:「法人税法」などの税法 特徴:財務会計の「利益」と税務会計の「所得」にはズレが生じる 財務会計が会社の「成績表」であるのに対し、税務会計は「納税申告書」を作成するための計算プロセスと言えます。詳しく見ていきましょう。 1. 公平な課税を実現するための会計処理 税務会計の唯一の目的は、法人税や事業税などの税額を正確に算出し、国や地方自治体に申告・納税することです。 これは、国の財政を支える重要な税収を確保するとともに、「租税公平主義」の観点から、すべての法人に公平な税負担を求めるために行われます。 もし、各社が財務会計で作成した「利益」をそのまま課税対象にしてしまうと、会社ごとに採用する会計処理の方法によって税額に差が生まれ、不公平が生じる可能性があります。そこで、税法という統一されたルールのもとで課税対象となる「所得」を計算し、公平な課税を実現するのが税務会計の役割なのです。 2. 根拠となるのは「法人税法」などの税法 税務会計が準拠すべき絶対的なルールは、「法人税法」や「所得税法」、「消費税法」といった税法です。 財務会計が「企業会計原則」という複数の基準から成り立つことに対し、税務会計は課税の公平性と強制力を持つ法律のみを根拠とします。 例えば、財務会計上は全額費用として計上できる接待交際費も、税法上は資本金の額に応じて損金(税務上の費用)として認められる金額に上限が設けられています。このように、ある支出が費用になるかならないかは、最終的に税法の規定によって判断されるため、経営者は財務会計上の感覚だけでなく、税法特有のルールを理解しておくことが不可欠です。 3. なぜ発生する?財務会計の「利益」と税務会計の「所得」のズレを具体例で解説 財務会計上の「利益」と税務会計上の「所得」の金額は、多くの場合一致しません。 これは、両者の目的の違いから、収益(益金)や費用(損金)として認識する範囲とタイミングに「ズレ」が生じるためです。 財務会計は利害関係者への報告を目的とする一方、税務会計は公平な課税を目的としているため、考え方が異なるのです。 このズレには、いずれ解消される「一時差異」と、永久に解消されない「永久差異」があります。例えば、将来の退職金支払いに備える「退職給付引当金」は、財務会計では将来の負担に備えて当期の費用として計上しますが、税務会計では実際に支払われるまで損金とは認められません。この結果、会計上の「利益」よりも税務上の「所得」のほうが大きくなります。 💬 ひとことポイント税務会計は「税金計算のための専門ルール」。財務会計の利益がそのまま税金の対象になるわけではない、ということを覚えておきましょう。税法独自のルールを理解することが、適切な納税と節税の第一歩です。 管理会計とは?会社の「未来」を創るための経営の武器 財務会計や税務会計が過去の実績を報告する「守りの会計」であるのに対し、管理会計は会社の「未来」を創り出すための「攻めの会計」と言えます。その役割と特徴は、以下の3点で理解できます。 役割:経営者の意思決定をサポートする社内向け情報 特徴:決まったルールはなく、目的に応じて自由に設計可能 活用例:予実管理・原価計算・資金繰り管理 法律で定められた義務ではなく、あくまで経営者が自社の経営をより良くするための道具です。それぞれ解説します。 1. 経営者の意思決定をサポートする社内向け情報 管理会計の最大の役割は、経営者が的確な意思決定を下すために必要な社内向けの情報を提供することです。 外部向けの財務会計情報だけでは、「どの商品が一番儲かっているのか」「この事業から撤退すべきか」といった具体的な経営判断は困難です。 管理会計では、部門別や製品別の損益、プロジェクトごとの採算性など、経営者が知りたい情報を、経営者が判断しやすい形式でスピーディーに提供します。これにより、感覚や経験だけに頼るのではなく、具体的なデータに基づいた客観的で質の高い意思決定が可能になるのです。 2. 決まったルールはなく、目的に応じて自由に設計可能 管理会計には、財務会計の「企業会計原則」や税務会計の「税法」のような、守らなければならない統一的なルールは一切存在しません。 そのため、各企業が自社の経営目標や事業内容に応じて、完全に自由にその仕組みを設計できるのが大きな特徴です。 例えば、飲食チェーンであれば店舗ごとの売上や利益率を比較するでしょうし、IT企業であれば顧客獲得コストや解約率といった独自の指標(KPI)を重視するかもしれません。このように、自社の戦略に合わせてオーダーメイドの「経営の羅針盤」を作れる自由度の高さが、管理会計の強みなのです。 3. 具体的な活用例:予実管理・原価計算・資金繰り管理 管理会計は、具体的な手法として以下のようなものに活用され、経営の舵取りをサポートします。これらは会社の現状を可視化し、未来の行動計画を立てる上で不可欠なツールです。 予実管理年度や月次で立てた売上や利益の「予算」と「実績」を比較・分析する手法です。目標達成度を測り、計画とのズレが生じた原因を早期に特定し、軌道修正を図るために行われます。 原価計算製品やサービスごとにかかった費用(原価)を正確に計算することです。これにより、儲かっている製品・損している製品が明確になり、適切な価格設定やコスト削減策の立案に繋がります。 資金繰り管理将来の現金の出入りを予測し、資金ショートを防ぐための管理活動です。いつ、いくら資金が不足しそうかを事前に把握し、融資の申し込みなど先手を打つことが可能になります。 💬 ひとことポイント管理会計は「未来のための社内作戦会議ツール」。決まったフォーマットはありません。自社の目標達成のために「どんな情報が必要か?」を考え、自由にカスタマイズできるのが最大の魅力です。 管理会計の欠如が招く経営リスク|不正の兆候を見逃さないために 管理会計は、単に経営判断を助けるだけでなく、社内の不正を防止し、健全な組織を維持するための「守りの機能」も果たします。管理会計が機能していない「どんぶり勘定」の会社は、知らないうちに以下のような深刻な経営リスクを抱え込んでいる可能性があります。 「どんぶり勘定」が不正の温床になる 数値の異常放置が横領や不正会計につながる 内部統制が機能せず、不正を未然に防げない 不正の疑いがあっても、自社だけでの解決が困難 ここでは、具体的なリスクと対策を解説します。 1. 「どんぶり勘定」が不正の温床になる理由 お金の流れを大雑把にしか把握しない「どんぶり勘定」は、経理不正が発生しやすい土壌そのものです。 売上や経費の管理が曖昧で、誰が何にお金を使っているのかが不明確な状態では、不正な支出や着服があっても気づくことが困難です。 例えば、経費精算のルールが曖昧であれば、カラ出張や水増し請求といった不正が容易に行えてしまいます。しっかりとした管理会計の仕組みがなく、お金の流れがブラックボックス化している状態は、不正を企む者にとって絶好の機会を与えてしまうのです。 2. 数値の異常放置が横領や不正会計につながる危険性 管理会計を導入していないと、帳簿上の小さな数値の異常を見過ごしてしまいがちですが、それが大規模な横領や不正会計の兆候であるケースは少なくありません。 例えば、「原因不明の棚卸資産の減少」や「特定の取引先への支払いの急増」といった異常値を放置すると、不正行為はエスカレートしていきます。 最初は少額の出来心だった不正が、発覚しないことに味をしめて次第に大胆かつ大規模になり、気づいたときには会社経営を揺るがすほどの損害に発展している危険性があります。管理会計によって日頃から数値を詳細にモニタリングしていれば、こうした異常を早期に察知し、被害の拡大を防ぐことが可能です。 3. 内部統制の構築:管理会計で不正を未然に防ぐ仕組みづくり 不正を未然に防ぐためには、管理会計を活用した「内部統制」の仕組みを構築することが極めて重要です。 内部統制とは、社内で不正やミスが起こらないように、業務のプロセスやルールを整備し、適切に運用することです。 例えば、経費の申請者と承認者を分ける、現金や預金の管理担当者と記帳担当者を分ける(職務分掌)といったルールを設けることが挙げられます。管理会計の導入は、こうした業務プロセスの可視化と標準化を促し、相互牽制の効いた体制づくりに直結します。結果として、特定の個人に権限が集中することを防ぎ、不正が起こりにくいクリーンな経営環境を実現するのです。 4. 万が一不正の疑いがある場合は、迷わず専門調査機関へ相談を もし社内で不正の疑いが浮上した場合は、自社だけで解決しようとせず、速やかに探偵社や調査会社といった専門調査機関へ相談することが賢明です。 不正の調査には、高度な専門知識と客観的な視点が求められます。 不用意に社内で調査を進めると、証拠を隠滅されたり、人間関係の悪化を招いたりするリスクがあります。 企業調査を専門とする調査会社は、法的な知識と豊富な経験に基づき、慎重かつ確実に事実関係を調査します。不正の証拠を確保し、法的な手続きに進む場合でも、専門家の支援は心強い味方となるでしょう。 💬 ひとことポイント管理会計は「社内の監視カメラ」。お金やモノの動きを細かく見える化することで、不正の芽を早期に発見し、クリーンな経営環境を維持する「守りの砦」としての役割も担っています。 財務・税務・管理会計に関するよくある質問 ここでは、財務会計、税務会計、管理会計について、経営者や経理担当者から寄せられることの多い質問にお答えします。日々の業務や経営判断に役立つポイントを、Q&A形式でわかりやすく解説します。 Q1. 個人事業主に関係があるのはどの会計ですか? A. 個人事業主にとって最も直接的に関係するのは「税務会計」ですが、事業を成長させるためには「管理会計」の視点も重要になります。 個人事業主には、法人と違って決算を外部に公表する義務がないため、利害関係者への報告を目的とする「財務会計」の必要性は高くありません。 しかし、事業で得た所得に対する所得税の納税義務があるため、税法に基づいて収支を計算し、確定申告を行う「税務会計」は必須です。さらに、日々の経営状態を把握し、事業の成長戦略を立てるために、管理会計の手法を取り入れて売上や経費を分析することが、安定経営への近道です。 Q2. 財務会計と税務会計の具体的なズレ(申告調整)にはどんなものがありますか? A. 会計上の「利益」と税務上の「所得」のズレには、将来的に解消される「一時差異」と、永久に解消されない「永久差異」の2種類があります。このズレは、財務会計と税務会計で収益や費用を認めるタイミングや範囲が異なるために生じます。 一時差異の例減価償却費の限度超過額や、賞与・退職給付引当金などが代表例です。これらは会計上は費用として計上しますが、税務上は一定の限度額を超えた部分や、実際に支出されるまでは損金として認められません。ただし、将来的にはその差は解消されます。 永久差異の例税務上の損金として認められない寄付金や、上限を超えた交際費などが該当します。これらは会計上は費用でも、税務上は永久に損金とならないため、差が解消されることはありません。 Q3. 中小企業が管理会計を始めるには何から手をつければ良いですか? A. まずは「月次決算」の早期化と、自社の「現状を正確に把握する」ことから始めるのが最も効果的です。 どんぶり勘定から脱却し、経営判断に使える精度の高い情報を得るための第一歩です。 具体的には、月初5営業日以内には前月の試算表を完成させ、タイムリーに経営数値を把握できる体制を整えましょう。その上で、商品別・サービス別・得意先別といったセグメントで売上や利益を分解し、「どの事業が儲かっているのか」を可視化します。この現状分析が、次の打ち手となる具体的な目標設定や課題発見に繋がるのです。 Q4. 税務会計に関する知識を証明する資格はありますか? A. 税務会計の専門知識を証明する最も代表的な国家資格は「税理士」です。 税理士は税の専門家であり、税務代理、税務書類の作成、税務相談の3つは法律で定められた独占業務です。法人税や所得税、消費税など、複雑な税法の知識を駆使して適正な納税をサポートする役割を担います。 また、企業の財務諸表が適正であることを証明する監査を独占業務とする「公認会計士」も、税理士登録をすることで税理士と同様の業務を行えます。その他、日商簿記検定1級などの会計資格も、税務会計の基礎となる知識を証明するものとして評価されます。 まとめ:3つの会計を正しく理解し、攻めと守りの経営を実現しよう ここまで、財務会計、税務会計、管理会計という3つの会計の違いとそれぞれの役割について解説してきました。 財務会計: 利害関係者からの信頼を得るための「守り」 税務会計: 法令を遵守し、納税義務を果たすための「守り」 管理会計: データに基づいた意思決定で未来を創る「攻め」 これら3つの会計は、どれか一つだけ行えば良いというものではなく、それぞれが相互に関連し合いながら会社の経営を支えています。 健全で持続的な成長を目指す上で、税務会計だけでなく、自社の未来を切り拓く武器となる「管理会計」の視点を持つことが極めて重要です。過去の実績をまとめる財務・税務会計だけでは、厳しい競争環境を勝ち抜くことはできません。 自社の強みや弱みを数字で把握し、次の戦略を立てるための管理会計を導入することで、初めて攻守のバランスがとれた強固な経営体制が築かれるのです。 財務戦略でお悩みなら、Encoach株式会社へご相談ください 財務の重要性は理解できても、自社だけで最適な戦略を立て、実行するのは容易ではありません。Encoach株式会社は、代表の北園が大手税理士法人で1,000社以上の経営者を支援した経験を基に設立した、経営財務コンサルティングのプロフェッショナル集団です。 私たちは、単なる数字のアドバイスにとどまらず、経営者の「想い」を実現するための「未来の数字」を共に創り上げる伴走支援を信条としています。 資金繰りの不安解消から、成長を加速させるための資金調達、M&A戦略まで、財務に関するあらゆる課題に、経営者の右腕として寄り添います。会社の未来をより良くするための第一歩として、まずはお気軽にLINE相談ください。 LINEで無料相談を申し込む -
住宅ローン控除は借り換えでどうなる?金利切り替えでの注意点と計算方法を解説
最近、金利の上昇を受けて、住宅ローンの金利を変動型から固定型に切り替える人が増えています。 その際に行う「借り換え」ですが、すでに住宅ローン控除を受けている方は要注意。旧ローンの控除がそのまま使えるとは限りません。 この記事では、住宅ローンの借り換えをした場合の住宅ローン控除の継続・計算方法・注意点についてわかりやすく解説します。始めてください。 住宅ローン控除とは?おさらい まずは基本を確認しましょう 控除期間:通常10年(条件により13年もあり) 控除率:年末ローン残高の0.7%(2024年以降の新制度) 控除限度額:新築・中古・省エネ住宅で異なる 控除対象:自分が住む住宅に限る 借り換えをしても控除は受けられるの? 答えは 「条件を満たせばOK」 です。ただし、控除が「引き継げる」のではなく、「新しいローンに対して再度控除の適用を受ける」形となります。 要件を満たせば、残りの控除期間について控除が可能です。 控除額の計算は「新ローンの借入額」ではなく、「旧ローンの年末残高相当額」が基準になります。 【図解】借り換え前後のローン残高と住宅ローン控除の違い 以下の図をご覧ください。固定金利へ借り換えた場合の控除額の違いを視覚的に示しています。 オーバーローンのケース(上図の右側) 借り換え前の旧ローン残高:2,800万円借り換え後の新ローン額:3,000万円(諸費用込み)借り換え後の新ローンの年末残高 2,900万円 計算:2,800万円×2,900万円/3,000万円=2,706万円控除対象残高:2,706万円控除額:2,706万円 × 0.7% = 18.94万円(増額分は控除対象外) ※借り換え2年目以降も同様に計算を行う必要があります。このように、借り換え後のローン額すべてが控除対象になるわけではない点に注意が必要です。 参考:国税庁 No.1233 住宅ローン等の借換えをしたとき 借り換え後に控除を受けるための要件 控除の継続には、以下の条件を満たす必要があります。 要件内容借り換え後の返済期間10年以上であること居住要件引き続き自宅として使用していること控除年数元の住宅ローンの残り年数分(延長不可) よくある誤解・注意点 借り換えたら控除がゼロになる? → いいえ、条件を満たせば継続可能 借り換えたローン全額が控除対象? → いいえ、旧ローン残高相当まで 控除期間がリセットされる? → いいえ、残存期間を引き継ぎます まとめ 住宅ローンの金利上昇に対応して借り換えを検討するのは、将来の家計を守る上でとても重要です。しかし、住宅ローン控除の仕組みを正しく理解しないと、節税のつもりが損になることも。特に借り換え後の「控除対象残高」や「控除継続の要件」には注意しましょう。迷ったときは税理士など専門家への相談もおすすめです。
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